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「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 90年代のバブル崩壊の後始末は、まだ続いていた。

 レーサム・リサーチが日経新聞に掲載した「不良債権を買おう」という広告が物議をかもし、不良債権の管理回収会社を意味する「サービサー」から、物件売却の依頼を受けることも珍しくなかった2000年代の前半、新宿の仲介店舗は、スルガ銀行の行員さんが熱心に通ってこられた。

 

 地方が地盤とはいえ天下の銀行員が、「不動産屋」と揶揄されることもある仲介店舗の窓口にあしげく通ってくることにも驚いたが、その依頼内容は「そんなビジネスモデルがあるのか」と感心させられたものであった。

 

 「RC(鉄筋コンクリート)造で築15年程度までの賃貸マンション」「利回り10%以上」「必要なら買主(投資家)を紹介する」、そして、買主には「年利4%、フルローンで融資する」。

 

 RCは税務上の耐用年数が47年となっており、築15年位までなら、30年以上の返済期間での融資が可能だ。そのため、4%という高金利で融資しても、返済後のキャッシュ・フローはプラスになるという仕掛けだ。

 買主には、それほど年収が多くないサラリーマンや、時には潰れそうな会社ということさえあった。本業で収益が上がらないので、不動産からの賃貸収入でキャッシュを生み出し、事業資金として貸し付けた既存借入りれ分までも一緒に返済させるという話だった。

 

 スルガ銀行によって、不動産投資家への道が開かれたという人も少なくないと思う。サラリーマン投資家生みの親といってもよいのかもしれない。

 

 その後、不動産証券化の拡がりもありリーマンショック前夜まで、不動産価格は上昇していくのだが、それでも利回り10%の物件は、探せばまだあったし、時には、それこそ不良債権処理のための任意売却物件のような、一癖あるが割安な物件も対象になった。

 ただ、「RCで高利回り」という条件が優先されるため、立地は、郊外のバス便であったり、地方の物件であったりと、賃貸需要に不安がよぎるものが少なくなかった。事実、リーマンショックの余波を受けた派遣切りや工場閉鎖が相次ぎ、大量の契約解除が生じ、返済不能となってしまう事例を生み出してしまうのだ。

 

 不動産投資においては、ローン・レバレッジを活用することで、投資額に対するリターンを最大化することができる。だから、めいっぱい借りられるだけ借りて、低金利の恩恵を受けることも構わない。しかし、それには条件がある。「十分な預貯金があり、不測の事態にも問題なく対応できる人に限る」ということだ。別の言い方をすれば、「自身のリスク許容度に応じた借入・返済計画になっているか?」ということである。

 

 時折、「借入によって短期間の資産規模の拡大を実現すること」を礼賛するような不動産投資セミナーを見かける。主催者が売りたい物件に、割高な金利の提携ローンをセットにした「投資商品」に、融資を受けられるからというだけの理由で乗っかることが、その後にどのような影響を与えるか、冷静になって考えてもらいたい。

 

 さて、リーマンショックを底に、不動産価格は上昇へ転じる。アベノミクスが始まると、異次元の金融緩和で、スルガ銀行の融資金利も2%台へと低下したが、収益用不動産の利回りはそれ以上に大きく低下する。そして、スルガ銀行は、新築物件への融資に軸足を移し、かぼちゃの馬車事件へとつながっていくのである。

身近なのによく知らない不動産

 日常生活で不動産に接しない日はない。家の中で目覚め、道路を歩き、オフィスで働く。私たちは、不動産とのかかわりの中で暮らしているといっても過言ではない。ところが、「大学で都市計画や建築を学んだ」という人は山ほどいるが、「不動産を学びました」という人は、まず見かけない。

 特に、個人住宅やアパートといった「身近な不動産」ほど、教育の場で取り上げられることは少ない。宅地建物取引士を目指す人が、独学か、せいぜい受験校の通信教育で「不動産のこと」を勉強するくらいだ。

 

 そんなふうに、日常生活で意識することが少ないにも関わらず、ひとたび不動産をどうにかする必要が生じると、動くお金は大きく、家計にも経営にも大きな影響が生じる。そしてその時頼るのは、ほとんどの場合「不動産屋」だ。

 消費者は、そこで初めて自分と不動産屋の間に、圧倒的な情報量と知識量の差があることに気づく。医者と患者の関係にあるような「情報の非対称性」が、ここにも存在している。

 

 それでも、すべての不動産屋が、善良で誠実で、顧客想いならまだいい。しかし現実には、そうではない人物そうなりにくくさせているしくみが存在する。運悪くそういう人たちの餌食になってしまっても、救済されることはあまり多くない。金額が大きいだけに、最悪のときは「人生を棒に振るようなことにもなりかねない」にもかかわらず。

 家を買うとき建てるとき、貸し借りするとき、アパートやマンションに投資するとき、いろいろな場面における「不動産事(ふどうさんごと)」において、何に注意してどう対処すればいいのか。

 

 まずは、必ずつきあうことになる「不動産屋」について、考察してみよう。

 

不動産屋ってなんだ

 「不動産屋」と聞いて、どんな人たちをイメージするだろう。「駅前の商店街にあって、物件情報を窓ガラスにペタペタ貼っている店、のぞき込むと、年配のおっちゃんが暇そうにしている。」「大手不動産会社の仲介店舗。若い営業マンがバリバリ働いている。」「地上げ屋。怖そうな連中。」…いろいろなイメージがあると思う。

 

 

 そして、そのイメージはどちらかといえば…いや、間違いなくネガティブだ。「正直不動産」というNHKドラマがあったが、「不動産屋は正直でない」という世の中のイメージがあってこそのネーミングだろう。

 

 

 ハウスメーカーや工務店は不動産屋?アパートの管理会社は?微妙なところで疑問も湧く。実は、不動産屋というのは通称であって、法律上は「宅地建物取引業者」という。

  • 宅地建物取引業

 宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。(宅地建物取引業法第2条第2項)

 

 不動産会社では、宅地建物取引業の他にも、アパートや駐車場の管理をしたり、建物の建築を請け負ったりしていることも珍しくないが、これらは、「宅地建物取引業」にはあたらない。あくまでも「売買」や「代理もしくは媒介」をすることが対象となっている。

 

 宅地建物取引業は、法律で定める不動産業であり、宅地建物取引業を行うためには、国土交通大臣か都道府県知事の免許を取得しなければならない。「業として」というのは、「営業目的で反復継続する意思をもって」という意味で、世話好きの人が厚意(無償)で売主や買主を紹介するような行為は「業」には当たらない。

 「この免許を持った法人、個人事業主が、法律で認められた正真正銘の「不動産屋」である。

 

 実際には、宅地建物取引業とその他の事業を兼務している会社は多く、そして、消費者が「不動産」にかかわるとき、宅地建物取引業以外のことが関連することも多い。さらには、賃貸管理会社や建設・土木業者、はては地上げ屋まで、世間一般に「不動産屋もしくは不動産屋的なもの」として捉えられている人たちは多い。

