●多かった苦情

 前回(第43話)は、あまり関わりたくないような来所者について、かなり厳しめに書かせてもらったが、逆に、ハローワークの相談員の対応にも、時々、来所者から苦情がよせられた。

 

 来所者は苦情があっても、面談中に相談員に直接言う方は少数で、ほとんどはその時は何も言わずに、後で電話でハローワークに苦情が入ることが多かった。

 苦情が入ると、必ず統括責任者に報告され、事実関係を確認し、こちらに問題がある場合は注意をうけることもあったし、所内で注意喚起の通達が回り、苦情情報を共有するようにしていた。

 

 

 多かった苦情としては、ほとんどが相談員の言い方がきつかったり、対応が冷淡だったり、相談者のプライドを傷つける発言があったということについてである。

 

具体的には

・「声が小さいですね。もっと大きな声で、はっきり言わないと損をしますよ。」

「その話し方だと、面接で言いたいことが伝わらないわ。」など、日頃から自分でも気にしていることをズバリ言われて傷ついた。

・自分が年下からか、相談員からいきなりタメ口で話しかけられた。

・わからないので相談員に確認すると「そんなこと当然でしょ!」とわかりきったことを聞くなという態度で言われた。

・応募できるところはないかと相談すると、「74歳で仕事なんてあるわけない」冷たくと言われた。 

・自選した求人の紹介状の発行を依頼したら、「ここでは採用は難しいので考え直したらどうか」と言われたが、難しいのは承知で応募しようとしている。応募する前から悲観的なことを言わないで欲しい。

・こっちはパワハラやリストラされて落ち込んでいるのに、後方で職員同士が談笑をしていた。

・こっちは仕事が見つからず、切羽詰まっているのに、「そんないい条件の仕事はありません」と、事務的に冷たく言われた。  などなど

 

●カウンセリングの難しさ

 かくいう私も、この仕事を始めたころ、まだ不慣れもあって、離婚問題を抱え大変な時になかなか決断できない女性に対して、「迷ってばかりいないで早く仕事をみつけましょう!」と、きつめの言葉を発して「もういいです!」と言って、椅子を蹴って離窓されたことがあった。

 

 要は、言葉と言い方である。同じ主旨のことを言っても、言葉と言い方によって印象は大きく変わる。人によって受け取り方も千差万別であり、カウンセリングの難しさでもある。

 

 本人のためと思って言ったつもりで、たとえそれが事実であっても、相談者の気持ちに寄添えず、心象を害してしまっては、元も子もない。職業相談員も自戒しなければならない。

 

 もし、「あの相談員は苦手、反りが合わない」と思ったら、担当者制のあるハローワークならそれを利用するものいいし、それができないなら、窓口で苦手な相談員にあたらないよう調整はできるので、総合窓口等で遠慮なく申し入れてほしい。優先すべきは、来所者が気持ちよく仕事を探すことである。

●かかわりたくない人たち   ◇ごく少数◇

 ハローワークの職業相談窓口に来る多くの相談者は、礼節や常識をわきまえており、お互い丁寧な口調で面談するのだが、まれに、あまり関わりたくないような人が来窓する。

 

例えば・・・

・はじめから、相談員を下に見て、タメ口で威張り散らす。すぐマウントをとりたがる。

・相談員が、自分の働いた業界の事を知らないと、そんなことも知らんのかと馬鹿にする。

・応募の際に、就労環境や労働条件以外に、仕事の内容について専門的で細かいことを聞いてくれと言ってくる。面接時に直接当人どうしで聞いてほしいとお願いしても頑なに拒否する(第24話参照)。

・スマホを持って操作も慣れているのに、「場所はどこだ?」「地図を出せ!」と言って全く就業場所や交通手段を自分で調べようとしない。

・求人票を10枚くらい持ってきて、すべて応募するので紹介状を発行してくれと言ってくる。実際は半分も応募書類を送らないし、辞退したことを連絡もしない。

・俺は、政治家や局長と知り合いだとか、気に入らない対応をすると、厚生労働省や県の労働局に電話するぞと脅かす。(「どうぞご自由に」と言い返してはいるが・・・)

などなど

 

 相談員も人間である。あまり関わりたくない相談者の場合は、早く終わらないかなと事務的な対応になり、有益な情報やアドバイスを提供してもらえず、結局、本人が損をすることに気づいていない。

 

●許せないカスハラ相談者 

 さらに、ひどくなるとカスタマーハラスメントに発展することもあった。相談員の人格を否定するような暴言を浴びせるのである。

「お前、アホか! 高校出てるんか!」 

「お前みたいなアホと話はできへんわ! 上(の者)と替われ!」

 公務員なら何を言っても許されると勘違いしているのである。公務員は奉仕者ではあるが、下僕や奴隷ではない。強く抗議したいが、実際は耐えるだけである。

 販売店や飲食店で接客業をされている方なら、同じような経験をされた方も多いのではないか?

