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「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 お金持ちの家に生まれた訳でもない、宝くじに当たった訳でもない、フツー国民のあなたが老後不安なく暮らすために、「真水で500万円」の賃貸収入を実現するという目標設定はできた。次は、いよいよ実行段階となる。

 

 はじめに、年間のNOIが150万円の物件を、投資総額3,000万円で取得する。NOI利回り5%だ。頭金は、300万円を用意する。これはなんとか頑張って、貯蓄してほしい。ただし、3,000万円全額の借入、つまりフルローンが可能なら、全額を借り入れて、300万円は手元に残しておく。

 

 長い賃貸期間中には、テナント退去等で賃料が減少する場合がある、物件の修繕等で急な出費に迫られるときもある。300万円は、その時の備えだ。「給与収入が十分にあり、何かあっても対応できる状況にある人なら、そんな心配は不要と思うが、ローン返済が滞ったり、生活資金に支障が出たり、しないようにしておいて欲しい。

 

 3,000万円を、年利1.5%、30年返済の条件で借入できたとすると、ローン返済後の手残りは、毎年26万円(税引前)となる。この26万円は、「儲かった」と消費するのではなく、頭金の300万円と一緒に安全資産で運用しながらとっておく。

 5年経過すると、借入金の残債は2589万円まで減少する、5年間に手元に残ったキャッシュ(インカムの合計)も129万円になっている。仮に、その時点で売却して得られるキャッシュが3,000万円だとすると、残債との差額411万円と191万円の合計、540万円を手にすることができる。同様に、10年後に売却した場合の獲得額は1,112万円となる。

 

 頭金の300万円と合わせて、5年後、10年後にそれぞれ、840万円、1412万円が手元に残ることになる。

ここでは、「5年後に売却した」と仮定して、次に8,000万円の物件を、頭金540万円で購入する(300万円は、手元に残しておく)。

 1件目と同様、NOI利回り5%、借入金7,460万円(年利1・5%、25年返済)、売却で得られるキャッシュ・フローは8,000万円とすると、5年後、10年後の売却後の資金は、それぞれ。2,327万円(2,027万円+300万円)、3,913万円(3,613万円+300万円)となる。

 

 ここまで、2物件の取得と売却という流れで説明してきた。しかし、この2物件の売却にあたっては、いずれも「値上がり益はゼロ」想定である。つまり、インカムゲインだけで、300万円の頭金は、「10年間で2,327万円に」、「15年間で3,913万円に」増えたことになる。

 いうまでもなく、インカムゲインは、テナントが支払ってくれた家賃が原資である。「不労所得」と、はしゃぎたくなる気持ちも分からないではない。(笑)

 

 さて、実際の運用においては、不動産市況や運用状況、具体的な買主からのオファー等によって、運用方法を変えていくことになる。例を挙げれば次のようなことだ。いずれにしても「真水で500万円」の賃貸収入実現に向けて、ここまでくれば「あと少し」だ。

  1.  2物件目を長期運用、追加でもう1物件取得」➡25年経てば、2物件目のローンは完済、その後は、毎年400万円のNOIが全額手元に残る。3物件目の賃料と合わせ、「真水で500万円」は十分可能であろう。毎年の返済後のキャッシュ・フロー42万円も、25年分となれば、1,050万円になっている。
  2. 「4年後、1物件目に、4,000万円での購入希望者が現れた」➡3割以上の値上がり、「キャピタルゲイン」は、目標達成の前倒しに大いに貢献する。金融機関次第では、1億円以上の物件取得にも現実味がでてくるし、目標達成に、グッと近づくことだろう。
  3. 「不動産市況が悪化し、収益物件の価格も下落」➡1物件目の売却は見送り、2物件目の取得に全力をあげる。「不動産価格が下がれば、利回りはアップ」この機に、優良物件の取得を実現しよう。

 さて、ここまでお読みいただいて、なんとなくゴールへの道筋をイメージしていただくことはできただろうか。

 

 何といっても、「家賃収入からローンを返済」するメリットは、とてつもなく大きい。住宅ローンは、労働による所得から支払わなければならないが、こちらは、テナントがローンを肩代わりしてくれているようなものである。最初の頭金300万円を除けば、家計支出に負担をかけることはないので、住宅ローンを組むことも、なんら問題ない。

 

 保有不動産の市場価値と負債のバランス(つまり、残債がいくらか)に、気を配りつつ、時間をかけて、不動産の保有経験も積みながら、資産規模を目標水準に近づけていく。年齢と共に、借入金の残高を減らしてゆくことで、過度なリスクを負うことを回避しつつ、65歳前後には「真水で500万円」を確実なものにできるはずだ。

