「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」

不動産に関する正しい知識を身につけることで、老後安心して暮らせるだけの家賃収入を実現しましょう。住まいに関しては「資産になる家」について知りましょう。

はじめての方は「プロローグ」からお読みいただければと思います。

省エネ性能がローン控除の要件に

 

 マイホームの新築や購入をしたときは、住宅ローンの残高に応じて所得税の税額控除を受けることができる。住宅の取得に対する減税制度の歴史は古く、1972年の住宅取得控除に始まる。1980年代には「住宅取得促進税制」として、借入残高によって減税額を決める現在の形になり、長年、個人の住宅取得を後押ししてきた。

 

 この制度、その時々の経済状況と政府の意向を色濃く反映し、その規模を拡大したり縮小したりということを繰り返してきたが、2022年改正建築物省エネ法が成立し、2025年4月からの「新築住宅への省エネ基準適合義務付け」に先駆ける形で、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅については、「省エネ基準適合住宅」であることが、住宅ローン控除の必須要件とされた。※下図参照

 

省エネレベルの異なる住宅が混在する状況に

 

 上記の通り、新築住宅にかかる住宅ローン控除要件が、最低でも「省エネ基準適合住宅」とされたことは、過渡期の措置であり、2025年4月以降の建築確認申請を行う新築建物については、省エネ基準適合が義務化される

 

 また、省エネ基準適合住宅よりもより高性能な住宅には、さらに減税額が多くなる支援措置となっており、今後、省エネ基準適合住宅から認定長期優良住宅まで、異なる省エネ性能の住宅が混在することになる。さらに、新築時に非適合であった中古住宅も、リノベーションにより省エネ基準に適合させることは可能で、築年数が経過した住宅であっても高性能な住宅も存在することになる。

 

 住宅建築物に関わるエネルギー消費(業務部門+家庭部門)は、他部門に比べ大きく増加しており、これらの制度(改正)は、建築物における省エネルギー対策推進に対する、国の強い意思の表れと受け止めてよいだろう。

 一方、マイホーム取得を目指す人たちにとっても、地球環境負荷の低減、省エネによる生活コスト削減、暑さや寒さに対する住み心地の改善ということに加え、建物の「資産価値」という観点からも、「省エネ性能」が、考慮すべき重要ポイントになってきたといえる。

 

省エネ性能によって資産価値に差が生まれる

 国は既に、2030年度以降の新築住宅に対し、ZEHレベルの省エネルギー性能をもつように誘導することを決定している(閣議決定)。当然ながら、今後は、省エネルギー性能を高めた住宅の建築、ハウスメーカー等の広告・宣伝活動も活発化していくだろう。住宅の省エネルギー性に対する関心が高まることで、非適合住宅の売れ行きと価格の低下という現象が起きていく可能性は高い。さらには、適合住宅の中でも「ZEHレベル」以上か否かといったことも、買主の購入判断に影響を与えることも、容易に想像できる。

 

 他方、マイホーム取得を目指す人々の間で、十分にこれらの情報がいきわたっているとは思えない。まだまだ非適合住宅の販売数がある中で(新築でも約2割が非適合)、売主や仲介会社が、省エネ性能についてあまり触れることなく売買をまとめてしまうことも少なくないだろう。なにしろ、制度自体が過渡期である上に、現時点において、省エネ基準の適合は、あくまでも「住宅ローン控除の要件」のひとつにすぎない。

 

 もっと、わかりやすく言うのであれば、省エネ基準非適合住宅は、今後の資産価値低下をにらみ、大幅な値引きを要求してもよいのではないかと思う。少なくとも、将来、生じるであろう「基準に適合させるためのリノベーション工事」相当額程度は…。

 

 国交省の推計では、新築住宅の省エネ基準適合率は約9割、ZEH水準は約3割となっている(2020年時点)。今年の酷暑に象徴されるように、地球温暖化が加速する中、「果たして現状の省エネ基準で十分なのか」という議論も、この先、生じてくることも考えられる。

 マイホーム取得を予定している方には、これらのことにも十分に情報収集したうえで判断されるべきと申し上げたい。

「不労所得」という誤解

 不動産投資におけるゴール設定の重要性については、不動産投資編第6回でも述べた。私の提案は、「安心して老後をおくるための資産づくり」だ。「老後に不安なく暮らせる程度の収入を、不動産投資により獲得すること」、これがゴールというわけだ。

もちろん、マンションやアパートを何棟も所有し、大規模な賃貸業として生計を立てる、さらには「リッチな生活を目指す」ということを否定するものではないが、それは、「本業が不動産賃貸業になった」ということであり、「FIREして専業大家になったから、遊んで暮らせる」ということとは少々異なる。

 

 実際、成功した大家さんの話を聞くと、投資セミナーで勉強したり、金融機関、管理会社、不動産会社との関係づくりに腐心したり、中には「コスト削減のために、リノベーションや原状回復をDIYでやっています。」という涙ぐましい努力をしている人までいる。

 結局のところ「大家業に転身」したということで、「仕事」が変わったに過ぎない。

ならば、安定した(安定していない場合もあるかもしれないが)仕事を続けながら、副業としての賃貸業でもいいのでは?という考え方も出てくる。そして、自分自身の経験から、「老後のための資産づくり」がゴールなら、過大なリスクと労力によらずとも実現可能だと断言できる(努力とリスクがゼロということではない)。

 

例えば「年500万円」

 私の場合は、「60歳までに、真水(=ローン返済後の手取り額)が1年間に500万円」をゴールに設定して、不動産投資を開始した。

 60歳以降(=定年後)は、収入が減少したり、健康状態によっては働けなくなったりということが想定される。その時に、不動産賃貸から得られる手取り収入が、500万円あれば、長寿リスクへの備えになるし、年金給付も合わせれば、十分暮らしていけるだろう。

 

 「真水で500万円」とは、資産の保有状況としてどのようなパターンがあるだろう。下記は、融資金利1.5%とした場合に、500万円以上の手取り額を得られる組み合わせだ。

 

 これを眺めていると、なんとなく見えてくるものがある。

「長期の融資をめいっぱい借りられたら」「資産規模は大きい方が」「利回りは高い方が」…。欲を言えばきりがないが、銀行さえ協力してくれば、目標達成は簡単じゃないか!?(笑)

現実的なアプローチは、「働きながら…」

 ただ、現実問題はというと「融資」は思惑通りいかないことがほとんどだ。まず、既に「お金もある、資産もある」人には、「ぜひ借りて下さい。」と、金融機関の方から借り入れを勧めてくれるのに、普通のサラリーマンには、なかなか融資してくれない。

