今日の一曲!kradness「耽溺ミラアジュイズム」【'18春アニメ・アニソン(格好良い系)編】
【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2018年のアニソンを振り返る】の第十一弾「春アニメ・格好良い系」編です。【追記ここまで】
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本記事では2018年の春アニメ(4月~6月)の主題歌の中から、「アニソン(格好良い系)」に分類される楽曲をまとめて紹介します。本企画の詳細については、この記事の冒頭部を参照。
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メインで取り上げる「今日の一曲!」は、『ニル・アドミラリの天秤』OP曲・kradness「耽溺ミラアジュイズム」(2018)です。当ブログに於いては珍しく…というか初?の女性向け作品からのピックアップとなります。ここで言う「女性向け」とは、恋愛ゲームのカテゴライズで所謂「乙女ゲー」に分類されるものを原作にしているという意味です。
男である自分がこの界隈に踏み込むとなると、ともすると「そっちもいけるのか」と思われるかもしれませんが、特にそういう趣向を持っているわけではなくて、男性キャラクターばかりの作品(悪く言えば「美男子動物園モノ」)でなければ、僕は元より守備範囲内だと言えます。とりわけ乙女ゲー原作のアニメは、主人公として女性キャラクターもそれなりに大きく扱われるため、割と観られる場合が多いです。本来のターゲット層が楽しむような、移入の観方にはなりませんけどね。
このような御託はともかく、『ニルアド』はストーリーが面白かったので普通に楽しめました。勝手に他の界隈の概念を持ち込んで双方に恐縮ですが、「なるほど、稀モノ(異常性のある和綴じ本)の処遇を巡って、フクロウとカグツチの二大組織が財団とGOCよろしく争っているのか」と、好みの設定や世界観に当て嵌めやすい内容だったのが大きいと自己分析しています。
本当はOP映像を紹介したかったのですが、オフィシャルにはアップされていないようなので、代わりにアーティストMVを埋め込みます。というのも、あのブロードウェイ的もしくはシネマティックなプロットに裏打ちされた、ラグジュアリーでダンサブルな画作りによるアニメーションが、本曲の魅力を底上げしていたと認識しているので、良OPであることにまずふれておきたかったのです。
別にぬるぬる動いていたわけではありませんが、演出で上手くカバー出来ていた印象で、主人公のツグミを…というか一人の女性を全力で引き立てる構図も清々しく、そうすることで男性陣のバラエティも豊かに映えていたと思います。毎話異なるキャラが担っていた歌始まり前のタイトルコールも地味に好きで、それが省かれている音源では寧ろ物足りなく感じてしまうくらいです。笑
ブロードウェイ的だとかダンサブルだとかの言葉で形容可能な映像に似合うということは、つまり音楽としてもダンスミュージックのマナーが特徴的だという意味で、力強いキックに圧の強いシンセによる本曲のエレクトロなサウンドは、帝都大正の作風からすると意外なアプローチではありますが、なかなかどうして素敵な調和を見せています。
まずイントロを聴いただけでも、その先の格好良さを予感するには充分でしょう。入りのピアノと続くシンセリフも含めて、鍵盤の鮮やかさが光る立ち上がりです。チョップされたボーカルが独特のリズムを刻んでいる点も含めると、かなり現代に近いビジョンが浮かびそうな音遣いではありますが、フレージングにブラスっぽさもある(e.g. 0:07~0:11)ので、絢爛な質感と共にグッドオールドデイズの向きが出て、雰囲気としてバランスが良くなっているのだと分析します。
Aメロ裏のシンセは揺らぎ方が好みです。ADSRが美しいと言いましょうか、音が鳴り出すまでに僅かな遅れがあるように聴こえ、それこそがグルーヴィーなリズム感の立役者だと言えます。より経験的に或いは感覚的に述べれば、本格的なエレクトロで耳に入ってきてもおかしくないほどの質量と奥行を備えた音とも表現出来、空間の歪みごと良しとする攻めの姿勢が、このエッジィなサウンドを生み出しているのではないでしょうか。
先に前奏部のボーカルチョップに言及しましたが、その類の遊び心が光るのも本曲の特徴です。たとえばAメロで"陰"の[e]がスクラッチされて独特のリズムを刻み出す点や、Bメロで"目"が細切れになってサビへのライザーを演出する点などは、フレーズ終わりの隙間を飽きさせまいとするビートメイキングで好感が持てます。ボーカルも楽器の一種と見做して自由に弄り回すところは、やはりダンスチューンの手法ですよね。
また、主旋律の"雨"に追従するエコーにもこだわりが感じられ、フィルターを更に重ねているのか将又ディレイに特殊なエフェクトをかませているのか、遠方で光の中に淡く消えゆくような聴こえ方になっていて、単なるリピートでお茶を濁さなかった気概を称賛します。
アレンジ面の細部からレビューを始めてしまい恐縮ですが、それらの編曲によって立てられるメロディライン自体も格好良くて素敵です。歌詞の力も幾分にあるかとは思いますが、しっかりと和の旋律として響いてくるのが日本人としては心地好く、"雨 雨 雨で濡らす"に見られる切なさを帯びた瑞々しさや、"何枚も塗った素肌も"に覚える少しの躊躇いと奥床しさ、"冷やかな熱を 私だけが知っている あゝ"から滲む刹那的で渇望的な情動の大きさなどは、言葉と旋律の寄り添いが秀逸なパートであると主張したい。
