●暴言トラック野郎 ◇50歳代前半 男性◇

 トラック運転手。運送業界は人手不足業界なので、応募すると一応採用されるのだが、この人は概ね2,3日から長くて4週間程度で退職することを繰り返しているのである。

 

 退職するとその足で来所し、

「社長がボケで、なにもわかっていない。(雇用)条件とちがう働き方を言ってくる。それを言うと、やめてくれと言われたので、お前みたいなボケが社長の会社なんか辞めたるわ、いいように俺を使いよって! と言って辞めてきたった。」と大声で自慢げに話すのである。

 

 

 運送業界、特に中小企業では、残念ながらブラックとは言わないまでもグレーぽい会社が多いのが現実である。ある程度、業界特有の慣例として清濁併せ呑むような柔軟な気持ちで働かないと長くは続かない。 

 こういう場合は、まず、経営者と冷静に話し合うことが大切で、どうしても納得がいかなければ、それから退職するか、労働基準監督署に相談すればいい。

 

 ところが、少しでも採用時に合意した雇用条件と異なる条件で働かされると、どうしても許せない性分なのだろうか。すぐ感情的になって辞めて、ハローワークにきて相談窓口で大声で相手企業を罵倒し、さらに興奮しているので1時間くらいにわたって同じことを何度も繰り返し話すのである。

 正直、聞いているほうは苦痛である。周りの来所者も迷惑そうな顔をしていることが多い。

 

 採用が決まったと連絡が入っても、何日でやめるのだろうかという関心しかわかない求職者であった。

  

 この人は、人手不足の運送業界なので、転職回数が多くても幸い採用になることが多かったが、一般的に転職回数が多いことは、就職活動ではかなり不利である。

 私が民間企業で採用担当をしていた時も、転職回数が多い人は 面接で印象がよくても採用しなかった経験がある。このあたりについても、折をみて触れてみたい。

 

 

 

 

●「失業保険」という用語はない

 よく窓口で、失業保険はいくらもらえるかと質問をうけるが、正式には「失業保険」という用語はない。

 雇用保険法では、離職により失業した場合に、退職時65歳未満の人に一定期間支給されるものは、失業等給付の中の「基本手当」という。他にもいろいろ手当や給付金があるが、一般的に失業保険といわれるものはこの基本手当ということになる。(どうでもいい話だが、立場上、正式な名称を使いたいので、以下「基本手当」と表現します)

 

 基本手当の受給要件やその金額、給付日数等についての詳細はここでは省略するが、(65歳未満の場合)受給額については月8万円~18万円くらいで、期間は3か月~5か月程度の人が一番多い。上限額も決まっていることから、月額で算出しても20万円以上もらえる人はごく少数である。一時的な生活保障としての位置づけなので、過度に期待しない方がよい。

             

 

基本手当は遠慮なくもらいましょう

 基本手当の受給要件として、就労意欲があることが条件となっており、その証として(65歳未満の場合)原則4週間に2回、求職活動をしなければならないことになっている。

 

 職業相談窓口にきて、職業相談をして、受給資格者証(求職の申込時にもらえる)に「日付印」と「職業相談印」を押してもらうことにより1回の求職活動をした証となる。(なお、以外と知られていないが、相談後どこかに応募すれば、その時だけで2回活動したことになる。)

 

 生活が懸かっており、早く働きたい方は、必然的に4週間に2回以上は求職活動をすることになるので、とくに問題はないのだが、当面就職する気のない人も、基本手当を受給するには、求職活動をしたふり(?)をして、4週間に2回、職業相談をうけて「認定」を受けなければならない。

 

 正直、相談窓口で話していると、どちらかはすぐわかるが、別に就労意欲はなくても、

「検索してさがしたけど、いい求人が見つからなかった」と、しれっと言ってもらえば、その人の心の中までは、わからないということになるので、こちらとしても粛々と事務的に「日付印」と「職業相談印」を押すだけである。就労意欲のない人の多くはこの対応となる。