 また、新築物件には融資するが、築古物件については、渋チンで(笑)、金利が高かったり返済年数が短かったりする。ゆえに「高利回り物件」を探すのだが、かなりの田舎だったり、おんぼろだったりと、物件取得するには不安が大きい。かといって、新築物件は基本的には低利回りで、そもそも投資に向いていない。

 そう、賃貸需要に問題がない物件で、かつ、低利、長期の融資を受けようと思えば、たぶんNOI利回りはよくても5~6%だし、ある程度の自己資金も、銀行の信用も必要となって、それには「働いていること」が、一番の武器になるということなのだ。

 

ライフステージに合わせて、ゆっくりと

 仮に、40歳から不動産投資を始めて、50歳で資産1億円、ローンの残債が5000万円程度の状況がつくれていれば、60代に無借金の状況にもっていくことは可能だろう。建物が古くなって、多少家賃が下がったとしても、借金がなければ賃料収入のほとんどが手取りとして残る。

 

 融資条件が悪くなければ、追加で借り入れる等して、資産拡大をさらに進める手もある。不動産市況を見ながら、売却もうまく絡めることができれば、資産形成のスピードを上げることも可能だ。

 そのイメージとしては、「不動産投資編第7回「安心老後」への道~ロードマップ」をご覧いただければと思うが、その経路は幾通りもある。子供の有無や年齢、共働きかどうか、収入状況、その他、投資家が置かれたライフステージや価値観によっても、アプローチは異なる。

 

 私は時々、友人・知人を通じて、アパート建築や不動産購入、売却について相談を受ける。その時、物件や収支だけをみて答えを出すのでは、必ずしも正解とならない。その人の背景にある資産状況、リスク許容度によって答えは異なるし、家族との関係性も重要な要素となる。

 何より「そのことを通じて何を実現したいのか」、もしかしたら、相談者自身がまだ気づいていないかもしれない「目的」を明確にしないと、本当の答えは見つからない。

 そいういう意味で、不動産は人々の暮らしと密接につながりをもち、きわめて人間的だ。大家業を目指してFIREした人は、FIREが目的ではなく、その先に「実現したい生き方」が、あったはずだ。

 不動産投資は、そのためのツールに過ぎない。目的と手段を間違わないようにしたいものである。

 

 令和6年8月2日、日経平均株価は2200円以上下落し、終値で3万6000円を割り込んだ。日銀の利上げ発表と米国の利下げ観測から、為替は円高に振れた。東証の取引終了後もNYダウは600ドル以上下落しており、日本株は、週明けの取引開始後にさらに下落するだろう。

 

 金融市場のこのような変化は、日本の不動産市場にどのような影響を及ぼすのだろう。

 

 株で損失を出した外国人投資家が、穴埋めのために日本の不動産を売却する。円高基調になればなおさら売りに傾く。金利上昇は、資金調達コストの増加だから、賃貸用不動産の収益にはマイナスとなる。事実、Jリート(上場不動産投資信託)の価格も下げた(東証REIT指数:8月2日終値は、前日比マイナス1.57%)。

 

 住宅ローン金利もいずれ上昇し、利子負担のアップとなってくるのだが、冷静に考えれば、その程度は実はたいした額ではない。しかし、心理的には、住宅取得に慎重させる可能性が高い。

 さらに、アベノミクス以降続いてきた、不動産価格の上昇は、すでにエンドユーザーが手の届かない水準になっており、不動産会社が抱える販売用不動産の在庫が積みあがっている。

 財務基盤がぜい弱な中小不動産会社の中には、資金繰りに窮して「投げ売り」に走るところが出てくるかもしれない。

 その他、中東情勢はじめとする地政学的なリスク、米国の大統領選の行方等も重なり、先が読みづらく、当面は、株も為替も乱高下、不動産も荒れ模様となる可能性がある。

 

 こんな時、人はどうしても慌てたり、周りの意見に流されたりしがちであるが、不動産投資家にとって最も大切なことは、冷静に「クライテリアに戻ること」だ。

 

 クライテリア(Criteria)とは、「判断のよりどころとなる基準や尺度」のことをいう。

 

 不動産投資において大切なことはいろいろあるが、中でも「自分にとってのクライテリア」を理解することが何より重要である。

 

 「自分にとって」の意味は、「Aさんにとっての正解が、必ずしもBさんにとっての正解ではない」ということを指す。

 わかりやすい例をあげれば、年利0.5%で資金調達できる投資家は、都心一等地のネット利回り4%の物件を取得しても利益がでるが、2%でしか調達できない投資家は買うべきではない。

 ファイナンス条件以外にも、年齢、収入、職業、ライフステージ、資産状況等、投資家が置かれた状況により、「リスク許容度」は、全く異なったものになる。

 

 つまり「その人固有のクライテリア」が明確でなければ、投資すべき対象は明確にならないのだ。クライテリアが明確でない人は、変化するマーケットの中で、他人の言動に煽られたり、焦ったりして、間違った物件に投資してしまう可能性が高い。

 

自分のクライテリアをもつためには、普段からこんなことを整理しておくことだ。

①不動産投資を通じて、どのような資産形成をしたいのか。

②暮らしに負荷をかけずに用意できる資金はいくらあるのか。

③どんな条件で資金調達ができるか。

④この先の収入、支出の見通し。

 

 他にも考慮すべき要素はあると思うが、これらの整理を通じて「自らのリスク許容度」を把握し、普段から「投資対象とすべき不動産」のイメージを具体化しておくことをお勧めする。

 市場が荒れたときには、様々な物件情報がもたらされる。クライテリアにマッチした不動産と出会う可能性も高くなるだろう。

 

 不動産投資の目的は、自分と家族の幸福であるべきだと考える。そのためには、計画的かつ着実に一歩ずつ、時間をかけて、買い進めていくことだ。

 不動産投資は、「物件ありき」の面が否めないが、かといって「買うべきでない物件」に手を出すことは避けなければならない。誤った物件の取得は、幸福実現の遠回りになってしまうからだ。

 

 この先、リーマンショック以来、十数年ぶりの「買いのチャンス」がやってくるかもしれない。クライテリアを理解して、チャンスを捕まえてほしいと思う。

ホントは「まちなみ」が大事だけど

 今回は、「かっこいい家」つまり住宅の「みため=意匠」について考えてみたい。私はプロのデザイナーではないので、あくまで住宅の営業マンだった時の経験からの個人的な意見である。「賛同しかねる」という方もおられるとは思うが、ひとつの考え方ということで、温かく見守ってほしい。(笑)

 

 ヨーロッパのまちを旅して、「個性的で整った家並みの美しさに感嘆した」という経験がある人は多いだろう。あるいは、白川郷や馬籠宿に代表されるような、歴史的景観を魅力的に感じてしまうのはなぜだろう。

