不動産投資編 第8回 「安心老後」への道~基本条件 | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 老後に「真水で500万円」を実現するためには、いくつかの条件がある。、

条件1:取得のタイミングと取得物件

 日本においては、1980年代以降、3回の不動産バブルを経験している。そのたび、不動産価格の高騰とバブル崩壊による下落を繰り返してきた。そして令和6年の現在も不動産バブルではないかといわれている。

 理想は、最底値で購入し、最高値で売却することだが、それを完全に見抜くことはできない。ただ、少なくとも「高値づかみ」だけはしないように気をつけたい。したがって、「焦りは禁物」である。市場動向をよく見極めて、できるだけ割安な時期に取得できるようにしたいものだ。

 

 とはいえ、リーマンショックを底に、都心部の不動産価格は、ずっと上昇トレンドにある。コロナ禍においてさえ、価格下落は短期的だった。「不動産バブル崩壊」を待つだけでは、投資機会を得ることができない。そこで、「物件選び」が、重要になってくる。

 

 住宅地においては、「住みたい人がどれだけいるか」で、その地域の不動産相場か形成される。買いたい人が大勢いれば、値上がりし、逆に少なければ値下がりするという人気投票だ。その不動産が、「相場」に比べて、割高なのか割安なのかは、取引事例での比較が中心となる。

 

 その点、投資用不動産に関しては、「利回り」という分かりやすい指標がある。ならば、利回りが高ければ高いほどよいかというと、それにも落とし穴がある。高利回り物件には、「多額の修繕費がかかる」とか、「テナントの信用力に不安がある」など、それなりの「理由」があるからだ。

 

 「ロードマップ」での試算でも示したように、私は、「NOI利回りが5%程度の物件の購入が現実的」ではないかと考えている。賃貸需要が堅調な地域にあり、極端に古すぎず、後のトラブルや予想外の支出に悩まされる可能性が低い物件、こういう物件が、初心者には最も取り組みやすい。そして、こういう物件をNOI利回り5%以上で取得できるチャンスは、腰を据えて探せば必ずある。

 

 当然、利回りが低くローン金利が高い、新築ワンルームマンション等は、投資対象から除外される(新築ワンルームマンションに関しては、別の機会に触れたいと思う)。

 首都圏でいえば、山手線の内側の賃貸アパートも、特に築浅物件は「低利回り」という理由で、対象になりづらい。住宅系であれば、JR、私鉄の「やや郊外だが住宅需要は根強い地域の物件」や、「地方中核都市の物件」等が候補として浮かぶだろう。

 

 蛇足だが、あくまで「安心老後」を目指して不動産投資を始める物件としてという意味であって、「あえて問題物件を取得してバリューアップしたいセミプロ投資家」や「相続対策の富裕層」にも、こういう物件を薦めている訳ではない。投資家の属性によっても、取得すべき物件の性格が異なることは言うまでもない。

条件2:売却時期

 売却のタイミングは、とにかく自らの意思で決定できることが最重要である。何があっても「ローンを滞納して、期限の利益を失う」ことが無いようにしなければならない。

 そのうえで、一般的には取得後5年経過したあたりから、売却について考え始めるとよいだろう。いや、正確に言えば、「不動産を取得するときに売却のことを想定しておく」べきであり、「5年後の市況や投資家自身の置かれた状況を考慮して、実際に売却するかどうか判断すべき検討にはいるように」、というべきかもしれない。

 

 5年分の家賃収入で、ローンの返済も多少は進んでいるし、また、5年以上保有していれば、売却により生じた「譲渡益」への課税において、適用される税率が低いというメリットもある。値上がり益を得られるようなオファーがあれば、いったん利益確定して、ひと回り規模の大きな物件に買い替えることは、きわめて合理的な判断である。

 

「リターンを分解してみれば」で述べたように、インカムゲイン(家賃収入)での投資回収は、どうしても長期になる。好条件で売却できて、キャピタルゲイン(売却益)を得られるのであれば、それは、ボーナスをもらったようなもので、「老後の安定生活」への近道となるからだ。

