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十月は二人三脚の消去法推理 私立霧舎学園ミステリ白書 著:霧舎巧【新刊購入】

十月は二人三脚の消去法推理 十月は二人三脚の消去法推理 
私立霧舎学園ミステリ白書


霧舎巧:著
講談社 ISBN:978-4-06-182536-9
2007年6月発行 定価882円(税込)








読書ペース(ブログ更新)も落ちてるのに、ブログテーマの105円読書から離れ、今回も新刊購入本。約2年ぶり(正確には1年9か月くらい?)の霧舎学園の新刊…このシリーズは、かならず新刊で買ってるので無理して買っちゃいました。

霧舎学園2年生の羽月琴葉と小日向棚彦は、開催の迫る体育祭の実行委員を任され大忙し。そんな時に、学園内の時計塔で不審火が!?これが10月の事件なのだろうか?

ライノベ風の語り口ながら、真髄は本格推理を忘れていない、霧舎巧のこのシリーズ…前回は、初期の“〈あかずの扉〉研究会”シリーズなどともリンクしており、そこそこの力作だったにも関わらず、長い間待たされて、やっと出た続きがこれですか?

メイントリックに行く前に、過去の事件やらキャラクターに頼りすぎてて、だんだん独立して物語を楽しめなくなってきている。何故、毎月事件が起きて、主人公たちが巻き込まれてしまうのか?確かに、それの答えを出すための構想が作者の中にあるんだろうけれども…推理小説として、単独で楽しめなくなってきたら、キャラもののライノベと同じになっちゃうよ。年齢的に、やっぱりこの内容を読むのがキツくなってるのかなぁ~?

あと、毎回…付録とかイラストなんかが、事件を解く鍵になっていたりするんだけど…事件解決に一役買う、琴葉の名刺(レプリカが付録として本の間に挟まってます)…本来は”霧舎学園”なのに、“霧舍学園”になってるんだよね。絶対に、これが事件の真相に関係してくるんだろうと思ったんだけど…どこにもそれが触れられていなかった。まさか、次回以降の作品への伏線をいまから用意してあるってことなのか?

なんか全体的に消化不良で、今回の事件そのものをひっくり返すような展開があるんじゃないかといった印象。あくまで、希望的観測だけど(笑)毎度ながら、作者にはペースアップをお願いしたい。完結にたどりつくのはいつのことやら…このまま、1年、2年にいっぺんだと…自分は40歳になっちゃうよ(笑)






個人的採点:60点






影絵の騎士 著:大沢在昌【新刊購入】

影絵の騎士 

大沢在昌:著 集英社 ISBN:978-4-08-774870-3
2007年6月発行 定価1,890円(税込)









久々の更新ですが、今回は105円の古本ではなく…珍しく新刊購入本の感想を(実はもう1冊、新刊で買ってるので連続で新刊本を読むつもり)。先月末に買っておいた大沢在昌センセの新刊です。

元探偵のヨヨギ・ケンは俗世間から離れて暮らしていたのだが、10年ぶりに再会した友人で作家のヨシオ・石丸の依頼で、探偵業に復帰。若い頃に自分が活躍していた…かつてB・D・Tと呼ばれスラム化が進行していた東京の街も、すっかり様変わりし、表面上は平和になっていたのだが…“ネットワーク”というTV機構が、あらゆる産業を牛耳るようになっていた。巷では犯罪番組を通じて、予告殺人を繰り返す“双子座キラー”が連日連夜話題になり、ひょんなことからケンも事件調査に関わることに。そして、事件の鍵は、日本版“ハリウッド”と呼ばれる、映画産業の中心地であるムービーアイランドにあるとわかり…ケンはアイランドへ乗り込んでいく!