 それは、ひとえに「統一感」ではないかと、私は思う。

建物の高さや色、素材、形。伝統的にそこで手に入る「地場」の材料を用いて造られるから、自然とまち並みに統一感が生まれる。もちろん、電柱のように致命的に無粋なものが存在しないことも大きいと思うが…。

 視点を変えれば、香港や新宿歌舞伎町のような、雑多なごちゃまぜ、統一感のかけらもないような街も、それはそれで人間臭くて面白味があるともいえるが、それを美しい(景観)というには無理がある。

 

 

 ただ、現実問題としてまち並みは個人では創れない。歴史や文化に紐づいて、自然発生的に形成されたか、都市計画といった「ある意思」に基づき規制された建物群でもない限りは…。

 

 結果として、ほとんどの住宅地では、ばらばらな外観をもつい家が建ち並ぶことになる。なので、ここでは「まちづくり」は断念して、あくまでも「個人住宅」として(私が思う)「かっこいい家」の条件の話だ。

 ふう、前置き長い、ごめんなさい。あ~、なのに、もうひとつ前置き。「お金持ちの豪邸」も除く。

 豪邸は、そもそも「建物」がほとんど見えない。門と塀と車庫でファサード(外観)を形成している。だから、豪邸も除外して、あくまでも一般的な住宅、建物に関しての「かっこよさ」がテーマとなる。

 

「かっこいい」か「かっこわるい」か

 やっと、本題。そして、いきなり結論。

 「かっこいい」と「かっこわるい」を分ける要素、それは「サッシ」「窓」「雨樋」だ(と、私は思う)。

 

 20数年前、マイホームを新築という一大決心をしたものの、我が家の最大の難点は「ちっちゃい」ということだった。その時の気持ちを当時の自分に戻って言うなら「だってお金がなかったんだも~ん!」と「住む人もちっちゃいから、まいっか」だ。

 で、せめて「見えるところだけでもおしゃれにしたい」、いや「見えるところが少ない分だけ、お金が少なくても何とかなるのでは」と思いなおし、何十軒という家を見て回った。住宅展示場の家は、大きすぎて参考にならないので、住宅地をぐるぐる回って、参考になりそうな家を探して歩いたのだ。

 その結果、たどり着いたのが上記の3つの答えだった。

 

  • サッシ

 はじめは分からなかった。ヨーロッパの建物とか、日本でもおしゃれな店舗とか、何が違うのだろう…と。そこで、はたと気がついた。日本のいわゆる「洋風住宅」、いいかえれば「ハウスメーカーの家」は、「サッシが外壁より出っ張っている」しかも、そのサッシは「アルミ製で薄っぺらい」、これがとてつもなくチープに見えたのだ。※あくまで個人の感想ですm(__)m

 

 まあ、いろいろあるのだと思う。多雨の日本で雨漏りさせないとか、コストをできるだけ抑えるとか…。しかし、薄っぺらい「枠」が出っ張ってきて、そのうち雨だれがシミになってと、どうも好きになれない。ヨーロッパの住宅は、サッシ(ほとんどの場合木製)は、壁より内側に納まっていて、その窓のつくりだす印影が美しい、さらにそこに四季折々の花が飾られていたりして、どこをとっても絵になるのとは、全く対照的だ。

 

  •  窓の位置と形

 注文住宅の営業は、お客さん(お施主さん)といろいろな話をするのだが、「間取り」について、やり取りすることも多い。設計士と打合せしているときも、営業マンは同席している。間取りはほとんどのお客さんにとって、一番の関心事だ。

 

 「ここはソファーを置くから、窓をもう少し右に」とか「私は、明るい部屋がいいからとにかく窓を大きく」とか、「コーナー出窓に花を飾りたい」とか、いろんな要望を取り入れるうちに、いろんな形の窓がいろんな場所にできることになる。

 特に、浴室やキッチン、トイレ等が並ぶ北側ともなれば、格子付きの窓やら勝手口ドアやら、下手するとシャッターつきなんて言うのもあって、種類も形もバラバラの窓が、無秩序に並んでいたりする。そして南側にはバルコニーがついて、そこに布団や洗濯物が鎮座することになる。

 ヨーロッパで洗濯物を干しているところなんて、みたことないよお~。ビルとビルの間に干した洗濯物を観光名物にしているナポリの旧市街くらいじゃないかなあ…。

 

 これは、絶対「設計士がアドバイス」して、窓の形状、並びを提案しないといけないのだが、ハウスメーカーの設計士は、「数」をこなさないと稼げないので、余計なアドバイスをして、しかも施主の要望を否定してまで、「かっこいい外観にしましょう」とは言わないのだ。

 

 よーく観察してほしい。「かっこいい家」は、窓の位置にこだわっている。そして、「モールディング(化粧のための額縁)」等で、薄っぺらいサッシがチープに見えないように工夫している。

 

  • 雨樋

 あまり意識しないが、「雨樋」も外観をチープに見せていると思う。今は、多少形状が改善されたが、大抵は安っぽいプラスチック(塩ビ)製。おしゃれな店舗で雨樋がむき出しのところなんてないでしょう??

 これはもう隠すしかない。(笑)

 実際、「素敵だな」と思った家は、雨樋の処理も上手だった。内樋(=軒の内側に樋を隠してしまう=隠し樋)という言葉も、この時に知ったことだ。

 

  • 〆のごあいさつ

 わがまま勝手なことばかり申し上げ…「そんな話聞きとうないぞ~」というお叱りの言葉もなかったのは、私の人徳のいたすところと…感謝感激でございます。(笑)

 皆様のご健康とご幸福を心からお祈り申し上げ、かっこいい家講座、予定終了でございますm(__)m

人生幸朗・生恵幸子のボヤキ漫談風(知らない方がほとんど。YouTubeで検索して下さいね!)

 「『老後の年金代わり』ならリートでよくね?」問題というのをご存じだろうか?おそらく初めて聞く方がほとんどではないか。なぜなら、私が勝手にそう呼んだだけなので。(笑)

 

 つまらない冗談はさておき、ワンルームマンション投資を勧めるセールストークの代表は「老後の年金代わり」ではないだろろうか。今回は、そのことについて検証してみたい。

 

 例えば、次のようなワンルームマンション。資料は、某不動産情報サイトに掲載されている物件のものだ。世田谷区の三軒茶屋、表面利回り約4.4%、1998年の建築なので、築後26年である。

 その他の条件を下記に整理する。

所得税の節税になる!?

