不動産取引編 第1回 不動産屋ってなんだ? | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

身近なのによく知らない不動産

 日常生活で不動産に接しない日はない。家の中で目覚め、道路を歩き、オフィスで働く。私たちは、不動産とのかかわりの中で暮らしているといっても過言ではない。ところが、「大学で都市計画や建築を学んだ」という人は山ほどいるが、「不動産を学びました」という人は、まず見かけない。

 特に、個人住宅やアパートといった「身近な不動産」ほど、教育の場で取り上げられることは少ない。宅地建物取引士を目指す人が、独学か、せいぜい受験校の通信教育で「不動産のこと」を勉強するくらいだ。

 

 そんなふうに、日常生活で意識することが少ないにも関わらず、ひとたび不動産をどうにかする必要が生じると、動くお金は大きく、家計にも経営にも大きな影響が生じる。そしてその時頼るのは、ほとんどの場合「不動産屋」だ。

 消費者は、そこで初めて自分と不動産屋の間に、圧倒的な情報量と知識量の差があることに気づく。医者と患者の関係にあるような「情報の非対称性」が、ここにも存在している。

 

 それでも、すべての不動産屋が、善良で誠実で、顧客想いならまだいい。しかし現実には、そうではない人物そうなりにくくさせているしくみが存在する。運悪くそういう人たちの餌食になってしまっても、救済されることはあまり多くない。金額が大きいだけに、最悪のときは「人生を棒に振るようなことにもなりかねない」にもかかわらず。

 家を買うとき建てるとき、貸し借りするとき、アパートやマンションに投資するとき、いろいろな場面における「不動産事(ふどうさんごと)」において、何に注意してどう対処すればいいのか。

 

 まずは、必ずつきあうことになる「不動産屋」について、考察してみよう。

 

不動産屋ってなんだ

 「不動産屋」と聞いて、どんな人たちをイメージするだろう。「駅前の商店街にあって、物件情報を窓ガラスにペタペタ貼っている店、のぞき込むと、年配のおっちゃんが暇そうにしている。」「大手不動産会社の仲介店舗。若い営業マンがバリバリ働いている。」「地上げ屋。怖そうな連中。」…いろいろなイメージがあると思う。

 

 

 そして、そのイメージはどちらかといえば…いや、間違いなくネガティブだ。「正直不動産」というNHKドラマがあったが、「不動産屋は正直でない」という世の中のイメージがあってこそのネーミングだろう。

 

 

 ハウスメーカーや工務店は不動産屋?アパートの管理会社は?微妙なところで疑問も湧く。実は、不動産屋というのは通称であって、法律上は「宅地建物取引業者」という。

  • 宅地建物取引業

 宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。(宅地建物取引業法第2条第2項)

 

 不動産会社では、宅地建物取引業の他にも、アパートや駐車場の管理をしたり、建物の建築を請け負ったりしていることも珍しくないが、これらは、「宅地建物取引業」にはあたらない。あくまでも「売買」や「代理もしくは媒介」をすることが対象となっている。

 

 宅地建物取引業は、法律で定める不動産業であり、宅地建物取引業を行うためには、国土交通大臣か都道府県知事の免許を取得しなければならない。「業として」というのは、「営業目的で反復継続する意思をもって」という意味で、世話好きの人が厚意(無償)で売主や買主を紹介するような行為は「業」には当たらない。

 「この免許を持った法人、個人事業主が、法律で認められた正真正銘の「不動産屋」である。

 

 実際には、宅地建物取引業とその他の事業を兼務している会社は多く、そして、消費者が「不動産」にかかわるとき、宅地建物取引業以外のことが関連することも多い。さらには、賃貸管理会社や建設・土木業者、はては地上げ屋まで、世間一般に「不動産屋もしくは不動産屋的なもの」として捉えられている人たちは多い。

 それが証拠に、目つきの悪そうな人が「この家のオーナーさんですか?」と訪ねてきたら、大抵の人は「さっき不動産屋さんがきたよ~。」と言うのだ。実際には、ハウスメーカーの場合もあれば銀行員の場合もある。

 

無免許業者もいる不動産屋

 話がちょっとややこしくなるが、無免許で不動産仲介業をやっている人たちもいて、彼らは「ブローカー」と呼ばれる。ブローカーとは、英語で「仲介者」の意味だが、日本ではなぜか「無免許業者=宅地建物取引業者ではない者」をブローカーと呼ぶ。

 無免許だから不動産の営業行為は禁止されているのだが、商談がまとまりそうになれば、知り合いの宅地建物取引業者を前面に立てて、仲介料の分け前に預かるという算段だ。個人住宅の売買等ではあまり登場することはないが、高額の不動産案件ではしばしば登場する。

 

 こういう人たちの頭の中は、いつも「お金のこと」で一杯だ。取引が成立する見込みもないのに、手数料の分け前でブローカー同士もめていたりする。高額になる不動産の取引は、「千三つ(センミツ)」と言われるくらい、容易にはまとまらない。成立する見込みがない取引についての報酬の分け前で、もめているのだから、傍からみていると滑稽だが、彼らはいたって真剣だ。そして多くの場合、ウソが得意だ(正規の宅地建物取引業者にもウソつきはいるが)。

 高額物件の売却を予定している売主さんは、彼らも含めた不動産屋のウソに振り回されないように気をつけて欲しい。

 

不動産ってなんだ

「不動産の定義」についても触れておきたい。

 

  • 土地及びその定着物は、不動産とする。不動産以外の物は、すべて動産とする。(民法第八十六条)

 

 なんとまあ、あっさりしたものだ。民法によれば、世の中の物は「不動産とそれ以外」に分かれる。では「物」は何かというと、それは第八十五条(定義)に規定されている。

  • この法律において『物』とは、有体物をいう。(民法第85条)

 

 なんじゃ⁉、それなら「有体物」の定義もしろよ、と思うがそれは定義されていない。しかたなくググってみると、「有体物とは何か」ということについては、いくつか説があるのだとか。

 まあ、ここは、学術的に定義を論じる場所ではないし、その必要もないので一般的な解釈に従うと、「有体物とは、排他的に支配ができるもの」と考えればいいらしい。つまり電気のように形がなく見えないものでも、権利の対象になるものは、民法上の「物」にあたるということだ。

 改めて法律とは面白いものだと思う。

 

P.S.

 あまり業界をご存じない方と話しているときに「不動産ビジネスをするには、宅建業者じゃないとできませんよ(大雑把な言い方だが)」というと「私、宅地建物取引士で~す♡」っていう人がいますが、宅地建物取引士は、国家資格であって宅地建物取引業者とは全く別物です。もうみなさん、ご存じですね。(笑)