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「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 次のグラフは、国土交通省が公表している「不動産価格指数」です。「2010年の平均が100」となっています。

 

 また、商業用不動産については、2008年からのデータですが、次のようになります。

 

 リーマンショックを底に「都心部と地方の二極化」という現象を伴いながらも2019年度末までは、ある意味順調に不動産価格の上昇が続いてきました。同時に「不動産価格」がいかに大きく変動するものなのかということにも気づきます。

 

 「観光立国」を目指した政策効果、東京2020オリンピック期待もあって、インバウンド需要に支えられたホテルが牽引する形となり、一時は、「ホテル用途の入札者には、価格で対抗できない」と言われるまでになりました。それが、2020年度に入ったとたん、コロナ禍により、ホテルはもちろん、都心のテナントビルも、大きく価格を下げることになりました。

 

 長く「不動産業界」に身を置いていると、価格上昇時にどうしても、リーマンショック時の「金融不安」や、1990年代の「バブル崩壊」のことが頭をよぎります。これは、私だけではなく、他の不動産業者も同様のようです。

 

 「コロナショック」については、2018年頃から高値警戒感が続く中での出来事、しかし、その原因が「パンデミック」ということは全く予想もしなかったことでした。「すわ、不動産大暴落」…と思いきや、世界的な金融緩和により、物流不動産、レジデンシャル中心に、さらに価格は高騰しました。

 

 こんなふうに不動産価格を読むことは、簡単ではありません。まして、20年も30年も先の不動産マーケットがどうなっているかなんて、誰も予想することはできません。

 ところが、不動産投資においては、「できるだけ低利」で「できるだけ長期」の融資を組むのが基本方針です。築浅物件であれば、30年、35年といった返済期間になることもしばしばです。

 

 ありがちなのが「30年間ではそれほどの利益はないが、ローン返済が終われば家賃が丸々残ります!」という収支計画。

 これは、とんでもないまやかしで、ちゃんと「初年度からある程度の収益が上がる物件でなければ投資はしない」ことは大原則です。

 

 それに加えて、「5年後くらいまでに売却したらどのくらいの利益を得られるか」という想定をしておきましょう。売却のことは「出口」というふうにもいうので、「30年後の出口戦略」ではなく「5年毎の出口戦略」を立て、それをアップデートしておくようにしていただきたいと思います。

 例えば、5年後に売却するときは、残債がどのくらいあって売却によってすべて返済できるのかどうか、万一、値下がりしていたとしたら、その穴埋めができるのかどうか等の想定です。

 

 不動産マーケットの予測は難しいのですが、それでも数年先であれば、まだ見通しがつきやすいし、変調のサインに気づくことができるかもしれません。常に「出口」のことを意識していれば、「これはヤバいかも‼」と思った時に、最少の損失で手じまいできる可能性は高くなります。

 もちろん、その時点で「保有継続にメリットあり」と判断すれば売らなければよいだけのことです。

 

 繰り返しになりますが、低収益、長期ローンを組んで、「20年も30年も経ってからようやく黒字転換」というような不動産投資を、私は良しとしません。仮に「相続税の節税」につながったとしてもです。

 なぜなら、収益性と相続対策の両方を兼ね備えた「投資用物件」は、他にいくらでもあるからです。業者だけが儲かるような話に投資してはいけません。

 日本では、敷地面積に対する「建築面積の割合」と「延べ床面積の割合」が指定されており、前者を「建蔽率(けんぺいりつ)」後者を「容積率(ようせきりつ)」という。指定するのは、建築主事(建築確認等を行う公務員)を置いている場合は、市町村長や特別区長、おいていない場合は、都道府県知事である。

 

 例えば、敷地面積が100㎡で、建蔽率50%、容積率150%であれば、1階から3階まで、50㎡の広さで重ねて行けば、延床面積150㎡の建物が建築できることになる。ただし、現実の建築においては、斜線制限など他の制限によりめいっぱい取れないことが多い。

 

 地下室の面積も、延べ床面積には含まれるので、私がまだうぶな若手営業マンだった頃は、例に挙げた建物で地下室をつくろうとすると、トータルで150㎡以内に納まるように、地上階のどこかを削る必要があった。しかし、平成16年(1994年)に、建築基準法が改正されて、「住宅の地下室については、床面積(住宅用途以外の部分を除く)の3分の1まで延べ床面積に参入しなくてよい」こととなった。

 

 この緩和以降、ドライエリアを備えた地階の住戸がある分譲マンションが大幅に増えた。

 

 ちなみに、「地下室」とは、床面から天井までの3分の1以上が平均地盤面より下にある部屋のことをいう。ただし、延べ床面積不算入の緩和を受けているときは、地下室の天井高さは、平均地盤面から1m以下という制限があるので、例えば地下室の床から天井までの内法が2.4mだとすると、1mが地上、1.4mが地中というイメージになる。

さて、前置きが長くなったが、この地下室、案外快適である。

 

 すでに述べた通り我が家は狭小住宅なので、1、2階では生活に必要な面積が足りず、地下室をつくることにした。洗面所、浴室、そして4畳ほどの書斎(というよりなんでも部屋)、そして約3畳のドライエリアを設けた。

 ドライエリアの上部は、ガラスで覆っているので、完全防水ではないが雨の日も過ごすことはできる。洗濯物を干す場所として占有する時間が最も長いのは、辛いところだが。我が家は、水はけのよい台地の縁付近にあるので、じめじめした感じは全くなく、日当たりもよい。

 

 

 後悔している点は、もっと広くすればよかったということ。地下室は建築コストも嵩むので、当時の自分ではこの広さが限界だったのだ。地上と違って増築は不可能だ。それでも、、音楽を聴いたり、本を読んだり…趣味にも仕事にも大活躍、私の滞在時間が最も長い部屋となっている。