 そして、その頃には、住宅ローンも払い終わり、無借金の「自宅+収益物件」により、老後の安心を手にすることができるであろう。

 とはいえ、このロードマップ実現のためには、いくつかの条件を満たす必要がある。次回、それを説明したい。

 サラリーマンが始める不動産投資には、失敗例も少なくない。不動産会社のセミナーにも参加し、「金持ち父さん貧乏父さん」も読んで(笑)勉強したのになぜこんなことになってしまったのか‥。

 

 物件取得の判断や資金調達の方法、あるいは取得後の運用方法等、一連のプロセスのどこかに、ひとつまたはそれ以上の原因が隠れているものと考えるが、その前に「そもそも投資のゴール設定に無理があったのではないか」という問いを投げかけてみたい。

 ほんの数分でよい、「不動産投資」というワードでネット検索してみれば、多くの成功者のサイトや出版物、YouTube動画等がヒットする。「年収200万円のサラリーマンが今や家賃ウン億円の大家に」とか「ワンルームからはじめて10棟のマンションオーナーになった極意を教えます!」とか、うらやましすぎる(笑)。

 

 それらに目がくらんだとは言わないが、「欲張りすぎて、あるいは夢を見すぎて、高難度のゴールを設定したために、ハイリスク投資となり破綻につながる」ことは十分に考えられる。事実、成功者の陰で、全財産を失って後悔している人たちが大勢いる。  特に、やみくもに借金をして投資物件の取得を急拡大することは、かなりハイリスクだと言える。

 

 結論から言うと、私は、不動産投資の初心者が、まず目指すべきゴールは「老後の安定生活」におくのがよいと考える。例えば、何らかの理由で、働くことができない状況が生じたとして、「不動産からの賃料収入で生活することができる状態」を実現するということだ。

 

 私が提案するゴールは、年金生活者となった時点において「真水で年500万円」の手取り収入を実現することだ。月額にして40万円強。もちろん持ち家かどうか、生活コストが異なる都会か、田舎かといったことでその目標額は増減すると思うが、いずれにしても「贅沢しなければ家賃収入だけで生きていける」水準ということでよいと思う。それを、「働きながら10年以上の時間をかけて実現すること」を目指すのだ。

 

 子育て世代は住宅ローンを抱えていることも多い。しかし、「60歳位まで」にということであれば無理なく実現可能だ。40歳でスタートするなら20年かけてもよいということだ。なお、20年後の貨幣価値は変わっているので、「現在価値で年間500万円」と理解していただきたい。

 

 「真水で」というのは、「返済後の金額で」という意味である。もう少し丁寧に説明すると年間のNOI(注:家賃収入から保有や管理にかかる費用を差し引いたもの、但し減価償却費は含めない。)から元金と利息を返済した残額のことであり、NOIが500万円の物件なら、60歳時点での借金はゼロ(完済済み)、800万円の物件なら年間の返済額が300万円程度あってもよいということだ。借入額にして6千から7千万円というところになるだろう。

 

 不動産投資においては、適度なレバレッジがポイントになる。「適度な」という意味は、投資の過程において売却の必要に迫られたとき、「売却で債務をゼロにできる水準」ということである。また、「何らかの理由で賃料収入が減ってしまったり、途絶えたりしたときにも、返済の穴埋めができる水準」ということである

 

 企業には、65歳までの雇用確保が義務付けられており、70歳定年制という会社も増えつつある。しかし、多くの場合60歳を超えると収入は減少するし、また年齢的に病気等で働けなくなってしまう可能性も高まる。収入が減少したタイミングでローン返済が終われば、ちょうど家賃収入が給与収入と入れ替わりで生活を支えてくれるようになる。そこに年金給付が加われば、現役時代とほぼ同様の生活が維持できるであろう。

 40歳で収益物件を取得すれば、遅くとも定年までの25年~30年間に、ローンを返し終わり、老後の生活を支える、これなら、「普通のサラリーマン」が実行できる「現実的なゴール設定」ではなかろうか。

 そのうえで、その間の社会情勢、自身の収入状況等の変化等を見ながら、不動産価格が大きく上昇したり、余裕資金ができるなどチャンス到来とみれば、さらなる追加投資や買い替えによる収益機会の拡大を狙っていけばよいだろう。