 それが証拠に、目つきの悪そうな人が「この家のオーナーさんですか?」と訪ねてきたら、大抵の人は「さっき不動産屋さんがきたよ~。」と言うのだ。実際には、ハウスメーカーの場合もあれば銀行員の場合もある。

 

無免許業者もいる不動産屋

 話がちょっとややこしくなるが、無免許で不動産仲介業をやっている人たちもいて、彼らは「ブローカー」と呼ばれる。ブローカーとは、英語で「仲介者」の意味だが、日本ではなぜか「無免許業者=宅地建物取引業者ではない者」をブローカーと呼ぶ。

 無免許だから不動産の営業行為は禁止されているのだが、商談がまとまりそうになれば、知り合いの宅地建物取引業者を前面に立てて、仲介料の分け前に預かるという算段だ。個人住宅の売買等ではあまり登場することはないが、高額の不動産案件ではしばしば登場する。

 

 こういう人たちの頭の中は、いつも「お金のこと」で一杯だ。取引が成立する見込みもないのに、手数料の分け前でブローカー同士もめていたりする。高額になる不動産の取引は、「千三つ(センミツ)」と言われるくらい、容易にはまとまらない。成立する見込みがない取引についての報酬の分け前で、もめているのだから、傍からみていると滑稽だが、彼らはいたって真剣だ。そして多くの場合、ウソが得意だ(正規の宅地建物取引業者にもウソつきはいるが)。

 高額物件の売却を予定している売主さんは、彼らも含めた不動産屋のウソに振り回されないように気をつけて欲しい。

 

不動産ってなんだ

「不動産の定義」についても触れておきたい。

 

  • 土地及びその定着物は、不動産とする。不動産以外の物は、すべて動産とする。(民法第八十六条)

 

 なんとまあ、あっさりしたものだ。民法によれば、世の中の物は「不動産とそれ以外」に分かれる。では「物」は何かというと、それは第八十五条(定義)に規定されている。

  • この法律において『物』とは、有体物をいう。(民法第85条)

 

 なんじゃ⁉、それなら「有体物」の定義もしろよ、と思うがそれは定義されていない。しかたなくググってみると、「有体物とは何か」ということについては、いくつか説があるのだとか。

 まあ、ここは、学術的に定義を論じる場所ではないし、その必要もないので一般的な解釈に従うと、「有体物とは、排他的に支配ができるもの」と考えればいいらしい。つまり電気のように形がなく見えないものでも、権利の対象になるものは、民法上の「物」にあたるということだ。

 改めて法律とは面白いものだと思う。

 

P.S.

 あまり業界をご存じない方と話しているときに「不動産ビジネスをするには、宅建業者じゃないとできませんよ(大雑把な言い方だが)」というと「私、宅地建物取引士で~す♡」っていう人がいますが、宅地建物取引士は、国家資格であって宅地建物取引業者とは全く別物です。もうみなさん、ご存じですね。(笑)

 2000年代に入り、不動産の証券化が進みました。不動産証券化とは、すなわち不動産が金融商品になったということですね。

 

 金融の世界では、健全な投資市場形成のための「投資家保護」は当然のものと考えられていましたが、不動産の世界では、収益目的に不動産を所有する人は「大家さん」であり、立場が強いと考えられたのか、金融に比べればその意識は希薄であったように思います。

 証券化の拡大によって、不動産投資においても、投資家保護の視点に基づく法律や制度の整備が求められるようになったといえます。その結果、それまであいまいであった「用語」についても整理がなされ、プロマーケットを中心に不動産業界に浸透することとなっていきます。

 

 投資に関する用語の定義が明確になれば、売主や仲介業者と会話するうえで齟齬が生じることを防ぐことができます。また、投資用不動産に関わるビジネスの関係者は、基本的な用語については、理解しているのが当然であり、顧客(投資家)として仲介会社の営業マンに接するときにも「基本的な用語を知らない営業マンは勉強不足である」という判断材料にもなるでしょう。

 「不動産投資家なら、すべての用語を知っていなければならない」ということではありませんが、基本的な用語については理解しておくに越したことはありません。

 こういった用語は、Web上にも解説記事が多数あり、興味がある方は検索されてもよろしいかと思います。

 

  • Income Gain インカムゲイン 

 所有する物件の家賃収入から得られる収益のこと。損失はインカムロス。売却による収益、損失はキャピタルゲイン(ロス)。単に「インカム」という場合もあり。

 

  • NOI エヌ・オー・アイ

 Net Operating Income  収入から実際に発生した経費を差し引いて求められるNOIのこと。減価償却費などの非金銭支出や、ローン・借り入れ等の利息といった金融費用は控除しない。

 

  •  NCF エヌ・シー・エフ

 NOIから資本的支出(CAPEX)を控除したもの。

  •  CAPEX キャペックス Capital Expenditure    

「資本的支出」とも呼ばれ、外壁や屋上防水の更新、エレベーターや空調等設備の大がかりな更新などに伴い発生する支出をいう。会計上は、資産計上されて簿価の一部になる。

  • PV ピー・ヴイ Present Value

 現在価値      将来得られるキャッシュ・フローを現時点の価値に割り引いた価値のこと。

  • NPV エヌ・ピー・ヴィ Net Present Value

 正味現在価値  PVから投資額を控除したもの。NPVが正の値の時は、その投資は適格であるとされる。

  •  CCR Cash on Cash Return

 キャッシュオン・キャッシュ・リターン  年間のネット収入(通常はNOI)を投資額で割った値。ローンを利用した場合は、自己資金に対するリターンの割合をしますことになり、レバレッジ効果を考慮した指標と言える。

※個人的には、売却によるリターンも含めた平均年間リターンを用いるべきと思うが、一般には上記のような定義となる。

 

  • IRR アイ・アール・アール Internal Rate of Return 内部収益率

 投資額とPVが同じ、つまり「NPVがゼロ」となるときの割引率をいう。IRRの値が大きければ、高い割引率で割り引いてもNPVはプラスになることから、リターンへの期待が高まる一方で、ハイレバレッジの時もIRRの値は大きくなるため、単に「大きければ儲かる」と考えるのは危険。

 

  • AM エーエム アセット・マネージャーアセット・マネジメント

 投資用不動産の管理・運用を投資家の依頼に基づき行う会社や人、またはその業務。

 

  • PM ピーエム プロパティ・マネージャー プロパティ・マネジメント

 投資家やAMから委託を受けて、個別の不動産の建物や設備の管理やメンテナンス、賃借人との契約に関する手続き、賃料の回収などの管理業務を行う会社や人、またはその業務。

 

  • レントロール

 賃貸借契約一覧表のこと。

 

  • サブリース

 事業者が、オーナーの所有している物件を一括で借り上げて、その借り上げた物件をテナントに転貸すること。この時、オーナーと事業者の契約をマスターリース契約、テナントと事業者の契約をサブ―リース契約という。

  •  レンダー

 銀行等、融資を行う主体。

  • ネット利回り

 年間の収入から、保有運営コストを差し引いた収入(ネット収入)を物件価格で除したもの。NOIを物件価格で割った「NOI利回り」を指すことが多いが、異なる場合もある。収入・支出の範囲や消費税の扱いなど、統一基準がある訳ではなくあいまいな用語のひとつ。話し手の意図によって同じ物件でも差異があることもあり注意が必要。

