住宅編 第4回 高齢社会とマンション老朽化の問題 | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 時の経つのが早く世の移り変わりが著しいことを例えて、「10年ひと昔」いう言い方をしますが、来年には、年金受給者となる身としては、その10年もあっという間で、実感としては「50年ひと昔」の方がしっくりきます。いや、光陰矢の如しというべきか。

 

 30代、40代で新築マンションを購入するとして、そのマンションの寿命について、深く考える人はあまりいないと思います。「若い時の50年先」は、ずっとずっと先の話。

 ところが、長生きが当たり前の社会となり、気づかないうちに「マンションの寿命」を、見届けることになるかもしれない、年齢になってしまいました。

 

 分譲当時から住む人は、このマンションで同じように子育てをした同世代の人たちです。とうの昔に子供たちは独立をして、離れた場所に生活拠点をもっています。入居者の中でも、後期高齢者といわれる老夫婦、一人暮らしになった老人が増え続けています。

 マンションの維持管理にも管理組合にも無関心だったツケが回ってきて、気がつけば建物のあちこちの傷みはひどいことになっています。ところが、既に空き家状態の住戸があるうえに、経済的にゆとりがない高齢世帯は、余分な修繕費の負担は嫌だと言います。「この先何年生きられるかわからない」という気持ちも、消極的にさせているのかもしれません。

 

 一戸建てに比べて、圧倒的に価格が上昇してきたマンションも、個別に見て行くと、こんな「スラム化予備軍」といわれる物件が増えています。

 国土交通省が2018年度に行った調査によれば、長期の修繕計画に対して必要な積立金が「不足している」というマンションの割合は34.8%もあり、5年前に比べて2倍以上になっています。さらなる高齢化、多死社会が進むことで、この傾向はますます強まって行くと考える方が自然でしょう。

 

 「共同住宅」の一形態であるマンションは、建物の一角を所有しているという点に特徴があります。所有者は「専有部分」と呼ばれるその「一角」(簡単に言えば一住戸の内側部分)のオーナー(区分所有者)であり、それ以外の建物共用部分や敷地は、区分所有者全員で共有しています。

 この区分所有者が管理組合を設立し、管理会社に委託するなどして共用部分の維持管理に努めるのですが、新築マンションの分譲時には、分譲会社側で用意した管理会社に管理を委託するのが既定路線で、マンション購入者に、自分たちが管理するという意識は希薄です。「管理組合の会合にはできるだけ参加したくないし、できればお隣さんともかかわりを持ちたくない。掃除も、修繕も、トラブルも、面倒なことは管理会社がやってくれる。それがマンションのいいところなのだから。」まあ、だいたいがそんな感覚だったでしょう。

 

 分譲する側のデベロッパーも「修繕積立金の額を多くしすぎると売れ行きに影響する。」と考え、「管理組合で将来のことは考えて下さいね~。」てな感じで、その重要性を強く訴えてはいませんでした。購入する側は購入する側で「管理費、修繕積立金は安い方が助かる。」と、本気で考えていました。目の前のマンションは、新築ピカピカ。新生活に夢見心地のオーナーに、50年後先の悲劇を想像しろという方が酷なことであったでしょう。

 

 さて、この老朽化マンション問題、空き家問題も相まって、日本の行く末に立ちはだかる大問題となっています。メディアでもたびたび報道されていますが、より詳しいところを知りたい方、もしかしたら当事者かもしれない方のために、参考図書をご案内しておきたいと思います。

 

老いる日本の住まい 急増する空き家と老朽マンションの脅威(著者:NHKスペシャル取材班、出版社:マガジンハウス)
不動産で知る日本のこれから(著者:牧野知弘、出版社:祥伝社)