2016年6月11日、「HTK2016、久々OFFもあるよツアー(仮)」初日。この日のネタで記事にしているのは、江野隧道、須井トンネル、相谷トンネル、境隧道、向山橋、田河内隧道、まぢトンネル、本谷隧道、見返橋。
今宵ご紹介するのは、時系列では相谷トンネルに続いてやってきた、この日のメインターゲットのひとつ。印象深い、ある「イベント発生」が懐かしいネタである。
まずはこれ。
香美町香住区、兵庫県道11号香美久美浜線のトンネル前。現在地こちら。
この写真を撮りながら、右手の方からの「ガサガサ…バキバキバキ…」というただならぬ音を聞いていた。何も知らなければ「く、熊!?」とでもなるとこだが、なぜかニヤニヤが止まらないわたくし(笑)。
その理由はすぐに説明するが、まずはこのトンネルだ。
お名前は…
見にくいな。「柴山トンネル」である。
対照的に、やたら見やすい銘板によれば、
昭和47年竣功、延長245mのトンネルである。
で、そこから100mほど引いて見たのがこの写真なのだが、
ノートさんの前に、見慣れた車が一台。ここに到着した時にこれを見た瞬間、もう笑ってた(笑)。この場所もあいまって、まず間違いない。
このアウトバック、
何度もご一緒させていただいている我が穴の師匠、「くるまみち」管理人・よととさんの愛機に間違いない。
実は翌日の音水林鉄探索OFF(まったく記事にしてない…)に先立って、この日の夕方には宍粟市の道の駅で集合することになっていた。なので、その前にあちこち徘徊するのは同好の士であれば当然なんだが、こうもうまいこと行き先被るかね?(笑)
相変わらずガサガサバキバキと大きな音がしている。勝手知ったるこの音。その方向へと向かう。
これは草やら枝やらを「お掃除」している時の、おなじみの音だ。
「お掃除」のイメージ的には、この記事にちょろっと紹介してるような感じだ。要はちゃんと記録するために、邪魔になる枝や植生を「整える」わけで、これは絶賛作業中ってことね。
この頃、よととさんは色んな物件に再訪しての撮影し直しをされていた。ここもその一環だったと思われる。
ほどなくして、「物件」は見えてきた。
が、よととさん、音はすれども姿は見えず。今日も今日とてポータルに登っての作業中っすな。その前に、なんだか気になるものがあったんだが…(写真中央下)。
その変な筒みたいなのには、
手書きで「スイガラ入」と書かれていた。なんじゃこれ。
さて、物件に接近。ガサガサ、バキバキ!
やっぱりポータル上におられたよととさん、降りてこられてしばし談笑(写真なし)。
わたくしが現れても案外驚かないな~と思ったら、この日早朝、江野隧道探索中に国道沿いのスペースに停めていたわたくしのノートさんを目にしておられたそうで、あーなるほどね。一定の方角を与えられれば、変態の行動ってシンクロするもんなんだな~と不思議な感動を覚えたものだった(笑)。
それにしても、いいタイミングで来たものだ。ちょうどお掃除をしてくださった直後とは。おかげさまで、
「物件」=旧柴山隧道の装飾的美麗ポータルが白日のもとに!
どうでしょう、
コダワリの要石と、扁額まわりのモダンな意匠ときたら!
めっちゃ判読しやすい扁額には、
右書きで「昭和六年三月竣工」と。
スパンドレル向かって左側には、
「請負人 神崎郡 黒田寅蔵」。
ちょっと調べてみたところでは、この黒田氏、大正~昭和にかけて、兵庫県でいくつかの土木工事にその名を見つけられる人物のようだ。ここ以外だと、1922(大正11)年竣工の旧上久下村営上滝発電所土木工事や、神河町(まさに神崎郡!)の大歳神社にある昭和2年再築の石橋親柱や石階段にも、施主としてその名が刻まれていたりするらしい。いわば地元のスペシャリストという感じだったのかな。
実際はもっと色々な仕事を遺しているのだろうが、
この隧道は、けっこう大きな仕事だったんではないだろうか?
それにしても、このポータルデザインまでも黒田氏によるものなのだとしたら、そのセンスに脱帽である。個人的に、コンクリート隧道のポータルとしては五本の指に入るくらい好きかも。
ちなみにこの隧道、土木学会の近代土木遺産…からは完全スルーされている。たぶん今も。
さて、それでは、
お邪魔しようかな。
【後篇】に続く。