住宅編 第22回 AI査定をやってみて | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 SNSに「マイホームのAI査定」の広告がでていたので、やってみた。

 

 AI査定といいながら、結局は不動産会社に情報が提供されて、4社からメール連絡があり、そのうち2社からは電話連絡もあった。早いところで約10分後、遅い会社でも2時間以内にはコンタクトがあり、その「働き方」の方が心配になるほど、スピーディーだった。

 

 で、査定額はというと、最低額はA社の5,464万円最高額はC社の7,536万円、中間がB社で6,712万円、そしてD社は「売却直前に査定しないと意味がない」と、拒否られた。(笑)

 

 ちなみに我が家は、いわゆる「狭小宅地に建つ小さな一戸建」だ。提供した情報は、「住所、土地・建物の面積、建築時期」で土地の形状や接道状況、建物のスペック等、多少金額に影響する要素もあるはずだが、それは考慮外となっている。ただ、それにしても最高、最低の価格差2,000万円以上。なんと25%以上の乖離は、何を物語る…??

 

 さて、査定結果を受け取って思ったこと…。

  1. AI査定といいつつ、実態は不動産会社への紹介ビジネスのための集客ツールと思われる。
  2. 査定のためのデータは、瞬時に収集できるため、「査定報告書」は、きわめて短時間で提供される。
  3. 収集したデータを読み解き「査定価格をいくらにするか」「売出価格やタイミング等の売却方法」については、営業マンの主観によって、かなりの差が出てくる。
  4. 査定報告書、提案書の体裁が美しく整えられており、掲載データも豊富で、AI含むデジタル化の発展が、営業マンの強力なバックアップツールになっていると思われる。
  5. 建物の査定額は、相変わらず「築年数主義」「木造は25年でほぼゼロ円説」が根強く生きている。

 

 私が、現役営業マンのときは、地価公示や路線価、取引事例、道路の種類や幅員等を調べて、地元の不動産業者にヒアリングして、査定報告書を作成していた。そして「査定はあくまで査定にすぎず」、実際の売却活動は、マーケットの反応を探りながら、買主候補と交渉しながら、価格の折り合いをつけていく…ということを説明するために、面談で説明することを基本としていた。

 最近の売主は、そういう「まどろっこしいこと」は嫌がるのかもしれない。

 

 AIを含むICTの発展は目覚ましい。そこに、豊富なデータベースが収集できるようになることで、査定の精度は、あっという間に向上し、スピードも増していくことだろう。

 

 たとえば、不動産情報調査会社の東京カンテイには、分譲マンションに関して、販売時のカタログ、パンフレットをはじめ、中古売買や賃貸に関する取引情報等の履歴が、データベースとして登録・保存されている。

 不動産会社は、この情報を活用しているため、所有者が「マンション名と部屋番号」を告げるだけで、専有面積、管理費・修繕積立金、間取り等、凡そ査定に必要と思われる情報を得ることができる。

 

 戸建住宅については、個別性が強いため、分譲マンションよりデータベース化が遅れていたが、デジタル化の進展により、物件の住所と登記情報の紐づけ等は、簡単にできるようになっており、近い将来分譲マンションと同様にデータベース化が進んでいくことだろう。

 事実、現在国土交通省は「不動産ID」の実用化に向けた協議をスタートしており、マイホームの情報が丸裸にされる日は近い。これが「納税強化ツール」にならないことを願いたいが。(笑)

 

 どうやら、「建物は経年によりゼロ円」という不動産仲介会社の常識は、今もまだ変わっていないようだ。しかし、実際の取引では、「リノベーション」で再生した物件に対し、消費者が相応の対価を支払うようになっており、欧米のように「建物の性能やスペック」を資産価値とみなすように、いずれはなっていくことだろう。

 

 それは、地球環境負荷軽減という意味でも、とても大きな意義をもつ。高経年住宅であっても、省エネルギーで健康的な暮らしが実現できる家、地場産業と結びつき再生可能な住宅を、「市場」においても高位に評価するようになってくれば、業界の見方も変わってくるはずだ。

 例えば、メンテナンスが行き届いた家とそうでない家、エコな家とそうでない家には、価格差があって当然だ。どうせ我が家が「裸」にされるのなら、そういう「住宅」にとって大切な要素を、買主が分かりやすく評価できるようにしてもらいたいものだ。

 AIの発展で、技術的には容易になりつつあり、あとは、消費者と業界の意識が変わって行けば、その日は近いと思う。