【作品#0516】X-MEN:フューチャー&パスト(2014) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

X-MEN:フューチャー&パスト(原題:X-Men: Days of Future Past)

 

【Podcast】

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【概要】

2014年のアメリカ/イギリス合作映画
上映時間は131分
※ローグ・エディションは149分

【あらすじ】

ミュータントを退治するためのロボット「センチネル」がミュータントを滅ぼそうとしている2023年。他人の精神だけを過去のその人に送ることができるキティの能力を使って、ウルヴァリンを過去に送り込み、この戦争が起こらないように過去を変えようとする。

【スタッフ】

監督はブライアン・シンガー
音楽はジョン・オットマン
撮影はニュートン・トーマス・サイジェル

【キャスト】

ヒュー・ジャックマン(ローガン/ウルヴァリン)
ジェームズ・マカヴォイ(チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX)
マイケル・ファスベンダー(エリック・レーンシャー/マグニートー)
パトリック・スチュワート(老年期のチャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX)
イアン・マッケラン(老年期のチャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX)
ジェニファー・ローレンス(レイヴン/ミスティーク)
ハル・ベリー(オロロ/ストーム)
ニコラス・ホルト(ハンク・マッコイ/ビースト)
アンナ・パキン(マリー/ローグ)
エレン・ペイジ(キティ/シャドウキャット)
ジョシュ・ヘルマン(ストライカー)

【感想】

「X-MEN」新シリーズ2作目で、累計7作目にあたる本作は、「X-メン(2000)」「X-MEN2(2003)」で監督したブライアン・シンガーが11年ぶりに監督復帰した。本作は特にアメリカ国外で売り上げを伸ばし、全世界での売り上げは前作の2倍以上でシリーズ最大となる7億4千万ドルを超えるヒットを記録した。

まず、関連作品も含めたシリーズで考えると前作に当たる「ウルヴァリン:SAMURAI(2013)」のエンドクレジット後に、ウルヴァリンがプロフェッサーXと再会する場面がある。プロフェッサーXは「X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)」で亡くなっており、「ウルヴァリン:SAMURAI(2013)」はそれ以降を描いた作品なので、なぜプロフェッサーXが生きているかの説明くらいは必要だと思うが、彼が生きている理由に関しては完全にスルーされている。そもそもこのシリーズは多くの矛盾が指摘されているのだが、この件に関してはいくら何でもやり過ぎだと感じる。

心だけ過去に行くという話は原作にあるそうだが、行く人物を原作のキティからウルヴァリンに変更しており、傷ついても回復するところや不老であることなどウルヴァリンが過去に行くという意義が感じられるものになっている。

現在起こっている戦争を防ぐために過去に行くというSFは、下記の音声解説でも言及されているが、ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター(1984)」や「ターミネーター2(1991)」を想起せずにはいられない。何と言っても1973年にタイムスリップしたウルヴァリンは裸だったり、後にサングラスをかけたりする場面もあるくらいだ。そもそも1973年というタイミングがタイムスリップするのにベストなのかどうかの議論は、「ターミネーター(1984)」と同様なので割愛する。あと、キティはずっとウルヴァリンと付きっ切りだったが、彼女は一睡もせずにあの場所に何日も居続けたのだろうか。たまに2023年のシーンが映る度に気にはなってしまった。

また、後のプロフェッサーらを知るウルヴァリンが、かつて自身を正しい道に導いた若き日の飲んだくれのプロフェッサーに会うことになる。ここも人を導くことなんてできないと思っていたウルヴァリンが成長して、希望を失っていたプロフェッサーXを導くのは良い設定であると思う。ただ、プロフェッサーXがウルヴァリンの脳内に入り込み、未来の自分と対話するシーンは余計だと感じる。ここで未来の自分と話してしまえば、ウルヴァリンの存在意義がかなり薄くなってしまう。

ベトナム戦争により教師や生徒まで徴兵されて閉鎖された学校で酒浸りの生活をしているチャールズのところへウルヴァリンが訪れることになる。そこでウルヴァリンはチャールズを説得し、ハンクを連れて、ペンタゴン地下に幽閉されているマグニートーの脱獄に向かう。ここではシリーズ初登場のクイックシルバーの独壇場と化す。特に「Time in a Bottle」に乗せて「悪戯」をするシーンは本作でも最も印象に残る痛快な場面である。ただ、クイックシルバーがこの場面が終わると出番がなくなるのはやや残念である。演じたエヴァン・ピーターズがドラマ撮影の合間に本作の撮影に参加したためにこれが限界だったようだ。また、もしクイックシルバーが主人公らと共に行動することになれば、彼の特殊能力が映画自体のバランスを壊しかねないものでもあったので、結果的にこれで良かったのかもしれない。