メロディへの言及としては表現が抽象的過ぎたので補足しておきますと、"雨"のくだりはエコーまでもを含めてセンチメンタルな旋律として完成している点を、"何枚も"~はやや詰まったような譜割りから来る独特の音運びを、"冷やかな"~は感情の昂ぶりに呼応するようなアッパーなラインを、それぞれ評価しているという意味です。
Cメロの畳み掛けも素晴らしく、ここまでに示した本曲のツボが全て内包されていると言ってもいい、集大成的なアウトプットを甚く気に入っています。ボーカルへの自在な処理やコーラスワークの妙も感じられますし、鋭利なシンセによるグルーヴは僕が理想とする「忘我のダンスミュージック」の要素を携えているため、これはアンセムたりうるキラーチューンだと大絶賛です。
最後は歌詞を見ていきましょう。作風を活かした高い文学性を誇り、同時に読み手の語彙力も問うてくる挑戦的な内容に感心しました。とりわけ好みなのは、各サビの「いかに"君"が魅力的であるか」を説くシークエンスです。
1番では"君の温度を どんな詞[ことば]にも 今は起こせない/冷やかな熱を 私だけが知っている"と、まだわかりやすい言葉で機微が表現されていますが、2番では"君の声音[こわね]に ルビなど要らない 蛇の足だから/どんな紅玉[こうぎょく]さえ 哀婉な詞華[しか]に霞む"と、徐々に比喩表現と使用語彙のレベルが上がり、ラスサビでは"ペエジをめくる 皎潔[こうけつ]な指に 触れる好奇心/落暉[らっき]消える頃 そっと踏み越す発火点"と、普段なかなか目にしない単語の登場で意識が過去に飛ばされます。
しかし、これほどの言葉を尽くしても語れないぐらいに"君"は美しいのだということは犇々と伝わってくるので、徒に難しくしただけといった安直さにはつながらないところが巧いです。矛盾するような或いは逆説的なレトリックですが、「言葉に出来ない美点」を表すには、なるたけ多種多様な言葉を駆使したほうが説得力が増す場合もあり、本曲の歌詞はその好例と言えるでしょう。オフコースの「言葉にできない」(1982)のように、その旨を文字通りそのまま伝えるという手も有効ですけどね。
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続いて紹介するのは『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』OP曲・藍井エイル「流星」(2018)です。
同作のED曲は「切ない系」として過去に単独レビューをしてあるので、次の記事でも再びふれる予定ですが、当該記事の中で「OP曲もかなりのツボだった」と記しているように、『GGO』は'18春アニメの中では最も主題歌のレベルが高かった作品だと位置付けています。
いきなり抽象的な発言をしますが、本曲を初めて聴いた時に僕は「重力」を感じました。具体的にはサビメロに対してで、アレンジによる部分もあるのかもしれませんが、周囲の一切を巻き込んで破壊するのも厭わないほどの勢いを、"いつか流星が夜空駆け抜け"までのワンフレーズに覚えたというのが素直な感想です。
曲名の「流星」、そして銃を主軸とした『GGO』の作風を考慮して「重力」を解釈すれば、自ずと「軌道」や「弾道」といった言葉に結びつくでしょうが、一瞬の間に「何処まで重力に抗えるか」の物理法則上の攻防が絶えず行わている緊張感を、メロディラインに見出すことが出来たのだと言えば、この感覚に多少なりともロジカルさを与えられると期待します。
本曲は藍井さんの活動休止明けの復帰作として世に放たれたナンバーでもあり、歌詞内容のアグレッシブさにはアニメのタイアップ以上の意味;即ちアーティストとしての決意表明めいたものもあると考えていますが、休止中に積み重なった思いが込められたであろうボーカルの強さもまた、「重力」の体感に寄与しているとの理解です。
というのも、僕にとって休止前の藍井さんのナンバーは、嫌いではないしアニメにもあっているとは思うけれど、音源にまでは手が出ないなといったものが多く、もう一声あれば…が正直な印象でした。ところが、この「流星」にはまさにその「もう一声」が宿っていたと言いましょうか、「決意に満ちた歌は響く」ということを納得させられた時点で、彼女の休止には意義があったのだと認めざるを得ません。
こうして大きく扱っている割には、作詞や作編曲に対する具体的な言及に乏しいことから察せるかもしれませんが、ぶっちゃけトラック自体にはあまり音楽的なツボを刺激されていなくて、「アニメの主題歌としての仕事をしっかりこなしている楽曲」の域に止まる(それだけでも充分に結構なことですが)と、冷静になればこのような判断を下しそうではあります。
しかしここまでの記述で示しているように、僕は実際のところ本曲をとても気に入っていて、この理屈を超えた「好き」は何処から来るのだろう?と思案した結果、やはり藍井さんの歌声の変化に答えを求められそうな気がするので、素直に「歌の力って凄い」とまとめたいです。
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お次は『刀使ノ巫女』後期OP曲・衛藤可奈美(CV:本渡 楓)、十条姫和(CV:大西沙織)、柳瀬舞衣(CV:和氣あず未)、糸見沙耶香(CV:木野日菜)、益子 薫(CV:松田利冴)、古波蔵エレン(CV:鈴木絵理)による「進化系Colors」(2018)をレビュー。振り返りの第八弾では前期OP曲を、第九弾でも前期ED曲を取り上げているので、主題歌に恵まれた作品だと言えるでしょう。
本曲の楽曲制作を担ったのはやしきんさんで、彼のワークスについて紹介した別作品の記事の中でも、僕は「進化系Colors」をフェイバリットソングのひとつとして挙げています。