 この物件を、フルローンで取得することができたとしたら収支は次のようになる。ワンルームマンション投資に融資する金融機関は限られるが、ここでは年利1.5%、20年返済の条件で2520万円の融資を受けられたと仮定する。

 年間のNOIは約71万円だが、元利返済後の手取り(CF:キャッシュ・フロー)は、マイナス75万円、そして、減価償却費98万円が費用計上できるので、不動産所得はマイナス64万円、最高所得税率が45%の高所得者なら、29万円が節税できる計算になる。

 支払利息の額が徐々に減ってくることや、管理や修繕に伴う支出がその年ごとに異なるので、若干変動があるが、概ねこの状態が20年間続く。

 

 そして21年目から、ローン完済のご褒美(笑)として、約71万円(実際にはその時の賃料等によるが)が手取り額となる(ただし、21年で減価償却費の計上は、ほぼ「終了~!」となるので、所得税はばっちり課税される)。

 

 45歳でこの物件を購入したとして20年、「65歳になれば収入も半減して所得税率も下がっている」と考えるなら、これも「老後の年金代わり」と言えなくもない?しかも、無借金のワンルームマンションが資産として残っているのだ…。

 ???ちょっと待った! 20年間、返済額に足りない不足分を給料から補ってきたのはどうなる?75万円×20年分で、約1500万円も穴埋めしてきたではないか!? 節税にはなったにしても。

 

 ということで、結局のところ、この投資の運命は、「20年後、つまり築45年を超えてしまったこのワンルームマンションが、いくらで売れるか」ということに委ねられるのだ。ざっくり言えば、1500万円で売れたら収支トントン、2000万円で売れたら500万円の利益…20年もかかって…。

 こういうのを「骨折り損のくたびれ儲け」という。それはそうだ、あとで述べるように、実際の投資利回りは3%にも満たないのだから。

 

現金で買うなら、毎年71万円のお小遣い?

 65歳で定年退職した人が、退職金で購入するのなら、これまさに「年金代わり」。

家賃‐必要経費=約71万円(これをNOI:Net Operating Incomeといいますよ)のお小遣いと思えば、わるくなくなくない?

確かに、退職金を普通預金に預けたところで、利息は1%にも満たない。2523万円(この物件の総投資額)を銀行に預けるよりも、ワンルームマンションに投資して、毎年71万円が入るのなら、その方がよほど賢明ではないか…。

 

 と、思いたくもなるが、残念ながら答えはNOである。

 そもそも、売買金額2380万円に対する年間収入は105万6000円(8.8万円×12ヶ月)、表面利回り4.4%と、一見よさそうな利回りに見えるが、仲介手数料や各種税金等の取得経費を含めると、総投資額は間違いなく2500万円を超えてくる。一方、家賃から管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料などの支出を差し引いたNOI(純収益)は、71万円/年ほどだ。つまり、利回りは3%にも届かない。

 

「リートでよくね!?」問題の検証

 さて、ようやくJ-リートに話は移る。

 

 ご存じの方も多いと思うが、J-リート(REIT: Real Estate Investment Trust)は、オフィスビルや商業施設、マンションなど様々な不動産に投資、運用して、その収益を配当として投資家に分配する不動産投資信託のことだ。

 現時点で、58銘柄が上場しており、予定配当利回りが4%を超えるものも少なくない。上場していることから、急に現金化したいときは、現物不動産投資よりもはるかに簡単に売却が可能だ。もちろん、価格はその時の市場状況により左右されるので、元本割れのリスクはあるが、不動産が裏付け資産になっているので、株式のように「倒産して株が紙くずに」ということにはならない。

 

 現金投資が原則だから、低利ローンによるレバレッジ効果は期待できない、現物不動産のように減価償却費の計上による節税はできない、といったデメリットもあるにはあるが、投資対象となっている不動産は、普通の個人投資家には手が出ないAクラス物件が中心だから、暴落や運用の失敗という可能性は低いといっていいだろう。

 

 そもそも、年金生活に入った高齢者は、節税に対する必要性は低下しているし、安定的な運用という意味でもワンルームマンションの比ではないだろう。

 ということで、検証結果は、「『老後の年金代わり』ならリートでよくね?」正解! となりました!

 

 

 今回は、趣向を変えて「不動産の勉強や情報収集に役立ちそうなサイト」をご紹介します。これ以外にも、膨大な数のサイトがあるので、ほんの一部ですが、参考にしていただければと思います。

 

 不動産情報ライブラリは、国土交通省が、それまで提供していた「土地総合情報システム」を令和6年3月末で廃止し、同年4月から不動産情報ライブラリとして、スタートした不動産…というより主に土地に関する情報提供サイトだ。

 こちらの広報にあるように「地価公示と都道府県地価調査、土地取引情報」に加え、学校や医療機関等の施設や、ハザードマップ情報等を同じ地図上に表示できるようになったことが特徴である。これにより、例えば「自宅が建っている土地の相場が、凡そどのくらいか」ということを、知ることができる。

 一方で、個別の不動産取引情報は、特定できないように加工されており、ピンポイントでの取引事例を把握できるわけではない。実際の不動産取引においては、「道路一本隔てただけで、大きく価格が違う」ということも少なくないわけで、不動産会社が提供する「価格査定(そこに至った根拠を含む)」に、取って代わる、もっと簡単にいえば「自宅がいくらで売れるかわかる」といった類のものではない。

 ピンポイントで価格を出してしまうと、個人情報保護との兼ね合いが難しくなるからやむを得ない点はあるのだが。

 

 また、「不動産関連情報を網羅的に地図上に表示」することにこだわった結果だと思うが、ひとつひとつの情報は中途半端で、結局、他のサイトで調べないと十分な情報は得られない。操作も若干まどろっこしいので、個人的にはストレスを感じる。

 一例をあげれば、都市計画情報は、用途地域や地区計画等ある程度の情報は得られるが、開発や建築に関する制限はそれ以外に多数あり、改めて自治体が提供する「都市計画情報」を見に行かないと、情報量としては全く不十分だ。

 私見としては、土地価格に関する情報提供に徹して、むしろ国税庁の「路線価」情報と連携した方が使い勝手がよいと感じる。

 「路線価」や路線価が無い場合の「評価倍率」を調べることができる。

 路線価は国税庁が相続税や贈与税の算出のために決めている土地の単価で、道路に割り振られている。路線価を基に、その路線(道路)に接する土地の「課税評価額」を導き出す。路線価が定められていない地域(倍率地域)では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて課税評価額を算出するが、その倍率を「評価倍率」といい、同様にこのサイトから調べることができる。

 

 

 マイホームであれ、投資用物件であれ、不動産を買いたいと思う人にとっても、賃貸での引っ越し先を探したいと考えている人にとっても、一番の関心事は、実際に「売却中、賃貸募集中」の「物件情報」ではないだろうか。