一方、トラスク博士の人体実験を知ったミスティークは彼を暗殺したために、政府がセンチネル計画を遂行し、2023年の未来にミュータントが人間から滅ぼされる可能性があるということに繋がってくる。ミスティークは前作もそうだったが、ありのままの姿で受け入れられる世の中を望んでいる。彼女が化けるベトナム人の軍人も、「若い子なのに政治に興味があるのか」と聞いて来る。「若い」ことも「女」であることも政治の興味と関連はないはずだが、「若い」というだけで、また「女」というだけで、政治に興味のない人間だと決めつける価値観が日本だけでなくベトナムにもそれから世界にも存在していることなのだろう。こういった見た目だけで判断する考え方がこういったさりげない描写にも反映させているのは素晴らしいと思う。

それから、このトラスク博士はヒトラーがモデルだろう。前作でケヴィン・ベーコンが演じたシュミットも強制収容所の所長であった。そして、本作のトラスク・インダスリーズのロゴもナチスドイツのハーケンクロイツを思わせるデザインである。

ミスティークによるトラスク博士の暗殺直前に、チャールズらは駆けつけて何とかミスティークを止めようとする。この場にはあらゆる思惑の人物が登場し、それぞれに何かが起こるので非常に情報量の多いシーンである。ただ、この場でマグニートーがミスティークを殺してしまおうとするのはキャラクター的にも映画的にもやや理解に苦しむところである。旧シリーズも前作も基本的に武闘派のマグニートーなので、何をしでかすか分からない雰囲気は持っているが、この場面に関する一連の描写は決して頭が良いようには見えないのが残念だ。

結局、この一連の騒動が原因で、トラスク博士の計画は遂行されることになる。ただ、このトラスク博士が作り上げたロボットはどう考えても1970年代の人類に作るのは不可能なものである。しかも金属を操ることのできるマグニートー対策として金属を使用していないロボットである。せっかく衣装や美術、小道具などで1970年代感を出しているのに、ここだけ急にSFになってしまうのは本作で一番理解に苦しむ設定である。この映画製作当時の人類だってあれほどのロボットを金属なしに作るなんて不可能だ。意図は分からなくはないが、他の何かで物語を展開させることはできたはずだ。

最終的に、トラスク博士は逮捕され、ミュータントが大統領を救ったという筋書きで未来に起こった戦争はなかったことになる。目覚めたウルヴァリンは、平和な学校でビースト、ストーム、サイクロプス、ジーンらと出会う。懐かしい雰囲気も漂わせて、良い場面だと思うが、結局過去が書き換えられたということは、「X-メン(2000)」から「X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)」で描いたことはなかったことになるわけだ。このシリーズの事実上の主人公ウルヴァリンを、前作の主人公だったプロフェッサーXとマグニートーと共演させる物語としてタイムトラベルものにしたのだろうが、せっかく作り上げた旧シリーズをなかったことにするのはどうかな。平和になったんだから良いじゃないかと言えばそれまでなんだが、間違いなくモヤモヤ感は残る。それに、みんな生きているみたいな話にするなら、前作以降にトラスク博士によって殺されたエンジェルらが死ぬ前に戻れば良かったのに。それに、以降のシリーズが作られたとして、キティの能力を使ってウルヴァリンを過去に送り込めば解決する話という前例を作ってしまったことになる。もはや禁じ手のような策にも見えるが、次回作もある程度決まっている中での作品だし、過去作で亡くなったキャラクターが当たり前のように生きて再登場するシリーズだからこんなことを言っても野暮か。それなりに楽しめたことは事実だが、手放しに称賛できる作品ではない。

【ローグ・エディション】

ディレクターズ・カットではなく、ローグ・エディションとなっているのは、「X-MEN」旧3部作に登場したローグ(アンナ・パキン)に関する場面を復活させたバージョンだからである。中盤、負傷したキティの能力を取り込んで代わりをできるミュータントとしてプロフェッサーXの学園からローグを連れてきて、ローグがキティの代わりになるという一連の場面が当初の編集では入っていたが、尺や内容の都合でカットされて劇場公開された。このローグ・エディションでは、そのローグに関する場面以外にも追加された箇所が多数ある。

【音声解説1】※劇場公開版

参加者

├ブライアン・シンガー(監督)

├サイモン・キンバーグ(脚本)