 

  • グロス(表面)利回り

 年間総収入を物件価格で除したもの。ただし、「ネット利回り」同様、明確な定義はなく、検討初期での目安として捉えるべき指標。

 

  • FCR エフシーアール  Free and Clear Return  

 NOIを総投資額で割ったもの。重要指標ながら、一般的に使われる機会が少ない。

 

  • LTV ローン トゥ バリュ Loan to Value

  不動産価格に対する借入金の割合(資産価値に対する負債比率)のこと。 LTV(%) = 負債 ÷ 総資産価値 /100

 

 

 NPVやIRRのように、将来の収益を「現在の価値」に割り引いて、投資額と比較して投資可否を判断する方法をDCF法といいます。

 例えば、10万円を投資して1年後に10万3千円を受け取るような場合、1年後の貨幣価値を考えて、1年後の10万3千円は「現在ならいくらに相当するか」という見方をします。仮に物価が1年で5%上昇していたとしたら、現時点での価値は「10万3千円÷1.05≒9万8千円」となり、10万円より小さくなるため、この投資は「不適格」という判断になります。

 この時の「5%」を「割引率」といいます。割引率は、ここでは、物価上昇、つまり貨幣価値の低下分の5%としましたが、実際には「リスク」の大小によって投資家が判断します。割引率については、また別の機会にお話しできればと思います。

 リノベーション・ビジネスが盛んだ。マンションでも戸建でもまるで新築、最新の設備とおしゃれな内装で蘇った物件が新築よりかなり安く手に入る。リノベーション物件を購入するときに、注意すべきことはどのような点であろうか。

 

 情報バラエティ番組の中で「古いマンションや戸建を買って自分でリノベーションした」という方の紹介をしばしば目にする。DIY好きなパパが、格安で100円ショップ等も駆使して、それまでの古臭い部屋を、使いやすくおしゃれな部屋に蘇らせると家族は大感激だ。奥さんは喜びのあまり涙を流している。「すごいなあ」と感心する一方で、「これを自分でやるのは大変だぞ」としり込みする自分もいる。

 

 そこで登場するのが「不動産会社が買い取って、リノベーションをして再販する」ビジネス。そのメリットはというと、①完成したものを見て買うことができるので安心。②リノベーションのノウハウ不要。③価格が明確なので判断しやすい。といったところであろうか。

 

 元々の所有者も、一般の買主(エンドユーザーと言ったりする)に売却する場合は、「雨漏りを修理してから」とか「壊れたトイレを交換してから」とか、なにかと気をつかうが、不動産会社に売る場合は、「そのまんまでいいですよ」「何なら、要らないものも、ごみも全部そのままで」とか言ってくれて、あとくされがないので売りやすい。

 もちろん、不動産会社は商売だから、買取価格は「利益分」安くなるが、内見のたびに掃除したり子供を外に連れ出したり、それが何度か重なってくると、「本当に売れるのだろうか」という不安も重なって「不動産屋さんに買い取ってもらおう」という気持ちにもなるのも無理からぬことだ。

 

 そんなこともあって「リノベ再販ビジネス」は、日本が、それまでの新築主義から欧米のような「中古住宅流通」中心に転換していくために、きわめて重要な役割を果たすとみられている。

 言いかえれば、「リノベ再販ビジネス」は、発展途上であり、それだけに購入する側としては、眼力が試されることにもなる。何しろ「リノベーション」に基準がある訳ではなく、その内容の一切は不動産会社の胸三寸なのだ。いや、厳密にいえば「住宅性能表示制度」というのがあり、第三者機関が検査を実施して「現況検査・評価書」の交付を受けることが可能である。

 しかしながら、この制度を活用し、あるいは制度の趣旨をくみ取って、住み心地がよく健康に暮らせる住まいと言える水準まで性能を引き上げるリノベーションを行っている事例はあまり見かけない。それは、ひとえに「売りやすい価格帯に抑える」ためと言ってよい。

 

 ある物件の販売用チラシに記載されている「リノベーション内容」を見てみる。外壁・屋根塗装、フローリング張り(天然木突板)、クロス貼替、システムキッチン交換(食洗器付)、ガラストップコンロ交換、ユニットバズ交換(暖房乾燥機付)、給湯器交換、洗面台交換、トイレ交換、モニターフォン設置、ハウスクリーニング。

 要するに、仕上げや設備を交換して「見栄え」をよくすることが中心となっている。これは「リノベーション」というより単なる「リフォーム」に近い。実際、「リノベーション」という表示に負い目を感じるのか「リフォーム」しているチラシも多くみられる。そもそもリフォームとリノベーション自体の境目もあいまいで、改修範囲や規模が大がかりになったものをリノベーションと呼んでいるともいえる。

 

 このように一口に「リノベーション物件」といっても、その中身はうんと幅がある。不動産業者が「目立つところ中心に」リノベーションするのは、あたりまえともいえる。彼らは、売りやすい価格で再販できるよう、コストを抑えつつ、いかに買主の印象をよくするかに力点を置いている。

 

 地震や台風といった災害が多発、地球温暖化は目に見える形で進行している。住宅にも構造的な耐力が求められることはもちろん、脱炭素に向けた取り組みはもはや「待ったなし」だ。空き家問題に象徴されるように、住宅が、量的には余剰へと転じる中で、人命を守り、省エネルギーで、安全、安心、健康な暮らしを実現してはじめて、資産価値がある家といえるのであり、これからは、そのような住宅こそが、流通市場の中で、何代にもわたり受け継がれることになるであろう。

 

 繰り返しになるが、現在行われているリノベーションの主流は、デザインや設備であり、本来住宅の重要な機能である断熱・気密、換気といったものまで考えられているものは少ない。耐震、耐火性能についても十分な検証を行っていることはまれだ。

 無断熱や低気密の家は、夏暑く冬寒い。しかし、科学的な道理に合わない断熱や気密を行うと、結露を発生させカビやダニの原因となる。その結果アレルギーを誘発する不健康な住まいをつくりだしてしまう。

 

 安全、安心で健康的な住まいについては、長い失敗の歴史を経て理論的には確立している。できることならリノベーションをきっかけに、旧来の性能から大きく「質」を向上させた住まいに引き上げるべきであろう。

 

 しかし、そのことに対し、供給側の不動産会社も、買主となる消費者もまだまだ意識が低いと言わざるを得ない、消費者の意識が変わり、「性能の質による選別」が行われるようになれば、つまり「質が良くない家は売れない」となれば、業者側が本気で「質にこだわったリノベーション」に取り組むようになるはずだ。

 そのような流通市場の実現が今すぐは無理だとしても、いずれは必ずその方向に進む。なぜなら、地球環境への配慮は、全人類のミッションとなりつつあるからだ。

 

 これからリノベーション物件を買おうとする消費者は、10年後に、資産価値のない低性能の家を保有して後悔のすることが無いように充分に情報法収集してもらいたいと思う。

断熱性や気密性の性能を図る指標として、以下ご紹介いたします。

 