 不動産投資における「利回り」ってなんだろう。「馬鹿にするな、そんなの収入÷価格に決まっているじゃないか!」(笑)

 

 いや、その通りなのだが「収入ってなに?」「価格って何?」を、生真面目に考えて行くと、結構あいまいなことがあるというお話を聞いていただきたい。

 

 投資用不動産のチラシをご覧になった方はお気づきだと思うが、そこには「満室想定利回り」とか「現況利回り」とかの記載があるはずだ。不動産会社の営業マンが「利回りが高いですよ~」とかいうとき、それは、「今は、半分の部屋しか借りている人がいないけど、満室になったらこんなに高くなりますよ~。」という意味で使う「満室想定利回り」のことが多い。

 

 「一年間の収入を投資額で割ったもの」を意味する利回り、実は、この「一年間の収入」と「投資額」について、業界として明確なルールがある訳ではなく、ある時は「現在の賃料」が、ある時は「NOI(収入から運営や保有にかかるコストを控除した額)」が使われ、また、分母となる物件価格や収入等に係る消費税の取り扱い等もまちまちであるなど、幾通りもの計算方法で示されていることに注意する必要がある。

 

 利回りの呼び方をまとめると下図のようになる。

 

※ NOI=Net Operating Income

※ FCR=Free & Clearly Return

 

 もうお分かりのように、もっとも重要な「利回り」は、FCR(Free & Clear Return)利回りである。実際に手元に残る金額と、実際に支出する投資総額を、分子と分母に用いるため、税引前の収益に対する利回りを、最も正しく反映しているからだ。

 しかしながら、取引の現場においては、分母には「総投資額」ではなく「不動産価格」が用いられることがほとんどだ。不動産仲介の現場においても、「ネット利回り」というときは、NОI利回りの意味で使っている営業マンが多かったと思う。

 

 FCR利回りは、個人的には、大変重要な指標だと思うので、もう少し取引現場での共通ワードとして広まればよいと思うが、そうならないのは「少しでも利回りを高く見せたい」という営業マンの心理がそうさせているのだろうか。世の中には、「売買価格3000万円、不動産取得税1億円」なんていう物件もある。NOI利回り30%、FCR利回り7%なんていうことも起こり得るということだ。

 

 いずれにしても、「利回り」は、投資判断の重要指標のひとつでありながら、定義にあいまいさがあり、また使い手によって、中身が異なることもあるので、よくよく確認してもらいたい。そして、なんとなくの雰囲気で「利回りが高い」と判断するのではなく、実際の収入、支出を漏れなく反映したシミュレーションを必ず作成して、物件の比較や投資の可否判断を行ってもらいたいと思う。失敗しないためには、必ず必要なプロセスである。

「マンション管理計画認定制度」は、管理組合が作成した「マンションの管理に関する計画(管理計画)」を、地方公共団体が「適切な管理計画を持つマンション」として認定するもので、管理組合が申請者します。

認定にあたっては、「管理組合の運営」「管理規約」「管理組合の経理」「長期修繕計画の作成及び見直し等」「その他」の5つのカテゴリーにおける16項目の基準に加え、地方公共団体に独自基準がある場合は、その基準も満たしていることが条件となります。

一方、「マンション管理適正評価制度」は、マンションの管理状態や管理組合運営の状態を6段階で評価し、インターネットを通じて情報を公開する仕組みで、一般社団法人マンション管理業協会が運営しています。

マンション管理計画認定制度における「管理計画認定の認定基準」と、マンション管理適正評価制度における「評価項目」を以下に記載しますので、ご参照ください。

 

 二つの制度は、マンション管理の適正化を目指しており、認定、評価における項目には共通点が多くあります。前者は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度で、管理組合が提出した「管理計画」を、地方公共団体が認定するものです。

 後者は民間の専門家の評価を受けて、管理組合が自らの責任において、マンション管理業協会を通じて公表する。また、前者が、「管理計画を認定したマンションを公表」する制度であるのに対し、後者は、★の数によるランク付けをしているところに特徴があります。

 

 管理計画の認定を受けたマンションの数は、2024年3月時点で約400件、一方、マンション管理適正評価制度により、管理状態を登録、公開しているマンションの数は、2024年5月時点で、約4400件です。

 2022年時点での分譲マンションストック戸数は、約694万戸(国土交通省資料)ということですから、登録数が多い管理適正評価制度でみても、全体の0.06%に過ぎません。しかし、今後その数は増加していくでしょうし、何よりも、このような制度が始まったこと自体に大きな意義があると考えます。

 