 不動産仲介会社向けにはレインズ(REINS)という物件情報を登録、検索できるシステムがあるが、これは一般の方はアクセスできない。その点、アットホームについては、誰でもアクセス可能で、登録物件数もレインズに負けないくらい多い。保有物件を売却したいと考えている人にとっては、類似物件の売り出し価格を調べるといった使い方も可能である。運営は、民間企業のアットホーム株式会社。なお、不動産会社向けの情報サイトも別途運営している。

 

 株式会社ファーストロジック(2024年10月25日に「楽待株式会社」に名称変更予定)が運営する「不動産投資家向け物件情報サイト」。物件情報もさることながら、投資家の経験に基づくコラムや時宜を得た動画配信も楽しい。無料会員でも十分に楽しめるし勉強になる。「有料会員向限定」あまり増やさないでください、お願いします。(笑)

 

 健美家株式会社が運営する「投資家向け物件情報サイト」。同社は、2020年に株式会社LIFULLの子会社となっている。

 

 株式会社LIFULLは、一般向け住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」も運営しているが、田舎暮らし、地方移住等に関心がある人向けには、この「空き家バンク」が面白い。「実家が空き家になって…」という人にも参考になる。

 

 株式会社ジェクトワンが運営する「空き家活用」のための情報提供サイト。空き家所有者のお悩みに対し相談にのってもらえるかも…。

 各方面にほける調査、研究を行っているニッセイ基礎研究所は、不動産市場に関するマクロ分析についても定評がある。時々はチェックしておきたい。

 

 不動産専門チャンネルではないが、PIVOT株式会社が配信する動画の中には不動産に関連したものが結構ある。深く広く学ぶには、書籍が一番だと思うが、わかりやすいという面では動画配信にはかなわない。一流のゲストが分かりやすく解説してくれるのもありがたい。

 

 横浜で不動産会社を経営する山内真也さんのYouTubeチャンネル。アパート、マンションをはじめとする投資用不動産取引における注意点やトラブル事例などを分かりやすく紹介、解説している。投資家への注意喚起という点で、とても勉強になる。

 

 

 不動産投資、マイホームとは直接的にはつながらないかもしないが、建築史はじめ世界の家づくり、まちづくりに関する見聞を広めるには最適。建築を学んだことがない、全くの素人にも入門編として楽しめる。

 「減価償却」とは、建物等の価値を会計上減少させていく手続きをいいます。減価償却によって計上される費用が「減価償却費」です。価値の減少分を費用とみなしている訳です。土地については、減価償却はありません。

 建物、建物附属設備は、その構造や用途により「法定耐用年数と償却率」が定められていて、決められた計算方法によって「減価償却費」が算出されます。

 

 「減価償却費」は、現金支出を伴うことなく「費用」として計上し、「不動産収入」から差し引くことができます。その分、不動産所得が小さくなり、所得税や法人税が少なくなる効果があります(ただし、売却時の譲渡所得の計算においては、建物の未償却分が小さくなった分だけ譲渡益が増えてしまいます)。

 

 節税のため「減価償却費がより多くなる物件を取得したい」という買主は、少なくありません。そんなこともあって、不動産売買の取引では、「売買金額で合意したが、土地建物の比率でもめる」ということがしばしば起こります。

 

 売買金額(消費税込)1億円で合意し、土地建物の比率に下記AとBの二つの考え方があったとします。

売買代金の内訳

A

B

売買代金(税別)

9300万円

9500万円

土地代金

2300万円

4500万円

建物代金

7000万円

5000万円

消費税(10%)

700万円

500万円

売買代金(税込)

1億円

1億円

 

 建物の残存耐用年数(償却期間)が、仮に10年だとすると、1年あたりに計上できる減価償却費は、Aの場合は770万円、Bの場合は550万円となり、1年あたり220万円の差が生じます(税込経理方式を採用している場合)。

 実効税率が30%と仮定すると、Bの税負担がAよりも1年あたり66万円多いということになり、当然ながら買主は「Aがよい」、売主は「消費税別の売買価格が高いBの方がよい」となる訳です。

 

 土地建物の比率は、それぞれの「固定資産税評価額」の割合にすることが多いのですが、これも慣例的にそうすることが多いというだけで、あくまでも「売主と買主の合意により決定」するものです。

 

 解決策としては、「交渉の早い段階から売買代金の内訳についても確認する」のが一番です。

気の利いた営業マンなら、その辺りも最初から織り込んで、条件交渉してきます。こういう営業マンに出会うと「おぬしできるな!」という気持ちになります。(笑)

 「不動産投資でFireを目指す」という人がいる。Fireとは、家賃収入を始めとする投資から生じる運用益で生活できる状態になり、会社勤めを辞めることだ。

 そもそも「生まれながらにお金持ちの人」や、「事業で成功して資産家となった人」は別として、一般のサラリーマンが不動産投資によってFireすることは可能なのだろうか?

 

下図を見ていただきたい。

 

 例えば、1億円相当の不動産を保有し、年間のNOI(税引前純収益)が、資産評価額に対し5%のリターンだとすると、LTV(Loan To Value,負債比率)が、90%、50%、30%の場合におけるローン元利返済後の手取りキャッシュ・フローは、それぞれ127万円、293万円、376万円だ(返済期間は30年と設定)。

 参考までに、期間30年での減価償却費の額も記載したが、NOIの67%程度なので、支払利息を考慮しても不動産所得はプラス、したがって税引後の手取り金額は、これより少ないということになる。

 

 まあ、その辺りの細かい数字は無視するとしても、不動産収入だけで生活を成り立たせようとした場合、LTVが90%では(返済後のキャッシュは382万円なので)資産3億でも厳しいだろう。(「300万円でもやりくりできる」という人は、いるかもしれないが。)

 生活コストが高い都市部に暮らし、家族も抱える人なら、相当質素な生活を送ったとしても、「最低でも手取り収入として700万円以上は必要」だと考えれば、Fire可能となるのはローンを払い終わる、つまり「NOI=手取り金額」となる30年後ということになる。

 

 「いや、自分は何が何でも早期退職したいのだ。」と考える人は、とにかく「できる限りの借金をして資産規模を増やす」方向に行くのか、「頑張って働いて負債を減らす」のか、まあ、そのミックスということもあるかもしれないが、いずれにしても方向性は二つあるということだ。

 

 私は、不動産投資の目的を「安心」とりわけ、「老後の安心生活」においており、また、この目標設定であれば、「フツーのサラリーマン」が過大なリスクを負うことなく、実現可能であると主張している。私自身の例でいえば、できれば60歳、遅くとも65歳までに「真水(=ローン返済後の手取り)で500万円のキャッシュ・フロー」実現を目指してきたが、おかげさまで64歳の現在、それは実現できている。