中身も確かめずに在昌センセの本なんで買っちゃったんですけど…読み始めたら、なんと、近未来SFハードボイルドの傑作「B・D・T」の続編であることが発覚!?タイトルからでは全然、わかんない。傑作とかほめちぎってるくせに…「B・D・T」を読んだのは14年も前なんで(当時もハードカバーの新刊で読んだなぁ)、おぼろげにしか覚えておらず、機会があったら読みなおそうと思ったりしてみる。

で、話は独立してるので、前作の内容を覚えていなくてもほとんど問題なし。主人公も、10年ぶりに東京に出てきて、様変わりした社会に適応するところから物語が始まるので、微妙に設定を忘れているくらいがちょうど良かったりする。過去にどんなことがあったかというのも、触り程度だが主人公や作中キャラの口から語られたりするので、そういえば、そんな話だったなぁって思いだせるし。

舞台は近未来だけど、TV業界や映画産業といった、現代にも通じる、メディア批判を痛烈に感じる作品になってますね。あくまで近未来の映画事情としたうえで、著者の映画に対する現状の不満みたいなものを強く感じる部分があり、自分も映画が好きなので、うなずきながら読んでしまった。


なんか、佐久間公が大人になって戻ってきた「雪蛍」を思い出したなぁ。忘れた頃に、意外な作品の続編…個人的にはぜひ「六本木聖者伝説」の続編を書いて欲しいぞ、在昌センセ。






個人的採点:75点






凌辱の魔界 著:友成純一

凌辱の魔界

友成純一:著
幻冬舎 ISBN:4-87728-819-8
1999年12月発行 定価560円(税込)









久し振りの更新がコレ…友成純一のエログロスプラッターホラー「凌辱の魔界」。ひとつ前が「幸福のスイッチ・高校編」っていうのを見ると…いくら更新期間があいてしまったとはいえ、どういう趣味してるんだろうか、自分でも全くつかめないよね~。元々はマドンナ社から出たポルノ小説だったらしいのだが…幻冬舎のアウトロー文庫にて再版。しかし、この文庫版も絶版。

暴力組織を渡り歩き、獄中を出たり入ったりの人生を送ってきた鬼道の今の仕事は…極秘裏に人体実験を続けるT町研究所の用心棒であり、さらに生身の人間を調達・斡旋することも任されていた。ある日、鬼道が女衒の美鹿から買った、いろいろな意味で人間離れした、名もなき美少女を、研究所に連れて行くのだが…。

読んでいるだけで腐臭が漂ってきて、口の中が生臭く、ゲロくさく、なるんじゃないかと思ってしまう壮絶な描写が、延々と続く。冒頭こそ、普通にポルノなレイプシーンだったんだけど…その後は死体とファックして、モンスターのようになった実験体の人間とファックして、ファックしながら相手を殺してと…もうめちゃくちゃ。

巻末で評論家の大森望氏が、“勃起したペニスも第二章で萎える”と語っていたが…ポルノ小説を期待して購入した人には、7割、8割以上がグログロスプラッター…いやスプラッターを通り越した変態プレーの地獄絵図が繰り広げられるので、たまったもんじゃないでしょうねぇ。

公序良俗に反するエグイ描写を我慢すれば、女性器だとか陰毛が人間を襲ったりして、B級ホラーなテイストは案外、ばかばかしくて楽しいかも?古本で見つけた方は覚悟してお読みください。






個人的採点:70点






幸福のスイッチ・高校編 原案:安田真奈 著:石崎洋司

幸福のスイッチ・高校編

安田真奈:原案 石崎洋司:著
ジャイブ ISBN:4-86176-338-X
2006年9月発行 定価567円(税込)









上野樹理主演の同名タイトルの映画ノベライズ版…ただし内容は映画版の前日談にあたる、主人公の高校時代の話。映画はDVDで見たので、たぶん、映画と同じ内容だったら読まなかっただろうなぁ。

イラストレーター志望の稲田怜は高校入学と同時に美術部に入部。しかし、電気屋一筋、家族のことなんて顧みず、お客様第一主義の父親とはソリが合わず、喧嘩ばかり。唯一、自分の絵を認めてくれるのは優しい母だけだった。

映画でも回想シーンなんてで、ちょこっと出てきた主人公の高校時代を描く。映画版では、すでに母親が他界していたが…小説版では、主人公と厳格な父の間に立ち、防波堤となり…いつもニコニコと愛想をふりまく。映画を見ているので、母親の死は分かっていたが…その辺はあまり重くならずに、さらりと描く。

もちろん、映画の中で明かされるある秘密も伏線として出てきたが、その辺はオチがつけられないので、投げっぱなし。先に映画を見ていたからこそ納得できたが、そうじゃなかったら、ツッコミをいれたくなったかもしれない。

映画では描ききれなかった内容をじっくりと描くアナザーストーリーであっても、やはり映画の内容を補完するための、ノベライズを脱し切れていない感じ。決して、つまらなくはないのだが、やや物足りなさも感じる。