■UA値

 住宅性能を表す数値の1つである「UA値」は、住宅内の熱の逃げやすさを示す値である「外皮平均熱貫流率」のことをいう。外皮とは、「屋根や外壁、床、窓やドア等の開口部など建物の表面」のことをいう。

 

 熱は、高いところから低いところへと移動する性質があり、UA値は、住宅内部と外部の温度差が1度あるときに、内部から外皮を伝わって、外部へと逃げる熱量の合計を外皮面積で割った数値で、UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能、省エネルギー性能が高い住宅といえる。2013年の省エネ基準改正から、Q値にかわる指標として、UA値が用いられるようになった。

 UA値は、「建物の熱損失量の合計÷延べ外皮面積」という計算式で求められる。つまりUA値は、外皮(建物を表面)1㎡当たりで、平均して何ワットの熱が逃げるかを算出しており、換気による熱損失は考慮していない。

 

■ZEH(ゼッチ)

 「ZEH」とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)の略称で、快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅」のことである。ZEHが定める基準の1つとして、UA値が用いられ、ZEHでは、H28省エネ基準よりもワンランク上のUA値の基準を定めている。

 

■HEAT(ヒート)20

 HEAT20とは、「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称である。HEAT20では、より快適に暮らすために断熱性能の基準値を定め、G1やG2などのランクで評価している。

 ZEHが、断熱性能だけでなく、太陽光などの創エネ設備や省エネルギー冷暖房設備を合わせた複合的な基準なのに対し、HEAT20の基準は目指すべき断熱性能)のみを地域ごとに定めたものである。HEAT20も断熱性の高さを示す数値として、UA値を用いる。HEAT20では、ZEHよりもさらに高い(厳しい)UA値基準となっている。つまり、求める断熱性能(UA値の厳しさ)は、H28省エネ基準、ZEH、HEAT20の順に高くなる。

 

■ C値

 C値とは「相当隙間面積」のことで、住宅全体にどれくらい隙間があるか、すなわち気密性能がどの程度かを示す数値である。C値が小さいほど隙間が少なく、「気密性の高い住宅」ということになる。気密性の高い住宅は、内部の暖まった空気が外へ流れ出にくく、外気も入ってきにくいというメリットがあり、断熱性能を示すUA値と同様に住みやすさや省エネに大きく関係する。

 C値は、どのくらいの空気が室内から外部へ流出するのかを住宅の床面積で割って算出する(算式は「C値=住宅全体の隙間面積÷延べ床面積」)。値が小さいほど隙間が少なく、気密性能が高いことを表す。C値は、実際に1棟1棟測定して算出する。

 

■Q値

 Q値は、以前使われていた断熱性能を表す数値で「熱損失係数」のことである。Q値は、住宅全体の熱がどれくらい逃げやすいかを表し、Q値が小さいほど熱が逃げにくく、「断熱性能の高い住宅」といえる。換気による熱の損失を含む点と、建物の延べ床面積のみで算出する点がUA値と異なり、算出方法、評価ともに違いがある。2013年の省エネ基準改正により、Q値に代わってUA値が用いられるようになったが、今でも活用しているハウスメーカー等が存在する。

 「Q値=(各部の熱損失量の合計+換気による熱損失量の合計)÷延べ床面積」という計算式で求める。建物の中と外の温度を1度と仮定したときに、1時間当たりにどれくらいの熱量が住宅内部から外部へと逃げていくかを計算により求める。

 住宅性能表示制度は、平成12年施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づきスタートしました。

 表示項目は、①構造の安定、②火災時の安全、③劣化の軽減、④維持管理更新への配慮、⑤温熱環境、⑥空気環境、⑦光・視環境、⑧音環境、⑨高齢者等への配慮、⑩防犯の10分野(既存住宅については、⑧の音環境を除く9分野)である。「調査時点での性能を等級で示すもの」です。

 

 一般社団法人住宅性能評価・表示協会のウェブサイトには次のように記されています。

 

■新築住宅の性能表示制度について

 自動車やコンピュータなどを購入する場合は、性能を比較して選びます。これらの製品の場合、カタログに馬力や排気量、CPU速度やハードディスク容量など、比較できる情報が書かれており、比較検討が簡単です。

 住宅の場合でも、「地震に強い家」「省エネの家」など、その住宅の特徴が書かれていることがありますが、これらの性能は、ハウスメーカーや販売会社によって「強さ」や「省エネ」の定義が異なっていることが多く、比較が困難でした。

 しかし、新築住宅の性能表示制度を使って建設された住宅であれば、住宅の性能が同じ基準で評価されているので、性能の比較が可能になります。

 

■既存住宅の性能表示制度について

 既存住宅の住宅性能表示制度は、既存住宅売買の当事者間で物件情報を共有化し、契約の透明化と円滑化を目的の一つとしています。

 既存住宅を売買するとき、住宅の現況(家の劣化の状況や不具合)、さらに、持っている性能が分かれば、安心・納得して売買できます。

 

 参考までに、令和3年度の新築住宅における設計住宅性能評価書の交付率は、戸建て住宅が30.9%、共同住宅等が25.5%です。

 

 性能表示における等級だけが住みやすさの基準ではないし、また、ある性能を上げることにより他の性能や暮らしやすさを低下させる場合もあります。例えば、窓を大きくして、明るく開放的な空間は、生活する上での満足度を上げることになりますが、省エネルギーの面や耐震性において、不利な方向に働くことも珍しくありません。

 

 重要なことは、新築したり購入したりする住宅が、どのような性能を持つ住宅であるかを把握することであり、また、住まい手が望む暮らし方を実現できることだと思います。

 もちろん、一部の性能レベルが低いことにより、その「住宅の経済的評価」を毀損させることがあることも留意しておかなければなりません。また、住宅の性能を示す指標は、住宅性能評価の等級以外にもいいろいろあります。

 中古住宅が当たり前に流通するようになれば、建物の品質に対しても買い手の厳しい目が注がれるようになります。欧米のように、建物の良しあしが住宅の資産価値を決める時代が目の前に来ています。そのことを念頭に、制度を賢く利用していきたいものです。

 

■ 参考URL

  • 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」のポイント(国土交通省)➡ https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/070628pamphlet-law-point.pdf
  • 一般社団法人「住宅性能評価・表示協会」➡ https://www.hyoukakyoukai.or.jp/
  • 性能向上リノベの会 ➡ URL:https://pireno.ykkap.co.jp/

 

 

1.一億総中流社会から格差社会へ

 

 かつて「一億総中流」といわれた時代がありました。1960年代から70年代にかけての高度経済成長期に日本の国民総生産(GDP)が世界第2位に達し、新・三種の神器といわれたカラーテレビ、クーラー、自動車が各家庭に普及した頃です。

 

 例えば、昭和ひとケタ生まれである私の両親は、戦前戦中と貧しい子供時代を過ごし、この高度経済成長期が結婚、子育ての時期にあたります。間違ってもお金持ちといえる家庭ではありませんが、一所懸命に働いて子供を大学にやって、世間並みに電化製品や車を所有するようになったとき、意識の上では「これで自分も中流にはなれた」と感じたとしても不思議はないでしょう(両親の口から「自分は中流」と聞いたことは一度もありませんので、「下ではない」がより近い心情かもしれません)。