 

 「いい場所にお住まいですね。」と言われる。都内でも屈指の高級住宅地の一角、しかも駅から6分の距離だ。難点はとにかく土地が狭いこと。

 しかたない、サラリーマンの自分にとって、立地を優先すれば広い家は手が出なかった。

 

 当時、私は注文住宅部門のプレイングマネージャーだったが、新築直後から後輩の営業マンが見込み客を連れてきて、「こんな狭い土地でも立派に家は建ちます。」と説明していた。お向かいの奥さんからは、「お隣の駐車場かと思ったらかわいい家が建った、今の技術ってすごいのね。」と言われた。(お向かいは立派なお宅で、あっけらかんと言われたので、「そうだよね~。」と納得したことを憶えている。)

 

 元々は55坪の土地。不動産会社が買い取って建売住宅にしようとしていた。半分なら27.5坪だが余裕がなかったので、25坪だけ譲ってくれないかとお願いしたらOKの返事がきて、とんとん拍子に話が進んだのだ。

 

ち ょっとビビったのが、近所の建売住宅(たぶん我が家よりも若干広い)が、自治会の会報に写真付きで載ったこと。なんと「こんな家が建つようになって嘆かわしい。」と書かれていたのだ。それからしばらくして、敷地分割の制限が導入され、我が家のような狭い土地への分割は出来なくなった。

 

 ということで、鬼ごっこでいう「ごまめ(みそっかす)」のような存在になってしまった我が家だが、考えようによっては、希少価値があるということも言えよう(我田引水)。「小さい家でいいから便利な場所がいい」というニーズはあるはずだし、なんといってもネームバリュー抜群のアドレスだ。少人数家族なら十分に暮らせる。それに、こだわりの「広めのドライエリア付の地下室(「地下室のススメ」写真参照)」だって備えている。ほんとうは、地下室がないとさすがに狭すぎたからだけど。

 

 余談だが、広いドライエリアでバーベキューするのが私の夢だった。かなり無理があったので、スケールダウンして七輪をもちこんでいろいろ焼いてみた。炭のにおいが家じゅうに充満して、妻の逆鱗に触れた。それ以降、ここは静かに本を読む場所ということになっている。…うそです、めったに読みません。なぜなら、普段は物干し場だから。

 

 古民家リノベーションが盛んだ。中には、古民家というよりあばら家としか言いようがないものもあるが、日本家屋の良さが外国人の評判になり、ホテルになったりカフェになったり、中には住宅して活用されている事例もある。

 

 ところが古民家は、当然ながらスキマだらけ、とにかく寒い。そして夏は虫も熱波もやってくる。もちろん改修の方法はある(と、知り合いの建築士やリノベーション業者に学んだ)。

 

 しかし、一番の難点はコストだ。簡易な基礎の上に載った土台や柱、その他木材の多くは、白蟻にやられていることが多い。まず、この腐った構造材を交換、補強し耐震性を確保しなければならない。さらに断熱性能、気密性能を確保しようとすると、新築するよりはるかに高いコストがかかる。それでは、古民家には、暑さ寒さを我慢して住むしかないのであろうか。

 

 それを解決しようというアイディアが「インナーハウス」だ。インナーハウスの命名者は建築家の古川泰司さん(アトリエフルカワ一級建築士事務所代表)である。

 古民家の魅力のひとつは、土間があったり竈や囲炉裏があったり、郷愁をそそるこの、団らんではないだろうか。しかし、暖炉とは違い、竈や囲炉裏は煙も煤も室内をただよう。着火するときなどは、煙もくもくという状態にもなってしまう。

 半戸外のようなスキマだらけの昔ながらの日本家屋でこその囲炉裏だし、それが楽しい。だから、この部分はそのままに、「寝室やトイレ、浴室、台所等の水回りだけを断熱、気密化すれがよい」というのがインナーハウスの考え方だ。

 施工範囲を限定しコストを抑えられるし、また、しっかりした構造体で包んでおけば、大きな地震で建物が倒壊しても、寝室空間だけは潰れることなく命を守ることもできる。

 

■エヌ・シー・エヌ社の耐震シェルター

 実際この考え方に基づいて、株式会社エヌ・シー・エヌが、木造耐震シェルターを商品化している(現状は、あくまでも「震災からのシェルターで、本格的な断熱、気密は考慮されていないが)。

 このような耐震性をもった区画に断熱性と気密性を持たせて、快適な空間をつくり、古民家らしい空間と共存させれば、古民家ライフの楽しさもヒートショックの心配もない、古民家リノベーション住宅が実現するのではないだろうか。


 不動産会社等が、アパートを一括で借り上げることを「マスターリース」それを第三者に貸し出す(転貸する)ことを「サブリース」といいます。たいていの場合、この「マスターリース」と「建物管理(BM)」と「賃貸管理(PM)」がセットになっていて、一定の条件の下、「滞納保証」や「空室保証」を行うという契約になっています。

 

 「建物管理」は、日常の清掃、法定点検、機械設備のメンテナンス等、「建物を貸せる状態に維持する」ための管理業務です。

 「賃貸管理」は、家賃や管理費の収受、水光熱費等の支払、入居・退去に伴う賃貸借契約の代行や家賃その他の清算、空室の原状回復の手配、そして、新たな入居者の募集等を指します。

 

 「建物管理」「賃貸管理」を行う会社が、一般にいう「管理会社」ですが、従来「管理会社」を規制する法律はありませんでした。しかし、トラブルが後を絶たず、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が、令和2年6月に公布、令和3年6月15日に施行されました。