個人的採点:60点






中伊豆・黄金崎 紅葉狩の殺人 著:若桜木虔

中伊豆・黄金崎 紅葉狩の殺人

若桜木虔:著
有楽出版社 ISBN:4-408-60349-X
2005年12月発行 定価880円(税込)









萌えキャラってほどでもないけど、最近は、トラベルミステリーの類まで、ちょっと漫画・アニメっぽいイラストを使うようになってきましたよね~。名前だけは見かけたことがある中堅どころ(いや、けっこうなベテラン)の作家さん…いかにもトラベルミステリーっぽくて今まで、読む気にならなかったんだけど…表紙カバーの作者のコメントを偶然読んだら、ずいぶんと最近の他のミステリー(作家)を批判・挑発し、自分は本格派の推理小説を目指していると豪語していたので、とりあえず読んでみることにした。

伊豆の老舗旅館の美人女将・森桂子の運転する車が、黄金崎トンネルに差し掛かった時、首なし死体が降ってきて轢いてしまった…桂子は友人である、文字通り県警のアイドル、美人刑事村嶋なつみ刑事に電話で助けを求めた!なつみは早速、現場にかけつけたのだが…そこで首なし死体の正体が、10年前に起きた児童殺害事件の犯人であり、医療少年院を出たばかりの男でありことが判明。そこでさらなる事件が起きる…。犯人は、10年前の被害者の遺族ではないかと考えられるのだが、鉄壁のアリバイがあった!?はたして事件の真相は?

旅行のガイドブックみたいな情景描写が多かったり(実在の固有名詞に、実住所もいっぱい)、やたらと、自分の著作物を読ませようと…過去の事件を意味深に説明するあたりが、いかにもトラベルミステリー的ではあるんだけれども、確かに…衝撃的な事件、ミステリアスな謎、トリックや動機の解明といった、本格推理小説の醍醐味がしっかりと盛り込まれているあたりは関心。作者の強気の発言もうなずけるし…京太郎ファンには悪いが、西村京太郎なんかよりは面白く読めた。

ただやたらと2時間ドラマや、推理小説を引き合いに出したり、うんちくを語るのは…あまり関心しない。中には若手推理作家のミステリートリックを暴露してたり、ちょっとやりすぎでは?作者のコメントにあったような作品批判を本文の中でも辛辣に行っていたね~。

美人女将に、美人記者に、美人刑事と…出てくる女性がみんな美人で、それでみんな友達(なんか、過去のシリーズでいろいろと因縁があるみたいだけど、読んだことないからよくわからない)っていう…ご都合主義的なキャラ設定をもう少し工夫してほしいし、最後も…260ページも読ませておいて、短編作品みたいな、かなりサラっとした終局で味気なかった。もっと、事件を解決したぜ!とスッキリと爽快なラストを読みたかった。






個人的採点:60点






もっとも虚しい仕事 ブラッディースクランブル 著:戸梶圭太

もっとも虚しい仕事 
ブラッディースクランブル


戸梶圭太:著
光文社 ISBN:4-334-07634-3
2006年6月発行 定価840円(税込)








戸梶センセの作品の中では、意外とまともな話が多い、鉤崎シリーズ。「クールトラッシュ」「ビーストシェイク」に続くシリーズ3作目なんだけど…今回はかなりダーティ戸梶らしい、クレイジーな展開も。

売れない俳優・黒木が持ち込んだ仕事…それは人気俳優の萩本の自宅へ押し入り現金を強奪するというものだった。黒木の相棒、勝野の仲介で、仲間に加わることになった鉤崎だか…準備を進め、結構直前に黒木が仕事をドタキャンすると言い出した。鉤崎自身はあまり乗る気じゃなかったので話が流れてもかまわなかったのだが、トリくるった勝野が黒木にヤキを入れようと一人暴走。そこから歯車が狂い始め…数年前に鉤崎が関わった事件の不始末まで急浮上してしまう。

鉤崎のモデルは、映画好きの戸梶センセのことだから、絶対に「いつかギラギラする日」でショーケンが演じた神崎だと思っているのだが…いきなり売れっ子俳優という“萩本健勝”(“けんしょう”という名前を逆にする“しょうけん”になるね!)なる人物が出てきちゃいましたので、笑いました。

