みなさん、こんにちは。
知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日も番外編です。
レギュラー編と番外編の違いがよく分からないとのご意見もいただくのですが、比較的大きなテーマがレギュラー編、どちらかといえば小さなテーマが番外編としていますが、医療者が書きたいこと・伝えたいことと、皆様が分からないこと・知りたいことは必ずしも同じではないので、特に番外編ではできるだけ後者の視点で書いていこうと思っております。
さて今日のテーマは子宮内膜です。
子宮内膜は奥が深い。生殖医療で子宮と卵巣のエコーをする時に、医師により色々なやり方好みもあると思いますが、私は子宮と卵巣を見るときは子宮内膜から測定するようにしています。
①子宮内膜のパターンについて
(1)子宮内膜の厚み
子宮内膜が薄い場合は卵胞が育っていない可能性が高いです。
(ただし卵胞は育っているが月経直後場合は、薄くなるので断言はできません)
(2)子宮の色彩
筆者のオリジナル画像にて失礼いたします。
上のように子宮内膜が黒味が強く、真ん中に白い一本線が入っているものを、leaf pattern(正式な日本語訳はないが直訳すれば葉のパターン)と言い、排卵前あるいは排卵直後であることを意味します。内膜が厚く、leaf patternであるならば、卵胞が存在する可能性が高いので、すぐには卵胞が見つからななかったとしても、より一層真剣に探すことになります。しかし、内膜が厚く、leaf patternであるにもかかわらず、いくら探しても卵胞がない場合もあります。その場合は、排卵直後の可能性を考慮することになります。
下のように子宮内膜が白味がかってくる(H pattern; homogeneous pattern)と、排卵から数日たっている(子宮内膜が黄体ホルモンにより変化している)可能性を意味します。
つまり、子宮内膜を見れば、確実ではないにせよ、卵胞発育がありそうかどうか、あるいは排卵前なのか排卵後数日以上たっていそうなのかをある程度推定することができ、卵胞を探す時の準備になるのです。
②子宮内膜の測定は難しい
子宮内膜が上記のような状態なら、子宮内膜は黄色の矢印の部分をはかります。これは子宮がまっすぐで、超音波検査の2次元の1断面において根本から奥まできれいに出せた上、奥からだんだん太くなっていくようであれば、容易に測定できます。
しかし、実際には、
このように若干凹凸していることが少なからずあり、これ自体、即異常というわけではないのですが、測定者からすれば、どこを測定するのがよいのか迷うことが多いです。私はよく子宮内膜測定をオクラの太さを測定することに例えます。オクラは太い部分と細い部分とあるし、途中へこんでいたり、あるいは太さを測定するには包丁でカットしないと測定できませんが、カットの際にちょっと斜めになったりすれば簡単に太さも変わってしまいます。
もちろん、採卵周期中は、全凍結前提であれば、一応測定はするものの子宮内膜はあまり重要ではありませんし、内膜が見るからに薄い場合や、逆に明らかにちょうどいいくらいの場合(10~15mmの間)にあるような場合、例えばそれが11mmなのか12mmなのかということは、(ご本人からすれば重要ではあると思いますが)医学的に問題とはなりません。
しかし、これから移植しようという場合、7mmを基準とする場合は6.8mmなのか7.2mmなのか、あるいは8mmを合格とする場合は7.9mmなのか8.1mmなのかということは、治療方針を決める上で重要になってきますので、迷いなく〇mmなんだと明確な測定状況の場合はよいのですが、迷うような場合は、何度か測定することもあります。
また子宮内膜が途中でS字カーブしていたり、立体的になっていて、二次元の1画面に全てが乗らず、色々な断面で判断する必要があったり、中隔子宮や双角子宮の場合などは測定の難易度が上昇しますので、測定に時間がかかることもあります。
何気なく測定しているように見える子宮内膜ですが、私たちはこんなことを考え、判断しながら測定して診断の一助としているのです。考えようによっては、卵胞計測よりも奥が深いともいえるかもしれません。
ということで今日は子宮内膜のお話しでした。次回もどうぞお楽しみに!
レギュラー編
☆体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)は、どちらが確率が高いか(15)
番外編
☆ホルモン補充周期と自然周期の凍結胚移植はどちらが妊娠率が高いか
結局、ホルモン補充周期と自然周期の凍結胚移植はどちらを選んだらよいのか
ヘパリン治療について(リブログ)
☆カウフマン療法(リブログ)