作品としての『とじみこ』については、主に前期(胎動編)の展開を支持していて、特に設定開示回だった第8話は「なるほど、親の代から続く因縁なのか」と、尻上がり的な面白さの片鱗が見え始めて結構わくわくしていました。後期(波瀾編)も嫌いではありませんでしたが、宗像三女神同士の争いよりももっと人を掘り下げてほしかったなというのが本音です。加えて、設定や役回りも含めて結芽が好きだったので、遺されたキャラに大きな影響を与える納得の退場ではあったものの、彼女が居ない寂しさは後半どうしても気になってしまいました。
同じ作品のOP曲として前期の「Save you Save me」(2018)と比較しますが、第13話で楽曲が切り替わってから暫くは「前のOPかえして」と、2クールアニメの新主題歌に馴染めないあるあるを発動させてしまいましたが、話数が進むにつれて「あれ?新しいOPのほうが良くね?」と、次第に評価が逆転していくこれまたありがちなステップを踏んで、見事両曲とも好きになった次第です。笑
両曲のツボが競合していなかったのも幸いで、「Save~」に関しては第八弾の記事で述べた通り、サビメロにこだわりを見た思いでいたのですが、「進化系~」については寧ろサビまでの積み重ねが美しいと感じていて、それぞれ異なる良さを発揮していたと受け止めています。
とりわけAメロの可憐さには、群を抜いて僕の嗜好に訴えかけてくるものがあって、Aメロの良さだけを比較する選手権を開いたとしたら、'18春アニメどころかオブ・ザ・イヤーで1位を与えてもいいくらいのお気に入りです。イントロなしの立ち上がりについても、旋律自体の高いポテンシャルが意識された結果の楽想であると勝手に首肯しています。
可奈美(本渡さん)の透き通った声質の効果も大きく、メロディの流麗さが一層際立つような健康的な美声であるところは、実に主人公らしくて流石です。それを受け継ぐ姫和(大西さん)のボーカルには少しの艶っぽさが入りますが、コーラスワークも含めて「曲が走り出す直前の静かなざわめき」を担う歌唱であるため、少し尖った質感が入るのも味だと捉えられます。やや苦しそうな発声に聴こえる"いまだ届かない"も、"意外なほど速く 進んでたみたい/それでも(それでも)あなたに(あなたに)"に続く歌詞であることを加味すれば、より息切れの感が出て切なさ倍増です。
アレンジと共に曲が勢い付くBメロへの入り方も好きで、ここまでのメロディアスなイメージを破って、ドラムとギターに呼応したロックな旋律で展開していくところに痺れました。ミュートの使い方が鮮やかです。この対比まで込みで、Aの美メロっぷりに心酔しています。
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ここからは「中身の濃いレビューには発展させられそうにない曲」をまとめて紹介します。こう書くとネガティブに聞こえるかもしれませんが、スペースを作ってまで紹介しようと思うくらいにはお気に入りの楽曲群であることに留意してください。「発展させられそうにない」のは、僕の技量不足&時間不足によるものです。
なお、本記事は言及対象が多過ぎ&文章が長過ぎるせいで、字数制限への対策をしなければならなくなったため、以降では容量を食うAmazonリンクの表示を一部省略します。視覚的な仕切りとして使用しているだけなのでレビュー上は問題ありませんが、見づらくなってしまってすみません。
『シュタインズ・ゲート ゼロ』OP曲・いとうかなこ「ファティマ」(2018)。過去にいとうさんの楽曲を単独でレビューした記事の中では、「シュタゲについてはよく知りません」と書きましたが、その後『ゼロ』の放送に先駆けた無印の再放送があったため、アニメのみではありますがストーリーを追うことが出来ています。
今回の振り返りで志倉千代丸楽曲を扱うのは、第九弾で紹介した「ロゼッタ・ストーン」(2018)に続き二曲目ですが、「ファティマ」に関してはあれこれと僭越な注文を付けることなく、素直に「僕の好きなタイプの志倉千代丸ワークス」でした。いとうさんのナンバーとしても『シュタゲ』の主題歌としても期待通りの格好良さを備えていて、つくづくダークで疾走感のある曲が似合います。
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『かくりよの宿飯』1st OP曲・東山奈央「灯火のまにまに」(2018)。WEST GROUNDが手掛けた楽曲として、振り返りの第八弾で紹介を予告していたナンバーです。
同曲に於いては作曲のみの担当であるため(作詞・編曲はZAI-ON)、リンク先に記したようなWEST GROUNDの「音楽性」や「らしさ」だけで全てを説明することは出来ませんが、センチメンタルな旋律がスピーディーに展開していくところや、Cメロに高揚感を持たせているところなどは、作曲者の顔が見える美点に思います。ZAI-ONによるダンサブルな和のアレンジも、メロディの儚さを引き立てていて素敵です。
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『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』OP曲・SawanoHiroyuki[nZk]:Uru「Binary Star」(2018)。またも好みの楽曲制作者からの選曲で恐縮ですが、 澤野弘之ワークスにまたひとつ名曲が誕生したと評しています。
アニメの旧版は観たことがなくて、こちらの新版『邂逅』も今年公開予定のイベント上映版新作『星乱』への導入という感じだったので、作品の一端も理解出来ていない気がしますが、それでも本作にファンが多く居ることには得心がいくような、面白さのポテンシャルは感じました。この期待に音楽が果たしていた意義は大きく、銀河のスケールに相応しい壮大で美麗なトラックが想像させる、熾烈な戦いのビジョンが不思議と心地好かったです。
