【作品#0532】X-MEN:ダーク・フェニックス(2019) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

X-MEN:ダーク・フェニックス(原題:Dark Phoenix)


【Podcast】


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【概要】

2019年のアメリカ/カナダ合作映画
上映時間は113分

【あらすじ】

舞台は前作から10年後の1992年。サイコキネシスとテレパシーの能力を有するジーン・グレイは、宇宙で帰還不能になった宇宙飛行士を助ける際の事故が原因で、自身の能力を制御する力を失い、ついに学園を飛び出してしまう。

【スタッフ】

監督/脚本/製作はサイモン・キンバーグ
音楽はハンス・ジマー
撮影はマウロ・フィオーレ

【キャスト】

ジェームズ・マカヴォイ(チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX)
マイケル・ファスベンダー(エリック・レーンシャー/マグニートー)
ジェニファー・ローレンス(レイヴン/ミスティーク)
ニコラス・ホルト(ハンク・マッコイ/ビースト)
ソフィー・ターナー(ジーン・グレイ/ダーク・フェニックス)
ジェシカ・チャスティン(ヴーク)

【感想】

「X-MEN」シリーズとしては通算12作目で、「X-MEN:アポカリプス(2016)」の続編となった本作は、「X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)」から脚本で携わっているサイモン・キンバーグにとって初の監督作となった。また、撮影自体は2017年に完了していたが、試写が不評だったために2018年に再撮影され、映画の第3幕は大幅な変更を強いられた。さらに、その前作を上回る2億ドルの予算が取られたが、全世界で2,5億ドル程度の売り上げにとどまり、同年公開の作品では最も赤字を出した作品となった。

また、本作は若いキャストを中心とした新たな物語の始まりとして製作されたが、興行的な失敗やディズニーによる20世紀フォックスの買収により、ジェームズ・マカヴォイやマイケル・ファスベンダーが出演するシリーズとしては終了を意味することとなった(本当の意味での終了は次回作の「ニュー・ミュータント(2020)」である)。

サイモン・キンバーグ監督は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011)」に始まる物語に終止符を打とうとしたと語っている通り、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011)」の原題に当たる言葉「First Class」という言葉も本作には出てくる。また、旧シリーズ3部作の最後の作品「X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)」と同じく、ジーン・グレイが暴走するという話になっている。また、内輪揉めを起こしたミュータントの前に共通の敵が現れ、そのミュータント同士が共闘する流れは「X-MEN2(2003)」を思わせるところはある。

そして、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011)」が60年代を舞台にし、以降のシリーズは基本的に10年後で70年代、80年代を描き、本作は90年代が舞台となった。ミュータントが人間側から認められた存在として始まる本作は、米ソ冷戦が終わった時代であったことを表現しているのだろう。ただ、それ以外に90年代が舞台である必然性はそこまで感じない。

人間の危機や、人間のできないことをプロフェッサーXが請け負い、X-MENが危険な任務を担うことでミスティークは不満を露にする。中でも話題を呼んだのは、「いつも女性が助けているから、「X-MEN」じゃなくて「X-WOMEN」にすれば?」とミスティークのセリフである。ちなみにシリーズでは前作に当たる「デッドプール2(2018)」の中で、デッドプールが「X-MENは男女差別だからX-FORCEにしよう」と言う場面があり、そこからの引用でもあるし、また当時のハリウッドで運動になっていたMe Too運動への言及である。さらに悪役にキャスティングされたのは、そのMe Too運動に積極的に参加している女優ジェシカ・チャスティンである。

なので、そのMe Too運動の流れから見ると、ジーンが能力を制御できないのは、抑圧される女性の怒りの爆発ともとることはできる。「X-WOMEN」を提案したミスティークはジーンの能力の前に息絶え、ジーンはウーヴとともに宇宙で爆死した。女性の権利を主張する運動の担い手が女性から殺される展開は幾分にも解釈できるし、抑圧されたジーンが自分たちの生活を脅かす存在を殺すために犠牲になるのも理解はできる。では、それが映画の展開として、また「X-MEN」シリーズの最後を飾る作品として正しかったといえばそうは感じない。ジーンを事実上の主人公にしたことで、Me Too運動の延長線上の映画のようになってしまった。

