不動産取引編 第6回 土地建物の割合と減価償却費 | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 「減価償却」とは、建物等の価値を会計上減少させていく手続きをいいます。減価償却によって計上される費用が「減価償却費」です。価値の減少分を費用とみなしている訳です。土地については、減価償却はありません。

 建物、建物附属設備は、その構造や用途により「法定耐用年数と償却率」が定められていて、決められた計算方法によって「減価償却費」が算出されます。

 

 「減価償却費」は、現金支出を伴うことなく「費用」として計上し、「不動産収入」から差し引くことができます。その分、不動産所得が小さくなり、所得税や法人税が少なくなる効果があります(ただし、売却時の譲渡所得の計算においては、建物の未償却分が小さくなった分だけ譲渡益が増えてしまいます)。

 

 節税のため「減価償却費がより多くなる物件を取得したい」という買主は、少なくありません。そんなこともあって、不動産売買の取引では、「売買金額で合意したが、土地建物の比率でもめる」ということがしばしば起こります。

 

 売買金額(消費税込)1億円で合意し、土地建物の比率に下記AとBの二つの考え方があったとします。

売買代金の内訳

A

B

売買代金(税別)

9300万円

9500万円

土地代金

2300万円

4500万円

建物代金

7000万円

5000万円

消費税(10%)

700万円

500万円

売買代金(税込)

1億円

1億円

 

 建物の残存耐用年数(償却期間)が、仮に10年だとすると、1年あたりに計上できる減価償却費は、Aの場合は770万円、Bの場合は550万円となり、1年あたり220万円の差が生じます(税込経理方式を採用している場合)。

 実効税率が30%と仮定すると、Bの税負担がAよりも1年あたり66万円多いということになり、当然ながら買主は「Aがよい」、売主は「消費税別の売買価格が高いBの方がよい」となる訳です。

 

 土地建物の比率は、それぞれの「固定資産税評価額」の割合にすることが多いのですが、これも慣例的にそうすることが多いというだけで、あくまでも「売主と買主の合意により決定」するものです。

 

 解決策としては、「交渉の早い段階から売買代金の内訳についても確認する」のが一番です。

気の利いた営業マンなら、その辺りも最初から織り込んで、条件交渉してきます。こういう営業マンに出会うと「おぬしできるな!」という気持ちになります。(笑)