 特にトラブルが多い「サブリース」に関し、法律の附帯決議に基づき「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が示されたことは特筆に値します。少々長めではありますが、重要な点ですので、アパート建築を検討されている方に向けて、ガイドラインの趣旨」の一部を抜粋して、お示ししたいと思います。

 

【「ガイドラインの趣旨」から抜粋】※原文は下線無し

 サブリース事業については、サブリース業者が、建設業者や不動産販売業者等と連携して勧誘を行う際や、当該サブリース業者とのマスターリース契約の締結を促す広告を行う際に、オーナーとなろうとする者にサブリース方式での賃貸経営に係る潜在的なリスクを十分説明せずマスターリース契約が適切に締結されないという事態が多発している

 

 具体的には、マスターリース契約に基づいてサブリース業者が支払うべき家賃に関するリスク(例:将来的に家賃の額が変更される可能性)、マスターリース契約の解除の条件(例:賃貸人からの解約には正当事由が必要)等を明らかにしないことで、オーナーとなろうとする者が内容の真偽や適否を判断することが難しく、契約内容等を理解せず誤認したままマスターリース契約を締結することで、家賃減額や契約解除等を巡るトラブルが発生しているという実態がある。

 

 本ガイドラインは、(中略)サブリース事業に係るこれらの規制の実効性を確保し、サブリース業者等とオーナーとのトラブルを防止するため、賃貸住宅管理業法上求められる事項や賃貸住宅管理業法違反となり得る具体的な事例といった、業務を適正に行うために最低限求められる水準を明示しながら、これらの規定の内容を関係者に分かりやすく示すことを目的としている。

 

 (中略)サブリース業者・勧誘者が、賃貸住宅のオーナーとなろうとする者にとってより適正な広告・勧誘等を実施し、透明性が高く質の高い営業活動とサービス提供ができるよう、業界団体において、優良事例等に関する指針を作成するなどし、これらを活用した研修・講習等の機会を通じて、引き続き、サブリース事業に携わる従業員一人一人の業務レベルの一層の向上に取り組んでいくことを期待する

 

 

 同法とガイドラインは、今後、サブリース事業の適正化に一定の効果を果たすものと期待していますが、これを無視する悪質な業者がなくなるとは限りませんし、あるいは「客観的にみてオーナーにメリットないじゃん!」という内容であっても「説明責任」を果たせば、契約自体は結べる訳ですので、引き続き注意しなければならないことに変わりはありません。

 

 そのことを申し上げたうえで、以下をご覧ください。某社の「サブリースに関する説明書」を抜粋したものです(下線は筆者)。さすがに実物の掲載は控えます。(笑)

 

①   30年間、「契約時に設定した満室分の家賃の70%」を固定家賃として保証する。

②   入居者から入る賃料のうち、9%の管理料を除いた、収入の91%がオーナーの手取りとなる。

  ※「9%の管理料は業界最低水準」との付記あり。

③   空室になったときは退去日の2カ月後から、滞納があった時は発生時から「空室家賃保証(91%)」の家賃を保証する。

④   建物竣工後、4ヶ月を超えても空室の場合は、5ヶ月目から募集家賃を減額する(業者側の判断)。

⑤   入居者退去から6ヶ月を超えても空室の場合は、7ヶ月目から募集家賃を減額する。

⑥   物件の直近1年間の入居率が89%未満の場合は、募集家賃を減額して募集する。

⑦   物件の直近1年間の入居率が89%未満の場合は、フリーレントの実施、礼金の取りやめ、仲介業者への紹介料の増額付与等の対策を実施する。

 

 この書面には、図解付きで非常に細かく説明されていますので、営業マンが意図的に隠さない限り、法的にも、そして上記の「ガイドライン」に照らし合わせても、問題になる点は生じないと思われます。

 ただ「説明された中身」がどうかというと、気になるのは④~⑦です。

 「契約時に設定した満室分の家賃の70%」の家賃保証はあるものの、要するに「入居者が決まらなければ家賃は下がり、フリーレントも実施して収入が減る」ということです。さすがに、「入居状況により固定家賃を見直す」との記載はありませんが、70%と言えば、5万円の賃料なら3万5千円。この水準で保証されて、はたして「ありがたい」と言えるのかどうか…。

 もっと言えば、はじめから3万5千円が相場賃料のエリアで、5万円の賃料を前提にした「実際よりも収益性がよく見える事業計画」を提示しているのではないかと、疑えばキリがありません。

 

 さすがにそこまでの悪意はないと信じるとして、肝心の収支を確認してみましょう。

 

 この物件は、専有面積27.62㎡の1Kが4戸です。賃料、管理費を合わせた収入が、月額224,000円、他に駐車場が3台ありますが、住戸が満室にもかかわらず利用中は1台分だけで、駐車場収入は月額3,000円、よって合計で収入総額は月額227,000円です。

 余談ですが、この物件の所在地は地方都市。1住戸に最低1台の駐車場は常識だそうですが、この物件は1Kタイプということで、3台のうち1台しか借り手がいないという珍しいパターン(地元業者の話)でした。

 さて、問題は、この227,000円、年間にすると2,724,000円という収入です。実は、このオーナーさん、建築後に売却する必要が生じてしまったのですが、地方都市の木造アパート、いくら築浅物件といっても、いや逆に、入居者の入れ替わりに伴い家賃が下がる可能性が高いこの物件は、どう頑張っても、表面利回り10%以上を求められます。

 

 となると、売却価格は3千万円にも届きません。仮に表面利回り8%での買い手があったとしても、3,400万円です。

 

 えっ?何が問題かって?

