不動産投資編 第9回 不動産投資に用いられる用語 | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 2000年代に入り、不動産の証券化が進みました。不動産証券化とは、すなわち不動産が金融商品になったということですね。

 

 金融の世界では、健全な投資市場形成のための「投資家保護」は当然のものと考えられていましたが、不動産の世界では、収益目的に不動産を所有する人は「大家さん」であり、立場が強いと考えられたのか、金融に比べればその意識は希薄であったように思います。

 証券化の拡大によって、不動産投資においても、投資家保護の視点に基づく法律や制度の整備が求められるようになったといえます。その結果、それまであいまいであった「用語」についても整理がなされ、プロマーケットを中心に不動産業界に浸透することとなっていきます。

 

 投資に関する用語の定義が明確になれば、売主や仲介業者と会話するうえで齟齬が生じることを防ぐことができます。また、投資用不動産に関わるビジネスの関係者は、基本的な用語については、理解しているのが当然であり、顧客(投資家)として仲介会社の営業マンに接するときにも「基本的な用語を知らない営業マンは勉強不足である」という判断材料にもなるでしょう。

 「不動産投資家なら、すべての用語を知っていなければならない」ということではありませんが、基本的な用語については理解しておくに越したことはありません。

 こういった用語は、Web上にも解説記事が多数あり、興味がある方は検索されてもよろしいかと思います。

 

  • Income Gain インカムゲイン 

 所有する物件の家賃収入から得られる収益のこと。損失はインカムロス。売却による収益、損失はキャピタルゲイン(ロス)。単に「インカム」という場合もあり。

 

  • NOI エヌ・オー・アイ

 Net Operating Income  収入から実際に発生した経費を差し引いて求められるNOIのこと。減価償却費などの非金銭支出や、ローン・借り入れ等の利息といった金融費用は控除しない。

 

  •  NCF エヌ・シー・エフ

 NOIから資本的支出(CAPEX)を控除したもの。

  •  CAPEX キャペックス Capital Expenditure    

「資本的支出」とも呼ばれ、外壁や屋上防水の更新、エレベーターや空調等設備の大がかりな更新などに伴い発生する支出をいう。会計上は、資産計上されて簿価の一部になる。

  • PV ピー・ヴイ Present Value

 現在価値      将来得られるキャッシュ・フローを現時点の価値に割り引いた価値のこと。

  • NPV エヌ・ピー・ヴィ Net Present Value

 正味現在価値  PVから投資額を控除したもの。NPVが正の値の時は、その投資は適格であるとされる。

  •  CCR Cash on Cash Return

 キャッシュオン・キャッシュ・リターン  年間のネット収入(通常はNOI)を投資額で割った値。ローンを利用した場合は、自己資金に対するリターンの割合をしますことになり、レバレッジ効果を考慮した指標と言える。

※個人的には、売却によるリターンも含めた平均年間リターンを用いるべきと思うが、一般には上記のような定義となる。

 

  • IRR アイ・アール・アール Internal Rate of Return 内部収益率

 投資額とPVが同じ、つまり「NPVがゼロ」となるときの割引率をいう。IRRの値が大きければ、高い割引率で割り引いてもNPVはプラスになることから、リターンへの期待が高まる一方で、ハイレバレッジの時もIRRの値は大きくなるため、単に「大きければ儲かる」と考えるのは危険。

 

  • AM エーエム アセット・マネージャーアセット・マネジメント

 投資用不動産の管理・運用を投資家の依頼に基づき行う会社や人、またはその業務。

 

  • PM ピーエム プロパティ・マネージャー プロパティ・マネジメント

 投資家やAMから委託を受けて、個別の不動産の建物や設備の管理やメンテナンス、賃借人との契約に関する手続き、賃料の回収などの管理業務を行う会社や人、またはその業務。

 

  • レントロール

 賃貸借契約一覧表のこと。

 

  • サブリース

 事業者が、オーナーの所有している物件を一括で借り上げて、その借り上げた物件をテナントに転貸すること。この時、オーナーと事業者の契約をマスターリース契約、テナントと事業者の契約をサブ―リース契約という。

  •  レンダー

 銀行等、融資を行う主体。

  • ネット利回り

 年間の収入から、保有運営コストを差し引いた収入(ネット収入)を物件価格で除したもの。NOIを物件価格で割った「NOI利回り」を指すことが多いが、異なる場合もある。収入・支出の範囲や消費税の扱いなど、統一基準がある訳ではなくあいまいな用語のひとつ。話し手の意図によって同じ物件でも差異があることもあり注意が必要。

 

  • グロス(表面)利回り

 年間総収入を物件価格で除したもの。ただし、「ネット利回り」同様、明確な定義はなく、検討初期での目安として捉えるべき指標。

 

  • FCR エフシーアール  Free and Clear Return  

 NOIを総投資額で割ったもの。重要指標ながら、一般的に使われる機会が少ない。

 

  • LTV ローン トゥ バリュ Loan to Value

  不動産価格に対する借入金の割合(資産価値に対する負債比率)のこと。 LTV(%) = 負債 ÷ 総資産価値 /100

 

 

 NPVやIRRのように、将来の収益を「現在の価値」に割り引いて、投資額と比較して投資可否を判断する方法をDCF法といいます。

 例えば、10万円を投資して1年後に10万3千円を受け取るような場合、1年後の貨幣価値を考えて、1年後の10万3千円は「現在ならいくらに相当するか」という見方をします。仮に物価が1年で5%上昇していたとしたら、現時点での価値は「10万3千円÷1.05≒9万8千円」となり、10万円より小さくなるため、この投資は「不適格」という判断になります。

 この時の「5%」を「割引率」といいます。割引率は、ここでは、物価上昇、つまり貨幣価値の低下分の5%としましたが、実際には「リスク」の大小によって投資家が判断します。割引率については、また別の機会にお話しできればと思います。