 とはいえ、市況はよくてもよい買い替え物件がない(次の投資ができない)ときもあるし、マーケットが低調なときは、売却しても「譲渡損がでるだけ」ということもあるだろう。その時は、保有を継続して、チャンスを待てばよい。

 

条件3:アリとキリギリスに学ぶ

 収益用不動産を購入すると、その日から毎月家賃収入が入ってくる。と同時に、返済もスタートする。返済額よりも家賃収入が多ければ、お小遣いがもらえるようなものだから、その分で「旅行にでも行くか」とか「高級車に乗り換えるか」と、贅沢してみたくなるのが人情だが、それは目標達成には回り道となる。

 

 思い出して欲しい、ゴールは「老後の安心生活」だ。今はまだ、ゴールに向けて、歩き始めたばかりで、この先何があるかわからない。安心生活の経済的基盤となる「真水で500万円」を確実にするまでは、できるだけ最短コースをたどって欲しい。つまり、ローン返済後の家賃収入が残ったとしたら、それは、返済か次の投資のための資金として温存することだ。冬に備えて、夏にせっせと働いたイソップ童話のアリのごとく。

 何も、一切の贅沢を排除しろといっている訳ではない。サラリーマンや自営業者としての所得(本業の所得)のなかで、今まで通り楽しむことができるはずだ。ゴール達成まで「不動産投資のリターンは無いもの」と割り切っておけばよいだけの話である。

条件4:年齢と共に「債務」を減らす

 若いときは冒険もできるし、無理もきく。失敗してもやり直せばいい、まだまだ時間がある。しかし、齢(よわい)還暦ともなれば、仕切り直しはなかなかキツイものがある。だから、より一層の慎重さが必要になってくる。具体的な行動としては、借入金の残債を徐々に減らししていき、デフォルトリスクを小さくしていくことだ。

 

 特に、サラリーマンは、60代以降は、給与が減ることが一般的だ。病気になったり、体力が落ちたりして、収益の低下につながる一方で、医療費は嵩んでくる。借金さえなければ、多少のことがあっても、家賃収入が支えになって暮らしていくことができるはずだ。

 もちろん、全くの「借入ゼロ」じゃなくても構わない。資産と負債のバランスが、万一のときにも生活に支障が出ない水準に納まっていることが大切だ。アリとキリギリスのアリさん生活で頑張ったことが、積み重なって、この頃には大きなご褒美となって返ってくることだろう。

 

条件5:税金対策と変化対応

 「老後の安心生活を不動産投資のゴールにする」ことは、税金面でもメリットがある。

 

 一般的には、働くことによって得られる収入は、年齢と共に減少し、最終的には公的年金のみになっていく人が多いと思う。そのタイミングで、減少した収入に不動産からの収入が置き替わっていくことで、現役時代と同等の収入を確保することができる。つまり、所得税や住民税等の税金も、現役時代並みを想定しておけばよいということになる。

 

 不動産投資においては、建物や設備といった「減価償却資産」の減価分を費用として計上することが認められている。減価償却費が大きい場合は、不動産所得がゼロもしくはマイナスということもあり、その場合は、ほぼ税負担なしで運用益を手にすることができる。

 しかし、長年所有していると「減価償却資産(その多くは建物)」の(税務上の)耐用年数が経過して、「計上できる減価償却費がゼロ」という状態になる。

 

 所得税の課税対象は、サラリーマンなら「給与所得+不動産所得」だから、給与所得が高い現役バリバリ世代であれば、「家賃収入は変わらないのに課税所得金額が増えて税負担が大きくなる」ことになってしまう。

 

 その点、高年齢となり収入が減り、あるいは年金収入だけになった年代では、減価償却費による節税余地が減ったとしても、負担感は相対的に小さくなる。オーナーと不動産、両方の人生設計を考えてみても悪くないと思う。