不動産投資編 第3回 リターンを分解してみれば | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 次に、リターンについて考えてみましょう。不動産から得られる収益は、保有期間中の「家賃」と売却時に入る「売買代金」です。正確には、必要な経費を控除した家賃の手取り額と、売買代金から購入時の投資額(取得経費含む)と譲渡にかかる経費等を引いた差額、つまり「値上がり益」です。株でいえば、配当と売却利益に相当します。

 前者は、インカムゲイン(賃料を裏付けとする収益)、後者は、キャピタルゲイン(値上がり益)といいいます。

 

つまり、リターンは「インカムゲインとキャピタルゲインでできている」ということができます。なお、損失が出たときは、インカムロス、キャピタルロスといいます。

 

インカムゲインの性質

 さて、インカムとキャピタルには、特に不動産投資の場合わかりやすい特徴があります。インカムは、多くの場合投資額に対し、年間に4~5%程度。そして、比較的安定的に入ってきます。つまり、コツコツ型でのんびりした性格といえます。これに対し、キャピタルは、市場動向によってガーンと稼げるときもあれば、大きく損失が出てしまうこともあります。どちらかというと気まぐれな性格です。

 もちろん、例外もあって、年間のインカムが20%といった物件もあるりますが「満室稼働すれば」という実現性の低い仮定の利回り(「満室想定利回り」等という)だったり、購入後に多額の修繕費が必要だとか、再建築ができないとか、さもなければ立地が悪い等、つまりは資産価値が劣る物件だったりして、「掘り出し物」であることはあまりありません。

 ここで、具体的な事例を挙げて説明してみます。年間のインカムが500万円、価格1億円の1棟賃貸マンションに投資するケースを考えてみます。単純化のために、インカムはずっと同額と考えて下さい。

 例えば、10年間保有して、インカムの総額は5000万円となります。10年経っても投資額のまだ半分しか回収できていません。あと10年保有してトータル1億円ですから、純粋にプラスになるのは21年目からということになります。

 もちろん、「資産としての不動産」を保有しいる訳ですが、その間「また、リーマンショックみたいなのがきて値下がりしたらどうしよう」とか「災害で倒壊してしまわないか」とか、心配事は尽きません。だから、どこかで売却して利益確定したいと考えたとしても、不思議はありません。

 

キャピタルゲインの性質

 一方、5年間だけ保有して売却するケースを想定してみます。

5年間のインカムゲインは、2500万円。5年後に、この物件が1億2000万円(手取り額)で売れたとすると、2000万円の値上がり益、すなわちキャピタルゲインを得られます。

 この場合、「リターン」の総額は、「2500万円+2000万円=4500万円」です。1億円を投資して5年間で4500万円のリターンは、利回りでいうと1年あたり9%というなかなかの高利回りです。インカムとキャピタルをうまく組み合わせることにより投資効率をかなり高めることができました。

 

 

ところが、運悪く、売却時期が不動産不況のタイミングと重なり、売却しても8000万円にしかならなかったらどうでしょう。

5年間のインカムゲインは変わりませんが、キャピタルは2000万円の損(キャピタルロス)が出てしまい、差引きでプラス500万円にしかなりません。これは年率1%(500万円÷5年÷1億円)の運用成績だったということになります。まだ、プラスだからいいですが、さらに値下がりしてしまえば危うくマイナス運用です。

 

 

 このように、キャピタルゲインは、その時々の不動産市況に大きく左右されます。特に短期間の運用(売却までの期間が短い)では、インカムゲインが少ない分、「投資が成功するかどうかは、キャピタル頼み」となります。

 

 「値下がりしたなら売らなければよい」その通り!しかし、売却せざるを得ないような状況になってしまったら‥。

 

 リーマンショック前後の数年間、金融機関が資金回収に走り、不動産価格が下がっているにも関わらず売却を強いられた例が多数みられました。一寸先は闇です。どんなときにも、「売る、売らないを、自己決定できる権利」を失わないようにしなければなりません。

 

 なかにはいます。あっという間に転売して稼いでいる人。ほとんどの場合は、「買取転売業者」と呼ばれるプロの不動産屋です。ただ、マーケットの動向を読まなければいけないし、不動産の潜在的な価値を見抜く目も必要(一番確実なのは、割安に買うことですから)。プロならではの技術という面は否めなません。と同時に、マーケット次第では保有物件の価格が大きく下落し、損失を被るリスクも抱えています。一定のリスクを甘受しながら、転売益を狙っているという訳です。

 

 「不動産投資をこれから始める」という方に対して、私は、「インカム中心のある程度時間をかける投資」を勧めます。そして、チャンスがあれば「売却してリターンの最大化」を図ればよいのです。株式投資でいうところの「利益確定」ですね。もちろん、獲得した資金を次にどう展開していくかという戦略が大切で、売却判断に影響を及ぼします。そういう意味では、投資家自身が目指す「ライフプラン」に基づく投資方針を明確にしておくことが望ましいでしょう。