 いろいろ言われるが、雇用保険料を払っていたのだから、もらえるものは遠慮なくもらっておけばいいと思う。

 

律儀な人たち 

 ただ、ときどき律儀な人(?)がいて、就労意欲はないのだが、相談員に意欲を「形」で示さないと「日付印」と「職業相談印」押してもらえないと思い、自分で適当に選んだ求人票を何枚か持参して、いろいろ相談する人がいる。もちろん、相談だけして応募はしない。

 お互い、時間の無駄なのだが、真面目さからの行動のため、こちらとしても、いずれ就職することになるかもしれないという思いから、丁寧に対応するようにしていた。

 こういう律儀な人が来ると、なにかしら(上から目線で恐縮だが)ほほえましく感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

●応募書類はどう書くの(高齢者編) ◇65歳 男性◇

 ハローワークの相談窓口では、履歴書や職務経歴書の添削を頼まれることが多い。

 自分で書いたものを他人にみてもらうことは、採用率を上げるためも効果的である。

 面倒くさがらず、一度窓口で相談してみてほしい。

 私も、窓口で履歴書や職務経歴書の添削をよく頼まれた。

 

 応募書類の書き方は専門書籍やネットでもサンプル等が公開されているが、自分のことになると、特に志望動機と自己PRは、どう表現してまとめていくのかが一番迷うところである。

 特に、高年齢者で履歴書を書くのはン十年ぶりという人もいて、なにを書いていいか想像もつかないので困っているとの相談も多い。

 

 眼鏡販売店の店長経験者で、定年退職した65歳の高齢者が、マンション管理人に応募したいと来窓。とりあえず、自分で作った履歴書の志望動機欄を見せてもらうと・・・

 

 志望動機・自己PR欄に

 『年金だけでは不安で、自分でもできそうな仕事だったから。しかも家が近いから応募しました』

とだけ書いてあった。 

(きつい言い方になるが)「正直」の上に「バカ」がついてしまう表現である。実際はそうであっても、書いてはいけないことがある。

 思わず、

 「これでは、採用担当者になにも響かないですよ。いろいろ苦労されてきたはずですし、これまでやってきたことを整理しましょう。特にマンション管理人は住人とのコミュニケーションが大切なので、しっかりそこをアピールしていきましょう。」といって、職務経歴をヒアリングしながら、とりあえずまとめてみた。

 

志望動機 自己PR欄(修正版)

『定年退職後、店長経験で培った、店舗の統括管理業務、お客様からのクレーム対応などの経験が活かせると思い応募しました。 私はこれまで、規律を守り、周りとのコミュニケーションと協調性を重視し、誠実に仕事に取り組んでまいりました。歳は重ねておりますが、気力や健康面でも支障なく、引き続き働きたいと思っております。』

 

「65歳になるとそんなに難しいことは書かなくていいのだが、せめてこれくらいは書いてほしい」と説明し、これをプリントして、手渡すと、

「参考になるわ、これを少し自分なりに書き直して応募するわ」といって帰っていった。

 

 その後、確認すると、幸いこの方は、採用になっていた。

 

●大切なのは面接

 なお、応募書類はあくまで一次選考であって、面接の方が重要であることは忘れてはならない。

いくら優れた応募種類を作成しても、面接でいい印象をもってもらわないと採用にはならない。

 

 この方は、人柄も温厚で誠実そうな方だったことから、書類選考が通れば、面接ではいい印象を持ってもらえることは予想できたので、支援した甲斐があった。

 

 ※これ以外にも 応募種類の書き方については 追々触れていきたいと思います。

<第22話(就労編)に続き 応募時 の苦情・怒り編です>

 

●応募の際の苦情 ◇相談者多数◇

 相談窓口で、時々、求職者から応募の際に応募先から不愉快な扱いを受けたと苦情を受けた。

 多かった苦情としては・・・

 

