高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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79.「会えない親の夢を見た朝」に思うこと

 

――はじめに
会えない親が夢に現れた朝は、目覚めた瞬間の空気がいつもと違います。

 

胸の奥に温かさと痛みが同居し、現実へ戻る階段を一段ずつ降りていくような感覚。

涙が出る人もいれば、妙に静かになって台所へ向かう人もいるでしょう。

 

専門家としてお伝えしたいのは、そんな朝に起きる“揺れ”は、とても自然で健康的な反応だということです。

 

夢は嘘ではなく、あなたの心が関係を「いまここ」に運び直すための働きでもあります。

 

 


夢がしてくれる仕事

 

睡眠中、脳は記憶の整理と感情の縫い直しをしています。

会いに行けない時間が長いほど、心には使い切れなかった“呼びかけ”がたまります。

 

夢はその呼びかけを仮置きする場所で、「言いそびれた一言」や「もう一度聞きたい相槌」を舞台に乗せ直してくれます。

 

目覚めたときに残るのは、物語ではなく温度。だから、朝の胸のきゅっとした感じを、否定しなくて大丈夫です。

むしろ「必要な作業が夜に進んだ」と受け止めてみてください。

 


エピソード①:朝の味噌汁が少し甘くなる(真理子さん・仮名)

 

真理子さんは、施設にいる母にしばらく会えていません。

ある朝、夢の中で母が台所に立ち、「砂糖は入れないよ」と笑っていました。

目が覚めると、涙が止まりません。仕事に行く準備は迫るのに、心は夢の台所に取り残されたまま。
 

彼女はその朝、味噌汁をいつもより丁寧に作ってみました。

だしの香りが立つのを待ち、味噌を溶かす手をゆっくり動かす。椀を口に運ぶと、ほんの少し甘く感じられて、ふっと肩の力が抜けました。

 

出勤前、スマホに一行だけ残します。「お母さん、今日の味噌汁はあなたの匂い。」
彼女は言います。「夢は現実逃避じゃない。今日を生きるための“予熱”だった。」その一行の記録が、日中の自責を静めてくれました。

 

 


エピソード②:改札の向こうから手を振る父(啓太さん・仮名)

 

啓太さんの父は数年前に亡くなりました。

 

命日が近づくと、不思議と同じ夢を見るといいます。駅の改札の向こう側で、父が無言で手を振っている夢。

目覚めると、胸が空洞になったように感じ、ベッドから起き上がるのがつらい。


彼はある年から、夢を見た朝だけ“改札の儀式”を始めました。

 

最寄り駅の自販機で父が好きだった缶コーヒーを買い、改札を眺めながら「今日も行ってきます」とつぶやく。

そして、缶をポケットに入れたまま仕事へ出る。

帰宅してから、缶を捨てる前に一口だけ飲むのが決まりです。


「改札の外と中を一日で往復すると、父と今を共有した気持ちになる。夢は、今日の歩幅を合わせる招待状だったのかもしれない。」彼のSNSには、その日だけ短い記録が残ります。

「改札、片手をあげる人。行ってきます。」

 


夢の内容より、“残った感触”を大事にする

 

朝、思い出そうとしても、夢の筋書きはたいてい崩れます。

追いかけるほど遠のくのが夢の性(さが)。

 

ここで役に立つのは、内容ではなく“身体に残った感触”に名前をつけることです。

胸のあたりのあたたかさ、喉のつかえ、指先のじんとした感じ、匂いの記憶。

 

言葉にすると、たった一行でも心は落ち着きます。
「手の甲のしわまで、はっきりした。」
「味噌とラジオ体操の音が混ざる匂い。」
「呼ばれた気がして振り向いた首の軽さ。」
 

それは誰にも見せなくていい、あなたの朝のしるしです。

しるしがある日は、たぶん無理をしないほうがいい。

 

仕事に行くとしても、ひと呼吸を多めに、食事を少しだけ丁寧に。心が夜の作業を終えたあとだからです。

 


発信者としての置き方——誰かを傷つけず、届く言葉に

 

SNSに書くなら、誰かの行動をなじるためではなく、あなたの内側で起きたことを静かに置くのがおすすめです。

詳細を語らなくても、温度は伝わります。
 

「会えない親の夢を見た朝。パンを焼く匂いの中で、ひとくち分をあなたによけた。」
「今日は少しだけ笑える。夢のなかで、あなたが『やれやれ』って眉を上げたから。」
 

反応が少なくても構いません。投稿は世界への通知であると同時に、自分自身へ渡す“今日の合図”です。

公開が怖い日は、非公開メモや紙のノートで十分。

 

大切なのは、あなたが名づける側にいることです。

 


夢の朝の過ごし方——小さな儀式をひとつだけ

 

行為は心の器をつくります。

ろうそくを灯す、湯のみを温める、窓を一枚拭く、散歩で同じ角を曲がる。

どれも一分でできる“ゆるい儀式”です。

 

儀式は「ここで会える」という場所感覚を育て、墓所や面会の可否に左右されない“現在形のつながり”を支えます。
 

そして、夜になったら朝の自分に短い返事を書いてみてください。

「朝の私へ。今日、ちゃんと働いたよ。缶コーヒーは少し甘かった。明日の私へ。湯のみをもう一度温めよう。」
 

朝と夜が手紙を交換するようになると、夢は「現実の邪魔」ではなく、「現実をやさしく押す手」に変わります。

 

 


境界線と配慮——対立を増やさない工夫

 

家族内に緊張がある場合、夢の朝の感傷を、そのまま要求や非難の言葉に変換すると、関係が硬くなります。

発信や連絡では、主語を自分に戻し、現在形で短く。

 

「今日は夢を見て胸がいっぱい。落ち着いたら近況を三行だけ教えてください。」

 

目的は相手を動かすことではなく、往復を温め直すこと。

この視点があると、言葉は自然と柔らかくなります。

 


おわりに

 

「会えない親の夢を見た朝」は、あなたの弱さの証ではありません。

関係が今も生きている証です。

 

夢は、あなたの内側に残っている呼びかけを、そっと仮置きし、今日という現実へ戻す橋をかけてくれます。
もしよかったら、今朝の感触を一行だけ、心の中に置いてください。


「湯気の向こうに、あなたの横顔。」
それで十分です。

その一行が、あなたの一日を少しだけやわらかくし、次に会える日の光を忘れないでいさせてくれるはずです。

 

 

 

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