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こちらは先ほど頂いた質問です!
オイルの酸化しやすいor酸化しにくいの見分け方を教えていただきたいです。
リノール酸の含有率で見ればよいのでしょうか?
マカデミアナッツオイルにたくさん含まれているパルミトレイン酸は酸化しにくい成分ということでしょうか?
オレイン酸やリノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸なども聞いたことがあるのですがいかがでしょうか?
成分を調べてみても聞きなれないカタカナばかりでいつも混乱してしまいます…。
オイルの酸化しやすい&酸化しにくいはどうやって見分けたら良いのか?
という質問ですが、これはとても鋭い質問です。
かずのすけの解析記事でも度々「このオイルは酸化安定性が悪いから…」ということをよく目にすると思うのですが、
そもそもその酸化安定性ってどうやって見分けてるの??
と、同じことを疑問に思っていた方も居られるのではないでしょうか。
というわけで本日のテーマはこちら、
「オイルの酸化安定性を見破るコツ」
を皆様に伝授したいと思います!(^o^)/
ただ結構難しい話なので、今日はお勉強のつもりで読んで下さいね(;^^)ゞ
◎酸化するのは「油脂」だけ!
オイルの種類にはいろんなものがありますが、
現代の化粧品用オイルとしては『酸化』という欠点を持つのは「油脂」というタイプのものに限ります。
油脂とは生物(植物・動物)の生体内で生成されるオイルのことで、
化粧品用途のものは主に植物の「種(種子)」や「果実」を原料にして得られるものが大半です。
例)
・アルガニアスピノサ核油
・オリーブ油
・アボカド油
・ツバキ油
・ダイズ油
・アンズ油
・ココナッツ油
・アーモンド油 …
たまに「精油」と勘違いされますが、精油と油脂は全く異なる物質なので間違えないようにしましょう。
▶化粧品の読み方 ~『油脂』と『精油』 見分け方とその特徴~
また油脂には「動物性油脂」というものもあります。
「ラード」や「牛脂」などがそれに当たりますね。
ただこれらの油脂はバターのように固まった固形脂(硬化油)であることが大半ですので化粧品用にはほとんど使われません。
動物性油脂で化粧品にも使われているのは、ほぼ「馬油」のみといえるでしょう。
酸化の問題があるのはこれらの『油脂』のみですので、
例えばミネラルオイル、シリコーンオイル、ワセリンや合成エステル油などは酸化とは全く無関係ということになります。
◎油脂の構造と『飽和』・『不飽和』について
油脂というのは、「グリセリン」という物質と、「脂肪酸」という物質が合体して出来上がります。
(このときの「脂肪酸」は分子鎖長が長い「高級脂肪酸」を使います。鎖長が短い低級脂肪酸ではオイルにはならないからです。▶水と油って何が違うの?【分子鎖長】と【極性】のはなし)
模型にすると↓こんな感じです。(あとプラス水が3個できますが省略してます。)
このように、ひとつの油脂には脂肪酸が3種類合体できますので、
脂肪酸の組み合わせに合わせて無数の性質を持った油脂が作られるわけです。
全部同じ種類の脂肪酸でも良いですし、
全部別の脂肪酸でも油脂になります。
この脂肪酸の組み合わせで油脂の性質が決まります。
僕がブログでよく言っている「油脂の構成脂肪酸」というのは、
このように油脂を形作る脂肪酸がなんの種類なのかを言っているということですね。
そしてこれらの脂肪酸には、
『飽和脂肪酸』と呼ばれるものと『不飽和脂肪酸』と呼ばれるものがあります。
上の画像を見た時に、
「まっすぐの構造を持った脂肪酸」 と 「グニャリと曲がった構造の脂肪酸」
があるのに気づきますか?
そのうちの「まっすぐ」が「飽和脂肪酸」、「曲がっている」のが「不飽和脂肪酸」です。
さてこれ、何が違っているのかというと、
分子中の「二重結合」という結合の数が違っています。
◎「二重結合」が多い物質は不安定になる!