 

 「一億総中流」の根拠は、経済企画庁(現内閣府)が実施した「国民生活に関する世論調査」です。70年代の後半には、この調査結果等を基にした政府やメディアの広報、報道により「日本人の9割は中流」が多くの国民の共通認識となっていました。しかしその後、バブル経済とその崩壊を経る中で、中流意識も崩壊し、2000年代には、日本は「格差社会」であるという認識が一般的となっていきます。

 

 「国民生活に関する世論調査」の設問は、「生活の程度は、世間一般からみてこの中のどれに入ると思いますか。」、選択肢は「上、中の上、中の中、中の下、下、わからない」というもので、これでは、そもそも「下」を選択する人は限られる、と指摘する研究者が少なくないようです。実際、令和511月の同調査でも、「下」を選択した回答は8.1%しかなく、現在の国民の意識とはかなりかけ離れたものとなっており、なぜ「中の下」を中流としたのか疑問符がつきます。

 

 早稲田大学人間科学学術院の橋本健二教授は、その著「中流崩壊(朝日新聞出版)」の中で、調査方法やその解釈に対する問題点を指摘したうえで、「『9割中流』論は政府が自らの政策を正当化するのに利用した」と断じています。一億総中流自体が、幻想もしくは虚構であったという指摘です。

 

 一方、NHK放送文化研究所が公開している「放送研究と調査」20205月号に「減少する中流意識と変わる日本人の社会観」というリポートは、「所得格差が大きすぎる」と思う人が20年前より増加している、②20年前と比べて「高所得層」が減って「低所得層」が増えている、社会構造を「中流層」が分厚く格差の少ない社会だとみる人の割合が、20年前よりも10ポイント以上下がっている、この20年間で自分が中流よりも下の階層にいると思う人が増えている、等の分析結果から「日本人の中流意識が減少している」と結論付けています。(199911月、200911月、201911月の3回の調査による分析)

 

 90年代初めのバブル崩壊以降の「失われた30年」といわれる長期デフレ経済の中で、平成元年に19.1%であった非正規雇用労働者の割合は、平成30年には37.9%まで増加し(厚生労働省第284回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会資料)、終身雇用や年功序列賃金を特徴とする日本型の雇用システムも大きく変化しました。

 

 雇用の不安定さに加え、国民負担率(国民所得に対する税負担と社会保険料負担の割合)が、2020年度時点で45%近くにも迫っており、さらに2022年以降は、資源価格高騰や円安に起因する物価上昇が重なって、生活実感として「苦しくなった」と感じることが増えています。

 実際、日銀が実施している「生活意識に関するアンケート調査」、20243月実施結果で、「1年前に比べて現在の暮らし向きにゆとりがなくなってきた」と回答した人の割合は、ほぼ半数の49.5%に達しています。生活不安が募れば、離婚、未婚、子供なし世帯の増加につながるのは当然でしょう。

 

 高齢単身者(65歳以上の単独世帯)は、既に300万人を超え、母子世帯は、約120万世帯といわれています。これらの人たちが家を持たない場合には、賃貸住宅を探すことになりますが、貸主から敬遠されることも珍しくありません。「中流」どころか「格差社会」への流れが続いているのです。

 

2.不動産リテラシーの向上で令和版「新中流」へ

 

 格差社会の是正や貧困層に対する支援の責任は、一義的には政治にあり社会全体で取り組むべき課題です。しかし、その対策は十分とはいえず、相対的貧困率は増加傾向にあります。この先、少子高齢化がさらに進むことで、「社会保険等の負担が増える一方で年金給付は減少」という流れも、もはや既定路線です。国や自治体の施策に期待するだけでは、中流どころか生活困窮に追い込まれてしまう恐れさえあるのです。

 

 そこで不動産リテラシーの向上を通じて、ひとりでも多くの人が、「老後の安心生活」を実現できることを願い、ブログをシリーズ投稿することにします。政府がいうところの「自助」のひとつと捉えていただいても構いません。

 私が、長年かかわってきた不動産業界で学んできたことが、一人でも多くの方の安心生活の実現に寄与することを心から願います。

 

3.住宅編、不動産投資編

 

 令和版「新中流」生活を、「生活不安のない老後」具体的には「年金給付と家賃収入で、不安なく暮らせること」と定義したいと思います。それは、決して富裕層になることではなく、それゆえに多くの人にとって「実現可能な目標」であると考えます。

 

 生まれながらのお金持ちではない、いわゆるフツーの人たちが「新中流」生活という目標を達成するためには、不動産投資は大変有効な手段のひとつです。しかし、「富裕層」という高い目標を設定すると、過大な借入金というハイリスクを負うこともありえます。まずは、着実に「中流というプチ成功者になろう」と提言したいと思います。

 

 令和版「新中流」生活、すなわち「老後の安心生活」を実現するための方策は、次の二つです。

 

「住宅取得における失敗の防止」

「富裕層を目指さない不動産投資」

 

 よって、ブログは「住宅編」「不動産投資編」の二つのパートで構成しています。

 

4.住宅取得における失敗の防止

 

 「住宅取得における失敗の防止」とは、すなわち「資産になる家」を手にすることです。住宅の資産価値は、土地の価値と建物の価値の合算を意味します。

 

 戦後、量的な充足を目指して建築された住宅の、不動産流通市場における経済的価値は、「築25年でほぼゼロ」とされてきました。ゆえに、中古住宅の市場価格は、年数の経過とともに土地の価格に収れんしていきます。しかし、欧米においては、「丁寧に手入れされた住宅の価格は、上がっていくのが当然」です。それは、地価の上昇のみならず「建物の価値」も向上させているからです。

 

 近年は、日本においても、古民家をリノベーション再生し、住宅や店舗として活用する事例が増えていますが、築30年、40年の「古家」よりも、築100年、120年といった「古民家」の方が高く評価されている点が興味を引きます。

 当然です。ベニヤ合板やアルミサッシといった、いわゆる「新建材」で建てられた住宅よりも、「樹齢100年も超えるかという地元産の梁や柱を職人技で組み上げた構造」「地域の気候風土が育てた意匠」は、誰の目にも魅力的に映ります。歴史、風土、伝統に根差した意匠や技術といった、日本人の多くが忘れていた価値が再認識されているのです。

 

 そして、リノベーションという現代の技術により、耐震性、耐火性、機能性、快適性といった新たな価値が付加されるようにもなりました。

 資材価格も人件費も上がり続ける今日、古民家再生はもちろん、既存住宅のリノベーションと中古住宅流通が当たり前の世の中になりつつあります。「築25年でゼロ円」は過去のものになっていくでしょう。

 

 また、土地についても従来からの尺度である「広さ」「利便性」「人気度」といったものの他に、災害への耐性や地域の将来性といった視点も外せなくなっています。不動産バブルの崩壊によって、土地の価値が大きく毀損し経済的に痛手を負ったという例は、枚挙にいとまがありませんが、これからも社会、経済、政治等の外部環境の変化によって、不動産の価値は影響を受け続けます。