 

 それは「このアパート建築には、諸費用含め5千万円以上かかっている」ということです。

 30年返済のローンは、現在は低金利ですので、かろうじてキャッシュアウトせずに済んでいますが、10年の固定金利特約期間が過ぎた後に、金利が上昇していたら完全に持ち出しです。しかもその頃には賃料が下がっている可能性が高い。さらに売却しようと思ってもローンを完済するためには、追加で1500万円程もの資金を準備しなければなりません。

 

 どんなに丁寧にサブリースの仕組みを説明していたとしても、こんな投資をさせることに、私は怒りを覚えます。アパートなど建てずに土地で売却すれば、税金を払った後でも、確実に1500万円は手元に残ったのですから。

 

 サブリース業者は、説明をしているので違法ではありません。しかし、結果において大損をさせています。そして、その結果はプロなら簡単に予測できるものです。それを「70%は家賃保証がある」「満室であれば家賃の91%が入る」「ローンを完済した後は、家賃がまるまる手元に残る」そんなセールストークで、大損させているのです。

 

 アパート経営をするならば、オーナー(投資家)自身が、家賃の下落、空室・滞納リスクなどを負うべきです。そうやっていつも緊張感をもって経営するからこそ、真剣に市場ニーズを調べ、プランや家賃や建築費の妥当性を検証し、市場変化に迅速に対応して、損失の最小化、利益の最大化に近づくことができるのです。家賃保証しないことで得られる利益をプールして、不測の事態に備えればよいだけのことです。

 

「家賃保証」というふわっとした言葉に「なんとなく安心な気がした」だけで、実態はリスクに対し気休め程度でしかありません。保証は、「たった70%」そんなもののどこが安心できるのでしょうか。計画の7割しか家賃が入らないとしたら、それはそもそも計画自体に問題があるということでしょう。

 

 サブリース事業は、ボランティアではありません。事業として成り立つだけの利益をとっていることを思い出すべきです。

 

 最後に、「70%の家賃保証」もサブリース事業者の経営が健全である限りという条件付きであることを思い起こしましょう。事実、経営悪化に伴い、保証賃料の引き下げ要請が行われることは、他社の事例が証明しています。そして、事業者が経営破綻すれば、そんな契約はブッ飛んでしまうのです。

 

 昨年(2023年)末、ある方から5階建の中規模ビルの新築ビル計画についてご相談を受けた。駅から徒歩2分という好立地ながら交通量の多い道路に面することもあり、多少割高になることはやむを得ないでと覚悟はしていたが、比較的リーズナブルなことで実績のある建設会社の試算でも建築坪単価で180万円以上とのこと。

 

 この会社でこの水準なら、ハウスメーカーや中堅ゼネコンに頼んだら200万円超えは確実だ。やむを得ず、現存する建物(木造)のリノベーションに留めるか、計画そのものを断念して売却するか等、いくつかの代替案を念頭におきつつ、現在も様子をみている。

 

 小規模な分譲マンションや投資用ビルを開発してきたデベロッパーで、建築費が上がりすぎて収支が合わず、用地仕入れや着工を見合わせたりしている例が頻発している。建設会社は、下請工務店が人手不足で、いつ現場に入れるかという先の見通しが立たず、受注調整を余儀なくされているのだ。

 

 建築費高騰の理由として、オラガ総研代表取締役の牧野知弘さんは、次のように解説されていて、大変分かりやすいので引用させていただく

 

 理由は5つある。

 まず建物を建設する際の建築資材の高騰だ。オフィス建設などに必要な鉄骨、住宅用の木材などは世界的な建設需要の高まりもあってひっ迫している。最近の大規模建物に使われる外装・内装材の多くが海外品だ。外壁に使う花崗(かこう)石、アルミカーテンウォール、内装の大理石、造作家具などに至るまで多くが日本は海外からの輸入に頼っている。コロナ禍以降世界的な金融緩和と、東アジア、東南アジアの経済発展で建築資材がひっ迫している。世界的なインフレ傾向は輸入材に頼る国内の建築費の値上がりに直結している。

 2つめがウクライナなどでの国際紛争に伴うエネルギーコストの高騰だ。原油価格の高騰は輸送コストや電気代の上昇を招く。エネルギーは建築資材の製造や物流などすべての面でコストアップの要因となる。

 3つめが世界的な半導体不足だ。建設の世界でもエアコンや照明装置、給湯器や床暖房といった設備に半導体は多く使われている。建物ができあがっても設備が入らないことには稼働ができない。設備系のコストアップも全体の建築費の上昇に寄与している。

 4つめとして昨今の円安が、これら輸入資材の調達コストをさらに引き上げることに貢献している。先進国の中で日本だけが低金利状態を続けているが、内外金利差は為替安を招く結果、輸入資材価格は為替分がさらに上乗せされることになる。

 そして5つめは日本固有の要因だ。人件費の高騰である。建設業に従事する人の数は1997年の685万人をピークに下がり続け、2022年には479万人。25年間で実に30%も減少している。特に鉄筋工や型枠工といった専門技術を必要とする職種はベテラン作業員の高齢化による退職が相次いでおり、人数のみならず年齢構成や職能によるバランスが保てなくなっている。人手不足は将来的にじわじわと人件費の高騰を招くことは明らかだ。(Business Journal記事より)

 

 

 建築費の高騰にも負けず元気がよいのは「富裕層、外国人」対象の物件だけだという。超高級マンションや高級ホテルは売れている。特に外国人にとっては、円安で割安となった日本の物件は「全く高くない」、あのTVの情報番組が浅草や築地の取材で紹介している「ラーメン一杯5千円、美味しいです、全然高くありません!」の光景を同じことが、不動産においても起こっている。

 数か月前、古巣の後輩から「熱海の古い旅館」の買主がいないか相談を受けたが、最終的にはこれも外国人が取得したとのことだった。しかも、建物は解体して新築するのだとか。