 その経験から申し上げたいことは、次の3点である。

  1.  ハイ・レバレッジの資産拡大はリスクが大きい。
  2.  働きながら資産形成を目指す方が
  3.  キャピタルゲインを上手に取り込み、目標達成を前倒し

 

ハイ・レバレッジの資産拡大はリスクが大きい

 1の理由は、「負債額が大きいと、不測の事態に対応できない可能性が高くなる」ということである。「借入状況とキャッシュフロー」にある資産の保有状況でいえば、1億円の資産をLTV30%で保有した時のキャッシュ・フローは376万円、3億円の資産をLTV90%で保有した時のそれは、382万円で大差がない。

 もちろん、30年経って返済を終えれば、「前者は無借金の不動産が1億円、同じく後者は、3億円」もしくは、「前者は、手取り額(NOI)が500万円、後者のそれは1500万円」(NOIは現在と同額とした場合)ということであり、後者の方が3倍も収入が多いということになる。

 

 それでもどちらがよいかといえば、私なら圧倒的に前者である。その理由は他でもない「LTV90%はデフォルトリスクと背中合わせ」ということに尽きる。

 不動産投資は、投資期間が長い。その間、想定外のことは絶対に起きると考える方が自然だ。現在、かなりの確率で起こりそうなのが金利上昇である。借入額が大きければ、当然、その影響も大きい。日本の総人口は、2004年12月をピークに減り続けており、賃貸需要を支えてきた世帯数の増加も2030年には、減少に転じる。2030年といえば、ほんの数年先だ。加えて、空き家は増加し続けており、普通に考えれば、賃貸住宅市場の競争激化は避けられない。

 

 稼働率や賃料水準が下がり、そこに金利上昇による返済額の増加が重なるようなことが起こらないと、誰が断言できようか。さらに、現在のようなインフレが続けば、水光熱費をはじめとする保有コスト、修繕費等も上昇する。そんな時、借入額が大きいと返済に支障をきたし、物件売却を余儀なくされることさえ考えられる。

 

 そういう意味で(返済期間との兼ね合いもあるが)、LTVをある程度下げて毎年のキャッシュに余裕がある状態にしておくことが、リスク・マネジメントとしてとても重要といえる。

 

 もちろん、「多額の自己資金を用意して不動産を購入することは、現実的ではないこと」や「低金利を活用したレバレッジで運用効率を上げる」こと、それに、そもそもではあるが「自分の稼ぎではなく、家賃支払いという形で、他人が実質的にローンを返済してくれること」といった、不動産投資のメリットを生かしたいのも人情だ。

 

 だからこそ、「いざというときに対応できるか」ということを常に念頭に、「しかるべきスピード感でLTV50%程度の水準までもっていくこと」を目指してもらいたいと思う。※10年程度でLTV50%までになれば、かなり安心だし、次の展開も考えやすくなる。

 

働きながら資産形成を目指す方が「楽」

 「働いて収入を得ている」ということはとてもメリットが大きい。

 

 まず、「金融機関に対する信用力(より低利で借りられる)」。就労による対価を余裕資金としてを温存(早い話が貯金)しておくことで、「急な支出に対応し、ローンの滞納を回避」、さらに資金的なゆとりができれば、保有物件の残債の状況をみつつ、「買い換えや新規取得の頭金として活用」といったことが可能になる。

 

 そして、「働けるうち」は、「賃貸物件からの収入に依存する必要がない」、つまり、家賃から得た収入を、生活のために消費せず、財務内容の改善や資産拡大に振り向けることができる。

 定年退職後の第二の人生で、給与収入が減少した頃に、借入金の返済を終えるような計画にしておけば、少なくとも金銭面で不安な老後をおくることはなくなるだろう。

 「不動産投資編第6回~8回 『安心老後への道』」を参考にしていただけると、このあたりのイメージを掴んでいただけるのではないかと思う。

 

 余談だが、働いていると人間関係やトラブル等がつきものだが、「不動産からの収入がある」という安心感が、心のゆとりとなりストレスを軽減してくれる。結果として、仕事も長く続けられるという、私の説に皆さんはご賛同いただけるだろうか。(笑)

 

キャピタルゲインを上手に取り込み、目標達成を前倒し

 「不動産投資編第3回 リターンを分解してみれば」で述べた通り、インカムゲインだけで投資資金を回収するのは時間がかかる。それゆえ、「低利」融資を活用し、レバレッジをかけてリターン効率を高める訳だが、同時にリスクも高くなる。

 投資物件を売却し、利益確定することは、投資回収に係る期間を短縮し、効率的に資産を増やすための手法のひとつとなる。と同時に、ひとまず、ハイ・レバレッジによるリスクをリセットすることにもなる。

 

 「安心老後」実現のためには、「年齢と共にLTVを下げて行く」ことが、基本戦略。1億円の資産規模でも無借金なら年500万円の収入だ。何歳でどのような資産の保有の仕方をすれば、ご自身にとって好ましい状態なのか、その目標に向かって、キャピタルゲイン(売却益)を戦略的に活用していただければと思う。

 

 最後に、Fireというのはサラリーマンから「専業大家」に転身するということに他ならない。その多くの人が、自ら管理を行うなど「大家業かつ管理業」を勤しんでおり、完全な「ハッピーリタイアメント」の人は案外少ないのではないかと思う。

 「専業大家」を目指す位だから、結局「不動産のことが好き」な人に外ならず、何かしら不動産の仕事に関わっていたいのではないかというのが、私の見方だ。(笑)

最も身近な投資用不動産

 「不動産投資」と聞けば、最初に浮かぶのが「賃貸アパート」や「賃貸マンション」でしょう。学生時代に木賃アパートに下宿…というのは、昭和世代のイメージかもしれませんが、「アパートやマンション(アパマン)を借りて生活した経験が全くない」という人の方が「少数派」ではないかと思います。それだけ身近で、投資家にとっても分かりやすいのがアパマンです。

 

 高度経済成長期には、「住宅すごろく」という言葉がありました。「地方から出てきて就職し、社宅やアパート住まいを経て、分譲マンションをローンで購入、最後は郊外の分譲地に夢の一戸建」というのがサラリーマン憧れの住宅キャリアでした。ところが、ニュータウンと言われた団地や戸建て分譲地は、今や高齢者の町となり、空き家も目立つようになってしまいました。

 

 アパマン投資は、少子高齢社会となった日本の社会構造と密接につながっており、投資家にとっては、「分かりやすい」が「将来が不安」な投資対象でもあると言えます。現に賃貸管理の現場では、「高齢者の孤独死」は、珍しいことではなくなり、その処理を受託する「特殊清掃業」は成長産業といわれています。