 「現在の価値」の比較のみに目を奪われるのではなく、将来の価値を読む力、それが難しいとしても、変化に対し機敏に対応する力を養うことが、生活を守ることにつながっていきます。(その意味においては、土地取得時のみならず、「保有期間を通じた失敗の防止」という方が正確な表現ではあります。)

 

5.富裕層を目指さない不動産投資

 

 「富裕層を目指さない不動産投資」とは、老後の生活資金確保を目的に、「時間をかけて」より安全かつ確実に不動産を運用することをいいます。ポイントは、あくまで「生活資金確保」を到達点におき、無理な運用をしないことと、そのために時間をかけることです。

 

 不動産投資を誘うSMSの広告や、成功者によるセミナーには、「アパート、マンションを何棟も持っています」とか「毎年多額の家賃収入が入ります」という言葉が並びます。ついつい「自分もこんなお金持ちになれるのか」と思ってしまいがちですが、「こんなに沢山の家賃が手に入ります」という誘いは、過大なリスクと表裏一体です。

 

 欲望は失敗を運んできます。「リッチな大家さん生活」を夢見るあまり、過度なリスクを負って、その結果「人生の敗者」となることは避けなければなりません。とりわけ、無防備なオーバーローンのハイレバレッジは、まったくの結果オーライでしかありません。備えのない借入は、「おいでおいで」と地獄に誘う悪魔の顔を持っているのです。

 

 老後の安心生活という無理のない目標に向けて、コツコツと積み上げていくことが、結局は成功への一番の近道だといえます。

 ブログは、「住宅編」「不動産投資編」「不動産取引編」という三つのカテゴリーに分けて、毎回、様々なテーマに関して投稿して参ります。一人でも多くの方にお読みいただければ幸いです。また、「敬体」「常体」が混在しますがご容赦下さい。

                           202461日 中小企業診断士 桑岡伸治

 

 住宅評論家、南雄三さんの話は衝撃的だった。

 

 それは、ミレニアムという言葉を耳にして間もなくのことだった。会社の方針で「外断熱の家」をメイン商品に据えることになり、顧客向け「外断熱住宅セミナー」の講師として、南さんが招かれたのだ。

 

 衝撃の一つ目はそこで耳にした「断熱・気密・換気」に関する真実の数々。二つ目は、自分が、そのことを知らないままに何年も住宅の営業をしてきたという現実を突きつけられたことだった。何しろ、それまでの私の認識は、「断熱とは断熱材を入れること、気密とはサッシをきゅっと締めること」、そんなレベルでしかなかったのだから。

 

 当時の勉強不足の自分を恥じるが、ハウスメーカーの営業マンの実態は、今もそれほど変わらない。考えてみれば当然だ。会社が用意したマニュアル通りに自社商品を売り込むのが通常で、ひどいのになると他社の欠点をあげつらう。自ら問題意識をもって、断熱・気密の何たるかを学習しようという人がいたとしたら、それは例外中の例外である。

 

 話がそれた。さて、バックパッカーとして世界中を旅した南さんの話は、韓国やヨーロッパの住まいの話から始まる。(ここから当時の記憶をたどり、また、南さんの著書を参考にしつつ講義の中身をご紹介したいのだが、とてもあのクオリティは再現できないのでご容赦願いたい。青文字の記述が、私の解釈による講義の趣旨である。

 

 韓国の住宅には「マル」と呼ばれる冬用の部屋があり、調理時に発生した煙を床暖房に利用した「オンドル」で冬期も暖かい。調理具、暖房器具、そして換気装置でもある暖炉を備えた欧州の家は、その熱を家中に配り暖かく過ごす、煙や煤が室内に入ることはなく、いつも新鮮な空気を取り入れて快適である。

 

 日本の家は、春夏秋の快適な気候の時期に合わせて造られている。冬季には囲炉裏や火鉢で暖をとり、分厚い服を着て、寝るときは「寝間」で布団にくるまって眠った。欧州でも韓国でも、煮炊きに使った熱を上手に暖房にも使って、「快適に」暮らしてきたというのに、日本はなぜ「我慢」の生活を送ることになったのか。

 

 南さんは、日本の住まいについて「二つの愚か」を指摘する。

 

 欧州や韓国の家では、寒いときにはなるべく熱が逃げないように気密にして部屋全体を暖かくする「暖房」を採用したの対し、日本人は気密には無関心で、熱は逃げ放題、わずかに火に当たること採暖」にしか頼ってこなかった。これが一つ目の愚か。

 

 戦後の高度成長期を経て、暖冷房が普及していく中で、ようやく日本でも「断熱・気密化」が始まるのだが、欧州に比べればその基準は緩く、さらに暖炉のような「換気装置」を忘れたことで、石油・ガスストーブによる酸欠、室内への有害物質と水蒸気の放出という状況を生んでしまう。

 そして、暖房する部屋としない部屋、つまり温度差のある部屋をつくったことで、ヒートショック結露発生を原因とするカビ・ダニの繁殖と喘息などのアレルギーを誘発ということにつながっていく。これが二つ目の愚かである。

 

 寒い家の中で、布団や半纏(はんてん)のような「断熱材」にくるまって不自由に過ごすなら、なぜ、家全体をすっぽりと断熱材でくるんで、小さい熱で快適に過ごすという発想にならなかったのか。気候がいいときは開放的に、悪いときはシェルターのように閉鎖して暑さ寒さから守ればいいだけのこと。(これを南雄三さんは「開けたり閉めたり」と表現していた。)

 

 コロンブスの卵のような話だが、「日本の夏は蒸し暑いから開放的な家にするべき」という先入観がそうさせなかったのかと思ってしまう。

 

 さて、その先も、断熱・気密・換気に関する目からうろこの話が続く。

 

 断熱された室内で暖房をすれば、室内は暖かくなるが、暖められた空気は、冷えた窓ガラスやサッシに触れて結露を起こす。同時に内壁の隙間から壁の中に入り込み冷たい外壁に触れてそこでも結露を起こす。その結露を断熱材が吸収し、カビが生え、腐食の原因となるだけでなく、ダニが繁殖しアレルギーを引き起こす。

 

 だから、断熱するなら絶対に気密にしなければならない

 

 一般には「気密にしたら息苦しい」という感覚がある。ところが、そのことに関しても南さんは明快であった。「換気とは空気をコントロールできることであって、そのために気密が鍵になる」と。

 

 換気とは「常に出入口を明確にして、必要な量の新鮮空気を取り入れ、汚染空気を排出すること」である。

 

 「常に」とは一年中二十四時間、「出入口」とは居室から新鮮空気を取り入れて(入口)、室内で発生する化学物質や埃、水蒸気、臭い、埃(ダニの死骸やカビの胞子等を含む)を取り込み、一番汚染物質が発生するダーティーゾーンから排出することである。「必要な換気量」とは、空気中の炭酸ガス濃度を基準として、CO2濃度1,000ppm以下を実現する量であり、一人当たり1時間に20~30㎥であるとされている。

