高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
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(期間: 2025/8/21~2025/9/19 ー 30日間)
76. 「もうすぐ命日、でも墓の場所も知らない」
――はじめに
命日が近づくと、心は自然と「手を合わせられる場所」を探します。
ところが、親族の事情や連絡の断絶、改葬や散骨などの理由で、墓の場所さえ分からないことがある。
カレンダーのその日に向けて胸が締めつけられるのは、愛情が本物だからです。
専門家としてお伝えしたいのは、「場所がない」ことは「悼めない」ことを意味しないという事実。
形のない喪失に、形のある手当てを与える方法は必ずあります。
「場所の喪失」は、関係の喪失ではない
弔いには二つの柱があります。
ひとつは物理的な場所(墓や仏壇)。もうひとつは関係の継続を実感できる行為(語りかけ、手紙、習慣)。
前者が失われると、後者まで奪われたように感じますが、実は逆です。
場所が見つからないときこそ、行為のほうが力を発揮します。
匂い、音、温度、日々の所作は、あなたと故人の間に今も流れている“現在形のつながり”を確かめさせてくれます。
エピソード①:台所の小さな祭壇(ゆかりさん・仮名)
ゆかりさんは、父の葬儀後に親族と連絡が途絶え、墓の所在が分からないまま初めての命日を迎えました。
花屋に向かう足も止まり、SNSの画面を開いては閉じる日々。
ある晩、彼女は台所の隅に父が好んだ湯のみと梅干しを置き、白い小皿の上にろうそくを立てました。
火を灯し、父の口癖をひとつ口にしてから、スマホに短い文章を残します。
「今日の味噌汁は少ししょっぱかったよ。あなたの味には、まだ追いつけないね。」
写真は載せませんでした。それでも、台所に漂う湯気と小さな炎が、彼女にとっての“墓参り”になったのです。
翌朝、湯のみを洗いながらゆかりさんは気づきます。
場所が分かる日がいつか来るとしても、私が父と会える場所は、すでにここにある、と。
エピソード②:歩く墓参り(雅人さん・仮名)
海外在住の雅人さんは、母の散骨先を知らされていません。
命日が近づくたび、飛行機に乗っても何もできない感覚に襲われました。
そこで彼は“歩く墓参り”を考えます。命日の一週間前から、母とよく歩いた川沿いの距離と同じだけ毎日歩く。
歩き終えたら、母の口真似で一言つぶやき、スマホにメモしておく。
「早歩きすると、すぐ靴擦れするよ」——そんな他愛のない一言を、彼はSNSにそのまま文字で置きました。
反応は派手ではありません。けれど、知らない誰かの「いいね」が小さな確認印となり、彼の罪悪感をほどいていきました。
雅人さんは言います。「母の居場所は分からない。でも、母と歩く“今”は作れるんだと分かった。」
命日までの数日を、丁寧にたたむ
墓の場所が分からない現実を前に、心は“探すか、諦めるか”の二択に追い込まれがちです。
その間にもう一つ、静かな選択肢を置いてください。
命日までの短い期間を、ゆっくり折りたたむことです。
部屋の一角をととのえ、湯のみやハンカチ、古い鍵束のような「その人の気配」を集める。
夜になったら、一行だけ声に出して言葉を残す。
「今日はあなたの好きだった曲を流したよ」「茶葉を多めにしてみたよ」。
行為が続くと、不在の荒野に道が描かれます。
SNSに書くなら、誰かを責める話ではなく、あなたの“内側で起きたこと”を主語にしてください。
たとえば、「墓の場所を知らない私は、長い間、喪失の入口に立ち尽くしていた。今夜は台所で手を合わせることにする。」
実名や詳細を伏せた現在形の告白は、読む人に安全な距離を与え、同じ痛みを抱える誰かの避難所になります。
「届かない祈り」など、ひとつもない
人は、祈りが届くには正しい宛先が必要だと考えがちです。
けれど、弔いの本質は、あなたの中にある“関係の輪郭を確かめ直す”こと。
置く先は、空であっても、湯気であっても、あなたの胸の内であっても良いのです。
言葉は宛先を自分で選べるときに、もっとも静かに深く届きます。
そのために役立つのが、時間を決めること。命日の当日だけが本番ではありません。
同じ時刻に同じ所作を繰り返すと、身体が「会える時間」を覚えます。
朝の光で窓を拭き、昼に白湯を一杯、夜に短い呼びかけ。
あなたが整えるこの“リズム”が、場所の不在に対するやさしい対抗策になります。
境界線と配慮——対立を増やさず、敬意を保つ
発信がきっかけで、家族間の緊張が高まることがあります。
その心配があるなら、公開範囲を狭める、写真ではなく言葉を選ぶ、関係者の特定につながる情報は避ける——こうした判断は、自分を守るだけでなく、故人への敬意を守ることでもあります。
「私はこう悼む」を静かに宣言するとき、相手を変えようとする衝動は手放せます。
変えたいのは人ではなく、つながりの温度。目的が明確になると、言葉は自然と柔らかくなります。
なお、墓所や法要の情報を後日知りうる余地があるなら、命日を越えた頃合いに、短く、感謝を添えて問い合わせを置くのが良いことがあります。
「命日を静かに過ごしました。落ち着いたときで構いません、墓所を教えていただけると嬉しいです。」結果がすぐに来なくても、あなたはあなたの歩幅で悼めばよいのです。
おわりに
「もうすぐ命日、でも墓の場所も知らない。」この事実は痛みを伴いますが、あなたが無力だという証拠にはなりません。
ろうそくの小さな火、台所の湯気、夜の静けさに置かれた一行の言葉——それらはすべて、確かな弔いです。
場所が見つかる日が来たら、きっとあなたは迷わず手を合わせられるでしょう。
なぜなら、あなたはすでに、ここで手を合わせているから。
もしよかったら、今この瞬間のあなたの一行を、心の中に置いてください。
「今日はここで、あなたを想います。匂いも、音も、温度も、ぜんぶ連れて。」
その一行が、命日までの道のりを、少しだけあたたかくしてくれますように。
自己紹介など
1. 自己紹介
https://www.ameba.jp/profile/general/release-advisor/
2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12919635429.html
3.出版済の電子書籍キンドルリストはこちら
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12920372756.html
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ブログのご紹介
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2. 高齢親の囲い込み 解放アドバイザー ~ 介護が必要になった高齢親が自分以外のきょうだいに囲い込まれて会えなくなった方へ~
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