 ところが、この環境変化をどうとらえるのかという点にかんしては、人によってばらつきがあるようです。不動産投資セミナーで語られる内容にそれが現れています。

 曰く、「単身世帯の増加を根拠に、単身者向けワンルームマンションに投資せよ」「地方の高利回り物件に勝るものなし」「ぼろ家投資こそ狙い目」と…。

 

 さあ、「アパマン」投資家は、失敗しないために何を考え、どう行動していけばよいのでしょうか。

 

競争が激しくなる

 アパマン経営に影響を及ぼすと考えられる「環境変化」を拾ってみたのが、次の図です。

 

 アパマン投資を取り巻くマクロトレンド

マクロトレンド

顕在化

少子・高齢・多死社会、核家族化、東京一極集中・不動産需要の地域格差、観光(インバウンド)、多拠点生活、ICT、地球温暖化

不確実要因

外国人(移住・定住)、都市計画、企業誘致、学校、コンパクトシティ

 

例えば、人口の最大ボリュームゾーンである団塊の世代は、いま、後期高齢者となり、この先お亡くなりになる人が増えることになります。

所有していた自宅は空き家になり、相続対策のために建築したアパートや、タワマンに代表される節税目的のマンションは、子供に引き継がれて行きます。不動産保有に消極的な子供は、(節税という)役割を終えたアパマンの売却を望み、その結果、大量のアパート・マンションが市場に供給されることになるでしょう。

そこに「人口減少」です。今までは、「世帯数の増加」が人口減少をカバーし、賃貸需要を支える役割を果たしてきましたが、この世帯数の増加も2030年の5773万世帯をピークに減少に転じます(国立社会保障・人口問題研究所による令和6年推計)。

どこをどうひっくり返してみても、この先の賃貸市場は「競争が激化する」と考えるのが自然ではないでしょうか。

 

変化対応で需要を見出す

この「人口減少」「世帯数減少」を背景にした競争激化に対し、アパマンオーナーにはどんな対応策が残されているでしょうか。「2030年までに売却、手じまい」「賃料値下げ」…、まあ、それも一つだと考えますが、積極的な取り組みとして「環境変化に対応した新たな価値を提供すること」が、基本戦略となるはずです。

 

コロナ禍の影響を受けたものの、インバウンド観光客の増加は、「民泊」という新たな需要をつくりだし、またコロナ禍によるライフスタイルの変化が、多拠点生活、ひいては地方の空き家再活用という需要も生み出しました。さらには、地球温暖化が引き起こす災害の数々は、賃貸住宅においても、環境負荷低減への対応を不可避のものとしています。

 

一方で、「就労歓迎、移民不可」という、いびつな入国管理制度の下で働く外国人に関しては、、明確な方向感が見えていません。熊本や宮城での半導体企業誘致が引き起こした、不動産市場へのインパクトは、まさに「現在進行形」ですが、大きな「賃貸需要の増減」を引き起こす、施設の移転や都市計画の見直しは、常に注意し続けなければなりません。

 

アパマン投資は、結局のところ「賃貸住宅経営であり、経営者として「テナント」「入居者」のニーズを的確に受け止め、あるいは新たなニーズを掘り起こし、価値提供することによって家賃という報酬をいただくビジネスです。ならば、不確実要因も含めたマクロトレンドの中に、これからの賃貸経営のヒントが隠れているはずです。

 

 競争激化への対策は?

変化対応

①付加価値提供による差別化

②ニッチ分野への特化

③短期出口戦略(変化前に利益確定)

 

事例紹介

 このような中で、私が取り組んだ外国人向けシェアハウスと戸建賃貸の事例をご紹介したいと思います。

 

 仙台市郊外にある一戸建住宅をリノベーションして、知り合いのフィリピン人(と、日本人も)が住むためのシェアハウスを用意しました。ポイントは、入居者全員を「知っている」ということです。

 

 日本で働く外国人にとっては、何かと生活上の不安がつきまといます。私は、貸主であると同時に彼らの相談相手でもあります。彼らは、私を信頼し、何か問題が生じると助言を求めてきます。

 仕事上の相談のこともありますし、シェアハウス内のちょっとした問題のときもあります。後者に関しては、最初は、私がルール作りをして説明していましたが、今は、住民同士の交流が進み、互いに話し合いながら、全員が心地よく過ごせるよう、自分たちでルールを改定し、私には同意を求めるだけになっています。

 

 東京で所有する戸建賃貸物件は、大手管理会社に長く管理をゆだねていましたが、あるトラブルがきっかけで、自ら管理するようにしました。

 管理といってもほとんどは設備の不具合、修繕です。以前は、「入居者と顔を合わせることが、煩わしいのではないか」と考えて、管理を委託していましたが、入居者と直接やり取りする方が、むしろ関係は良好で、しかも効率的です。

 もちろん、賃貸借契約前に入居予定者と顔合わせをし、連絡先を交換し、「何かあればすぐに連絡下さい。」と伝えた訳ですが、互いに挨拶したことで、理不尽なクレーム的なものは一切なく、SMSによるやり取りは、(管理会社という介在が無い分)スピーディーな対応が可能で、互いにストレスもありません。

 

 この経験から、学んだことは「大家と店子」関係への回帰が「貸家における価値を提供する」ということです。そうです、あの落語に登場する長屋の大家さんと、熊さん、八っつぁんの関係です。

 

 入居者は、長年「マンションはカギ1本で出かけれられる、煩わしい付き合いをしなくてもよい」と信じ込んできました。賃貸オーナーも「面倒なことは管理会社に任せるのがよい」という固定観念を持ち続けてきたのではないでしょうか。

 

 しかし、人は社会的な動物です。互いに「知っている」ということが、賃借人には「気持ちの上での安心感」を、オーナー側には、クレームやトラブルの防止(もちろんしっかり対応すればということですが)という、大きなメリットをもたらしてくれるのです。

 私のシェアハウス、貸家は一つの例にすぎませんし、「付加価値」の提供は、これに限ったことではありません。ただ、何の特色もない「one of them」の物件が行きつくところは「価格競争」ということだと思います。

 

外国人に注目中!!

