こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。
NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。
これまでのお話:
Stand-inには、他のクルーと同じくその日のコールシートと台本が渡される…そしてそのStand-inをする役名とその役のコールシート番号(過去記事参照)、そしてその本人の名前が書かれた白いガムテープを渡される…Stand-inをやる時にはこの白いテープを身体の前面に貼って、その人がどの役のStand-inをやっているのかが、誰もにわかる様にしておくのだが、今回のようにStand-inとBGのダブル・デューティの場合は、Stand-inをやる時はそのテープを前面に貼り、BGをやる時にはそれを隠すか、テープを剥がして見えない所に貼る…逆を言えば、その白いテープが一般BGと我々ダブル・デューティのBGを区別する唯一の方法なのである…
そして前にも言ったように、Stand-inは新しいシーンの最初に行われるMarkingの際には、必ずそこにいなければならない…ちなみに、プロダクションによっては、このMarkingがその前のRehearsalの時に行われる場合もあるのだが、撮影の場合の「Rehearsal」と舞台のそれとは大きく違う…舞台のRehearsalはあくまで俳優の為のもの…そのRehearsalの間に役作りやその方向性を演出と共に探っていく過程も含まれるのだが、映像の撮影の場合の「Rehearsal」は通常カメラの位置を決める為のもので、実は俳優の為のものではない…
実は私もその事を昔は知らなくて、ある時プリンシパルの仕事で現場に出た時に「Rehearsal」に呼ばれ、舞台のそれだと思ってセリフを言いながら適当に動いたら、その立ち止まった位置に、即座にバババっと場ミリテープを貼られ、「えっ、ホンマにここでええの?!」と滅茶苦茶焦った事がある…
このプロダクションではRehearsalとMarkingは分けて行われ、我々Stand-inは「Marking!」というコールがかかった時に、さっと現場に集合する…ちなみにその為にStand-inのサテライトホールディングは、常に一番セットに近い位置に置かれる…何らかの理由で急に必要になった時に、即座に現場に行けるようにする為だ…なので、たとえごくたまぁに休憩時間が得られても、トイレに行くタイミングにも注意が必要だったりするのだ…
しかしそのタイミングは、やっている内になんとなくコツがわかってきて、2日目には時々クラフティにいく余裕も出てきた…そしてランチは例によってクルーと同じ時に取れ、この日も好物のマンゴームースを確保!
またありがたい事に、私がStand-inを務める役は、ほとんど1箇所に座ったまま…Stand-inならぬ「Sit-in」という感じだったので、動きを覚える必要もなく、非常にラッキーなケースだった…最後のシーンまでは…
その最後のシーンの前に、我々BGは衣装の着替えが必要だった…また、その直前のシーンにも全員出ていたので、皆が一斉に着替えにホールディングに戻らねばならない…
どの衣装を着るか…という事は、その朝にワードローブに言われていたのだが、我々がその衣装に着替えた後、ワードローブはその写真を撮ってデザイン部門に送り、そこからの承認を得なければならない…というプロセスがあった…
そしてその時は数十人のBG達が一斉にそのプロセスをする…どんなに早く着替えても、着替えた後に写真を撮るのに長い列に並ばねばならないし、それが数十人分だとどうしても時間がかかる…この時の私の最初のミスは、この列に並んでしまった事だった…という事に気づいたのは後になってからの事である…
それでもいつものプロセスを早目に終えた私は、ここで第2のミスを犯してしまう…BG担当のPAに「私Stand-inなんですが、先にセットに行った方がいいですか?」と指示を求めてしまったのだ…するとそのPAは一瞬考えて(これも今思えばRed Flagだった…)「そのままここに居て。もし必要ならそう言うから。」と言う…そして私はそこで第3のミスを犯す…その指示に従ってしまい、そのままそこで指示が出るまで待ってしまったのだ…とはいえ、自分で判断できないから指示を仰いだわけで、その結果「こうしろ」とはっきり言われたからには、それを無視するという選択は私にはなかったのだ…