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『ゴールデンカムイ』(第1期)OP曲・ MAN WITH A MISSION「Winding Road」(2018)。2017年の振り返りではふれませんでしたが、『いぬやしき』OP曲の「My Hero」(2017)もお気に入りで、両シングルはc/wも含めてクオリティが高く、MWAM自体のファンになりつつあります。
本曲についてはこの渇いた質感が堪らないと言いましょうか、血風荒ぶイメージが浮かぶようなサウンドメイキングが素晴らしいです。それでも歌詞内容に"希望"を持たせているのが尚良く、"混乱の時代や/嘘と暴力の螺旋が/どうか貴方の未来へと/陰落とさぬ様に"から窺える優しさには、作品の展開も相俟って思わずうるっときてしまいました。'18秋には第2期が放送されており、その主題歌もまた良かったため後の記事で取り上げるつもりですが、ストーリーが非常に面白くキャラクターも皆生き生きとしているので原作にも手を出そうかと思案中です。
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『重神機パンドーラ』OP曲・BUMP OF CHICKEN「シリウス」(2018)。バンドによる提供楽曲の流れを汲んで、ここでの紹介です。バンプにはこれまでにもアニメへ起用されたナンバーが数多くありますが、毎度しっかりアニソンらしいキャッチーさと格好良さを醸してくれるので安心します。普段からストーリー性に富む楽曲を書くバンドなので、自ずとアニメや映画にもあうのでしょう。
『パンドーラ』は河森監督が関わっていなければ正直途中で切っていた気がするので、あまりポジティブな作品語りは出来ませんが、"これは誰のストーリー どうやって始まった世界"や、"どれだけ臆病でも 欲張りの動物"などの、作中世界の切り取り方が鮮やかなフレーズには感心します。
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『食戟のソーマ 餐ノ皿 遠月列車篇』OP曲・ラックライフ「シンボル」(2018)。三度バンドからの選曲ですが、所属がLantisですしメジャー後のシングル曲は全てアニメタイアップ付なので、アニソン寄りの存在だと認識しています。とはいえその音楽は本格的で、きちんとバンドサウンドを奏でているところは好感触です。徐々にボルテージが上がっていく楽想から迸る滾りは、作中の展開にもぴったりだったと思います。
『ソーマ』のアニメは『列車篇』で4作目(第3期が分割)となるゆえに主題歌も多いのですが、全体として高い質を維持している点は称賛に値するでしょう。少年漫画を原作とするアニメで長く続いているもの(特に休日の朝/夕方に放送されているもの)の主題歌には、アーティストの宣伝が主目的のタイアップも多く、玉石混交の博打的な側面があると理解しているのですが、夜/深夜帯はその煽りを受けにくいのかなと推測します。
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『Cutie Honey Universe』ED曲・luz「SISTER」(2018)。振り返りの第十弾ではOP曲を「可愛い系」として紹介しましたが、こちらは作品のセクシーもしくはダークな面を取り立てた大人なナンバーです。
ブラスが演出するラグジュアリーなサウンドこそが本曲の肝ですが、それに負けないluzの妖艶なボーカルと奏音69によるルビ使いが光る歌詞のおかげで、相互作用的に楽曲の世界観が深められているところを買っています。
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『ひそねとまそたん』ED曲・Dパイ - 甘粕ひそね(CV:久野美咲)/貝崎名緒(CV:黒沢ともよ)/星野絵瑠(CV:河瀬茉希)/絹番莉々子(CV:新井里美)/日登美真弓(CV:名塚佳織)による「Le temps de la rentrée ~恋の家路(新学期)~」(2018)。
France Gallが1965年にリリースした楽曲のカバーであるため、優先度を下げて最後に紹介します。ED映像の愛らしさから「可愛い系」にしようか、或いはフランス・ギャルに抱くイメージを考慮して「切ない系」にしようかと判断に迷いましたが、純粋に楽曲に向き合えば「格好良い系」になるだろうとして、本記事に分類した次第です。この思わず口遊みたく&踊りたくなってしまう本曲の魔力に、時代を超えた普遍的な良さを見出した結果だと受け取っていただければ幸い。
アニメでは各話で歌い手の組み合わせ(メインボーカル/コーラス)が変わり、その違いを楽しむのも一興でしたが、個人的には第8話の「ひそね×名緒(Chorus:絵瑠×莉々子×真弓)ver.」が最も心地好いとの結論に至りました。やはりDパイ全員の声が入っていてほしいのと、声優として普段からその声に大いに魅力を感じている、久野さんと黒沢さんがメインであることも大きいですね。黒沢さんの声質に関しては以前にもふれたことがありますが、久野さんのあの唯一無二の声についても語り出したら長くなる気がします。笑
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以上、【'18春アニメ・アニソン(格好良い系)編】でした。アニソンの複合記事では珍しく、ボーカルの男女比が大体半々になったので満足です。またも字数制限がネックとなりましたが、あれもこれもと言及したい楽曲が多いのは喜ばしいこととしましょう。