 話がそれてしまいますが、私は、住宅弱者となりやすい外国人やシングルマザー、障がい者向け賃貸住宅に注目しています。今の自分の力量で、多くの展開はとても無理ですが、社会的な意義も大きく、チャンスがあれば取り組んでいきたい分野です。

そう考えるようになったのは、フィリピン人との交流を通じて得たものが大きく影響しています。

 

 皆さんは、「ジャパゆきさん」という言葉をご存じでしょうか。

 

 日本経済が絶好調だった83年頃の造語で、日本に出稼ぎにきて風俗営業等に従事した、貧しいフィリピン人等の女性のことを指す言葉です。私は、その言葉の中に「日本は先進国で、アジアの国々より上」という「上から目線」の意識が現れていたとみています。

 あれから40年が経ちましたが、その意識は今も「外国人の雇用と住まい」に受け継がれていると私は思います。

 「技能実習生」としての就労は、日本人が敬遠する農業や介護、建設等をはじめ、飲食、観光業界などに拡がっています。それらの中には、単に人手不足を補う「労働力」として、しかも低賃金であることを期待した雇用で、劣悪な住環境な住まいをあてがわれていることも珍しくないと聞けば、とても悲しい気持になっています。

 

 実際には、外国人の能力は日本人に劣るどころか、とっくに追い越していると考えるべきでしょう。例えば、急激な発展を遂げた中国は言うに及ばず、IT分野におけるインドやパキスタンは、その好例です。

 しかも、日本を除く多くのアジア人は、英語でのコミュニケーションに支障がありません。仙台のシェアハウスに入居するフィリピン人も、その一人、起業経験もあり経営の勉強を積んできた優秀な人財です。もちろん、教育機会に恵まれず、貧しい生活を送っている人たちが存在することも事実ですが、それは、彼らの能力の問題ではなく、政治的、経済的な状況が教育を受ける機会を奪っているということにすぎません。そして、同じ問題が日本においても存在します。

 

 つまり、どの国にもいろいろな才能、能力を持った人がいて、できるだけ楽をして稼ぎたい怠け者もいて、とても優秀な人もいる、「なーんだ、日本人も外国人も同じじゃん‼」ということなのです。

 

 では、1ドル160円まで進んだ円安の中で、迎える側の「日本のセールスポイント」はといえば、今や治安と、サブカルチャーに代表される文化や歴史が頼りとなりつつあります。いつまでも、上から目線では、日本が「選ばれない国」になっていくことは避けられないのではないでしょうか。

 

 「住まい」は「建物」というハードだけでは機能せず、「安全、安心、人との繋がり」といった、ソフトと一体となってはじめて機能するものだと思います。遠く故郷を離れてやってきた外国人にとっては、とりわけ大切な要素だと思います。

だから、私は「単なる貸家業」ではなく、彼らと「直接かかわりを持つこと」で、日本と日本人の良さを知ってもらい、いち早く溶け込んでもらえるような住宅を、そんな「住まい=居場所」を提供できたらと、夢を描いているところです。

 

 SNSに「マイホームのAI査定」の広告がでていたので、やってみた。

 

 AI査定といいながら、結局は不動産会社に情報が提供されて、4社からメール連絡があり、そのうち2社からは電話連絡もあった。早いところで約10分後、遅い会社でも2時間以内にはコンタクトがあり、その「働き方」の方が心配になるほど、スピーディーだった。

 

 で、査定額はというと、最低額はA社の5,464万円最高額はC社の7,536万円、中間がB社で6,712万円、そしてD社は「売却直前に査定しないと意味がない」と、拒否られた。(笑)

 

 ちなみに我が家は、いわゆる「狭小宅地に建つ小さな一戸建」だ。提供した情報は、「住所、土地・建物の面積、建築時期」で土地の形状や接道状況、建物のスペック等、多少金額に影響する要素もあるはずだが、それは考慮外となっている。ただ、それにしても最高、最低の価格差2,000万円以上。なんと25%以上の乖離は、何を物語る…??

 

 さて、査定結果を受け取って思ったこと…。

  1. AI査定といいつつ、実態は不動産会社への紹介ビジネスのための集客ツールと思われる。
  2. 査定のためのデータは、瞬時に収集できるため、「査定報告書」は、きわめて短時間で提供される。
  3. 収集したデータを読み解き「査定価格をいくらにするか」「売出価格やタイミング等の売却方法」については、営業マンの主観によって、かなりの差が出てくる。
  4. 査定報告書、提案書の体裁が美しく整えられており、掲載データも豊富で、AI含むデジタル化の発展が、営業マンの強力なバックアップツールになっていると思われる。
  5. 建物の査定額は、相変わらず「築年数主義」「木造は25年でほぼゼロ円説」が根強く生きている。

 

 私が、現役営業マンのときは、地価公示や路線価、取引事例、道路の種類や幅員等を調べて、地元の不動産業者にヒアリングして、査定報告書を作成していた。そして「査定はあくまで査定にすぎず」、実際の売却活動は、マーケットの反応を探りながら、買主候補と交渉しながら、価格の折り合いをつけていく…ということを説明するために、面談で説明することを基本としていた。

 最近の売主は、そういう「まどろっこしいこと」は嫌がるのかもしれない。

 

 AIを含むICTの発展は目覚ましい。そこに、豊富なデータベースが収集できるようになることで、査定の精度は、あっという間に向上し、スピードも増していくことだろう。

 

 たとえば、不動産情報調査会社の東京カンテイには、分譲マンションに関して、販売時のカタログ、パンフレットをはじめ、中古売買や賃貸に関する取引情報等の履歴が、データベースとして登録・保存されている。

 不動産会社は、この情報を活用しているため、所有者が「マンション名と部屋番号」を告げるだけで、専有面積、管理費・修繕積立金、間取り等、凡そ査定に必要と思われる情報を得ることができる。

 

 戸建住宅については、個別性が強いため、分譲マンションよりデータベース化が遅れていたが、デジタル化の進展により、物件の住所と登記情報の紐づけ等は、簡単にできるようになっており、近い将来分譲マンションと同様にデータベース化が進んでいくことだろう。

 事実、現在国土交通省は「不動産ID」の実用化に向けた協議をスタートしており、マイホームの情報が丸裸にされる日は近い。これが「納税強化ツール」にならないことを願いたいが。(笑)

 

 どうやら、「建物は経年によりゼロ円」という不動産仲介会社の常識は、今もまだ変わっていないようだ。しかし、実際の取引では、「リノベーション」で再生した物件に対し、消費者が相応の対価を支払うようになっており、欧米のように「建物の性能やスペック」を資産価値とみなすように、いずれはなっていくことだろう。

 

 それは、地球環境負荷軽減という意味でも、とても大きな意義をもつ。高経年住宅であっても、省エネルギーで健康的な暮らしが実現できる家、地場産業と結びつき再生可能な住宅を、「市場」においても高位に評価するようになってくれば、業界の見方も変わってくるはずだ。

 例えば、メンテナンスが行き届いた家とそうでない家、エコな家とそうでない家には、価格差があって当然だ。どうせ我が家が「裸」にされるのなら、そういう「住宅」にとって大切な要素を、買主が分かりやすく評価できるようにしてもらいたいものだ。

 AIの発展で、技術的には容易になりつつあり、あとは、消費者と業界の意識が変わって行けば、その日は近いと思う。