 

 1980~90年代ころ、顧客満足度(CSの向上が経営戦略としてクローズアップされたころの名残で、お客様第一主義という考え方が、過剰に誤って拡まってしまって、こうしたカスハラやクレーマーをのさばらす一因になったような気がする。

 経営者側も、穏便に処理したいという思いが強く、従業員に謝罪させて収めようとする傾向が強いが、そうではなくて、カスハラやクレーマーから従業員を守るという発想をもって対策を講じてほしい。

 国も、こういう輩(やから)には警察に連絡したら現行犯で逮捕できるようなカスハラ防止法(仮称)などの法整備をして、法律で厳しく取り締まってほしいところだ。

●転職回数は減らせない ◇25歳 男性

 製造業の正社員希望。模擬面接をお願いしたいというので対応した。

 持参した履歴書や職務経歴書には、志望動機・自己PR等はそれなりに書いてあった。

気になったのは、大学を卒業して2年で2回転職、現在離職中で今回が3回目の就職となる。

 本当の転職理由は不明だが、やや「コミュ障」ぎみで、少なくとも上司や同僚との人間関係がうまくいかなかったのではないかとの印象はぬぐい切れなかった。

 模擬面接で志望動機や転職理由などを聞くと、それには触れず、それなりに話せるように練習をしており、まあまあ無難に答えていた。

 

 ただ、「大学卒業後、2年間で2回も辞めたことに対して、自分自身はどう思っているの?」

という質問をすると、想定外の質問だったのか、なにも話せなくなってしまった。

 

 昨今、転職に関しての考え方が変わってきたとはいえ、正社員雇用の場合、外資系やベンチャー系を除き、長く働いてほしいと考える企業はまだまだ多くあり、そういった企業の面接官は、転職回数を気にすることが多いことを説明し、こうした質問にも回答を用意しておくようアドバイスしておいた。

 

 

 自己都合退職での転職回数が多い場合、理由を聞かれたとき、よく使われる表現として

 「なに事もやってみたいという欲求が強く、幅広い視野を持ってキャリアアップを図り、成長したかったから」みたいなこと言っても(そう言わざるを得ないのだが)100%面接官は信用しない。例えそれが事実であっても、どうせ人間関係がうまくいかないか、成果を出せず評価されなかったので辞めざるを得なかったんだろうな・・・ くらいの想像はする。

(なお、退職理由が会社都合(倒産や業績不振、店舗閉鎖、契約期間満了など)の場合は、必ずその理由を履歴書に記し、面接官に理解してもらわないと損である。この場合は転職回数から間引いてみてもらえる。会社都合で退職したら、面倒くさがらず、退職理由はひとつひとつ丁寧に履歴書に表記することが必要である。)

 

 正社員の就活において、「一身上の都合」という退職理由が繰り返されていると面接官に疑惑と不安感を与えることになる。

 転職回数の多さは、取り消すことはできないので、最後は熱意で乗り切るしかない。

 

 一案として、面接の最後になにか質問はないか? と聞かれた時に、質問ではなく、決意表明をさせてもらいたいと言って、

転職はこれを最後にしたい、この会社で私の職業人生を全うしたい」とこれからの自分の意志明確に熱意をもって話すことが重要で、内容よりも話し方が大切になってくる。まさに「演じる」のである。

 こういうことはキツネとタヌキのお約束事なので、結果的に嘘になるかもしれないが、必ず言うべきである。

 結局、面接官に自分の本気度を少しでも感じとってもらえるかがカギとなる。

 