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本記事では2018年の春アニメ(4月~6月)の主題歌の中から、「アニソン(格好良い系)」に分類される楽曲をまとめて紹介します。本企画の詳細については、この記事の冒頭部を参照。
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メインで取り上げる「今日の一曲!」は、『ニル・アドミラリの天秤』OP曲・kradness「耽溺ミラアジュイズム」(2018)です。当ブログに於いては珍しく…というか初?の女性向け作品からのピックアップとなります。ここで言う「女性向け」とは、恋愛ゲームのカテゴライズで所謂「乙女ゲー」に分類されるものを原作にしているという意味です。
男である自分がこの界隈に踏み込むとなると、ともすると「そっちもいけるのか」と思われるかもしれませんが、特にそういう趣向を持っているわけではなくて、男性キャラクターばかりの作品(悪く言えば「美男子動物園モノ」)でなければ、僕は元より守備範囲内だと言えます。とりわけ乙女ゲー原作のアニメは、主人公として女性キャラクターもそれなりに大きく扱われるため、割と観られる場合が多いです。本来のターゲット層が楽しむような、移入の観方にはなりませんけどね。
このような御託はともかく、『ニルアド』はストーリーが面白かったので普通に楽しめました。勝手に他の界隈の概念を持ち込んで双方に恐縮ですが、「なるほど、稀モノ(異常性のある和綴じ本)の処遇を巡って、フクロウとカグツチの二大組織が財団とGOCよろしく争っているのか」と、好みの設定や世界観に当て嵌めやすい内容だったのが大きいと自己分析しています。
本当はOP映像を紹介したかったのですが、オフィシャルにはアップされていないようなので、代わりにアーティストMVを埋め込みます。というのも、あのブロードウェイ的もしくはシネマティックなプロットに裏打ちされた、ラグジュアリーでダンサブルな画作りによるアニメーションが、本曲の魅力を底上げしていたと認識しているので、良OPであることにまずふれておきたかったのです。
別にぬるぬる動いていたわけではありませんが、演出で上手くカバー出来ていた印象で、主人公のツグミを…というか一人の女性を全力で引き立てる構図も清々しく、そうすることで男性陣のバラエティも豊かに映えていたと思います。毎話異なるキャラが担っていた歌始まり前のタイトルコールも地味に好きで、それが省かれている音源では寧ろ物足りなく感じてしまうくらいです。笑
ブロードウェイ的だとかダンサブルだとかの言葉で形容可能な映像に似合うということは、つまり音楽としてもダンスミュージックのマナーが特徴的だという意味で、力強いキックに圧の強いシンセによる本曲のエレクトロなサウンドは、帝都大正の作風からすると意外なアプローチではありますが、なかなかどうして素敵な調和を見せています。
まずイントロを聴いただけでも、その先の格好良さを予感するには充分でしょう。入りのピアノと続くシンセリフも含めて、鍵盤の鮮やかさが光る立ち上がりです。チョップされたボーカルが独特のリズムを刻んでいる点も含めると、かなり現代に近いビジョンが浮かびそうな音遣いではありますが、フレージングにブラスっぽさもある(e.g. 0:07~0:11)ので、絢爛な質感と共にグッドオールドデイズの向きが出て、雰囲気としてバランスが良くなっているのだと分析します。
Aメロ裏のシンセは揺らぎ方が好みです。ADSRが美しいと言いましょうか、音が鳴り出すまでに僅かな遅れがあるように聴こえ、それこそがグルーヴィーなリズム感の立役者だと言えます。より経験的に或いは感覚的に述べれば、本格的なエレクトロで耳に入ってきてもおかしくないほどの質量と奥行を備えた音とも表現出来、空間の歪みごと良しとする攻めの姿勢が、このエッジィなサウンドを生み出しているのではないでしょうか。
先に前奏部のボーカルチョップに言及しましたが、その類の遊び心が光るのも本曲の特徴です。たとえばAメロで"陰"の[e]がスクラッチされて独特のリズムを刻み出す点や、Bメロで"目"が細切れになってサビへのライザーを演出する点などは、フレーズ終わりの隙間を飽きさせまいとするビートメイキングで好感が持てます。ボーカルも楽器の一種と見做して自由に弄り回すところは、やはりダンスチューンの手法ですよね。
また、主旋律の"雨"に追従するエコーにもこだわりが感じられ、フィルターを更に重ねているのか将又ディレイに特殊なエフェクトをかませているのか、遠方で光の中に淡く消えゆくような聴こえ方になっていて、単なるリピートでお茶を濁さなかった気概を称賛します。
アレンジ面の細部からレビューを始めてしまい恐縮ですが、それらの編曲によって立てられるメロディライン自体も格好良くて素敵です。歌詞の力も幾分にあるかとは思いますが、しっかりと和の旋律として響いてくるのが日本人としては心地好く、"雨 雨 雨で濡らす"に見られる切なさを帯びた瑞々しさや、"何枚も塗った素肌も"に覚える少しの躊躇いと奥床しさ、"冷やかな熱を 私だけが知っている あゝ"から滲む刹那的で渇望的な情動の大きさなどは、言葉と旋律の寄り添いが秀逸なパートであると主張したい。
メロディへの言及としては表現が抽象的過ぎたので補足しておきますと、"雨"のくだりはエコーまでもを含めてセンチメンタルな旋律として完成している点を、"何枚も"~はやや詰まったような譜割りから来る独特の音運びを、"冷やかな"~は感情の昂ぶりに呼応するようなアッパーなラインを、それぞれ評価しているという意味です。