悪党同士の仲間割れというのは、今までもこのシリーズで描かれてきたけど、戸梶センセイ風に表現すると、今回はかなり“安すぎる”展開だったかなぁと…。鉤崎の仕事に対するクールさ、非情さは相変わらずなんだけど、タイトルの“虚しい仕事”という言葉通りで、トラブルの処理ばかり、珍しく儲けにならないことばっかりやってる。やることすべてが裏目に出ちゃうみたいな展開。

犯罪のスリルというのが少なく、安い人間同士の醜い争いの方が目立ってしまい、後半からオチへの展開なんて確信犯的にテロを行ってますよ(笑)鉤崎シリーズもついに、ここまで暴走することになったかと、かなりメチャクチャ。安い人間同士のドタバタ追いかけっこが次々に連鎖していってというお約束な展開は、戸梶らしいといえば、戸梶らしいのだが、前二作のように戸梶初心者にはお薦めしにくいかなと。






個人的採点:65点






ときむすび 著:築地俊彦

ときむすび

築地俊彦:著
エンターブレイン ISBN:4-7577-2934-0
2006年10月発行 定価630円(税込)









ファミ通文庫…知らない作者だったけど、イラストが気に入り購入。やっぱ、ライノベってイラストが気に入るか、気に入らないかがけっこう重要だよね。

高校生の千波タクトは、クラスメイトで幼馴染の秋条真衣亜が好意を寄せているのに、気づきながらも、真衣亜の姉で、全くタイプの違う、才色兼備の果璃絵に恋心を抱いていた。中学時代からの親友や、新しく来た転校生と楽しく高校生活を続けていた二人だったが…ある時、果璃絵の様子がおかしいことに気づく。気になった2人は、その原因を突き止めようとするのだが…。

高校生の日常を描きつつ、徐々にミステリー&ファンタジーへと展開していく…。おねーちゃんの秘密とはいったい何なんだろうか?途中で、けっこうドロドロした展開を期待させ…なんだよ、さわやかな高校生の話なのに、安っぽい2時間ドラマみたいになってきたぞと思わせておいて…ラストはファンタジーで急展開。そういえば、冒頭の序章はかなり意味深な感じだった。

活発な幼馴染がいて、ちょっと大人っぽいおねーさんタイプの女の子に憧れてて、さらにやってきた転校生も、実は知り合いで、ずっと好意を寄せてましたなんて…妄想好きの男が好きそうなハーレム設定(笑)がいっぱい。ただ、最後はちょっぴりせつない系の話だったね。高校生のカップルが、くっつく、くっつかないみたいな、単純なハッピエンドラブコメじゃないところは、良かったかなって思う。






個人的採点:60点






青鳥 チンニャオ 著:ヒキタクニオ

青鳥 チンニャオ

ヒキタクニオ:著
光文社 ISBN:4-334-74072-3
2006年6月発行 定価560円(税込)









いろいろな人種の人たちが働く、日本の外資系企業で、トラブルに遭遇する台湾人キャリアウーマンの姿をユーモアを交えて描く、ヒキタクニオの「青鳥 チンニャオ」を読み終わった。

台湾に里帰りしていた小葳(シャオウェイ)は、日本に戻ってきた直後に…勤め先の外資系企業で会社の理不尽さや、人種の壁に直面。そんなときにEトレードのCD-ROM製作に携わることになったのだが、こちらでもトラブルが続発。仕方なしに上司に泣きつくと、トラブルを円滑に解決するため、統括部制作庶務課の藤原統括部長と田主丸が助っ人にやってきたのだが…。

小説の方は読んでないんだけど、映画で見た「鳶がクルりと」で描いていた、昔堅気の職人の中に飛び込むやり手のキャリアウーマンの話を、インターナショナルにした感じの話でしたね。それぞれの文化の違いを乗り越え、自分の主張を通しながらも…それと同時に譲り合う、歩み寄る精神も必要不可欠だというのを実感させられる内容。小葳や他の外国人の視点に立つと、普段、見過ごしているような、日本人特有のダメさも凄く理解できます。

セクハラ、差別発言などを露骨に描いているのに、語り口がさわやかなのはけっこう意外に感じる。藤原統括部長ほか、脇役の在日外人たちの奇抜さがとにかく可笑しい。






個人的採点:65点







妖霧の舌 著:竹本健治

妖霧の舌 妖霧の舌

竹本健治:著
光文社 ISBN:4-334-72183-4
1996年2月発行 定価469円(税込)










