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少し反応が遅れてしまったのが悔やまれるのですが…
5月初頭のGW前にこんなニュースがあったのをご存じでしょうか?
▶米ハワイ州、サンゴに有害な日焼け止め禁止へ

内容を一部抜粋しますが、
米ハワイ州は1日、サンゴ礁に有害な化学物質を含む日焼け止めの販売を禁止する法案を可決した。施行されれば、米国の州として初の試みとなる。
法案は、オキシベンゾンとオクチノキサートを含む処方せん不要の日焼け止めの販売を州全土で禁止するというもの。これらの化学物質は3500種類以上の最も流通している日焼け止め製品に含まれている。
法案は2021年から施行される予定で、民主党のデイビッド・イゲ州知事の承認を待つのみとなっている。
とのこと。
まだ今後どうなるかはハワイ州知事の承認如何に委ねられているようですが、
このニュースに関しては色々と問題があり、思うこともあるので
例えば今後この法案が可決されたとした場合にどんなことが起こるのか?
これについて解説させて頂きたく思います。
ハワイの話だから日本の我々にはあまり関係ないや~というのは実際そうなのですが、
実は長い目で見るとそうとも言ってられないかもしれないんですよね…(^_^;)
◎「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」は日本では使われているのか?
「日焼け止め成分がサンゴ礁に本当に悪影響になっているかどうか」という話の前に、
今回のニュースでも大きく取り上げられていた
『オキシベンゾン』 と 『オクチノキサート』
という成分について解説しておきます。
最初に僕がこのニュースをさっと流し読みしたときに、
「オキシベンゾンは日本では今ではほとんど使われていないし、オクチノキサート?は聞いたことが無いなぁ。日本ではあんまり関係ないかな?」
と思ったのですが、、
後ほどよく調べてみたところ、
この「オクチノキサート」は日本では別名で呼ばれている成分だったということが発覚しました。。
オクチノキサートの日本での一般名は、
『メトキシケイヒ酸エチルヘキシル』
のことで、
最も有名でかつ最も使用頻度の高い紫外線吸収剤です。
◎『オクチノキサート』=『メトキシケイヒ酸エチルヘキシル』?!
国内でもコスメティックインフォに登録されているだけで6000商品以上に配合されていて、
市販の日焼け止めといえばこのメトキシケイヒ酸エチルヘキシルが主成分に配合されているものだらけです。
ニュースでは「オクチノキサート」なんて名前で書いてあったので
我関せずを決め込んだメーカーさんも多かったかもしれませんし
自分が使っている商品を気にした人も少なかったかもしれないのですが…
はっきり言ってほとんどの日焼け止めにこの成分が入っているので、
全く関係無いと言えるのは「紫外線吸収剤フリー」系を使われている方だけですね(;^o^A
ただ、
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは現状の吸収剤系の日焼け止め成分の中では最も配合上限が高く、
一番安全性が高いと言われているものなんです。
(オキシベンゾンは元々あんまり良いとは言われていないので使用頻度も低いですが)
普通の日焼け止めだとメトキシケイヒ酸エチルヘキシルは20%配合可能で、
日本ではこれ以上の濃度が許可されている日焼け止め成分は紫外線散乱剤しかありません。
だから現状の吸収剤系の日焼け止めはほぼ9割以上がこの成分を主成分に含んでおり、
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルが禁止となると、
吸収剤系の日焼け止めはほぼ全てNGと言うことになります。
しかもニュースの書き方的に「オキシベンゾンとオクチノキサートを『含む』」とあるので、
他の吸収剤系の成分も入ってる可能性は高いと思います。
となると実は色んな問題が発生するんですよね…。。
単純に「この成分使わなければ良い」では済まない話なんです。
◎吸収剤を使わないと高いSPF値やウォータープルーフ効果が担保できない
まず紫外線吸収剤を禁止にしてしまうことについては、
かずのすけ個人的には後述する環境ホルモン作用などの件もあって
環境保全とかを考えるとどちらかというと賛成寄りの見解なのですが、
ただ人間がハワイで海水浴をする上ではこの法案は全く現実的ではないかなと正直には思います。
海水浴で使用する日焼け止めですから、耐水性が高くないといけないのは当然ながら
さらにハワイですからとても強力な紫外線が降り注いでいると想像します。
となると紫外線防止効果もそれだけ高いものが必要になってくると思います。
ですが吸収剤を用いない場合、
比較的紫外線防止効果の低い「紫外線散乱剤」をメインに配合した商品でなければならないですし、
またウォータープルーフについてもパウダーである散乱剤では完全なものを作るのは難しく…
(どうしてもオイル成分の紫外線吸収剤の方が撥水性は高い)
すると日焼け止め効果が弱いばかりかすぐに流れてしまって持続性もない、
ということになってしまいかねません。
あと散乱剤は白色のパウダーですから、かなり海水が汚れそう…という気もしますね。。
普通に考えて現状ではこの吸収剤二種を使わないとなると、
サンゴを守るために人間が被害を被る形になるのかな?