 

 「高齢化と人口減少が急激に進行」「人手不足と物価高がより深刻に」ここに金利上昇まで加わってくると、多くの日本人は極力切り詰めて、つつましやかに、ささやかに暮らすしかなくなっていく。企業は生き残るために「外国人相手」のビジネスに傾注していくだろう。現に、大手ハウスメーカーの戸建事業は、海外での売上が主力になっている。

 日本人から見ると、現状の不動産価格は明らかに割高、「不動産バブル」である。国内需要だけならとっくに崩壊していたに違いない。いや、一般の日本人が顧客である不動産ビジネスは、既にその兆候が表れている。

 下のグラフは、東日本レインズが公表している中古マンションの取引状況であるが、この2年間在庫件数が増加トレンドにある。その間、「成約㎡単価」つまり価格が上昇し続けているのだが、「売れ残り」も増えているということであり、価格上昇についていけなくなっているという見方もできるのではないだろうか。

出典:レインズ東日本

 

 いずれにしても、「建築費」「人口減少」「高齢化」、それに「外国人」や「為替」「金利」等、いくつもの要因が複雑に絡み合う今の不動産マーケットは、先読みが極めて難しい。不動産業者の間ではいつも「ババを引きたくない」という話が会話に上る。中小の不動産会社には、「売り逃げできずに倒産するリスク」と背中合わせというところも少なくない。

 とにかく今は、マーケットから目が離せない時期だと思う。

 90年代のバブル崩壊の後始末は、まだ続いていた。

 レーサム・リサーチが日経新聞に掲載した「不良債権を買おう」という広告が物議をかもし、不良債権の管理回収会社を意味する「サービサー」から、物件売却の依頼を受けることも珍しくなかった2000年代の前半、新宿の仲介店舗は、スルガ銀行の行員さんが熱心に通ってこられた。

 

 地方が地盤とはいえ天下の銀行員が、「不動産屋」と揶揄されることもある仲介店舗の窓口にあしげく通ってくることにも驚いたが、その依頼内容は「そんなビジネスモデルがあるのか」と感心させられたものであった。

 

 「RC(鉄筋コンクリート)造で築15年程度までの賃貸マンション」「利回り10%以上」「必要なら買主(投資家)を紹介する」、そして、買主には「年利4%、フルローンで融資する」。

 

 RCは税務上の耐用年数が47年となっており、築15年位までなら、30年以上の返済期間での融資が可能だ。そのため、4%という高金利で融資しても、返済後のキャッシュ・フローはプラスになるという仕掛けだ。

 買主には、それほど年収が多くないサラリーマンや、時には潰れそうな会社ということさえあった。本業で収益が上がらないので、不動産からの賃貸収入でキャッシュを生み出し、事業資金として貸し付けた既存借入りれ分までも一緒に返済させるという話だった。

 

 スルガ銀行によって、不動産投資家への道が開かれたという人も少なくないと思う。サラリーマン投資家生みの親といってもよいのかもしれない。

 

 その後、不動産証券化の拡がりもありリーマンショック前夜まで、不動産価格は上昇していくのだが、それでも利回り10%の物件は、探せばまだあったし、時には、それこそ不良債権処理のための任意売却物件のような、一癖あるが割安な物件も対象になった。

 ただ、「RCで高利回り」という条件が優先されるため、立地は、郊外のバス便であったり、地方の物件であったりと、賃貸需要に不安がよぎるものが少なくなかった。事実、リーマンショックの余波を受けた派遣切りや工場閉鎖が相次ぎ、大量の契約解除が生じ、返済不能となってしまう事例を生み出してしまうのだ。

 

 不動産投資においては、ローン・レバレッジを活用することで、投資額に対するリターンを最大化することができる。だから、めいっぱい借りられるだけ借りて、低金利の恩恵を受けることも構わない。しかし、それには条件がある。「十分な預貯金があり、不測の事態にも問題なく対応できる人に限る」ということだ。別の言い方をすれば、「自身のリスク許容度に応じた借入・返済計画になっているか?」ということである。

 

 時折、「借入によって短期間の資産規模の拡大を実現すること」を礼賛するような不動産投資セミナーを見かける。主催者が売りたい物件に、割高な金利の提携ローンをセットにした「投資商品」に、融資を受けられるからというだけの理由で乗っかることが、その後にどのような影響を与えるか、冷静になって考えてもらいたい。

 

 さて、リーマンショックを底に、不動産価格は上昇へ転じる。アベノミクスが始まると、異次元の金融緩和で、スルガ銀行の融資金利も2%台へと低下したが、収益用不動産の利回りはそれ以上に大きく低下する。そして、スルガ銀行は、新築物件への融資に軸足を移し、かぼちゃの馬車事件へとつながっていくのである。

身近なのによく知らない不動産

 日常生活で不動産に接しない日はない。家の中で目覚め、道路を歩き、オフィスで働く。私たちは、不動産とのかかわりの中で暮らしているといっても過言ではない。ところが、「大学で都市計画や建築を学んだ」という人は山ほどいるが、「不動産を学びました」という人は、まず見かけない。

 特に、個人住宅やアパートといった「身近な不動産」ほど、教育の場で取り上げられることは少ない。宅地建物取引士を目指す人が、独学か、せいぜい受験校の通信教育で「不動産のこと」を勉強するくらいだ。

 

 そんなふうに、日常生活で意識することが少ないにも関わらず、ひとたび不動産をどうにかする必要が生じると、動くお金は大きく、家計にも経営にも大きな影響が生じる。そしてその時頼るのは、ほとんどの場合「不動産屋」だ。