二重結合というのは化学物質の原子同士の結合の仕方のひとつなのですが、
このように、原子の結合は「単結合」という結合の仕方が1番安定で、
これ以上変質しません。
一般的には我々の身近にある物質のほとんどの結合はこの形です。
ですが中には「二重結合」や「三重結合」といって、
少し特殊な形で原子同士が結合している場合があります。
二重結合というのは結合のうちの一本がとても切れやすくなっていて、
例えば「紫外線」を照射されたり、「熱」を加えられたり、「酸化剤」や「還元剤」を作用されたりすると
結合が切れて変質してまう結合の仕方です。
(三重結合はさらに不安定ですが、身近な物質にはこのような構造を持った化合物はほとんど存在しません。)
空気中には「酸素」という酸化剤が大量に存在しているため、
二重結合は放っておくとこの酸素によって酸化を受けて、
肌に負担になる過酸化脂質などを生じてしまうと言われているわけですね!
ですから二重結合が多い脂肪酸は酸化しやすいのです。
で、二重結合ってご覧のとおりなんだか斜めっているでしょう?(^_^;)
なのでこの結合をたくさん持っている物質は形がどんどん曲がっていくんです…。
↓こんな感じに。笑
ちなみにこれは「リノール酸」という有名な脂肪酸の模型です。
二重結合が2つあります。
(ただこちらの分子模型だと二重結合が一本で書いてあるのでどれが二重結合か分かりにくいんですよね~。。場所は探して見て下さい。笑)
つまり、
【油脂の酸化安定性】は、
構成脂肪酸が「二重結合」をどれだけ持っているのか、
という考え方で概ね判断できるのです。
◎「一価不飽和脂肪酸」はまだ大丈夫、「多価不飽和脂肪酸」はNG!
以上から、
構造中に二重結合を持った脂肪酸を「不飽和脂肪酸」と言って、
1個の二重結合を持つ脂肪酸を「一価不飽和脂肪酸」、
2個以上の二重結合を持つ脂肪酸を「多価不飽和脂肪酸」と分類しています。
(一個もないと「飽和脂肪酸」になります。)
脂肪酸の種類というのは物凄く多いので実際には書ききれるものではないのですが、
化粧品用に使われるものは主に以下のものだけです。
(カッコ内の数字は二重結合の数)
ちなみに構造式で見ると左端の「O」に二重結合が付いているのですが、ここは無視してください。カクカクしてるところの元素記号(CとH)は省略されています。
それで、
酸化安定性だけを求めるのであれば飽和脂肪酸のみの油を使えばいいじゃないか、
という話なのですが…、
油脂中の脂肪酸は二重結合を持つと、
分子の形がとても嵩張るようになるため凝集しにくく流動性が増加します。
また極性が上がるので分子の性質的にちょっと水っぽくなるのですよね。
(▶「極性」のはなし)
つまりよりサラサラで扱いやすいオイルになるということです。
肌にも浸透しやすく、密着性が低い上質のオイルとなります。
(逆に飽和脂肪酸オンリーの油にすると、固まりやすく、油っぽいベタッとした油になります。)
なので植物油で【美容オイル】として知られているものは、
不飽和脂肪酸のオレイン酸やリノール酸の含有が多いさらっとしたものが多いのです。
(オリーブオイル、アルガンオイル、米ぬか油、ツバキ油などはオレイン酸含有率が50%程度かそれ以上ある)
実際「一価不飽和脂肪酸」程度であれば無理に加熱したり長時間紫外線に当てさえしなければほぼ安定です。
もしくは添加する酸化安定剤の効果で十分酸化を抑えることが出来ます。
ですが、二重結合が2個以上ある「多価不飽和脂肪酸」があまりに多くなると、
普通の化粧品使用と言っても安定性に不安が残ります。
出来れば流動性の補助は一価不飽和脂肪酸に任せることにして、
多価不飽和脂肪酸は少ない方が酸化安定性が良いということになるのです。
ですので、結論としては
各油脂の脂肪酸組成を調べて、
「リノール酸」や「リノレン酸」などの含有量が多いものは酸化安定性が低い、
ということになるでしょう。
理想的な化粧品用の油脂というのは、
・リノール酸やリノレン酸が限りなく少なく(10%以下が理想)
・オレイン酸やパルミトレイン酸が適量含まれる(50%以上)
・加えて酸化安定剤のビタミン類の含量が多いと尚良し。
ということになります。
最近では「○○油 脂肪酸組成」等とGoogleで調べれば油脂会社などがまとめている各油脂の脂肪酸組成表が簡単に見つけることができますから、
(例えば▶こんなやつとか)
油脂の酸化安定性が気になった時は
それらを参考にして自分なりに判断出来ると便利ですね!(^o^)
以上、
ちょっと難しくなってしまったかもしれませんが、、
最後までお付き合い頂いてありがとうございます!(;^o^)ゞ
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