という気がしています。
(まぁそれが悪いというわけではないですが。)
◎紫外線吸収剤は本当にサンゴ礁に悪影響なのか?
ちなみに紫外線吸収剤が本当にサンゴ礁に悪影響になるかどうか?
という議論については、
ニュース記事の中でもハワイ医師会が「日焼け止めがサンゴの漂白を引き起こしたことを示唆する査読された証拠がないため、この法案に同意しなかった」と述べるように、
実は世界的に色々な研究を見てみても
日焼け止めがサンゴの漂白の原因物質である、と断定できる根拠はかなり少ないようです。
僕も論文を色々探してみましたがサンゴとの関連性を述べたものはぱっと見た感じは見つかりませんでした(^_^;)
ただ、
オキシベンゾンもメトキシケイヒ酸エチルヘキシルも
昔から『環境ホルモン作用』がある、という点は長く指摘され続けていて
僕はこの点を考えるとハワイなどで海水に直接日焼け止め剤が流れ出してしまうことは良いことではないかなと考えています。
ちなみに上記成分の環境ホルモン作用については
こちらの記事に詳しく書いています。
まさか3年前に書いたとは思えないほど先日書いたような覚えがある記事ですが…。。笑
内容を一部抜粋するとこんな感じのことを書いています。
このように環境中に排出されて生態系のホルモンバランスを崩してしまう化学物質を『環境ホルモン』というのですが、
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルはラットなどに投与すると男性ホルモンを減退させる性質があることが分かっており、
その他水生生物にも影響を及ぼす可能性が高いということは実際の研究データとして多く上がっています。
つまりこの成分には確かに環境ホルモンの疑いがあります。
なのでもし自然界にこの成分が大量に排出されるようなことがあれば、
生態系のバランスを壊してしまう懸念が本当にあるのです。
また従来の人間に対する暴露試験はあくまで短期集中的なもので、
これを毎日何十年と使用し続けたとした時の安全性データは現状不足しているため、
ヨーロッパなどでは常に議論の対象となっています。
というわけでこれらの吸収剤が大量に暴露すると環境ホルモン作用があるのは、
これまでの研究結果を見るに恐らく間違いないことではないかなと僕は思っていて
サンゴに対してもやはり何らかの影響を与えていると考えるのは全く突飛な話ではないと考えます。
特に海水に直接流れ込んでいるので浄水されているわけでもないですし…
それを思うとこの法案にはちょっと賛成かもなぁと個人的には思うわけです。
(そもそも僕が海水浴しないしというのもあるかもしれませんが。苦笑)
◎今後さらに「吸収剤不使用」で「ウォータープルーフ」の日焼け止めが求められる
まぁこの問題を全て丸く収めるとしたら
・耐水性の高い紫外線吸収剤不使用の日焼け止め
か、もしくは
・環境負荷のない全く新しい紫外線吸収剤
のどちらかが開発されれば良いという話ですね。
ちなみに日本では前々から紫外線吸収剤不使用の日焼け止めがかなり沢山作られていて、
「ノンケミカル」とか「紫外線吸収剤フリー」という風に書いてあるものであれば問題なく使用できます。
(かずのすけブログで紹介されているもののほとんどはOK)
ただ耐水性も紫外線防止作用もあまり高くないので
結局塗り直しを何度もしなければいけないという点でとても不便かなと思います。
基本的に吸収剤フリー系は海水浴用ではないですからね…;;
何にせよこういった法案を見切り発車で出すのではなく、
こういった何らかの代替策をちゃんと用意しないと後々困るよという話なんですが…。
ただ今のところメトキシケイヒ酸エチルヘキシルよりも安全性が高くて環境負荷の少ない吸収剤は開発されていませんからね。。
もしかしたらこの煽りを受けて近いうちにハワイ州で最先端の吸収剤が開発されるかもしれませんが。笑
そうなると我々にとっても嬉しい話になりますね。
あと、ハワイでこういった法案が可決されると
可決の前例があるということになって他の国でも同じような法案が通ってしまうことがあります。
日本でも先日の殺菌剤の例のように「アメリカでやるならうちもやる」って感じで追従することもあるので…(苦笑)
例えば沖縄でも似たような問題が指摘されているらしいですからね。
あんまり注目されなかったニュースですが、
実は意外と大きな問題をはらんだ内容だったりしました。
ハワイ州の今後の動向は見物です。
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