もっとも虚しい仕事 ブラッディースクランブル 著:戸梶圭太
- もっとも虚しい仕事
ブラッディースクランブル
戸梶圭太:著
光文社 ISBN:4-334-07634-3
2006年6月発行 定価840円(税込)
戸梶センセの作品の中では、意外とまともな話が多い、鉤崎シリーズ。「クールトラッシュ」「ビーストシェイク」に続くシリーズ3作目なんだけど…今回はかなりダーティ戸梶らしい、クレイジーな展開も。
売れない俳優・黒木が持ち込んだ仕事…それは人気俳優の萩本の自宅へ押し入り現金を強奪するというものだった。黒木の相棒、勝野の仲介で、仲間に加わることになった鉤崎だか…準備を進め、結構直前に黒木が仕事をドタキャンすると言い出した。鉤崎自身はあまり乗る気じゃなかったので話が流れてもかまわなかったのだが、トリくるった勝野が黒木にヤキを入れようと一人暴走。そこから歯車が狂い始め…数年前に鉤崎が関わった事件の不始末まで急浮上してしまう。
鉤崎のモデルは、映画好きの戸梶センセのことだから、絶対に「いつかギラギラする日」でショーケンが演じた神崎だと思っているのだが…いきなり売れっ子俳優という“萩本健勝”(“けんしょう”という名前を逆にする“しょうけん”になるね!)なる人物が出てきちゃいましたので、笑いました。
悪党同士の仲間割れというのは、今までもこのシリーズで描かれてきたけど、戸梶センセイ風に表現すると、今回はかなり“安すぎる”展開だったかなぁと…。鉤崎の仕事に対するクールさ、非情さは相変わらずなんだけど、タイトルの“虚しい仕事”という言葉通りで、トラブルの処理ばかり、珍しく儲けにならないことばっかりやってる。やることすべてが裏目に出ちゃうみたいな展開。
犯罪のスリルというのが少なく、安い人間同士の醜い争いの方が目立ってしまい、後半からオチへの展開なんて確信犯的にテロを行ってますよ(笑)鉤崎シリーズもついに、ここまで暴走することになったかと、かなりメチャクチャ。安い人間同士のドタバタ追いかけっこが次々に連鎖していってというお約束な展開は、戸梶らしいといえば、戸梶らしいのだが、前二作のように戸梶初心者にはお薦めしにくいかなと。
個人的採点:65点