そのジェシカ・チャスティンが演じるウーヴというキャラクターは宇宙人である。今までのシリーズでもミュータント以外にロボットが出てくることもあったので、もはや驚きでも何でもないが、人間でもミュータントでもない宇宙人こそ、アメリカ国内に忍び寄る新たな「何か」の象徴なのだろう。こういった宇宙人の侵略を描く映画も本作が舞台となる90年代に確かに良く描かれたものではある。女性の姿を借りてある国や組織の内部に張り込むところはリアリティこそあるのだが、このキャラクターの象徴性は非常にわかりづらい。

また、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011)」に始まるシリーズの4作品の中で最もスケール感のない話になってしまった。言ってしまえば、下らない内輪揉めの話である。人間側からすれば、信頼できるミュータントがいることで受け入れたのに、ジーン・グレイのような能力を制御できない状況になると、「それ見たことか」となるはずなのに、そういった視点が本作にはない。ミュータントと宇宙人の争いにもはや人間の出る幕はなく、逆にマジョリティが無視されているのは作品のテーマからしてどうなのかとは思う。

結局、2011年に始まる新シリーズは何を描いてきたのか。旧シリーズから人種、性別、セクシャリティなどの迫害を受けるマイノリティをミュータントに重ね合わせて描いてきたのだが、そのミュータント内の意見の違いをチャールズとエリックという二者に単純化し過ぎたと思うし、その二者の思惑もシリーズ通して掘り下げ切れたとは思えない。

また、比較的「善」のキャラクターとして描かれたチャールズも、本作では女性を危険に晒す「悪」のキャラクターとして描かれることになった。もちろんマイノリティの地位向上の旗手となる人物が必ずしも良い人間というわけでもないので、この描き方に問題はないのだが、本作はMe Too運動の延長で作られた作品にもとることができ、そのうえで本作のチャールズを見ると、やっぱり「悪」、もしくは「悪」に気付けていない存在という印象しか残らない。そういう運動がハリウッドを中心に展開されていたので、本作がそういう作品になったのだとは思うが、女性の地位向上に関する部分がより強調された形で、事実上シリーズが終わってしまうというのもどこか違うなという印象は拭えない。

 

【関連作品】

X-メン(2000)」…シリーズ1作目
X-MEN2(2003)」…シリーズ2作目
X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)」…シリーズ3作目
ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009)」…「ウルヴァリン」3部作の1作目
X-MEN:ファースト・ジェレネーション(2011)」…シリーズ4作目
ウルヴァリン:SAMURAI(2013)」…「ウルヴァリン」3部作の2作目
X-MEN:フューチャー&パスト(2014)」…シリーズ5作目
デッドプール(2016)」…「デッドプール」シリーズ1作目
X-MEN:アポカリプス(2016)」…シリーズ6作目
LOGAN/ローガン(2017)」…「ウルヴァリン」3部作の3作目
デッドプール2(2018)」…「デッドプール」シリーズ2作目
「X-MEN:ダーク・フェニックス(2019)」…シリーズ7作目
ニュー・ミュータント(2020)」…スピンオフ



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声/映像特典

├なし

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├サイモン・キンバーグ(監督/脚本/製作)とハッチ・パーカー(製作)による音声解説

映像特典

├未公開シーン集※サイモン・キンバーグ(監督/脚本/製作)とハッチ・パーカー(製作)による音声解説付き

  ├空軍基地

  ├チャールズの帰宅

  ├任務への出発

  ├消えたハンク

  ├別れの言葉

├メイキング映像集

  ├製作への道のり

  ├本作を彩るキャストたち

  ├世界作りの秘密

  ├特殊効果

  ├撮影と編集

├ビーストのXジェット講座

├オリジナル劇場予告編集(3種)

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

収録内容は上記BDと同様だが、映像特典はBDにのみ収録