今日は勤務している小学校で、教員研修の講師をさせていただきました。
いろいろ迷った末、お題は「学校で使えるBASIC-Ph」についてでした
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BASIC-Phは、イスラエルでのテロにあった子どもたちのケアのために作られたトラウマケア理論。
何かその子にピッタリの行動や表現をすることでストレスから回復することが出来るという考え方です。
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子どもたちはそれぞれのパーソナリティーにあった表現をすることが必要との考え方から、6つのチャンネルを想定しました。
なぜBASIC-Phという名前がついているかというと、英語でBeriefeは信念を表す言葉、AはAffection 感情、SはSocial 社会 I imagination 想像 C cognition 認知 Ph physical 身体 の頭文字をとったものです。
子どもに限らず大人でも、その人に特有な表現のチャンネルがあると考えられます。
Belief
信念のチャンネルが強い人は、神社仏閣に行くと落ち着く、男はこうあるべき、母とはこうあるべきと言うような信念がある、お守りにしているものがある、毎晩お祈りをしているというように、ある一つの考え方やルール、象徴的なイメージに自分を委ねることで気持ちが守られエンパワメントされる特徴を持っている。
一見、硬い印象や融通の利かなさを感じることもあるが、その人の大事にしているポイントさえ理解し、配慮することが出来れば、その他の面では驚くほど柔軟に行動出来るようになることがある。
Affection
感情のチャンネルが強い人は、大泣きすると気持ちがスッキリする、怒っても引きずらない、心の中のモヤモヤは出来るだけ早く解消したい、といったように、不安や葛藤を保持して納得するまで考えることよりも、とにかく感情表現で素早く解消することを優先させる。感情さえ十分に表出し、あるていど受け止められたと感じれば、気持ちを切り替えるのが早く後に引きずらない。
Social
社会のチャンネルが強い人は、一人でいると寂しい、落ち込むと人に会いたくなる、基本的に人と会うのが好き、多くのコミュニティーに属しているといったように、孤独への耐性が低く、対人関係の中で自分の価値を見いだすため自己評価を他者に依存しやすい。他者との関係を持つことで癒されていく。また社会的な外向性が高く、新しい刺激や対人関係を求める傾向がある。
Imagination
想像のチャンネルが強い人は、一人でいる時間が一番落ち着く、小説やマンガなどの物語の世界に浸れる、気がつくとボーットしていることがある、といったように、自分自身のイメージの世界に浸ることで回復することが出来る。孤独を好んでいる訳ではなく、な他の人と一緒にいる場合でも、自分の世界に入り込んでいくことができるので、ある意味では二つの世界を自由に行き来出来る才能を持っていると言い換えてもいいのかもしれない。
Cognition
認知のチャンネルが強い人は、落ち込むとうだうだ考える、失敗したらやたらと原因を探してしまう、細かいことがいちいち気になる、理屈で考えるのが好きといった特徴を持っている。物事の筋道や細かい記述にこだわることがある。ストレスを自分の中でかかえる力が強く、自分の中である程度言葉にできるまで外に出さないでいることが多い。
年齢が上がるにつれてその力は強まり、ストレスや現実への対応力も高くなる。
Physical
身体のチャンネルが強い人は、やなことがあっても一晩寝るとスッキリ、身体を動かすとやな気持ちが晴れる、ご飯を食べると元気になるといったように、身体を使った活動や、身体的に回復で、ストレスを解消、気持ちを回復することが出来る。
◯行動を観察、聞き取りをすることでチャンネルを見分ける
何かを表現したり説明したりするときの行動を観察することでも、その人がどんなチャンネルを使っているかを見分けることが出来る。
何かを説明する時に、つい身振り手振りを大きく加えてしまうならば身体のチャンネル優位と言えるかもしれない。
「◯◯であるべき」といったべき思考、ルールや信念について言及することが多ければ信念のチャンネル優位。
「腹が立った」「嬉しかった」「悲しかった」と、感情に焦点を当てた会話の仕方を表情豊かにしている場合は感情のチャンネル優位。
「誰々と会った」「AさんとBさんは仲が悪い」など、人間関係や集団に焦点を当てる話し方をするならば社会のチャンネル優位。
なんとなくぼんやりとした、具体的でない想像やイメージの話をよくするならば想像のチャンネル優位。
時間や順序や場所の正確さにこだわり、具体的で詳細な説明の仕方をするならば認知のチャンネル優位。
というように、優位なチャンネルを見分けていくことも可能である。
またカウンセリングやコンサルテーションの中で、間接的に聞き取った情報をもとに、チャンネルに関する見立てをすることもある。
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チャンネルがズレたままでやりとりをしているとうまくコミュニケーションが取れず、例えば想像のチャンネルが優位の子が、回復のために一人で本を読んだりしてゆっくりしているのに対して、社会のチャンネル優位な大人が「外に出ていろんな人にあったほうがいいよ」と連れ出してもエネルギーを消耗するだけだったり。
感情のチャンネル優位な保護者が相談に来ているのに、認知のチャンネル優位な聞き手が理論的に順序立てて話を分析したり、原因を究明しても満足してもらえず。
逆に認知のチャンネル優位な保護者の感情に焦点を当てて聞いてもいまいちだったり。
こういったチャンネル違いの善意での関わりが子どものエネルギーを消耗させたり、関係性を悪くしてしまうこともあります。
なので、相手のチャンネルを見極めて、相手にあったケアや関わりをしましょう、という話でした。
今までは講演会や相談会、学校保健委員会などで保護者向けに話していて、とても手応えを感じていたのですが、今回は学校の先生方に対して初めてやってみて、保護者以上の手応えを感じました。
質疑も今抱えている子どもや去年まで関わっていた子どもへの実際的な活用についてのものが多く、また保護者対応についても話は及び、終わったあとも職員室で延々チャンネルの話をしている先生方もいて、また今まで話したことがなかった職員の方から熱心に質問をされたり、僕今日から関わり方変えますわ!と宣言されたり。
多分、先生方の心の中に、今まで関わりに失敗した子どもや保護者の顔が浮かんできて「あの時のあれはこういうことだったのか~!」みたいな感じになったんじゃないかなと、感じました。
やはり関わりの体験、経験が多い分、伝わること、感じてくれることが多いのかなあと。
もう少しいろんな対象にこの研修をやっていって、(ちょっとオリジナル要素強いかもだけど)Basic-phという考え方を広めていけたらと思います。
ちなみにビジネスシーンでも使えるような気がしつつ。
明日から福島で被災地のサポートをしている方々のサポートの仕事に行ってきます。