今日の一曲!黒沢ともよ「Happy Go Lucky! ドキドキ!プリキュア」 | A Flood of Music

今日の一曲!黒沢ともよ「Happy Go Lucky! ドキドキ!プリキュア」

 特殊な執筆動機(詳細はこの記事の前置き部を参照)による記事・第二弾では、黒沢ともよの「Happy Go Lucky! ドキドキ!プリキュア」(2013)を紹介します。曲名の通り、TVアニメ『ドキドキ!プリキュア』のOP曲です。

 『プリキュアシリーズ』の楽曲であれば何を紹介しても構わなかったのですが、過去に同シリーズについて言及したこの記事の中でも「お気に入りのナンバー10曲」として本曲を挙げていますし、今月頭にレビューをした全く別の作品の記事の中で同曲の作詞者である藤林聖子さんのお名前を出す機会があったので、紹介しやすい流れが来ていると踏んでの選曲となります。


 僕は『ドキプリ』を再放送(テレ玉・2016年~)で観たので、歌唱を務めているのが黒沢ともよさんであることにまず驚きました。今でこそ文句無しに実力派人気声優のひとりであると言えるレベルにまで大成した方だという認識ですが、楽曲リリース時の2013年3月の段階では彼女の声優としてのキャリアは未だ始まったばかりであったため、それ以前に役者時代があるとはいえ、起用は慧眼だったと評するほかないですね。

 黒沢さんの声の演技は、言葉は適切ではないかもしれませんがダウナー系というか、良い意味で素人っぽさが出ているところが好きなので、僕の中では黄前久美子やフォスフォフィライトがハマリ役だというイメージなのですが、その印象からすると本曲の元気溌溂な歌い方は意外にも思え、『プリキュアシリーズ』の歴代主題歌に比肩する勢いを持った歌声であるところに、ポテンシャルの高さを感じました。


 さて、先程「勢いを持った」という言葉を使いましたが、これは何も歌声に限った話ではなく、楽曲自体の魅力に係る形容でもあるので、以下はこの点を掘り下げることにします。端的に言えば、「リズムとメロディが一体化している」と表せるようなつくりになっているところが素敵だと思うという主張です。

 この観点で最もわかりやすいのはAメロで、たとえば"あたらしい服を着て"や"ハロー ハロ"の部分は、ドラムのビートにあわせて音符が配置されているというか、メロディと言うよりはリズムと表現したほうが据りが良いような音運びになっているので、ポップ且つパワフルな印象を曲に付与させることに成功していると感じます。

 ただ、こういう言わば一体型のセクションは、特にフィルイン的な部分に登場するのであれば別段珍しくないものだと思うので、このAメロ部に対する言及だけでは不十分だという理解です。ということで、他のパートを引き合いに出すことで主張を更に補強したいと思います。


 僕が真に「勢いを持った」或いは「リズムとメロディが一体化している」と形容したいのは、実はサビの前半部分("ドキドキだけが プリキュア!" ~ "可愛いだけじゃないのが")です。ここはメロディだけを取り立てるとフラットであるというか、ともすれば地味と感じる人がいてもおかしくない旋律だという認識でいます。

 しかし実際に聴いてみると、地味どころかキャッチーでエネルギッシュだといったポジティブな感想が顔を覗かせてくるので、これはどうしてなんだろう?と考えた結果、メロディ自体がリズム的な性質を帯びているからこその妙だという結論に辿り着きました。

 これ以上に具体的なこと(たとえば譜面上/楽典的な解説)を述べられるだけの知識がないので、言わんとしていることは「聴いたままに感じ取ってくれ!」と丸投げするしかないのが恐縮ですが、ともかく曲の顔とも言えるサビにまで両者の寄り添いが認められるとなると、製作の段階からこのような楽想がはっきりと見えていたのではないかと推測します。


 作曲と編曲はそれぞれ別の方が務めているのですが、作曲者の清岡千穂さんは超有名アニソン「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(1989)を代表作に持つベテランで、底抜けのキャッチーさに関しては両曲で通じるところがある気がしますね。また、編曲者の池田大介さんも個人的にはB'zのナンバーにて耳馴染みのあるアレンジャーですが、ビーイング所属のクリエイターでもあるということで妙に得心がいくところがありました。

 というのも、同社が楽曲を提供するようなアニメはそれ自体が王道路線を有しているものが多く、同時に主題歌にもわかりやすさが求められている節があると昔から思っていたので、その方面で培ったノウハウが本曲の編曲にも活かされていると感じたからです。『プリキュアシリーズ』も現在は15作目、『ドキプリ』の時点で考えても10作目と、長期に亘って愛されているアニメーション作品であるため、「王道」と「わかりやすさ」がマッチするのはある意味当然かもしれません。


 余談になりますが最後に作品語りをしますと、冒頭部にリンクした記事の中では、僕の『プリキュアシリーズ』視聴状況として5/6作目は未だ観ていないということを書いたのですが、6作目の『フレッシュプリキュア!』が現在TOKYO MX2で再放送されているため、残すは5作目だけとなりました。ただ、その前作にあたる『Yes!プリキュア5』が現在MX1で再放送されているため、もしかしたらこのまま『GoGo!』までやってくれるのではないかと密かに期待しています。今週から2話連続放送に変わって駆け足になるのも、その布石だったりして?と思いながら。

 ついでなので当代(15作目)の『HUGっと!プリキュア』にもふれますが、今の段階で既に歴代作品と比べてもかなり面白い部類に入ると高く評価しています。好きな人には申し訳ありませんが、11~14作目はいずれも個人的にはそこまでのお気に入りにはならなかった(どれも一長一短あった印象な)ので、久々のヒットだという体感です。通年アニメなのでまだまだ先は長いですが、このまま高いクオリティを保ち続けていてほしいと願います。