 第一に、どちらの制度も申請主体は「管理組合」であり、管理会社の情報提供や支援があるにしても、住人の意思による自主的な行動であること、二番目に、共通の基準で評価した管理状況を、インターネットで公開するという大胆さ、この二点において、画期的な取り組みだと私は思います。

 

 マンションの便利さの象徴として「鍵一本で出かけられる」という表現をするときがあります。その中には、防犯という意味のみならず、近隣住民との面倒なかかわりから解放されるという心情も含まれていると感じるのは私ではないと思います。

 いずれにしても、意識は家(専有部分)の中、それ以外の面倒なことは管理会社がやってくれる、その気楽さがマンションの良さでした。ところが、その無関心さゆえに、建て替え協議はおろか、待ったなしに進む老朽化に対し、対策を打つことすら困難な状況に追い込まれることを、この半世紀の間に私たちは学習してきたたのです。

 

 ほぼ同時期に入居した同世代の住民は、同じように歳をとり、ほぼ同時期に死んでいきます。相続人が新たな住人とはならず、住戸が貸し出されるのはまだよい方で、空き家のまま放置されることも珍しくありません。管理費も修繕積立金も滞納が増え、十分なメンテナンス資金を準備できず、建物も設備もますます老いていきます。

 

 事ことに至り、ようやく私たちは気づいたのです、「マンションはコミュニティだ」ということを。そして、地域社会と同じように、新陳代謝(世代交代)が、存続の生命線であることを。

 二つの制度は、管理に対する住人の意識を向上させます。マンションの管理は「住民の自治で決定し、実行していく。自分たちの共有財産を自分たちで守る」この当たり前のことに気づいたことは大きな第一歩です。決して早くはないが、まだ手遅れではないはずです。

 そして、情報公開。想像して下さい。「お宅のマンションって、管理がいいんですってね。」住人以外の人からそう言われることが、どれだけ励みになり誇りになることか。そして、管理の良さが決め手となって、「若い世代の人が住みたいマンション」として認知される、つまり、新陳代謝が進みコミュニティが若返り活性化されることになります。

 健全なコミュニティは、建物や設備の老朽化に待ったをかけ、高経年ではあっても快適で健康な暮らしを維持、向上させてゆくことになってゆくでしょう。

 

「マンション管理計画認定」と「マンション管理適正評価」、この二つの制度は、そういう可能性を秘めていると、期待を込めて申し上げておきたいと思います。

 「マンションは管理を買え」といわれます。確かに、管理状態が悪いマンションでは、資産価値は下がる一方だし、第一、住んでいる当の本人が心地よくないでしょう。では、「管理がよい」とは、どういうことなのでしょうか。


 「高齢化社会とマンション老朽化の問題」で触れたように、日本社会の高齢化に合わせるように、マンションも歳をとり、2022年末時点において、築40年以上のそれは、約126万戸、そして、20年後の2042年末には約445万戸に達するといいます。また、2022年時点で、25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定している管理組合の割合は約54%、積立額が不足している割合が35%です。(2024年、国道交通省資料「マンション取り巻く現状と課題」より。)


 近年、マンションの高額化もあってか、セキュリティはもとより、日常生活のサポートや医療の緊急対応等、さまざまな付加サービスが受けられる物件も珍しくなくなりました。
 しかし、「経年による建物、設備の老朽化に適切に対処できている」ということが、管理状態がよいマンションの最低条件であることに異を唱える方はいないと思います。そして、その現状を正確に知ることは、そこに住む住民はもとより、これからマイホーム取得を控えた住民予備軍の人たちにとっても、きわめて大切なことです。


 ところが、「あるそのマンションの管理状況について一般消費者が情報を得ること」は、簡単なことではないのも事実です。手掛かりは、「大手不動産会社の分譲である」とか「管理会社が有名な会社である」とか、表面的なことばかりで心もとない限りです。
 中古マンションの購入に向けて、売主と具体的な商談になれば、(良心的な会社ならば)仲介会社の担当営業マンが、修繕積立金の現状や長期修繕計画等について、管理組合や管理会社にヒアリングしてくれるので、多少は知ることができますが、それ以外となると、自分の目で共用部分をつぶさに見て回り、問題がないかどうかを推測するしか術はないことになります。


そんな現状に対し、2022年に新たな二つの制度が運用開始となりました。現在はまだ、始まったばかりの制度ではありますが、分譲マンションの管理に関する情報を、一般消費者が知ることができるという点において画期的な制度であるといえます。もしかしたら、何年後かに振り返った時、これらの制度の開始が、住民に対しても購入者にたいしても、マンション管理への関心を喚起するターニングポイントだった、ということになっているかもしれません。
 ー住宅編 第6回へ続く―