Cメロの畳み掛けも素晴らしく、ここまでに示した本曲のツボが全て内包されていると言ってもいい、集大成的なアウトプットを甚く気に入っています。ボーカルへの自在な処理やコーラスワークの妙も感じられますし、鋭利なシンセによるグルーヴは僕が理想とする「忘我のダンスミュージック」の要素を携えているため、これはアンセムたりうるキラーチューンだと大絶賛です。
最後は歌詞を見ていきましょう。作風を活かした高い文学性を誇り、同時に読み手の語彙力も問うてくる挑戦的な内容に感心しました。とりわけ好みなのは、各サビの「いかに"君"が魅力的であるか」を説くシークエンスです。
1番では"君の温度を どんな詞[ことば]にも 今は起こせない/冷やかな熱を 私だけが知っている"と、まだわかりやすい言葉で機微が表現されていますが、2番では"君の声音[こわね]に ルビなど要らない 蛇の足だから/どんな紅玉[こうぎょく]さえ 哀婉な詞華[しか]に霞む"と、徐々に比喩表現と使用語彙のレベルが上がり、ラスサビでは"ペエジをめくる 皎潔[こうけつ]な指に 触れる好奇心/落暉[らっき]消える頃 そっと踏み越す発火点"と、普段なかなか目にしない単語の登場で意識が過去に飛ばされます。
しかし、これほどの言葉を尽くしても語れないぐらいに"君"は美しいのだということは犇々と伝わってくるので、徒に難しくしただけといった安直さにはつながらないところが巧いです。矛盾するような或いは逆説的なレトリックですが、「言葉に出来ない美点」を表すには、なるたけ多種多様な言葉を駆使したほうが説得力が増す場合もあり、本曲の歌詞はその好例と言えるでしょう。オフコースの「言葉にできない」(1982)のように、その旨を文字通りそのまま伝えるという手も有効ですけどね。
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続いて紹介するのは『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』OP曲・藍井エイル「流星」(2018)です。
同作のED曲は「切ない系」として過去に単独レビューをしてあるので、次の記事でも再びふれる予定ですが、当該記事の中で「OP曲もかなりのツボだった」と記しているように、『GGO』は'18春アニメの中では最も主題歌のレベルが高かった作品だと位置付けています。
いきなり抽象的な発言をしますが、本曲を初めて聴いた時に僕は「重力」を感じました。具体的にはサビメロに対してで、アレンジによる部分もあるのかもしれませんが、周囲の一切を巻き込んで破壊するのも厭わないほどの勢いを、"いつか流星が夜空駆け抜け"までのワンフレーズに覚えたというのが素直な感想です。
曲名の「流星」、そして銃を主軸とした『GGO』の作風を考慮して「重力」を解釈すれば、自ずと「軌道」や「弾道」といった言葉に結びつくでしょうが、一瞬の間に「何処まで重力に抗えるか」の物理法則上の攻防が絶えず行わている緊張感を、メロディラインに見出すことが出来たのだと言えば、この感覚に多少なりともロジカルさを与えられると期待します。
本曲は藍井さんの活動休止明けの復帰作として世に放たれたナンバーでもあり、歌詞内容のアグレッシブさにはアニメのタイアップ以上の意味;即ちアーティストとしての決意表明めいたものもあると考えていますが、休止中に積み重なった思いが込められたであろうボーカルの強さもまた、「重力」の体感に寄与しているとの理解です。
というのも、僕にとって休止前の藍井さんのナンバーは、嫌いではないしアニメにもあっているとは思うけれど、音源にまでは手が出ないなといったものが多く、もう一声あれば…が正直な印象でした。ところが、この「流星」にはまさにその「もう一声」が宿っていたと言いましょうか、「決意に満ちた歌は響く」ということを納得させられた時点で、彼女の休止には意義があったのだと認めざるを得ません。
こうして大きく扱っている割には、作詞や作編曲に対する具体的な言及に乏しいことから察せるかもしれませんが、ぶっちゃけトラック自体にはあまり音楽的なツボを刺激されていなくて、「アニメの主題歌としての仕事をしっかりこなしている楽曲」の域に止まる(それだけでも充分に結構なことですが)と、冷静になればこのような判断を下しそうではあります。
しかしここまでの記述で示しているように、僕は実際のところ本曲をとても気に入っていて、この理屈を超えた「好き」は何処から来るのだろう?と思案した結果、やはり藍井さんの歌声の変化に答えを求められそうな気がするので、素直に「歌の力って凄い」とまとめたいです。
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お次は『刀使ノ巫女』後期OP曲・衛藤可奈美(CV:本渡 楓)、十条姫和(CV:大西沙織)、柳瀬舞衣(CV:和氣あず未)、糸見沙耶香(CV:木野日菜)、益子 薫(CV:松田利冴)、古波蔵エレン(CV:鈴木絵理)による「進化系Colors」(2018)をレビュー。振り返りの第八弾では前期OP曲を、第九弾でも前期ED曲を取り上げているので、主題歌に恵まれた作品だと言えるでしょう。
本曲の楽曲制作を担ったのはやしきんさんで、彼のワークスについて紹介した別作品の記事の中でも、僕は「進化系Colors」をフェイバリットソングのひとつとして挙げています。
作品としての『とじみこ』については、主に前期(胎動編)の展開を支持していて、特に設定開示回だった第8話は「なるほど、親の代から続く因縁なのか」と、尻上がり的な面白さの片鱗が見え始めて結構わくわくしていました。後期(波瀾編)も嫌いではありませんでしたが、宗像三女神同士の争いよりももっと人を掘り下げてほしかったなというのが本音です。加えて、設定や役回りも含めて結芽が好きだったので、遺されたキャラに大きな影響を与える納得の退場ではあったものの、彼女が居ない寂しさは後半どうしても気になってしまいました。