 転職回数の多い場合は、採否の評価は0からではなくマイナスからのスタートになっていることをしっかり自覚して面接に臨むことが重要である。

●転職・再就職に自信がない? ◇多数◇

 はじめて転職する人や久々に就職活動をする人の中には、謙虚すぎる人や自分に自信をもてない人など、応募に対して非常に慎重な方がおられる。

 自分の職務経験、能力・資質、さらに年齢がその仕事に通じるのか不安なのである。

 ただ、こういうことは結局、応募してみないとわからない、働いてみないとわからないのだが、その前に、不安ばかりが先に頭によぎり応募を逡巡する人たちである。

 「石橋を叩いて渡る」前に、その石橋を自分で叩き割って渡られなくなる人とも言える。

 

 

 その根底には、不採用になると自分を否定された気持ちになったり、社会から必要とされていないのではと落ち込んでしまい、喪失感を味わうのがつらいという思いが強すぎるのかもしれない。

 

●不採用を恐れるな!

 そういう相談者には、

・勤めていたハローワークの紹介成功率は約20%であること(全国のハローワークも地域によって多少の誤差はあるが、だいたいこの前後の紹介成功率である)、つまり、平均だが5社応募しないと採用にならない。1,2社不採用になったくらいで落ち込むことはない。

・不採用は、結婚相談所のお見合いパーティと一緒で、単なるミスマッチであって気にしなくてよい。

 などと励まし、弱気で消極的な人には、ダメもとで「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」作戦で積極的にどんどん応募するよう励ましていた。

 

 紹介成功率が約20%という数字を聞くと少し安心するみたいで、前向きな気持ちになって応募してくれる相談者も多かった。

 

●とはいえ・・・

 ただし、ずーーーーーと不採用が続いている人たちには、この数字は死んでも言えなかった。

こういう人たちには(虚しさを感じながらも)

「朝が来ない夜はない、春が来ない冬はない、粘り強く応募していきましょう」と、別の言い方で励ましていた。

 

 何社応募しても不採用が続く人はそれなりに理由があるのだが、それをダイレクトに伝えると、本人のプライドを傷つけたり、感情的になって怒り出したりする人もいるので、オブラートに包んだ言い方をするようにしていたが、真意は伝わらないことが多かった。

 本当は、何を言っても絶対怒らないと約束してもらえれば、忌憚なく不採用の理由や本人の問題点を指摘できるのだが・・・。

 

「あなたの能力と年齢では、持参した求人に応募しても採用はされません! もっと、あなたの能力と年齢にあった分相応の求人を選びなさい!」

 一度でもいいから、言ってみたかったセリフである。

●64歳11か月で退職すると得?

 高年齢者雇用安定法が改正されてから、再雇用も含めて、実質の定年が65歳まで延長された。

 年金の受給年齢に合わせて、企業の規模に関わらず定着してきたといえる。(余談だが、さらに国は、努力義務だが、70歳までの就労機会の確保を推奨している。)

 

 そんな中、64歳と11か月(厳密いうと65歳の誕生日の前々日まで(前日ではないことに注意))で定年退職した高齢者を散見してきた。

 雇用保険法に詳しい人ならすぐ理解できるが、一般の人にはわかりにくいところだ。本人たちも、単に基本手当第28話参照)が多くもらえると会社から勧められたので、それに応じたと淡々と話していた。

 

 

(少しややこしいが)簡単に説明すると・・・

退職したときに受給できる基本手当は 例えば、20年以上勤務した場合

・65歳の誕生日の前々日までに退職した場合:150日分

(ただし、その後受給期間中は、4週間に2回求職活動しなければならない

・65歳の誕生日の前日以降に退職した場合 : 50日分

(ただし、高年齢求職者給付金として一時金で支給される。求職活動は不要

 

100日分の差が出る。例えば、基本手当の日額が6000円だと仮定すると、たった1日の退職日の違いで、もらえる金額が60万円くらい変わってくる計算になる。

 しかも、もともと雇用保険に関わる給付金は非課税の上、年金との調整も、受給する時には65歳を過ぎているので調整対象外となり両方、満額もらえるのである。(65歳未満の場合、基本手当と年金は併給されず、どちらかが停止される)

 

ちょっとした裏技である

 

 ただし、こうした対応が取れるのは、ほとんどが中小企業で、大企業は就業規則等で厳密に決められており、こうした法の隙間をねらうようなことは認めないことが多いので、65歳になってからでないと定年退職扱いをしてもらえない場合がある。もし、無理して64歳11か月で退職しても、退職金に影響したり、自己都合退職の扱いとなり給付制限期間が設定される可能性がある。