 

 さて、いよいよクライマックス。(笑)

 

 この計画的で適正な換気を実現するためには、建物は高気密でなくてはならない。あちこちに隙間がある状態では、「入口」からではなく「隙間」から空気が流れ込み、意図したとおりに換気をコントロールすることはできない

 

 「いわれてみれば」というのは、こういうことを指すのだろう。穴の開いたストローでジュースは吸えない。入口以外の横穴から、勝手に空気が流れ込んでくる。常に空気環境がよい家、つまり健康な住宅に住むためには、断熱・気密・換気、そして暖房が切っても切れない関係にあったのだ。

 

 断熱・気密・換気・暖房の四つのバランスを実現した家がどのようなものか、後に私は、実際に南さんのご自宅見学という形で体験させてもらうことになる。なんとまあ、家まるごと、冬の暖房は太陽、時々こたつ。昼間の太陽の輻射熱を取り込んで、真冬の朝でもほぼ暖房無し。曇天続きなら、ちょっとエアコンでサポートみたいな高性能な日本家屋だったのだ。

 そして風流人の南さんは、沢山の温湿度計をあちこちにおいて、季節ごとに変化する庭の景色と同様、ちょっとした温度や湿度、風の動きを楽しんでおられたのだった。

 

 「おい、外断熱の話はどうなった⁉」そうでした。南さんの講義は、ここもシンプル。

 「室内の壁には、コンセントのように穴もあけるし、配線も通る、外側からすっぽり覆う方が工事しやすいし簡単でしょう?

 

 そう、工法の違いなんて、超越していたのだった。

 

 内断熱でも外断熱でも、必要な性能が実現できればよいのだ、ただ内断熱は気密シート頼みになる部分があり、一層の技術力と細心の注意(これは住んでからも)が必要ということだった。

 

 南さんのセミナーは、まるでマジックの種明かしをするようで、感動的なものだった。「こういう話が聞きたかった」と泣き出すお客さんもいたくらいだ。そして、参加記念に配られた南さんの著書「高断熱・高気密バイブル」を、宝物を抱えるようにして帰って行くのだった。

 

 さて、後日談。経営的に厳しかった会社の救世主になるかと思われたこの「外断熱の家」をもってしても、収益の悪化を食い止めることはできず、清算という形で会社は最期を迎える。後に知ったことだが、このことにより南さんに多大なる迷惑をかけることになったらしい。

 私は知っている、会社清算の原因はマネジメントにあったことを。今でいう超ブラック企業、社員を駒としか考えない経営手法は、次々と退職者を出していた。「下請けは言うことを聞いていればいい」という上から目線の姿勢が社内に蔓延し、取引先の不平不満を聞くことは日常茶飯事だった。
 外断熱の家とは全く関係のないところでの清算だったのだ。南雄三さんの名誉のために付け加えておく。

 親の援助も受けて、小さな土地を買って家を建てたのは1998年、私が38歳の時だった。住んでみて「失敗した!」と感じた点は二つ。一つは「地下室をもっと広くしておけばよかった」ということ。もう一つは、自身の勉強不足から「温熱・空気環境」についての性能が低い家になってしまったことだ。

 

 「自身の勉強不足」と書いたのには訳がある。この頃すでに家づくりにおける温熱・空気環境の大切さを説いている人たちがいて、もっと積極的に動いていれば情報を得ることは可能であったからだ。そして勤務先でもある我が家の施工会社が「外断熱の家」として、温熱・空気環境にこだわった家づくりを手掛けるようになるのは、わずか数年後のことだったのだ。

 

 国土交通省がはじめて省エネルギー基準を示したのが、1980年。1992年には最初の改定があり、「新省エネルギー基準」といわれるものになった。そして、1999年に「次世代省エネルギー基準」が示され、翌2000年に住宅性能表示制度がスタートする。

 私は専門家ではないので、技術的なことは脇に置くが、新省エネルギー基準というのは、断熱材の厚みの問題で、換気はおろか気密に関する規定もなかったと記憶している。

 

 私が思う「温熱・空気環境」がよい家とは、暑すぎず寒すぎず、室内の温度差があまりなく、アレルギー物質や有害物質の発生が抑えられ、あるいは適切に排出される「気持ちのよい空間」つまり健康で快適な屋内環境ということなのだが、かくして、完成した我が家は、理想には程遠いものだった。ただし、その理想の住まいの存在を知ったのも後になってからであるが。

 それでも、それ以前に住んでいた賃貸住宅が軽量鉄骨造でめちゃくちゃ寒かったこともあり、住み心地はずいぶんましになった。いうなれば「冬はそこそこ暖かく、夏はめっぽう暑い」だろうか。(笑)

 

 断熱性能はそこそこといったレベルでも、サッシと合板で囲まれた家は、まあまあ熱が籠るものだと知った。が、逆の見方をすれば、十分な換気がないので、ホコリやもしかしたらダニなんかも、浮遊しているのかもしれなかった。対抗策として、換気扇を回しっぱなしにしたのだが、十分な気密性能もないので、どこまで効果があったのかはわからない。ほとんどドアがない家なので、ファンヒーターのような局所的な暖房を使っても、結露がほとんどなかったのは、不幸中の幸いか。

 

 そして、一番厄介なのは、ここ十年程で「沸騰化」といわれるまでに地球温暖化が進んできたことだ。エアコンの風を心地よく感じない私は、夏場も窓を開け(注:防犯上問題がないところ)風を通しながら寝ているのだが、日中の日差しで屋根裏空間(天井の上)に蓄えられた熱が、夜間に放熱し部屋に下りてくる。さらに外気温も下がらないため、それはそれは寝苦しい。

 

 日本では昔から「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」といわれてきた。確かに、田んぼの中の一軒家の私の実家では、「厚着をしてこたつで丸くなる」冬の生活に対し、夏は、日中気温が上がっても、夕方からは田んぼを通り抜けてくる清涼な風につつまれ、網戸さえあれば快適な夜を過ごすことができた。

 

 しかし、ここまで温暖化が進んでくると、シェルターとなるような家づくりを考えなければならなくなったと言える。特に、蓄熱体と化してしまった大都会東京では、なおさらだ。

 「家は3回建てないと満足できるものにならない」といわれる。さすがに、それは無理だが、これから迎えることになる老後をできるだけ健康に過ごせるようにするためにも、空気環境に優れた理想の住まいだけは、いつか実現したいものだ。さて、どうなるか。

 老後に「真水で500万円」を実現するためには、いくつかの条件がある。、

条件1:取得のタイミングと取得物件

 日本においては、1980年代以降、3回の不動産バブルを経験している。そのたび、不動産価格の高騰とバブル崩壊による下落を繰り返してきた。そして令和6年の現在も不動産バブルではないかといわれている。

 理想は、最底値で購入し、最高値で売却することだが、それを完全に見抜くことはできない。ただ、少なくとも「高値づかみ」だけはしないように気をつけたい。したがって、「焦りは禁物」である。市場動向をよく見極めて、できるだけ割安な時期に取得できるようにしたいものだ。

 