 消費者は、そこで初めて自分と不動産屋の間に、圧倒的な情報量と知識量の差があることに気づく。医者と患者の関係にあるような「情報の非対称性」が、ここにも存在している。

 

 それでも、すべての不動産屋が、善良で誠実で、顧客想いならまだいい。しかし現実には、そうではない人物そうなりにくくさせているしくみが存在する。運悪くそういう人たちの餌食になってしまっても、救済されることはあまり多くない。金額が大きいだけに、最悪のときは「人生を棒に振るようなことにもなりかねない」にもかかわらず。

 家を買うとき建てるとき、貸し借りするとき、アパートやマンションに投資するとき、いろいろな場面における「不動産事(ふどうさんごと)」において、何に注意してどう対処すればいいのか。

 

 まずは、必ずつきあうことになる「不動産屋」について、考察してみよう。

 

不動産屋ってなんだ

 「不動産屋」と聞いて、どんな人たちをイメージするだろう。「駅前の商店街にあって、物件情報を窓ガラスにペタペタ貼っている店、のぞき込むと、年配のおっちゃんが暇そうにしている。」「大手不動産会社の仲介店舗。若い営業マンがバリバリ働いている。」「地上げ屋。怖そうな連中。」…いろいろなイメージがあると思う。

 

 

 そして、そのイメージはどちらかといえば…いや、間違いなくネガティブだ。「正直不動産」というNHKドラマがあったが、「不動産屋は正直でない」という世の中のイメージがあってこそのネーミングだろう。

 

 

 ハウスメーカーや工務店は不動産屋?アパートの管理会社は?微妙なところで疑問も湧く。実は、不動産屋というのは通称であって、法律上は「宅地建物取引業者」という。

  • 宅地建物取引業

 宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。(宅地建物取引業法第2条第2項)

 

 不動産会社では、宅地建物取引業の他にも、アパートや駐車場の管理をしたり、建物の建築を請け負ったりしていることも珍しくないが、これらは、「宅地建物取引業」にはあたらない。あくまでも「売買」や「代理もしくは媒介」をすることが対象となっている。

 

 宅地建物取引業は、法律で定める不動産業であり、宅地建物取引業を行うためには、国土交通大臣か都道府県知事の免許を取得しなければならない。「業として」というのは、「営業目的で反復継続する意思をもって」という意味で、世話好きの人が厚意(無償)で売主や買主を紹介するような行為は「業」には当たらない。

 「この免許を持った法人、個人事業主が、法律で認められた正真正銘の「不動産屋」である。

 

 実際には、宅地建物取引業とその他の事業を兼務している会社は多く、そして、消費者が「不動産」にかかわるとき、宅地建物取引業以外のことが関連することも多い。さらには、賃貸管理会社や建設・土木業者、はては地上げ屋まで、世間一般に「不動産屋もしくは不動産屋的なもの」として捉えられている人たちは多い。

 それが証拠に、目つきの悪そうな人が「この家のオーナーさんですか?」と訪ねてきたら、大抵の人は「さっき不動産屋さんがきたよ~。」と言うのだ。実際には、ハウスメーカーの場合もあれば銀行員の場合もある。

 

無免許業者もいる不動産屋

 話がちょっとややこしくなるが、無免許で不動産仲介業をやっている人たちもいて、彼らは「ブローカー」と呼ばれる。ブローカーとは、英語で「仲介者」の意味だが、日本ではなぜか「無免許業者=宅地建物取引業者ではない者」をブローカーと呼ぶ。

 無免許だから不動産の営業行為は禁止されているのだが、商談がまとまりそうになれば、知り合いの宅地建物取引業者を前面に立てて、仲介料の分け前に預かるという算段だ。個人住宅の売買等ではあまり登場することはないが、高額の不動産案件ではしばしば登場する。

 

 こういう人たちの頭の中は、いつも「お金のこと」で一杯だ。取引が成立する見込みもないのに、手数料の分け前でブローカー同士もめていたりする。高額になる不動産の取引は、「千三つ(センミツ)」と言われるくらい、容易にはまとまらない。成立する見込みがない取引についての報酬の分け前で、もめているのだから、傍からみていると滑稽だが、彼らはいたって真剣だ。そして多くの場合、ウソが得意だ(正規の宅地建物取引業者にもウソつきはいるが)。

 高額物件の売却を予定している売主さんは、彼らも含めた不動産屋のウソに振り回されないように気をつけて欲しい。

 

不動産ってなんだ

「不動産の定義」についても触れておきたい。

 

  • 土地及びその定着物は、不動産とする。不動産以外の物は、すべて動産とする。(民法第八十六条)

 

 なんとまあ、あっさりしたものだ。民法によれば、世の中の物は「不動産とそれ以外」に分かれる。では「物」は何かというと、それは第八十五条(定義)に規定されている。

  • この法律において『物』とは、有体物をいう。(民法第85条)

 

 なんじゃ⁉、それなら「有体物」の定義もしろよ、と思うがそれは定義されていない。しかたなくググってみると、「有体物とは何か」ということについては、いくつか説があるのだとか。

 まあ、ここは、学術的に定義を論じる場所ではないし、その必要もないので一般的な解釈に従うと、「有体物とは、排他的に支配ができるもの」と考えればいいらしい。つまり電気のように形がなく見えないものでも、権利の対象になるものは、民法上の「物」にあたるということだ。

 改めて法律とは面白いものだと思う。

 

P.S.