 また、65歳以降働く気のない人には問題はないが、65歳以降も働きたい人にとっては、就職してしまうと基本手当が満額もらえない可能性があるなど、注意する点も多い。

 

 お勧めはしないが、知っておいて損はない知識である。

 見方を変えると、こうした対応をしてくれる中小企業の社長さんは、退職金の上積み分の代わりとして配慮してくれているのではないかと考えると、別の意味で社員思いかもしれない。

 

 

●理由なき転職 ◇30歳独身女性◇

 30歳女性独身、大学を卒業して中堅IT企業に入社し、そこそこキャリアを積み、これから働き盛りとなる年齢である。

今の会社に特に不満があるというわけではないが、このままでいいのかと悩んでいるとのこと。

 さらに詳しく聴くと・・・

 ある程度の仕事を任してもられるようになったものの、自分を追い越す後輩もでてきた。自分でないとできない仕事というわけでもなく、会社での自分の存在価値が希薄になってきた感じがする。心機一転、環境を変えて(転職して)みたいと思うようになってきて、他にどんな求人があるのか調べに来所したとのこと。

 

 実は、男女を問わず、30歳前後の方でこの手の相談を、回数は少ないが受けることがあった。

こうなると職業相談というより人生相談になってくる。「理由なき転職」と言ったところか。

 

 人はだれしも、就職して何年か経つと、こういう時期は経験するものである。

通常、転職に迷う場合は「した場合」と「しない場合」のメリット、デメリットを一覧表にまとめ、俯瞰(ふかん)的にそれを見ながら総合的に判断をするのであるが、明確な理由があるわけではないので、論理的には理解できても感情的には納得感が得られないことが多く、迷ってしまう。

 

●恋愛してますか?

 こういう時、私の場合は、よくサラリと「今、恋愛はしていますか?」と聞くようにしていた。

 ハロワの職員が個人の恋愛事情を聴くことは、通常ご法度なのだが、明確な回答を求めているのではなく、気づきを与えるためにするので、スルーされてもいいし、私のような歳の離れた人畜無害おじさん」には意外とあっさり答えてくれることもあったし、「自分の親と同じことを言うわ」と苦笑いされたこともあった。

 

<ここからは、既婚者やすでに恋愛中の方、独身主義者で恋愛に全く関心のない方は、参考にならないので無視して下さい>

 

 

 「恋愛と仕事は別だ」という考え方があるが、私は車の両輪のようなものであると感じている。

 恋愛をすると、精神的な拠り所も生まれ、多面的な考え方・視点が得られ、仕事に関する価値観が少し変わってくることが多い。結果的に、転職せずにそのまま頑張れる活力になる場合がある。

 もし転職する場合でも、恋愛相手がその決断の背中を押してくれたりする。それを機に関係が深まることもある。どんな結果になろうと納得感が得やすい。

 

(お叱り覚悟で申し上げると)

 30歳~40歳前後の独身で(男女とも)、恋愛をしていない方で、「理由なき転職」に悩んだら、まずその前に恋活・婚活をしてみる。それから、転職するかどうか決めることお勧めしたい。

 一度、生活の軸足を「仕事」から「恋愛」にシフトしてみるのである。

 

 今のご時世、マッチングアプリや有料の結婚相談所などで相手を見つけるのに苦労はいらない。

 これですべて解決するわけではないが、一案として参考にしてもらえれば幸いである。

 時々、相談窓口で、仕事がなかなか決まらない相談者から、

「あんたらはいいよな~、会社がつぶれることもないし、ボーナスもあるし、がっぽり退職金ももらえるんやろ?」と妬みを言われることがあった。

 

● 大いなる誤解

 大声で否定したいところではあるが、言っても仕方がないので、「はあ、はあ」と言ってスルーするのがせいぜいである。

 

 

 ご存じの方も多いが、ハローワークの相談窓口で働く職員のうち、国家公務員試験に合格した、いわゆる正職員は全体の3~4割程度で、残りは時給で働く非正規職員(会計年度任用職員)である。