 とはいえ、リーマンショックを底に、都心部の不動産価格は、ずっと上昇トレンドにある。コロナ禍においてさえ、価格下落は短期的だった。「不動産バブル崩壊」を待つだけでは、投資機会を得ることができない。そこで、「物件選び」が、重要になってくる。

 

 住宅地においては、「住みたい人がどれだけいるか」で、その地域の不動産相場か形成される。買いたい人が大勢いれば、値上がりし、逆に少なければ値下がりするという人気投票だ。その不動産が、「相場」に比べて、割高なのか割安なのかは、取引事例での比較が中心となる。

 

 その点、投資用不動産に関しては、「利回り」という分かりやすい指標がある。ならば、利回りが高ければ高いほどよいかというと、それにも落とし穴がある。高利回り物件には、「多額の修繕費がかかる」とか、「テナントの信用力に不安がある」など、それなりの「理由」があるからだ。

 

 「ロードマップ」での試算でも示したように、私は、「NOI利回りが5%程度の物件の購入が現実的」ではないかと考えている。賃貸需要が堅調な地域にあり、極端に古すぎず、後のトラブルや予想外の支出に悩まされる可能性が低い物件、こういう物件が、初心者には最も取り組みやすい。そして、こういう物件をNOI利回り5%以上で取得できるチャンスは、腰を据えて探せば必ずある。

 

 当然、利回りが低くローン金利が高い、新築ワンルームマンション等は、投資対象から除外される(新築ワンルームマンションに関しては、別の機会に触れたいと思う)。

 首都圏でいえば、山手線の内側の賃貸アパートも、特に築浅物件は「低利回り」という理由で、対象になりづらい。住宅系であれば、JR、私鉄の「やや郊外だが住宅需要は根強い地域の物件」や、「地方中核都市の物件」等が候補として浮かぶだろう。

 

 蛇足だが、あくまで「安心老後」を目指して不動産投資を始める物件としてという意味であって、「あえて問題物件を取得してバリューアップしたいセミプロ投資家」や「相続対策の富裕層」にも、こういう物件を薦めている訳ではない。投資家の属性によっても、取得すべき物件の性格が異なることは言うまでもない。

条件2:売却時期

 売却のタイミングは、とにかく自らの意思で決定できることが最重要である。何があっても「ローンを滞納して、期限の利益を失う」ことが無いようにしなければならない。

 そのうえで、一般的には取得後5年経過したあたりから、売却について考え始めるとよいだろう。いや、正確に言えば、「不動産を取得するときに売却のことを想定しておく」べきであり、「5年後の市況や投資家自身の置かれた状況を考慮して、実際に売却するかどうか判断すべき検討にはいるように」、というべきかもしれない。

 

 5年分の家賃収入で、ローンの返済も多少は進んでいるし、また、5年以上保有していれば、売却により生じた「譲渡益」への課税において、適用される税率が低いというメリットもある。値上がり益を得られるようなオファーがあれば、いったん利益確定して、ひと回り規模の大きな物件に買い替えることは、きわめて合理的な判断である。

 

「リターンを分解してみれば」で述べたように、インカムゲイン(家賃収入)での投資回収は、どうしても長期になる。好条件で売却できて、キャピタルゲイン(売却益)を得られるのであれば、それは、ボーナスをもらったようなもので、「老後の安定生活」への近道となるからだ。

 とはいえ、市況はよくてもよい買い替え物件がない(次の投資ができない)ときもあるし、マーケットが低調なときは、売却しても「譲渡損がでるだけ」ということもあるだろう。その時は、保有を継続して、チャンスを待てばよい。

 

条件3:アリとキリギリスに学ぶ

 収益用不動産を購入すると、その日から毎月家賃収入が入ってくる。と同時に、返済もスタートする。返済額よりも家賃収入が多ければ、お小遣いがもらえるようなものだから、その分で「旅行にでも行くか」とか「高級車に乗り換えるか」と、贅沢してみたくなるのが人情だが、それは目標達成には回り道となる。

 

 思い出して欲しい、ゴールは「老後の安心生活」だ。今はまだ、ゴールに向けて、歩き始めたばかりで、この先何があるかわからない。安心生活の経済的基盤となる「真水で500万円」を確実にするまでは、できるだけ最短コースをたどって欲しい。つまり、ローン返済後の家賃収入が残ったとしたら、それは、返済か次の投資のための資金として温存することだ。冬に備えて、夏にせっせと働いたイソップ童話のアリのごとく。

 何も、一切の贅沢を排除しろといっている訳ではない。サラリーマンや自営業者としての所得(本業の所得)のなかで、今まで通り楽しむことができるはずだ。ゴール達成まで「不動産投資のリターンは無いもの」と割り切っておけばよいだけの話である。

条件4:年齢と共に「債務」を減らす

 若いときは冒険もできるし、無理もきく。失敗してもやり直せばいい、まだまだ時間がある。しかし、齢(よわい)還暦ともなれば、仕切り直しはなかなかキツイものがある。だから、より一層の慎重さが必要になってくる。具体的な行動としては、借入金の残債を徐々に減らししていき、デフォルトリスクを小さくしていくことだ。

 

 特に、サラリーマンは、60代以降は、給与が減ることが一般的だ。病気になったり、体力が落ちたりして、収益の低下につながる一方で、医療費は嵩んでくる。借金さえなければ、多少のことがあっても、家賃収入が支えになって暮らしていくことができるはずだ。

 もちろん、全くの「借入ゼロ」じゃなくても構わない。資産と負債のバランスが、万一のときにも生活に支障が出ない水準に納まっていることが大切だ。アリとキリギリスのアリさん生活で頑張ったことが、積み重なって、この頃には大きなご褒美となって返ってくることだろう。

 

条件5:税金対策と変化対応

 「老後の安心生活を不動産投資のゴールにする」ことは、税金面でもメリットがある。

 

 一般的には、働くことによって得られる収入は、年齢と共に減少し、最終的には公的年金のみになっていく人が多いと思う。そのタイミングで、減少した収入に不動産からの収入が置き替わっていくことで、現役時代と同等の収入を確保することができる。つまり、所得税や住民税等の税金も、現役時代並みを想定しておけばよいということになる。

 

 不動産投資においては、建物や設備といった「減価償却資産」の減価分を費用として計上することが認められている。減価償却費が大きい場合は、不動産所得がゼロもしくはマイナスということもあり、その場合は、ほぼ税負担なしで運用益を手にすることができる。

 しかし、長年所有していると「減価償却資産(その多くは建物)」の(税務上の)耐用年数が経過して、「計上できる減価償却費がゼロ」という状態になる。

 

 所得税の課税対象は、サラリーマンなら「給与所得+不動産所得」だから、給与所得が高い現役バリバリ世代であれば、「家賃収入は変わらないのに課税所得金額が増えて税負担が大きくなる」ことになってしまう。

 

 その点、高年齢となり収入が減り、あるいは年金収入だけになった年代では、減価償却費による節税余地が減ったとしても、負担感は相対的に小さくなる。オーナーと不動産、両方の人生設計を考えてみても悪くないと思う。