 「不動産投資の一番のメリットは?」と聞かれたら、私は「ローン・レバレッジ」と答える。ちなみに、二番目は、節税につながる不動産固有の「税制」だ。

 

 ローン・レバレッジのメリットとは、その名前(レバレッジ=てこ)の通り、投資額に対するリターンを増幅できることです。「第3回『リターン』を分解してみれば」の説明で使った「年間のインカムが500万円のマンション」を例に説明すると次のようになります。

 5年間のインカムゲインは2500万円、5年後に1億2000万円の売却収入を得ることができれば、キャピタルゲインは2000万円なので、インカム+キャピタル、トータルのリターンは4500万円で、1年あたりの投資利回りは9(4500万円÷1億円÷5年)です。

 

 一方、同じマンションを、年利1%で5000万円のローンを借りて購入することにします。(投資額1億円のうち自己資金が5000万円)

 インカムゲインとキャピタルゲインの総額は、ローンを借りても借りなくても同じ金額4500万円ですが、今度は利息を支払わなければなりません。単純化するために、ここでは、5000万円×1%×5年=250万円を利息の総額とすると…。

 

 5年間に獲得したリターンは、4500万円から利息250万円を引いた4250万円となります。これは、「5000万円の元金が5年で4250万円のリターンを生んだ」ということで、1年あたりの利回りは、4250万円÷5000万円÷5年=17%となり、9%から倍近くに跳ね上がります。このように「レバレッジ」は投資効率を高める大きな武器となります。

 

 

 ところで、既にお気づきのようにレバレッジは「低金利」だからこそ成立する手法といえます。仮に年利が5%だとすると、5年間の支払利息は1,250万円となり、インカムゲインの半分が利息に消えることになります。インカム、キャピタル合わせたリターンは3,250万円となって、1年あたりの利回りは13%、年利8%では、利回り10%まで低下します。

 それでもそこそこの利回りをキープできているのは、2,000万円のキャピタルゲインがあるからで、もしそれがなければリターンはインカムゲインの2,500万円から利息1,250万円を引いた1,250万円だけ。なんのことはない、利回りは5%、つまり「レバレッジ効果はゼロ」です(元々の利回りが年利5%ですからね)。

 

 1億円で取得した不動産が5年後に値上がりしている保証はありません。、キャピタルゲイン狙いの投資は、ちょっと振り返っただけでも、リーマンショックがあったり、コロナ禍があったり、先を読むのは簡単ではなくプロの不動産会社でも読み違えて失敗することがあります。

 時の経つのが早く世の移り変わりが著しいことを例えて、「10年ひと昔」いう言い方をしますが、来年には、年金受給者となる身としては、その10年もあっという間で、実感としては「50年ひと昔」の方がしっくりきます。いや、光陰矢の如しというべきか。

 

 30代、40代で新築マンションを購入するとして、そのマンションの寿命について、深く考える人はあまりいないと思います。「若い時の50年先」は、ずっとずっと先の話。

 ところが、長生きが当たり前の社会となり、気づかないうちに「マンションの寿命」を、見届けることになるかもしれない、年齢になってしまいました。

 

 分譲当時から住む人は、このマンションで同じように子育てをした同世代の人たちです。とうの昔に子供たちは独立をして、離れた場所に生活拠点をもっています。入居者の中でも、後期高齢者といわれる老夫婦、一人暮らしになった老人が増え続けています。

 マンションの維持管理にも管理組合にも無関心だったツケが回ってきて、気がつけば建物のあちこちの傷みはひどいことになっています。ところが、既に空き家状態の住戸があるうえに、経済的にゆとりがない高齢世帯は、余分な修繕費の負担は嫌だと言います。「この先何年生きられるかわからない」という気持ちも、消極的にさせているのかもしれません。

 

 一戸建てに比べて、圧倒的に価格が上昇してきたマンションも、個別に見て行くと、こんな「スラム化予備軍」といわれる物件が増えています。

 国土交通省が2018年度に行った調査によれば、長期の修繕計画に対して必要な積立金が「不足している」というマンションの割合は34.8%もあり、5年前に比べて2倍以上になっています。さらなる高齢化、多死社会が進むことで、この傾向はますます強まって行くと考える方が自然でしょう。

 

