こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

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昨夜はオスカーこと、第96回アカデミー賞…言わずと知れた、映画業界最大の祭典である…

 

 

もっとも、その候補者や受賞結果は、その前哨戦でもあるゴールデングローブ賞SAG Awrds過去記事参照)とほぼシンクロしているし、その多くについては、すでにここでもお話ししてきた…

 

実は、Best Picture(作品賞)にノミネートされている作品の内、今年は8作品までは見る事ができたのだが、「Anatomy of a Fall」「The Zone of Interest」の海外の2作品だけは、どうしても見る機会がなかった…そもそもアメリカで海外の作品が評価されるのは、並大抵の事ではない…配給も限られているし、何よりもアメリカ人は字幕に慣れていないので、英語の場合以外はどうしても避ける傾向があるからだ…しかし、今年はその2作はBest Pictureの候補に入っているし、さらにSandra Hullerという女優さんは、その両方に出ている?!…彼女は主演女優賞の候補にもなっていたのだが、これは是非ともいつか見ておきたい…と思う…

 

その主演女優賞は、Emma Stone過去記事参照)で、彼女はゴールデングローブもこれで受賞している…のだが、実はほとんどの人たちの予想は、Lily Gladstone過去記事参照)に行くだろう…と言われており、実は私もそう予想していた彼女はゴールデングローブとSAG Awardsの両方を受賞しているので、大体オスカーも同じ…というのが定番で、実際主演男優賞、助演男優賞&助演女優賞もそのパターンだったのだ…そしてもしそうなれば、オスカー史初の先住民族系の俳優さんの受賞…と、またもや「歴史が作られる」か?!…と思いきや、実はそうはならなかったのだから、これには驚く…とともに、実はやっぱりオスカー…という思いもあった…

 

勿論、Emma Stoneは素晴らしかったし、文字通り身体を張った演技が評価されたわけで、実は私も「La La Land」よりよっぽどいい仕事をしていたと思う…しかし、演技の質…という点から見れば、Lily Gladstoneの抑えた、しかし重層的な演技は、とてもこれがメジャー作品の初主演とは思えないほど成熟したものだったのだ!…ただ、もし彼女が受賞していたら「白人達の先住民族に対する引け目から、慰謝料がわりに受賞させたのだろう…」なんて事を言い出すアホがきっといたと思う…彼女ほどの実力があれば、おそらく機会はもっとあるだろうし、いつの日かまた、先住民族の言葉で受賞スピーチを始める機会が、きっと来ると期待している

 

今年のホストのJimmy Kimmelは、最初に去年の脚本家と俳優のユニオンのストライキについて触れ、「我々の多くは、単なるチャラチャラしたスターばかりではなく、Hard Working(一生懸命働く)労働者なのだ!」という事をはっきり述べる…これは、プロデューサーのAMTPTがストを「強欲なスターがもっと金を欲しがっている」というイメージで塗り替えようとしたキャンペーンに対して、はっきり釘を刺したものだが、それと同時に、実は現在、今度はクルーのユニオンとAMPTPとのネゴが進行中…という背景がある…ここでまた交渉が決裂すれば、今度はクルーはガストに入り、そうなるとまた撮影はストップしてしまう…プロデューサー達にも、いい加減学べよ…と言いたいところである…実際、今年のオスカーは、まだかろうじて作品が揃っていたが、来年は本当に十分な候補作が出揃うのか?!…というのも、来年の候補になる様な作品の多くは、去年撮影されていなければならないからだ…

 

またJimmy Kimmelは、Greta Gerwigが監督賞の候補になっていない事に対しても触れ、「監督賞の候補になっているべきだった」とはっきり言う…そう思っていた人は多く、私もその一人だった(過去記事参照)ので、そこで盛大な拍手が起こるが、その後彼は即座に「でも、あんた達がそう投票したんだからね、自分は無関係だと思うなよ。」と釘を刺す…そうなのだ…このアカデミー賞は、候補者を選ぶのも、その候補者から最終的に受賞者を選ぶのも、そしてそのアカデミー賞の授賞式に出席できるのも、全てアカデミー会員…つまりこの世界的に有名な祭典は、限りなく「内輪の世界」の祭典だったりするのである…オスカーが白人&男性重視であるのも、当然と言えば当然である…その業界を仕切っているのは、まだまだほとんど白人の男性だったりするからだ…

 

またこういう内輪の世界では、必ずしも公平な評価が下されるとは限らない…というのも、これまたよくある事…「あの人の演技は素晴らしかったけれど、どうせなら友達の方に1票入れてあげたい…」というのが人情というものなのだ…おそらく「Past Life」が候補作になっていたのも「せめて1つぐらいアジア人の出てくる作品、入れなあかん!」という忖度の結果だったのだと思う…

また、その帳尻を合わせるかのように、長編アニメ部門では「君たちはどう生きるか」が受賞!…これは英語のタイトルは「The Boy and the Heron(少年と鷺)」というものになっているのだが、実はあろうことか、私はこれもまだ見られていない…見たい思いはあったのだが、アメリカで上映される時はほとんど英語の吹き替えで、どうせなら日本語のオリジナルで見たいな…なんて思っている内にタイミングを逸してしまったのだ…これもいつか必ず見たいリストに入っている…実は、ジブリはアメリカでも大人気なので、この作品の受賞も当然予想されたものだった…のに、日本から誰もトロフィーを受け取りに来ていなかったのは、何とも残念だった…まぁ、宮崎駿さん本人が来るのはしんどいなら、若くて体力のある人を代理でよこせばいいのだ…さらに「Hayaoはすでに引退宣言をしてしまったので、恥ずかしくて来られません!」と、ギャグネタにでもしたら、きっと大受けだっただろうに

 

もう1つ日本の「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞受賞!…この時、舞台上にゴジラのフィギュアを持った日本人達に、心から拍手を送りたかったが…スピーチの練習ぐらいしとけよ!誰かが書いた文章を、ほとんど初見で読んだので、発音がわからない言葉もありました…というのが見え見えで、これではあまりにも勿体無いではないか!…と、密かに突っ込んだ在米日本人は私だけではなかったと思う…これで「日本人=英語喋れない」というイメージがますます定着してしまった…ポストプロダクションのチームには、外国人の受賞者も多いが、それらの人達は訛りのある英語でも、ちゃんと簡潔に短いスピーチをしているのだ!英語が母国語ではない…というのは、言い訳にならない…あるいは、潔く日本語で堂々とスピーチし、通訳を雇う…という手もある…その方が、準備不足を笑って誤魔化すより、遥かに格好よかっただろうに

 

…と、散々他人に突っ込んだが、私もその時にはちゃんと準備するようにしよう…と、思わず全くいらん決意をしてしまった…

 

 

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