不動産投資編 第5回 利回りについて考える | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 不動産投資における「利回り」ってなんだろう。「馬鹿にするな、そんなの収入÷価格に決まっているじゃないか!」(笑)

 

 いや、その通りなのだが「収入ってなに?」「価格って何?」を、生真面目に考えて行くと、結構あいまいなことがあるというお話を聞いていただきたい。

 

 投資用不動産のチラシをご覧になった方はお気づきだと思うが、そこには「満室想定利回り」とか「現況利回り」とかの記載があるはずだ。不動産会社の営業マンが「利回りが高いですよ~」とかいうとき、それは、「今は、半分の部屋しか借りている人がいないけど、満室になったらこんなに高くなりますよ~。」という意味で使う「満室想定利回り」のことが多い。

 

 「一年間の収入を投資額で割ったもの」を意味する利回り、実は、この「一年間の収入」と「投資額」について、業界として明確なルールがある訳ではなく、ある時は「現在の賃料」が、ある時は「NOI(収入から運営や保有にかかるコストを控除した額)」が使われ、また、分母となる物件価格や収入等に係る消費税の取り扱い等もまちまちであるなど、幾通りもの計算方法で示されていることに注意する必要がある。

 

 利回りの呼び方をまとめると下図のようになる。

 

※ NOI=Net Operating Income

※ FCR=Free & Clearly Return

 

 もうお分かりのように、もっとも重要な「利回り」は、FCR(Free & Clear Return)利回りである。実際に手元に残る金額と、実際に支出する投資総額を、分子と分母に用いるため、税引前の収益に対する利回りを、最も正しく反映しているからだ。

 しかしながら、取引の現場においては、分母には「総投資額」ではなく「不動産価格」が用いられることがほとんどだ。不動産仲介の現場においても、「ネット利回り」というときは、NОI利回りの意味で使っている営業マンが多かったと思う。

 

 FCR利回りは、個人的には、大変重要な指標だと思うので、もう少し取引現場での共通ワードとして広まればよいと思うが、そうならないのは「少しでも利回りを高く見せたい」という営業マンの心理がそうさせているのだろうか。世の中には、「売買価格3000万円、不動産取得税1億円」なんていう物件もある。NOI利回り30%、FCR利回り7%なんていうことも起こり得るということだ。

 

 いずれにしても、「利回り」は、投資判断の重要指標のひとつでありながら、定義にあいまいさがあり、また使い手によって、中身が異なることもあるので、よくよく確認してもらいたい。そして、なんとなくの雰囲気で「利回りが高い」と判断するのではなく、実際の収入、支出を漏れなく反映したシミュレーションを必ず作成して、物件の比較や投資の可否判断を行ってもらいたいと思う。失敗しないためには、必ず必要なプロセスである。