同じ作品のOP曲として前期の「Save you Save me」(2018)と比較しますが、第13話で楽曲が切り替わってから暫くは「前のOPかえして」と、2クールアニメの新主題歌に馴染めないあるあるを発動させてしまいましたが、話数が進むにつれて「あれ?新しいOPのほうが良くね?」と、次第に評価が逆転していくこれまたありがちなステップを踏んで、見事両曲とも好きになった次第です。笑
両曲のツボが競合していなかったのも幸いで、「Save~」に関しては第八弾の記事で述べた通り、サビメロにこだわりを見た思いでいたのですが、「進化系~」については寧ろサビまでの積み重ねが美しいと感じていて、それぞれ異なる良さを発揮していたと受け止めています。
とりわけAメロの可憐さには、群を抜いて僕の嗜好に訴えかけてくるものがあって、Aメロの良さだけを比較する選手権を開いたとしたら、'18春アニメどころかオブ・ザ・イヤーで1位を与えてもいいくらいのお気に入りです。イントロなしの立ち上がりについても、旋律自体の高いポテンシャルが意識された結果の楽想であると勝手に首肯しています。
可奈美(本渡さん)の透き通った声質の効果も大きく、メロディの流麗さが一層際立つような健康的な美声であるところは、実に主人公らしくて流石です。それを受け継ぐ姫和(大西さん)のボーカルには少しの艶っぽさが入りますが、コーラスワークも含めて「曲が走り出す直前の静かなざわめき」を担う歌唱であるため、少し尖った質感が入るのも味だと捉えられます。やや苦しそうな発声に聴こえる"いまだ届かない"も、"意外なほど速く 進んでたみたい/それでも(それでも)あなたに(あなたに)"に続く歌詞であることを加味すれば、より息切れの感が出て切なさ倍増です。
アレンジと共に曲が勢い付くBメロへの入り方も好きで、ここまでのメロディアスなイメージを破って、ドラムとギターに呼応したロックな旋律で展開していくところに痺れました。ミュートの使い方が鮮やかです。この対比まで込みで、Aの美メロっぷりに心酔しています。
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ここからは「中身の濃いレビューには発展させられそうにない曲」をまとめて紹介します。こう書くとネガティブに聞こえるかもしれませんが、スペースを作ってまで紹介しようと思うくらいにはお気に入りの楽曲群であることに留意してください。「発展させられそうにない」のは、僕の技量不足&時間不足によるものです。
なお、本記事は言及対象が多過ぎ&文章が長過ぎるせいで、字数制限への対策をしなければならなくなったため、以降では容量を食うAmazonリンクの表示を一部省略します。視覚的な仕切りとして使用しているだけなのでレビュー上は問題ありませんが、見づらくなってしまってすみません。
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『シュタインズ・ゲート ゼロ』OP曲・いとうかなこ「ファティマ」(2018)。過去にいとうさんの楽曲を単独でレビューした記事の中では、「シュタゲについてはよく知りません」と書きましたが、その後『ゼロ』の放送に先駆けた無印の再放送があったため、アニメのみではありますがストーリーを追うことが出来ています。
今回の振り返りで志倉千代丸楽曲を扱うのは、第九弾で紹介した「ロゼッタ・ストーン」(2018)に続き二曲目ですが、「ファティマ」に関してはあれこれと僭越な注文を付けることなく、素直に「僕の好きなタイプの志倉千代丸ワークス」でした。いとうさんのナンバーとしても『シュタゲ』の主題歌としても期待通りの格好良さを備えていて、つくづくダークで疾走感のある曲が似合います。
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『かくりよの宿飯』1st OP曲・東山奈央「灯火のまにまに」(2018)。WEST GROUNDが手掛けた楽曲として、振り返りの第八弾で紹介を予告していたナンバーです。
同曲に於いては作曲のみの担当であるため(作詞・編曲はZAI-ON)、リンク先に記したようなWEST GROUNDの「音楽性」や「らしさ」だけで全てを説明することは出来ませんが、センチメンタルな旋律がスピーディーに展開していくところや、Cメロに高揚感を持たせているところなどは、作曲者の顔が見える美点に思います。ZAI-ONによるダンサブルな和のアレンジも、メロディの儚さを引き立てていて素敵です。
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『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』OP曲・SawanoHiroyuki[nZk]:Uru「Binary Star」(2018)。またも好みの楽曲制作者からの選曲で恐縮ですが、 澤野弘之ワークスにまたひとつ名曲が誕生したと評しています。
アニメの旧版は観たことがなくて、こちらの新版『邂逅』も今年公開予定のイベント上映版新作『星乱』への導入という感じだったので、作品の一端も理解出来ていない気がしますが、それでも本作にファンが多く居ることには得心がいくような、面白さのポテンシャルは感じました。この期待に音楽が果たしていた意義は大きく、銀河のスケールに相応しい壮大で美麗なトラックが想像させる、熾烈な戦いのビジョンが不思議と心地好かったです。
