こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。
NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。
ちなみに、普段のSAG-AFTRA主催の映画のスクリーニングは、スクリーニング専用の劇場で行われることが多く、その参加者のほとんどは映画関係者やユニオンのメンバーだし、その場内での飲食禁止…など規則も厳しいので、そんなに他人のとんでもない行動のとばっちりを受ける事も比較的少ない(しかしゼロではない)のだが、通常の映画館でのスクリーニングは、そのプロダクション主催なので、参加者の範囲は広い…ということは、それだけ「色々な人」がいるわけである…
今回一番驚いたのは、何とワンちゃん連れ?!
私は映画館に盲導犬以外の犬が入場できるとは知らなかったのだが、このワンちゃんも確かにオレンジ色のベストを着ていたので、ひょっとしたら「Service Dog(介助犬)」というカテゴリーだったのかも知れないが、見たところそのオーナーさんは、特に介助が必要な風には見えない…それどころか、列に並んでいる時にも、前に並んでいる人を無視して勝手に好きな方向に並び始めるし、自分の両隣の座席に荷物を置いて他の人が座れないようにしたり…と結構困ったちゃんだったのだが…そういう介助犬の中には「Emotional support(精神的な支え)dog」というのもいるらしいのだが、映画を見る時に精神的な支えがいる?!…まぁ、そのワンちゃんは別に吠えるわけでもなく、そのトンデモおばちゃんがLサイズポップコーンを買いに行っている間も、少し不安そうにしていたが、大人しく座って待っていた…という非常に賢いワンちゃんだったのだが…
そのワンちゃん連れのトンデモおばちゃんは、またよせば良いのに、いきなり私の真ん前に座る?!…だからそのワンちゃんの様子も逐一観察できたのだが…幸い、その映画館の座席は今風の広々した座席なので、上映中はそんなに邪魔にならなかった…
さて、その日見たのはこの映画…
これはカリスマシェフで、ベストセラー作家でもある、Anthony Bourdainという実在人物の若い頃のお話である…その「Tony」こと若き日のAnthonyを演じるのは、Dominic Sessa…彼はあの「The Holdovers」(過去記事参照)で華麗なデビューを果たした後、確実にキャリアの階段を登っているようである…
ここから先は、ややネタバレ警告…
実は私はこのAnthony Bourdainという人の頃は何も知らないままこの映画を見たのだが、全く先入観無しに「1人の若者の青春物語」として見ると、こいつがまた実に胸糞悪い奴だったりする?!…というのも、こいつは自分を実際以上に良く見せる為に、まるで息をするように嘘を吐きまくるのだ…そしてDominic Sessaは、この嘘吐きのエゴイストを不思議なリアリティを持って演じる…実際それらの嘘は、明らかに「絶対嘘やろう?!」とすぐわかるような、実にショウモナイ嘘ばかりなのだが、彼は全くブレずに真剣にそれを事実だと主張する…それに押されて、相手は「こんなショウモナイ嘘をつき続ける奴なんかいるか?!」と、ついついその嘘を信じてしまう?!…そしてその嘘をつきまくるTony自身も、あるいはそれを事実だと信じているから?!…このパターン、どこかで見たことないか?!…これってまるで、この国の大統領そのものではないか?!…その時、その胸糞悪さの理由がはっきりわかった…
ただTonyの嘘は、誰かを陥れる為というような悪質なものではなく、惚れた女の子の前でいい格好したい…というような、まぁ19歳の男の子ってそういうアホなところあるわなぁ…というような、言ってみれば「邪気のない嘘」でもあるのだが、あまりにも次々とつらつら嘘を並べ、さらにそれらはすぐにバレるのに、悪びれもせずまたすぐ次の嘘をつく…しかし結局実際の実力が追いついていないのだから、その為に周りに迷惑をかけまくる…それが自分のせいだとこいつは果たしてわかっているのか?!…この行動パターンも、思いっきりTACOっているではないか?!
おそらく一昔前なら、こういう行動も「若い時はしゃぁないな…」と無害なものとして、微笑ましく黙認されていたかも知れない…そしてこの国の大統領の行動を許してしまうのも、それと同じ真理かも知れない…しかし、中にはそれに反吐が出るほどの嫌悪感を感じてしまう人もいるのは、それが80歳のオヤジの、似たような行動パターンを、どうしても連想せずにはいられないからだ…
そしていささかご都合主義なストーリーの展開にも、「ちょっと待てや、ホンマにそれでええんかい?!」と激しく突っ込んでしまう…実際、脚本はツッコミどころ満載だったりするのだ…なので、これが「良い映画か?」と聞かれると、正直のところかなり微妙なのだが、そういう中で俳優達の素晴らしい仕事が、ことさら輝く…
先にも述べたDominic Sessa…彼には不思議なカリスマ性と、どんなショウモナイ嘘でも思わず信じてしまうような妙なリアリティがある…また、嘘を吐いていない時の彼は、実に素直な若者なのだ…その素直さ故に「あぁ、こいつは本当にわかっていなかったんだな…」と、騙された方も思わず赦してしまう?!…こういう奴が、ある意味一番危険なのかも知れない…
一方、彼のメンターとなるシェフを演じるのが、あのAnthonio Banderas?!…彼の名を聞くと、我々世代はあのラテン男のセクシーさ全開のイメージをすぐに思い浮かべるが、その彼からセックスアピールは見事に払拭され、今回演じるのは、頑固さと包容力に満ちた実に魅力的なオッチャンである…
また、彼のレストランで働く、これまたアクの強い個性的な従業員達による見事なアンサンブル?!…中でも、彼に悪い事もいっぱい教えてしまうTonyの兄貴分のSalを演じるLeo Woodall…こいつもまたトンデモな奴で、一歩間違えば嫌味になりそうなイケメンなのだが、これが適度な抜け感と愛嬌があり、しかも不思議な魅力を持つ…彼は片っ端から女の子を落としていくのも、不思議と説得力があるの…しかも彼はイギリスの俳優さんだった?!…イギリスの俳優さん達凄すぎ…
私の好みとしては、良い映画とはいうにはちょっと微妙だが、良い演技が見られる映画であることは確かである…ひょっとしたら、アワードシーズンの注目を集めるかも知れない…
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