 「共同住宅」の一形態であるマンションは、建物の一角を所有しているという点に特徴があります。所有者は「専有部分」と呼ばれるその「一角」(簡単に言えば一住戸の内側部分)のオーナー(区分所有者)であり、それ以外の建物共用部分や敷地は、区分所有者全員で共有しています。

 この区分所有者が管理組合を設立し、管理会社に委託するなどして共用部分の維持管理に努めるのですが、新築マンションの分譲時には、分譲会社側で用意した管理会社に管理を委託するのが既定路線で、マンション購入者に、自分たちが管理するという意識は希薄です。「管理組合の会合にはできるだけ参加したくないし、できればお隣さんともかかわりを持ちたくない。掃除も、修繕も、トラブルも、面倒なことは管理会社がやってくれる。それがマンションのいいところなのだから。」まあ、だいたいがそんな感覚だったでしょう。

 

 分譲する側のデベロッパーも「修繕積立金の額を多くしすぎると売れ行きに影響する。」と考え、「管理組合で将来のことは考えて下さいね~。」てな感じで、その重要性を強く訴えてはいませんでした。購入する側は購入する側で「管理費、修繕積立金は安い方が助かる。」と、本気で考えていました。目の前のマンションは、新築ピカピカ。新生活に夢見心地のオーナーに、50年後先の悲劇を想像しろという方が酷なことであったでしょう。

 

 さて、この老朽化マンション問題、空き家問題も相まって、日本の行く末に立ちはだかる大問題となっています。メディアでもたびたび報道されていますが、より詳しいところを知りたい方、もしかしたら当事者かもしれない方のために、参考図書をご案内しておきたいと思います。

 

老いる日本の住まい 急増する空き家と老朽マンションの脅威(著者:NHKスペシャル取材班、出版社:マガジンハウス)
不動産で知る日本のこれから(著者:牧野知弘、出版社:祥伝社)
 

 

 私は、若い頃、分譲マンションや戸建注文住宅の営業マンでしたが、モデルルームを案内していて、必ず出るのが「この部屋は何畳ですか」という質問です。図面にも各部屋の畳数が表示されています。近頃は、和室がない住宅が主流になりつつあると思いますが、そこは日本人、畳の枚数と広さの感覚が染みついています。

 

 では、畳の広さをご存じでしょうか。畳がないのに「リビングダイニング20畳」とかの表示があるのはなぜでしょう。

 

 実は、畳は地域によってサイズが異なります。例えば、関西で一般的な京間(関西間)は、6尺3寸×3尺1寸5分(191×95.5㎝)、1.82405㎡、関東で一般的な江戸間は、5尺8寸×3尺1寸5分(176㎝cm×88㎝)1.5488㎡、そして、中京地方に多い中京間は、6尺×3尺(182㎝×91㎝)1.6562㎡です。これだけでもややこしいのに、公団住宅で採用されて広まった、さらに一回り小さい団地サイズ(5尺6寸×2尺8寸、170㎝×85㎝)があり、一部地域ではまた違うサイズの畳が使われています。ちなみに、「1尺=10寸=100分=30.303㎝」です。

 

 さて、部屋の広さに話を戻しましょう。東京のマンションや一戸建の6畳の部屋は、江戸間サイズの1.5488㎡×6枚分で、9.2928㎡かというと違います。もちろん、昔ながらの建て方をしている日本家屋なら9.2928㎡となるとは思いますが…。

 

 設計には「グリッド(grid)」という考え方があります。グリッドとは、格子とか碁盤目という意味です。設計する際、多くの場合、このグリッド単位で長さを決めていくのです。そして、ほとんどの戸建住宅では、3尺(91㎝)のグリッドを用います。

 

 日常生活では使われなくなった尺貫法が、建築の世界では生きていることに驚きますが、その理由は、国内で流通する建材のほとんどが、今も尺を基準に加工されていることによります。柱の長さが3尺(2m73㎝)なのに2m60㎝を使用する設計をしてしまうと13㎝を捨てることになるし、3m必要な設計にすると、特注サイズの柱が必要となってしまいます。要するに、規格サイズにした方が「無駄がない」「効率的」ということなのです。

 

 そのことを確かめる簡単な方法があります。ホームセンターに行ってみれば、材木は、45.5㎝、91㎝、182㎝、273㎝というサイズで、多くのカーテン(窓の大きさに合わせる)や家具(壁の大きさに合わせる)は、一回り小さく、180㎝や90㎝でつくられています。

 