竹本健治の牧場智久シリーズ…オタク&幼女連続殺人事件という、M君事件を彷彿とさせる題材。1992年に初版発刊後、96年に文庫化…現在は絶版のようですが、Amazonのマケプレなら1円から購入可。古本屋で探すべし。

パソコン売り場のモニターに「悪魔の警告」が!その怪文章を見た、12歳になる小学生の少女が何者かに殺された!天才囲碁棋士・牧場智久のガールフレンド、武藤類子は、事件前にその少女を目撃していたのだ。さらに、類子が応援にかけつけた牧場の対局で、対戦相手の桃井四段が失踪…。コンピューターやアニメなどに詳しい、オタクな桃井が犯人ではないかと、類子は考えるのだが…。

舞台はまだインターネットって言葉がそんなに浸透していない頃の話だね…パソコン通信だとか、フォーラムって響きが懐かしい。コンピュータに関する描写は、ちと懐かしかったりするものの、ネットコミニケーションの基本は、そんなにズレはないかなと。ただ、今と違って、まだまだネットに対して、無防備な感じがするんだけど…その辺も作品に影響しているなぁと。

ヤオイ本とか…オタクを茶化しているあたり、おもろい。きっと、美少年天才棋士という設定の、牧場智久も、同人誌などでネタにされているんだろうなぁ。そういうのを、原作者が面白がって作品に取り込んでいるというシュチエーションが楽しい。

猟奇的な事件に、都会に発生した濃霧という設定が、なかなか幻想的に作品を盛り上げる。フェアな伏線で、意外な犯人像と、本格推理としての面白さが味わえるのはさすが!






個人的採点:65点






そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎ノート 著:はやみねかおる

そして五人がいなくなる 
名探偵夢水清志郎ノート

はやみねかおる:著
講談社 ISBN:4-06-275433-9
2006年7月発行 定価560円(税込)








青い鳥文庫の児童向けミステリーとして人気のはやみねかおるの名探偵夢水清志郎シリーズに初挑戦。さすがに、青い鳥文庫に手を出すのは気が引けたんだけど、通常の講談社文庫で再版してくれると、大人でも手に取りやすい。なんかライトノベル感覚で買えますよね。はやみねかおるは、講談社ノベルスで出ている虹北恭介シリーズと、「僕と先輩のマジカル・ライフ」を読んだことはある。初出は1994年…巻末には宮部みゆき、田中芳樹といった有名作家の応援メッセージが多数収録されているのが良い。

家の隣の洋館に、引っ越して来た…名探偵の夢水清志郎。年齢不詳、常識ゼロのこの自称名探偵と家族くるみで付き合うようになった、亜衣・真衣・美衣の岩崎三姉妹。夏休みのある日、清志郎を誘って出かけた遊園地オムラ・アミューズメント・パークで、衆人環視の中、伯爵と名乗る怪人が、まんまと女の子を誘拐してしまった!さらに伯爵からの予告通り、連続誘拐事件へ発展。警察の捜査が行き詰まってしまったにも関わらず、清志郎はすでに謎はわかったと、調査を途中でほっぽり投げてしまう…。

てっきりお子様向けと思いきや、虹北恭介以上に本格推理小説していて、こっちの方が大人が読んでも面白いや。ミステリをはじめ、エンターティメントなウンチクも適度に盛り込まれ(お子さんには、巻末の小ネタ解説は必要かもしれないけど、大人だったらなくても大丈夫だしね)意外とドキドキする。

普段、ひねくれた推理小説を読んでいる人たちには、確かに物足りない部分もあるが、フェアな伏線がいっぱいで、推理する楽しさっていうのが味わえる。

子供向けだから、簡単なトリックで手抜きをしたっていいわけではなく…子供向けだからこそ、しっかりとしたロジックを組まないと、インチキをすぐに見破られてしまう。有名推理作家の大御所たちが、推薦コメントを書いているのも、大袈裟ではないなぁとあらためて実感させられます。

他のシリーズも、今後は講談社文庫で再版されるのかな?そういうのを105円で見つけたら、率先して読んでみようと思った。






個人的採点:65点