不動産投資編 第11回 投資期間と出口戦略 | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 次のグラフは、国土交通省が公表している「不動産価格指数」です。「2010年の平均が100」となっています。

 

 また、商業用不動産については、2008年からのデータですが、次のようになります。

 

 リーマンショックを底に「都心部と地方の二極化」という現象を伴いながらも2019年度末までは、ある意味順調に不動産価格の上昇が続いてきました。同時に「不動産価格」がいかに大きく変動するものなのかということにも気づきます。

 

 「観光立国」を目指した政策効果、東京2020オリンピック期待もあって、インバウンド需要に支えられたホテルが牽引する形となり、一時は、「ホテル用途の入札者には、価格で対抗できない」と言われるまでになりました。それが、2020年度に入ったとたん、コロナ禍により、ホテルはもちろん、都心のテナントビルも、大きく価格を下げることになりました。

 

 長く「不動産業界」に身を置いていると、価格上昇時にどうしても、リーマンショック時の「金融不安」や、1990年代の「バブル崩壊」のことが頭をよぎります。これは、私だけではなく、他の不動産業者も同様のようです。

 

 「コロナショック」については、2018年頃から高値警戒感が続く中での出来事、しかし、その原因が「パンデミック」ということは全く予想もしなかったことでした。「すわ、不動産大暴落」…と思いきや、世界的な金融緩和により、物流不動産、レジデンシャル中心に、さらに価格は高騰しました。

 

 こんなふうに不動産価格を読むことは、簡単ではありません。まして、20年も30年も先の不動産マーケットがどうなっているかなんて、誰も予想することはできません。

 ところが、不動産投資においては、「できるだけ低利」で「できるだけ長期」の融資を組むのが基本方針です。築浅物件であれば、30年、35年といった返済期間になることもしばしばです。

 

 ありがちなのが「30年間ではそれほどの利益はないが、ローン返済が終われば家賃が丸々残ります!」という収支計画。

 これは、とんでもないまやかしで、ちゃんと「初年度からある程度の収益が上がる物件でなければ投資はしない」ことは大原則です。

 

 それに加えて、「5年後くらいまでに売却したらどのくらいの利益を得られるか」という想定をしておきましょう。売却のことは「出口」というふうにもいうので、「30年後の出口戦略」ではなく「5年毎の出口戦略」を立て、それをアップデートしておくようにしていただきたいと思います。

 例えば、5年後に売却するときは、残債がどのくらいあって売却によってすべて返済できるのかどうか、万一、値下がりしていたとしたら、その穴埋めができるのかどうか等の想定です。

 

 不動産マーケットの予測は難しいのですが、それでも数年先であれば、まだ見通しがつきやすいし、変調のサインに気づくことができるかもしれません。常に「出口」のことを意識していれば、「これはヤバいかも‼」と思った時に、最少の損失で手じまいできる可能性は高くなります。

 もちろん、その時点で「保有継続にメリットあり」と判断すれば売らなければよいだけのことです。

 

 繰り返しになりますが、低収益、長期ローンを組んで、「20年も30年も経ってからようやく黒字転換」というような不動産投資を、私は良しとしません。仮に「相続税の節税」につながったとしてもです。

 なぜなら、収益性と相続対策の両方を兼ね備えた「投資用物件」は、他にいくらでもあるからです。業者だけが儲かるような話に投資してはいけません。