 ところで、3尺(91㎝)は、中京間の畳の短い方の長さです。そして、思い出して下さい、「畳は、柱や壁の内側に納まっている」ということを。

 ということは、91㎝のグリッドで設計した6畳の部屋は、273㎝×364㎝ですが、これは壁の中心から中心までの長さです。つまり、この6畳の部屋に畳を敷くと、壁の厚みがあるので中京間の畳は入りません。では、どうするか。

 

 仮に壁の中心から、内壁の仕上り面まで6㎝あるとすると、内法の寸法は、6畳の短辺で261㎝(273㎝−12㎝)を3分割した短辺が87㎝の畳を入れるということで解決。つまり、畳のサイズは、部屋の長さと壁の厚みできまるということなのです。もっと簡単にいうと、「畳は、部屋の有効面積に合わせていかようにも作ります!」となります。各部屋の広さを比較するときは、畳数ではなく平方メートルで行う方が正確にできるできるでしょう。

 

 ちなみに、洋室の畳数を求めるときは、「壁芯から壁芯までの長さ」を基に求めた面積を1.6562㎡で割って表示するのが一般的です。したがって、一般的に木造よりも壁が厚く、柱のでっぱりなどもあるマンションの方が、同じ畳数でも有効面積が小さいことが多くなります。

 

■この部屋の畳数と有効(内法)面積は?

 次に、リターンについて考えてみましょう。不動産から得られる収益は、保有期間中の「家賃」と売却時に入る「売買代金」です。正確には、必要な経費を控除した家賃の手取り額と、売買代金から購入時の投資額(取得経費含む)と譲渡にかかる経費等を引いた差額、つまり「値上がり益」です。株でいえば、配当と売却利益に相当します。

 前者は、インカムゲイン(賃料を裏付けとする収益)、後者は、キャピタルゲイン(値上がり益)といいいます。

 

つまり、リターンは「インカムゲインとキャピタルゲインでできている」ということができます。なお、損失が出たときは、インカムロス、キャピタルロスといいます。

 

インカムゲインの性質

 さて、インカムとキャピタルには、特に不動産投資の場合わかりやすい特徴があります。インカムは、多くの場合投資額に対し、年間に4~5%程度。そして、比較的安定的に入ってきます。つまり、コツコツ型でのんびりした性格といえます。これに対し、キャピタルは、市場動向によってガーンと稼げるときもあれば、大きく損失が出てしまうこともあります。どちらかというと気まぐれな性格です。

 もちろん、例外もあって、年間のインカムが20%といった物件もあるりますが「満室稼働すれば」という実現性の低い仮定の利回り(「満室想定利回り」等という)だったり、購入後に多額の修繕費が必要だとか、再建築ができないとか、さもなければ立地が悪い等、つまりは資産価値が劣る物件だったりして、「掘り出し物」であることはあまりありません。

 ここで、具体的な事例を挙げて説明してみます。年間のインカムが500万円、価格1億円の1棟賃貸マンションに投資するケースを考えてみます。単純化のために、インカムはずっと同額と考えて下さい。

 例えば、10年間保有して、インカムの総額は5000万円となります。10年経っても投資額のまだ半分しか回収できていません。あと10年保有してトータル1億円ですから、純粋にプラスになるのは21年目からということになります。

 もちろん、「資産としての不動産」を保有しいる訳ですが、その間「また、リーマンショックみたいなのがきて値下がりしたらどうしよう」とか「災害で倒壊してしまわないか」とか、心配事は尽きません。だから、どこかで売却して利益確定したいと考えたとしても、不思議はありません。

 

キャピタルゲインの性質

 一方、5年間だけ保有して売却するケースを想定してみます。

5年間のインカムゲインは、2500万円。5年後に、この物件が1億2000万円(手取り額)で売れたとすると、2000万円の値上がり益、すなわちキャピタルゲインを得られます。

 この場合、「リターン」の総額は、「2500万円+2000万円=4500万円」です。1億円を投資して5年間で4500万円のリターンは、利回りでいうと1年あたり9%というなかなかの高利回りです。インカムとキャピタルをうまく組み合わせることにより投資効率をかなり高めることができました。

 

 

ところが、運悪く、売却時期が不動産不況のタイミングと重なり、売却しても8000万円にしかならなかったらどうでしょう。

5年間のインカムゲインは変わりませんが、キャピタルは2000万円の損(キャピタルロス)が出てしまい、差引きでプラス500万円にしかなりません。これは年率1%(500万円÷5年÷1億円)の運用成績だったということになります。まだ、プラスだからいいですが、さらに値下がりしてしまえば危うくマイナス運用です。