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『ゴールデンカムイ』(第1期)OP曲・ MAN WITH A MISSION「Winding Road」(2018)。2017年の振り返りではふれませんでしたが、『いぬやしき』OP曲の「My Hero」(2017)もお気に入りで、両シングルはc/wも含めてクオリティが高く、MWAM自体のファンになりつつあります。
本曲についてはこの渇いた質感が堪らないと言いましょうか、血風荒ぶイメージが浮かぶようなサウンドメイキングが素晴らしいです。それでも歌詞内容に"希望"を持たせているのが尚良く、"混乱の時代や/嘘と暴力の螺旋が/どうか貴方の未来へと/陰落とさぬ様に"から窺える優しさには、作品の展開も相俟って思わずうるっときてしまいました。'18秋には第2期が放送されており、その主題歌もまた良かったため後の記事で取り上げるつもりですが、ストーリーが非常に面白くキャラクターも皆生き生きとしているので原作にも手を出そうかと思案中です。
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『重神機パンドーラ』OP曲・BUMP OF CHICKEN「シリウス」(2018)。バンドによる提供楽曲の流れを汲んで、ここでの紹介です。バンプにはこれまでにもアニメへ起用されたナンバーが数多くありますが、毎度しっかりアニソンらしいキャッチーさと格好良さを醸してくれるので安心します。普段からストーリー性に富む楽曲を書くバンドなので、自ずとアニメや映画にもあうのでしょう。
『パンドーラ』は河森監督が関わっていなければ正直途中で切っていた気がするので、あまりポジティブな作品語りは出来ませんが、"これは誰のストーリー どうやって始まった世界"や、"どれだけ臆病でも 欲張りの動物"などの、作中世界の切り取り方が鮮やかなフレーズには感心します。
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『食戟のソーマ 餐ノ皿 遠月列車篇』OP曲・ラックライフ「シンボル」(2018)。三度バンドからの選曲ですが、所属がLantisですしメジャー後のシングル曲は全てアニメタイアップ付なので、アニソン寄りの存在だと認識しています。とはいえその音楽は本格的で、きちんとバンドサウンドを奏でているところは好感触です。徐々にボルテージが上がっていく楽想から迸る滾りは、作中の展開にもぴったりだったと思います。
『ソーマ』のアニメは『列車篇』で4作目(第3期が分割)となるゆえに主題歌も多いのですが、全体として高い質を維持している点は称賛に値するでしょう。少年漫画を原作とするアニメで長く続いているもの(特に休日の朝/夕方に放送されているもの)の主題歌には、アーティストの宣伝が主目的のタイアップも多く、玉石混交の博打的な側面があると理解しているのですが、夜/深夜帯はその煽りを受けにくいのかなと推測します。
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『Cutie Honey Universe』ED曲・luz「SISTER」(2018)。振り返りの第十弾ではOP曲を「可愛い系」として紹介しましたが、こちらは作品のセクシーもしくはダークな面を取り立てた大人なナンバーです。
ブラスが演出するラグジュアリーなサウンドこそが本曲の肝ですが、それに負けないluzの妖艶なボーカルと奏音69によるルビ使いが光る歌詞のおかげで、相互作用的に楽曲の世界観が深められているところを買っています。
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『ひそねとまそたん』ED曲・Dパイ - 甘粕ひそね(CV:久野美咲)/貝崎名緒(CV:黒沢ともよ)/星野絵瑠(CV:河瀬茉希)/絹番莉々子(CV:新井里美)/日登美真弓(CV:名塚佳織)による「Le temps de la rentrée ~恋の家路(新学期)~」(2018)。
France Gallが1965年にリリースした楽曲のカバーであるため、優先度を下げて最後に紹介します。ED映像の愛らしさから「可愛い系」にしようか、或いはフランス・ギャルに抱くイメージを考慮して「切ない系」にしようかと判断に迷いましたが、純粋に楽曲に向き合えば「格好良い系」になるだろうとして、本記事に分類した次第です。この思わず口遊みたく&踊りたくなってしまう本曲の魔力に、時代を超えた普遍的な良さを見出した結果だと受け取っていただければ幸い。
アニメでは各話で歌い手の組み合わせ(メインボーカル/コーラス)が変わり、その違いを楽しむのも一興でしたが、個人的には第8話の「ひそね×名緒(Chorus:絵瑠×莉々子×真弓)ver.」が最も心地好いとの結論に至りました。やはりDパイ全員の声が入っていてほしいのと、声優として普段からその声に大いに魅力を感じている、久野さんと黒沢さんがメインであることも大きいですね。黒沢さんの声質に関しては以前にもふれたことがありますが、久野さんのあの唯一無二の声についても語り出したら長くなる気がします。笑
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以上、【'18春アニメ・アニソン(格好良い系)編】でした。アニソンの複合記事では珍しく、ボーカルの男女比が大体半々になったので満足です。またも字数制限がネックとなりましたが、あれもこれもと言及したい楽曲が多いのは喜ばしいこととしましょう。