ところが、その待っている間に、ふと他のStand-in達の姿を探すと、なんと誰もいない?!…この時点で嫌な予感がした…そしてその時に、我々はMarkingの時にも現場に居なければならないので、BGと一緒に移動していては遅すぎるのではないか?!…という事に気付き、一瞬青くなった…その時、PAはBG全員に、サテライトへ移動するように告げたので、ダッシュでセットに向かう…
これも後になってから気がついたのだが、Stand-inとBGでは、実は命令系統が違うのだ… BGはBG担当のPAの指示に従うのが基本だが、Stand-inはあくまで現場のクルーなのでADの指示に従う…なので、PAの中にはStand-inの仕事についてあまりよく知らない人もいたりするのだ…もっとも、たとえそういう場合でも「出来るPA」なら即座にADの指示を仰ぎ、的確な指示をくれるはずなのだが、これも前にも言ったようにPAには当たり外れが大きい(過去記事参照)…不幸にもこの時のPAは「外れ」の方だった…
おそらくこの時私が取るべきだった行動は、まず列に並んだりせずにワードローブの列の先頭に行き「Stand-inですぐに現場に行かねばならない」と告げるべきだった…そうすればワードローブはその意味をわかっているはずなので、先に私の写真を撮ってくれたか、あるいは私の写真だけ後で現場で撮ってくれたかもしれない…そして、PAの指示など仰がずに「Stand-inなのでこれから現場に行きます」とPAに告げて、そのまま現場に行ってしまえば良かったのだ…おそらく私が列に並んだりしている間に、他のStand-in達は皆そうしていたのだろう…
大急ぎで現場に着いたら、何と赤ランプがついている…これは撮影中、もしくはRehearsalやMarkingが続行中…という意味なので、本来ならそれが消えるまで外で待たねばならないのだが、タイミング的に撮影中でない事だけは確か…となると、Marking中か?!…間に合ってくれ~!と祈る思いで中に滑り込むと、ちょうどMarkingが終わったばかりだった…間に合わんかったぁ~!
そのMarkingの後は、即座にStand-inの仕事が始まるので、所定の位置に行くと、私の役のパートナー役のStand-inから、何と私の役は立ち上がって移動し、誰かに止められてマークされた位置に移動し、そこで立ち止まる…という「動き」があると言う?!…それまでずっと座っとったのに、なぜ最後の、しかもこのタイミングで動くんや?!…そしてよりによってそういう大事な時だけ間に合わなかった大ボケな自分を、ハリセンでしばき倒したい思いだった…
そんな私の気分などお構いなしに、我々Stand-inとカメラのリハーサルが始まる…しかし「見てませんでした」では済まない…もう泣きたくなったが、泣いている場合ではない…まずは落ち着こう…動くとはいえ、そんなに複雑な動きではない…事実立ち止まる場所は2箇所だけ…問題は最初のタイミングだが、これは状況と私を止めるはずの人の動線を考えると、多分このタイミングだろう…そう判断してそのタイミングを待っていると、私の予想よりかなり早く、そのパートナー役のStand-inが「行け」と私に合図する?!…えっ?ちょっと早すぎんか?!…しかしMarkingを見ていたのは彼の方なので、仕方なくそれに従って動くと、ADから「早すぎる」と言われる?!…やっぱり早すぎたやんか!…しかもその後ADから「このタイミングで」と言われたのは、私が最初に思っていたタイミングと同じだったのだ!…とはいえ、これも自分がMarkingに遅れなければ一発でわかった事なので、非はやはり私にある…
しかし、それはそれ以上問題になる事はなく、そのままメインの俳優さん達が入場し、私はBGに戻る…そしてそれがMartini(最後のショット)だったので、これで私のStand-inとBGのダブル・デューティの役目も無事終わった…その日の労働時間も11時間半の長丁場…さすがにその翌日は、もう何もする気になれなかった…
★過去記事★