 

 

 このように、キャピタルゲインは、その時々の不動産市況に大きく左右されます。特に短期間の運用(売却までの期間が短い)では、インカムゲインが少ない分、「投資が成功するかどうかは、キャピタル頼み」となります。

 

 「値下がりしたなら売らなければよい」その通り!しかし、売却せざるを得ないような状況になってしまったら‥。

 

 リーマンショック前後の数年間、金融機関が資金回収に走り、不動産価格が下がっているにも関わらず売却を強いられた例が多数みられました。一寸先は闇です。どんなときにも、「売る、売らないを、自己決定できる権利」を失わないようにしなければなりません。

 

 なかにはいます。あっという間に転売して稼いでいる人。ほとんどの場合は、「買取転売業者」と呼ばれるプロの不動産屋です。ただ、マーケットの動向を読まなければいけないし、不動産の潜在的な価値を見抜く目も必要(一番確実なのは、割安に買うことですから)。プロならではの技術という面は否めなません。と同時に、マーケット次第では保有物件の価格が大きく下落し、損失を被るリスクも抱えています。一定のリスクを甘受しながら、転売益を狙っているという訳です。

 

 「不動産投資をこれから始める」という方に対して、私は、「インカム中心のある程度時間をかける投資」を勧めます。そして、チャンスがあれば「売却してリターンの最大化」を図ればよいのです。株式投資でいうところの「利益確定」ですね。もちろん、獲得した資金を次にどう展開していくかという戦略が大切で、売却判断に影響を及ぼします。そういう意味では、投資家自身が目指す「ライフプラン」に基づく投資方針を明確にしておくことが望ましいでしょう。

【投資】利益を目的として資本を出すこと(常用国語辞典)。

 

 利益とはすなわち、見返り、「リターン」のことです。このリターンを得るためには、様々な「心配事」がつきまといます。

例えば、A君が「自分に100万円貸してくれたら、1年後に110万円にして返す。」と言ったとします。あなたは、この投資話に乗るでしょうか。100万円が1年で110万円、利回り10%、この超低金利時代にめちゃくちゃ好条件です。

 

 では、同じことをA君ではなく、三菱UFJ銀行が言ったとしたら(言いませんが)どうでしょう。間違いなく、10人中10人が投資するに違いありません。

 

 いったい、この差はどこからくるのでしょう?

 

 A君は、持ち逃げするかもしれないし、失業して返せなくなるかもしれない。最悪の場合、死んでしまうかもしれない。要するに心配なことがいっぱいあるのに対し、三菱UFJ銀行なら必ず払ってくれるという安心感、言い換えれば「信用」がそこにあります。

 また、1年後ではなく、「1週間後に返す」という条件なら、A君に100万円預けてみようという人もいるかもしれません。つまり「期間が長い」ことはそれだけ心配の度合いが大きいということになります。

 

 このように、「信用」や「期間」によって安心の度合いが違う。人は、不安なほど「リスクが高い」と感じより高い利益「リターン」でなければ投資しようと思いません。

 不動産投資に置き換えると、おんぼろ物件や怪しげなテナントでは、心配で仕方ない(信用度が低い)ので、高い賃料をもらって短期間に資金を回収したい、ピッカピカの新築で一流企業がテナントなら、投資額の割にリターンがちょっと少なくても「まいっか」ということになるのです。

 

 このリスクとリターンの見方、評価は人によって異なります。ハイリスク・ハイリターンの物件、ローリスク・ローリターンの物件への投資なら、合理的と言えますが、なかには、ハイリスク・ローリターンの物件に投資してしまう人もいます。

 

 大きな損失を出して何とか取り戻したいと焦っているときに、通常ならやらないような博打に出てしまうことがあります。不動産であれば、営業マンの巧みな説明に、買いたい気持ちが先行して冷静な判断を見失ってしまったようなときです。残念ながらこれは、投資ではなく投機。「失敗への道まっしぐら」という結果になってしまいます。

 

 不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」と言われます。株のように投資額の何倍も儲かることはめったにありませんが、大損することもめったにありません(損失が出ることはある)。ところが、人によっては、不動産投資が原因で自己破産することもあります。知識があれば防げたことかもしれないのです。

 「不動産投資を学ぶ」とは、「リスクに対して適切なリターンを期待できる物件を見極める力」を身につけるということであり、自らが背負うことのできるリスク(リスク許容度)を知ることだといえます。