 ・面接の時に、平気で家族構成、離婚理由、子供の高校名、夫の勤務先 などを聞かれた。

 ・面接の時に、求人票に記載してある内容と、大幅に異なる条件を提示された。(例:正社員求人なのにパートでどう?と言われた。わかっていたら応募しなかった)

 ・内定と言っておきながら雇用契約書を文書で交わさない。雇用条件を文書で出してほしいというと即不採用と言われた。

 ・面接後、2週間以上経たっても返事がなく放置されたまま。本人からの依頼をうけ、ハローワークから問い合わせると、「忘れてた、すみません」とのあっさりした謝罪。就職は、応募者の生活が懸かっていることを全く自覚していない。

 ・店舗にいって、「面接に来ました」といったら、いきなり、「裏口から来るのが当たり前だろ」と一方的に言われ不採用になった。裏口があることも知らなかったし、応募の際になんの指示もなかった。今後、この店から絶対買わないことにした(本人弁)。

 

                                 などなど

 

●法律を知らない事業主たち

 こういうケースとなりうるのは第22話でもふれた事業所と重なることが多いのだが、その中でも、面接時に聞いてはいけないことを聞くのは、高年齢の経営者か採用担当者が圧倒的に多い。

 法律を守らないというより、法律を知らないことも多い。ただ、その場合、全く悪気がないだけに余計に始末が悪い。

 

 これらの苦情については、厚生労働省に専用の電話窓口もあるし、職業相談窓口に申し出てもらってもよい。求職部門内で記録として残し、求人部門と情報共有するようになっている。事業所に注意をして欲しければ申し出てほしいが、ただ、それだけではいきなり、求人受付を停止するような行政処分(罰則)までにはいかない。

 事実関係を確認し、事実だったとしても、まず注意喚起レベルでとどまる。改善が見られない場合にはじめて求人受付の停止などの処分がされるが、不愉快な思いをした当事者にとっては、すでに終わったことになるので歯がゆいところである。

 こういう時は、入社前に雇用管理が杜撰な会社であることがわかってよかった。こっちから願い下げや! と思うようにしてもらって割り切るしかない。

 こういうことはいずれ口コミで広がり、そのうち応募者がいなくなり人手不足で困ることになる。自業自得である。

 

 

 

 

 

●困ったやさしいおばあちゃん ◇76歳 女性◇

 勤めていたハローワークでは通常17:15に終わるのだが、毎週1~2回、いつも17:10くらいに自転車で来所して受付票発行ボタンを押して最後の一人となって職業相談を受けるおばあちゃんがいる。

 もう少し早めに来てほしいと何度もお願いするのだが、できるだけ他人に見られるのを避けたいのか、全く聞き入れてくれない。

 

 

 さらに、耳が遠く、相談員との会話が成り立たず筆談をすることが多い。

 当然応募できる求人もないのだが、クシャクシャした求人票薄汚れたトートバッグから取り出し、事業所に応募できるか確認してくれと言うのである。

 確認するだけ無駄なのだが、一応電話して、断られて、最終的に応募できるところがないと言うと落ち込む様子もなく「あっ、そう」といってそのまま帰るのである。

 

 そこでやっと閉所手続き(消灯やパソコン、サーバのシャットダウン)をするのであるが、当然対応した職員は時間外勤務となる。公務員は税金の無駄遣いをしているとよく批判をうけるが、その原因の一部は、こうした困った来所者であるということも承知しておいてほしい。

 

 なお、このおばあさん、毎週1~2回来所するので職員の間では有名になっている。仕事探しが目的なのか、単なる話し相手がほしいだけなのかよくわからない。 

 

 ただ、一度、私のところに来窓したときに、たまたま私の体調が悪かったので、本人に、

「今日は朝から(私の)体調が悪く定時に帰りたいので、明日以降に出直しくれる?」とお願いすると、

「しんどいか? ええよ、あんた、体に気つけよ」とそのまま、すぐに帰ってくれたことがありました。

気遣いはできるやさしいおばあちゃんでもあります。

 