上記2名による対話形式の音声解説。当初は前作のマシュー・ヴォーンが監督を務める予定だったが降板してブライアン・シンガーが久しぶりにシリーズの監督を務めることになった話、タイムトラベルものという設定の本作を成功させるために、「ターミネーター(1984)」でタイムトラベルものを監督しているジェームズ・キャメロンに助言をもらった話、追加撮影に関する話、クイックシルバーを演じる俳優のスケジュールにより途中から登場しなくなる話、大型予算映画でもCGを使うと費用がかかるのでセットを作ったり視覚効果を使ったりして節約した話、俳優によるアドリブ、旧シリーズ作品への言及など多くのことを語ってくれる。

【音声解説2】※ローグ・エディション

 

参加者

├ブライアン・シンガー(監督)

├ジョン・オットマン(音楽/編集)


上記2名による対話形式の音声解説。20世紀フォックスのロゴが出る時の音楽のアレンジに関する逸話、ディレクターズ・カット版に興味はなくあくまで本来作りたかったものをローグ・エディションとして完成させた話、使用した楽曲に関する話や音楽の使いどころ、中盤のトラスト博士暗殺未遂の場面の編集の困難さ、過去作との関連、ヒュー・ジャックマンがカメラが回っていないときでもウルヴァリンを演じていた話など語ってくれる。何箇所か沈黙してしまう箇所があるのが残念。

 

【関連作品】

X-メン(2000)」…シリーズ1作目
X-MEN2(2003)」…シリーズ2作目
X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)」…シリーズ3作目
ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009)」…「ウルヴァリン」3部作の1作目
X-MEN:ファースト・ジェレネーション(2011)」…シリーズ4作目
ウルヴァリン:SAMURAI(2013)」…「ウルヴァリン」3部作の2作目
「X-MEN:フューチャー&パスト(2014)」…シリーズ5作目
デッドプール(2016)」…「デッドプール」シリーズ1作目
X-MEN:アポカリプス(2016)」…シリーズ6作目
LOGAN ローガン(2017)」…「ウルヴァリン」3部作の3作目
デッドプール2(2018)」…「デッドプール」シリーズ2作目
X-MEN:ダーク・フェニックス(2019)」…シリーズ7作目
ニュー・ミュータント(2020)」…スピンオフ



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【ソフト関連】

 

下記のように本作のソフトは様々なバージョンが発売されている。3Dを見たいならそれが収録されている版を、ローグ・エディションを見たい場合は2枚組BDを購入しなければならない。

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声/映像特典

├なし

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├未公開シーン集(ブライアン・シンガー監督による音声解説付き)

├キッチンのシーン

├NGシーン集

├プロフェッサーとマグニートーの絆

├再び集結したX-MEN

├新たなミュータント

├センチネルの進化

├ギャラリー: トラスク・インダストリー(ミュータント秘密実験/解剖報告)

├オリジナル劇場予告編集(3種)

├セカンド・スクリーン

 

<BD2枚(3D+2D)+DVD1枚(2D)>

 

本編

├3D(BD1枚目)

├2D(BD2枚目+DVD)

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├上記BDと同様

 

<BD2枚(3D+2D)>

 

本編

├3D(BD1枚目)

├2D(BD2枚目)

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

<BD(2枚組/ローグ・エディション)>

 

本編

├劇場公開版

├ローグ・エディション

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典(2種)

├ブライアン・シンガー(監督)、サイモン・キンバーグ(脚本)による音声解説(劇場公開版)

├ブライアン・シンガー(監督)、ジョン・オットマン(音楽/編集)による音声解説(ローグ・エディション)

映像特典(Disc2)

├ミュータントVSマシン

├過去と未来の交錯

├物語の構成

├オリジナルキャストの再集結

├2つの異なる時代の表現

├画期的な撮影技法

├映像と音楽

├特殊・視覚効果の舞台裏

├ローグの未公開シーン

├続編について

├監督とキャストによる座談会

├スティル・ギャラリー(ストーリーボード/パリ ・クライマックス/コスチューム/コンセプト・アート(デザート・ハウス/僧院/モスクワ/パリ/サイゴン/ワシントンD.C./ペンタゴン/Xマンション/Xジェット/エグゼビアの椅子/センチネル/トラスク))

├『ファンタスティック・フォー』最新情報

 

<4K ULTRA HD+BD2枚(3D+2D)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├ブライアン・シンガー(監督)、サイモン・キンバーグ(脚本)による音声解説(劇場公開版)

映像特典

├未公開シーン集(ブライアン・シンガー監督による音声解説付き)

├キッチンのシーン

├NGシーン集

├プロフェッサーとマグニートーの絆

├再び集結したX-MEN

├新たなミュータント

├センチネルの進化

├ギャラリー: トラスク・インダストリー(ミュータント秘密実験/解剖報告)

├オリジナル劇場予告編集(3種)

├セカンド・スクリーン