 あまり業界をご存じない方と話しているときに「不動産ビジネスをするには、宅建業者じゃないとできませんよ(大雑把な言い方だが)」というと「私、宅地建物取引士で~す♡」っていう人がいますが、宅地建物取引士は、国家資格であって宅地建物取引業者とは全く別物です。もうみなさん、ご存じですね。(笑)

 2000年代に入り、不動産の証券化が進みました。不動産証券化とは、すなわち不動産が金融商品になったということですね。

 

 金融の世界では、健全な投資市場形成のための「投資家保護」は当然のものと考えられていましたが、不動産の世界では、収益目的に不動産を所有する人は「大家さん」であり、立場が強いと考えられたのか、金融に比べればその意識は希薄であったように思います。

 証券化の拡大によって、不動産投資においても、投資家保護の視点に基づく法律や制度の整備が求められるようになったといえます。その結果、それまであいまいであった「用語」についても整理がなされ、プロマーケットを中心に不動産業界に浸透することとなっていきます。

 

 投資に関する用語の定義が明確になれば、売主や仲介業者と会話するうえで齟齬が生じることを防ぐことができます。また、投資用不動産に関わるビジネスの関係者は、基本的な用語については、理解しているのが当然であり、顧客(投資家)として仲介会社の営業マンに接するときにも「基本的な用語を知らない営業マンは勉強不足である」という判断材料にもなるでしょう。

 「不動産投資家なら、すべての用語を知っていなければならない」ということではありませんが、基本的な用語については理解しておくに越したことはありません。

 こういった用語は、Web上にも解説記事が多数あり、興味がある方は検索されてもよろしいかと思います。

 

  • Income Gain インカムゲイン 

 所有する物件の家賃収入から得られる収益のこと。損失はインカムロス。売却による収益、損失はキャピタルゲイン(ロス)。単に「インカム」という場合もあり。

 

  • NOI エヌ・オー・アイ

 Net Operating Income  収入から実際に発生した経費を差し引いて求められるNOIのこと。減価償却費などの非金銭支出や、ローン・借り入れ等の利息といった金融費用は控除しない。

 

  •  NCF エヌ・シー・エフ

 NOIから資本的支出(CAPEX)を控除したもの。

  •  CAPEX キャペックス Capital Expenditure    

「資本的支出」とも呼ばれ、外壁や屋上防水の更新、エレベーターや空調等設備の大がかりな更新などに伴い発生する支出をいう。会計上は、資産計上されて簿価の一部になる。

  • PV ピー・ヴイ Present Value

 現在価値      将来得られるキャッシュ・フローを現時点の価値に割り引いた価値のこと。

  • NPV エヌ・ピー・ヴィ Net Present Value

 正味現在価値  PVから投資額を控除したもの。NPVが正の値の時は、その投資は適格であるとされる。

  •  CCR Cash on Cash Return

 キャッシュオン・キャッシュ・リターン  年間のネット収入(通常はNOI)を投資額で割った値。ローンを利用した場合は、自己資金に対するリターンの割合をしますことになり、レバレッジ効果を考慮した指標と言える。

※個人的には、売却によるリターンも含めた平均年間リターンを用いるべきと思うが、一般には上記のような定義となる。

 

  • IRR アイ・アール・アール Internal Rate of Return 内部収益率

 投資額とPVが同じ、つまり「NPVがゼロ」となるときの割引率をいう。IRRの値が大きければ、高い割引率で割り引いてもNPVはプラスになることから、リターンへの期待が高まる一方で、ハイレバレッジの時もIRRの値は大きくなるため、単に「大きければ儲かる」と考えるのは危険。

 

  • AM エーエム アセット・マネージャーアセット・マネジメント

 投資用不動産の管理・運用を投資家の依頼に基づき行う会社や人、またはその業務。

 

  • PM ピーエム プロパティ・マネージャー プロパティ・マネジメント

 投資家やAMから委託を受けて、個別の不動産の建物や設備の管理やメンテナンス、賃借人との契約に関する手続き、賃料の回収などの管理業務を行う会社や人、またはその業務。

 

  • レントロール

 賃貸借契約一覧表のこと。

 

  • サブリース

 事業者が、オーナーの所有している物件を一括で借り上げて、その借り上げた物件をテナントに転貸すること。この時、オーナーと事業者の契約をマスターリース契約、テナントと事業者の契約をサブ―リース契約という。

  •  レンダー

 銀行等、融資を行う主体。

  • ネット利回り

 年間の収入から、保有運営コストを差し引いた収入(ネット収入)を物件価格で除したもの。NOIを物件価格で割った「NOI利回り」を指すことが多いが、異なる場合もある。収入・支出の範囲や消費税の扱いなど、統一基準がある訳ではなくあいまいな用語のひとつ。話し手の意図によって同じ物件でも差異があることもあり注意が必要。

 

  • グロス(表面)利回り

 年間総収入を物件価格で除したもの。ただし、「ネット利回り」同様、明確な定義はなく、検討初期での目安として捉えるべき指標。

 

  • FCR エフシーアール  Free and Clear Return  

 NOIを総投資額で割ったもの。重要指標ながら、一般的に使われる機会が少ない。

 

  • LTV ローン トゥ バリュ Loan to Value

  不動産価格に対する借入金の割合(資産価値に対する負債比率)のこと。 LTV(%) = 負債 ÷ 総資産価値 /100

 

 

 NPVやIRRのように、将来の収益を「現在の価値」に割り引いて、投資額と比較して投資可否を判断する方法をDCF法といいます。

 例えば、10万円を投資して1年後に10万3千円を受け取るような場合、1年後の貨幣価値を考えて、1年後の10万3千円は「現在ならいくらに相当するか」という見方をします。仮に物価が1年で5%上昇していたとしたら、現時点での価値は「10万3千円÷1.05≒9万8千円」となり、10万円より小さくなるため、この投資は「不適格」という判断になります。

 この時の「5%」を「割引率」といいます。割引率は、ここでは、物価上昇、つまり貨幣価値の低下分の5%としましたが、実際には「リスク」の大小によって投資家が判断します。割引率については、また別の機会にお話しできればと思います。