 

 

 

●経験のある仕事以外はやりません 

 40歳代後半男性、電気制御系技術者の求人票を持参して窓口へ。

仕事内容について、大まかな内容は記載されているが、もっと細かく知りたいので聞いてくれといって、細かい技術的な質問をいくつか挙げてくる。

 技術的に細かいことは、面接で直接会って、当事者どうしで確認してほしいといっても

 もし、経験のない仕事を任されたら困るから、応募前に確認しておきたいとのこと。

 

 

   いろいろな作業工程がある中、経験のない分野の仕事はやりたくないというスタンスである。

 経験のない分野の仕事も挑戦的に取り組む姿勢を示さないと、会社側も採用する気にならない。

 こんな考え方では、応募しても採用されないことを本人は全く気づいていない。

 

 我々相談員も正直、技術的な質問の内容や、会社からの返事も専門過ぎてわからない。また、回答にさらにかぶせた質問もあり、それを電話口で応募先と本人の間に入って、なんどもやり取りするのである。電話越しに単なるメッセンジャー状態になる。

  再度、もし間違って伝えたら迷惑をかけることになるので、専門的なことは当人者どうしで直接電話で話してほしいというと、応募するかどうかも決めていないので、絶対いやだというのである。

 

正直、こういうタイプの相談者は疲れる。

 

  細かいことばかりにとらわれ、仕事の内容の本質を見ていない。

 なぜこの会社で働きたいのか、どういう形で会社に貢献したいのか、などの視点ではなく、自分の都合ばかりを考えている。

 もし、やったことがない仕事を任されたら周りに尋ねて、覚えていけばいいだけ話なのだが、どうもコミュニケーションが苦手(コミュ障)な印象を受けた。

 

 結局、応募には至らなかったのだが、確認すると、直近で3社ほど応募していたが全部不採用だった。

私が経営者なら、絶対採用しないタイプである

 

 コミュ障の人は、自分がコミュ障あるということを自覚していれば、まだ対処方法はあるのだが・・・。

●学歴はあっても・・・ ◇52歳 男性◇

  国立大学の理系を卒業、大手の電機メーカをリストラされた。何社か応募しているがなかなか採用されないのだが、その理由を「この歳だと、希望する製造系の仕事には採用してもらえない」と言って年齢的な問題だけと認識している様子。

 

 職務経歴書を見せてもらうと前職での異動が3部門で、それぞれ職務内容が各1-2行で簡単に表記してあるだけ。

 活かせる経験や能力、自己PRもない。

 30年も勤めればいろいろな経験(成功談、失敗談、苦労話)があるはずだし、仕事する上で心がけたこと、培った技術等をもっと詳しく書けないかと指摘。この職務経歴書では採用担当者に訴えるものがなく、書類選考で落とされることを説明。

 

 応募書類の書き方ならネットでいくらでも調べられるし、就職活動のハウツー本もいっぱい販売されている。国立大学の理系を卒業しているなら、それらを調べながら、履歴書や職務経歴書をどう書けば、自分をアピールできるかを考え、それなりの文書は書けるのではないかと思ってしまうが・・・。

 

 ただ、この人は、その後しばらくしてハローワークには顔を出さなくなったので、無事就職できたのかもしれないが、リストラされた理由がなんとなくわかった気がした中年男性であった。

 

●学歴条件は緩和できる?