 リノベーション・ビジネスが盛んだ。マンションでも戸建でもまるで新築、最新の設備とおしゃれな内装で蘇った物件が新築よりかなり安く手に入る。リノベーション物件を購入するときに、注意すべきことはどのような点であろうか。

 

 情報バラエティ番組の中で「古いマンションや戸建を買って自分でリノベーションした」という方の紹介をしばしば目にする。DIY好きなパパが、格安で100円ショップ等も駆使して、それまでの古臭い部屋を、使いやすくおしゃれな部屋に蘇らせると家族は大感激だ。奥さんは喜びのあまり涙を流している。「すごいなあ」と感心する一方で、「これを自分でやるのは大変だぞ」としり込みする自分もいる。

 

 そこで登場するのが「不動産会社が買い取って、リノベーションをして再販する」ビジネス。そのメリットはというと、①完成したものを見て買うことができるので安心。②リノベーションのノウハウ不要。③価格が明確なので判断しやすい。といったところであろうか。

 

 元々の所有者も、一般の買主(エンドユーザーと言ったりする)に売却する場合は、「雨漏りを修理してから」とか「壊れたトイレを交換してから」とか、なにかと気をつかうが、不動産会社に売る場合は、「そのまんまでいいですよ」「何なら、要らないものも、ごみも全部そのままで」とか言ってくれて、あとくされがないので売りやすい。

 もちろん、不動産会社は商売だから、買取価格は「利益分」安くなるが、内見のたびに掃除したり子供を外に連れ出したり、それが何度か重なってくると、「本当に売れるのだろうか」という不安も重なって「不動産屋さんに買い取ってもらおう」という気持ちにもなるのも無理からぬことだ。

 

 そんなこともあって「リノベ再販ビジネス」は、日本が、それまでの新築主義から欧米のような「中古住宅流通」中心に転換していくために、きわめて重要な役割を果たすとみられている。

 言いかえれば、「リノベ再販ビジネス」は、発展途上であり、それだけに購入する側としては、眼力が試されることにもなる。何しろ「リノベーション」に基準がある訳ではなく、その内容の一切は不動産会社の胸三寸なのだ。いや、厳密にいえば「住宅性能表示制度」というのがあり、第三者機関が検査を実施して「現況検査・評価書」の交付を受けることが可能である。

 しかしながら、この制度を活用し、あるいは制度の趣旨をくみ取って、住み心地がよく健康に暮らせる住まいと言える水準まで性能を引き上げるリノベーションを行っている事例はあまり見かけない。それは、ひとえに「売りやすい価格帯に抑える」ためと言ってよい。

 

 ある物件の販売用チラシに記載されている「リノベーション内容」を見てみる。外壁・屋根塗装、フローリング張り(天然木突板)、クロス貼替、システムキッチン交換(食洗器付)、ガラストップコンロ交換、ユニットバズ交換(暖房乾燥機付)、給湯器交換、洗面台交換、トイレ交換、モニターフォン設置、ハウスクリーニング。

 要するに、仕上げや設備を交換して「見栄え」をよくすることが中心となっている。これは「リノベーション」というより単なる「リフォーム」に近い。実際、「リノベーション」という表示に負い目を感じるのか「リフォーム」しているチラシも多くみられる。そもそもリフォームとリノベーション自体の境目もあいまいで、改修範囲や規模が大がかりになったものをリノベーションと呼んでいるともいえる。

 

 このように一口に「リノベーション物件」といっても、その中身はうんと幅がある。不動産業者が「目立つところ中心に」リノベーションするのは、あたりまえともいえる。彼らは、売りやすい価格で再販できるよう、コストを抑えつつ、いかに買主の印象をよくするかに力点を置いている。

 

 地震や台風といった災害が多発、地球温暖化は目に見える形で進行している。住宅にも構造的な耐力が求められることはもちろん、脱炭素に向けた取り組みはもはや「待ったなし」だ。空き家問題に象徴されるように、住宅が、量的には余剰へと転じる中で、人命を守り、省エネルギーで、安全、安心、健康な暮らしを実現してはじめて、資産価値がある家といえるのであり、これからは、そのような住宅こそが、流通市場の中で、何代にもわたり受け継がれることになるであろう。

 

 繰り返しになるが、現在行われているリノベーションの主流は、デザインや設備であり、本来住宅の重要な機能である断熱・気密、換気といったものまで考えられているものは少ない。耐震、耐火性能についても十分な検証を行っていることはまれだ。

 無断熱や低気密の家は、夏暑く冬寒い。しかし、科学的な道理に合わない断熱や気密を行うと、結露を発生させカビやダニの原因となる。その結果アレルギーを誘発する不健康な住まいをつくりだしてしまう。

 

 安全、安心で健康的な住まいについては、長い失敗の歴史を経て理論的には確立している。できることならリノベーションをきっかけに、旧来の性能から大きく「質」を向上させた住まいに引き上げるべきであろう。

 

 しかし、そのことに対し、供給側の不動産会社も、買主となる消費者もまだまだ意識が低いと言わざるを得ない、消費者の意識が変わり、「性能の質による選別」が行われるようになれば、つまり「質が良くない家は売れない」となれば、業者側が本気で「質にこだわったリノベーション」に取り組むようになるはずだ。

 そのような流通市場の実現が今すぐは無理だとしても、いずれは必ずその方向に進む。なぜなら、地球環境への配慮は、全人類のミッションとなりつつあるからだ。

 

 これからリノベーション物件を買おうとする消費者は、10年後に、資産価値のない低性能の家を保有して後悔のすることが無いように充分に情報法収集してもらいたいと思う。