 話は、少しずれるが・・・

 求人票の学歴条件には、よく、不問・高卒以上・短大卒以上・専門卒以上・大卒以上などと書かれてあるが、キャリア応募の場合は、あまり気にしなくてもよいことが多い。特に中小企業は、これまでの職歴を気にすることが多く、即戦力として同様の業務経験があるなら、そこをアピールすると、学歴は関係なく応募できることがほとんどである。

 応募したい職種と同様の実務経験が豊富な方は、学歴にとらわれず、相談員に条件緩和を事業所に掛け合ってもらうよう申し出てほしい。

 

 

 

 

●セクハラ歯科医

 20歳代の女性が、白衣を着たままカバンを1つさげて険悪な顔で来所。

 総合窓口で「トイレ借りられますか? 着替えたいんで」

 思わず「どうされたんですか?」と聞くと 

 歯科医院で歯科助手として勤務していたが、院長のセクハラがひどくて、体は触られるし、その場でやめてきた。一刻も早くその場を離れたくて仕事着のままでここへ来たとのこと。

 着替えた後は、求職者登録やハローワークの利用方法を説明して相談窓口に案内した。

 

 

●許せぬ経営者たち

 設立まもない小規模な事業所の社長、成り上がりのワンマン社長、苦労知らずのジュニア社長、個人クリニックの院長等で、お山の大将となって、法令遵守の意識が希薄で雇用管理の一般常識をわきまえない経営者がまれにいる。

(なお、事業所の名誉のために言っておきますが、まじめで誠実な経営者もたくさんおられます。あくまで「まれ」なケースです)

 

 相談窓口では、就業中あるいは退職された方からの会社への苦情や憤りを数多く聞いてきた。 

多かった意見としては・・・

 

・パワハラやいじめがひどい、上層部に相談しても対処してくれない。お前が辞めろと言われた。

・妊娠したとたん、うちには育児休業は無いといわれた。

・タイムカードを押してから、機械を止める処理をしろと言われた。

・就業時間前の朝礼は任意と言っておきながら、参加しないと、遅刻にすると注意された。

・休憩時間にも平気で仕事を命令してくる。

・勤務時間をその日ごとに平気で変えられた(今日は仕事がないので、もう帰っていいよ)

・試用期間は社会保険の加入はないと言われ、さらに3ケ月後に社会保険に加入してもらえるといったのにいつまでも放置された。(そもそも試用期間中でも条件を満たせば加入の義務あり)

・社長から「週1日のパートには有給休暇がない」と平然と言われた。

              など、枚挙にいとまがない。

 

●結局の落とし所は・・・

 これらの苦情は、基本的に労働基準監督署に申し出することにより、なにかしらの対応はとってもらえるが、中小企業の場合、誰が労基署に相談に行ったかはすぐ会社にわかるので、そもそも当人は、その会社に居づらくなる生活がかかっている場合は、ほとんどの人は辛抱するか、泣き寝入りである。

 訴えても、結論が出るまで時間とコストもかかるし、損害賠償をもらえてもわずかな額になることが多い。

 

 国も、パワハラについては、罰則付きのパワハラ防止法(労働施策総合推進法)を施行するなど、いろいろ対策を講じてはいるが、まだまだ中小企業に浸透するには時間がかかりそうである。

 ブラック企業と自分が判断すれば、早めに転職したほうが賢明かもしれない。

 

 ただ、ブラックの定義は個人の受け取り方によって異なる上に、世の中にはブラック企業もあるが、モンスター社員もいることを忘れてはならない。

 双方の言い分を聞かないと労基署も判断しづらいので、どうしても訴えたいと思うなら証拠を(録音やメモ、実態の勤務表)こまめに残すことを勧めている。

 

 ただ、結局のところ、早く気分を切り替えて、次の仕事を見つけることに集中したほうが、自分のためになることが多いのが現実である。

●困った老害じいさん ◇68歳 男性◇

 高年齢者の雇用を促進するため 高年齢者を雇用すると企業に助成金が支給される制度がある。

こうした助成金制度をどういうわけか「この制度は、わたしが厚生労働所省に掛け合って導入を進めたのだ」と言い張って自慢するおじいさんがいる。

 

 当然そんなことがあるはずもなく、一般的に厚労省で設置された審議会等で議論され、国会の承認を受けて決定されるのであるが、とにかく私が貢献したと言い張るのである。

 その上、威張り散らし、仕事を紹介しろと言うのである。当然、紹介しても採用にはいたらない。

 不採用理由は、面接で自慢話ばかりして自分のことしか話さなかったためというのである。

 

 

 その後も、3か月に一度程度ハローワークに来所して、「責任者はいるか」といって、次長や統括責任者を呼び出し、1時間ほどハローワークの仕事ぶりを確認したいと言っていろいろ話を聞き、ドヤ顔で帰っていくのである。

 まさに老害」である。

 こんな老人には決してなりたくないと思う反面、この人は、他人に迷惑をかけていることは全く知らないまま、自己効力感と自己満足にあふれた幸せな死に方をするんだろうなと、ある意味うらやましくもある。

 結局、他人に迷惑をかけて死ぬ方が、本人にとっては、迷惑をかけた分だけ、より幸せに死ねるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 LGBTやジェンダーフリーなどの性的マイノリティの考え方が、まだ世間的に認知されていない頃の話ですのでご了承ください。

 

●ここは、場違い? 

 40歳代 男性 やや小太り、きれいに化粧をして、髪はヒッツメで後ろに束ねている、服装もゆったり目のワンピースで、一見、垢ぬけしていない小柄なマツコ風といえばわかりやすい。

 

 

 待合コーナーで順番を待っているときから、ひときわ目立っていた。

 本人も「ここは、私のようなものが来るところではない」とうすうす感じたのか、周りの視線を気にしながら落ち着かない様子。

 

 相談席にすわると、口調は丁寧で、遠慮がちに、持ってきた求人票を示し、

「この求人、ニューハーフでも応募できるか聞いてくれませんか?

 

 てっきり、夜の飲食店の接客業かと思っていたら、なんとスーパーのレジの仕事であった。

「えっ、『ニューハーフ』と先方(応募先)に言ってもいいんですか?」と聞くと

「この格好で面接にいけばすぐにわかるので、前もって確認しておきたいんです」との返事。

早速 応募先のスーパーの採用担当者に電話をする。

 

●戸惑う事業所

私  「40代の方が応募したいと窓口に来られています。応募可能でしょうか?」

採用担当者「(明るい声で)もちろんです。面接日程をご連絡しますので、本人さんの氏名と連絡先を教えてください」

私  「その前に一点確認したいのですが・・・」

採用担当者「(明るい声で)はい、どうぞ~~」

私  「あの~、ニューハーフでも応募できますか?」

採用担当者「えっ!・・・・・・・・・・・(しばらく変な長い沈黙) (絞りだすような声で)まあ・・・、当社ではニューハーフだからといって応募できないというきまりはありませんが・・・」

 

<電話を一旦保留>

私  「応募できるそうですが、どうされますか?」

相談者「そうですね~(しばらく考えて)でも、やっぱり一旦、持ち帰って検討します。」

 

<電話の保留を解除>

私    「一旦、持ち帰って検討されるそうです。」

採用担当者「安堵感に満ち溢れた口調で)そうですか~。 また、検討されて、応募したいということであればご連絡お待ちしています」と、心にもない(?)返事

 

 その後、この方がハローワークに来られることはなかった。

 

 職歴をみると接客業とだけ書いてあった。おそらく夜のお店の仕事だけでは収入面で苦しいため、Wワークで昼間の仕事を希望したが、果たして、「そっち系」でも応募できるのか?、採用してもらえるのか?を探りに来所したのではないかと思われる。

 

 LGBTでも、外見からはわからず、就業に支障がなければ特に問題はない。応募の際にカミングアウトする必要もない

 

 ただ、一見して「そっち系」とわかる場合の就職活動は、雇用する側も、戸惑うことは間違いない。職業相談をうけてもどう支援していいのか正直よくわからない。経験のある方は教えてほしい。