 非正規職員は、採用になっても、1年ごとの再任用面接試験があり、その時、面接官の心象を悪くすると更新してもらえない。さらに3年ごとには公募として、新規の応募者と横並びで応募し、一から書類選考、面接選考を受けなければならない。

 

 また、国の予算が通らないと、再任用の求人自体もなくなる可能性もある。そういう意味では一般的な派遣社員や契約社員と立場上は変わらない、時給で働く不安定な非正規雇用である。

 窓口で偉そうなことを言っている相談員も、契約が終了すれば一求職者として相談窓口に出向くことになるのである。

 

●いろいろ制約があります

 一方、立場上はみなし国家公務員なので、非正規雇用にもかかわらず、業務上での制約は当然として、私生活でもいろいろ制約をうける。

 

 例えば、プライベートで海外旅行に行く時は、防衛省や外務省の上級職でもないのに、事前に届け出しなければならない。また、コロナ禍の頃、PCR検査は勝手に受けてはいけなかった。帰省する時に、別に症状はなくて念のため受ける前にも事前に申告しなければならないのである。

 このほか、コロナ禍中の飲み会は厳しく抑制されたし、町で輩(やから)に言いがかりをつけられても喧嘩はするな、交通ルールは守れ など夏休み前の中学校のような通達が回ってくる。

 

● 忍耐も必要

 また、匿名の電話で(よほど暇な人だろうとは思うが)

・職員が(昼休み中)コンビニの前で、買い物せずに喫煙コーナーでタバコを吸っていた。

・道路を横断する際、交差点から少し離れた信号のないところを横断していた。

 など、いったい何が悪いのかよくわからない行動を通報されることもある。

 

 みなしとはいえ公務員だから当然という考え方もあるが、思い通りにならない社会に対する不満をこうして公務員にぶつけることで、自分のストレスを緩和しようとする人達からの理不尽な要求にも耐えないといけない、つらい立場であることは理解してほしい。

 

文中≪≫は面談中の私の「心」の声です。

 

●「就職」ではなく「就職活動」が目的?

◇30歳~50歳代 男性◇

 普通、ハローワークに通う人は、仕事が見つかるか、基本手当(第28参照の受給が終わるかで、3か月から半年くらいのスパンで、概ね入れ替わるのが特徴である。

 

 ところが、30歳~40歳代で、ハローワークに5年以上の長期にわたってルーチンワークのように通い続ける人が何人かいる。

 

●ルーチンパターン1

 毎週1回 朝の開所と同時に来所して、まず、自己検索機で求人を探し出し、その後、求人票を相談窓口に持参するのだが、窓口で第一声が いつも

 「どうせこの求人に応募しても、採用されないことはわかってる。」と言う人。

 ≪そしたら、なんでこの求人票を窓口に持ってくるの!≫ 

 その後も「この会社は・・・ この仕事は・・・ 」と評論ばかりして、応募もせずに、社会や企業への愚痴と不満をネチネチと話して帰るのである。

 窓口担当者も「いつものおじさん」ということで、「そうですか、そうですか」とうなづくだけで、いつも30分ほどで話して終わるので、それを待って帰っていただいていた。

 

●ルーチンパターン2

 毎週金曜日15:00頃に来所して、自選した求人を数件持参し、紹介状の発行を受け、応募するのだが、ズーーと不採用が続きここ数年一度も採用にならない人。

 不採用が続くと、なにか対策を講じるものだが、特に誰とも相談することもなく、淡々と応募し続けるのである。こちらも何も相談されないので、事務的に紹介状を発行するだけになっている。

 

 いずれも 規則正しく週1回来所し、自己検索機で検索し、窓口で相談するというルーチンワークで就職活動し、規則正しい生活を送っているみたいなので健康維持にはいいかもしれないが・・・。

 

 この人たちの共通点は、仕事が見つからなくても、不採用が続いても、別に困らないみたいな感じで、いずれもまったく悲壮感が感じられない。それどころか余裕すら感じるのである。

 

いったい、この人たちはどんな「業」で生計を立てているのか?

 

 資産家の親がいるのか? 遺産相続でもしたのか? 霞だけを食べて暮らしてるのか?・・・

本人にも聞けないので、相談員の中でも「永遠の謎」とされていた。

 

 いずれにせよ、働かなくても生活ができるのだから、ある意味うらやましい限りである。

 29歳女性、会社を辞めて、基本手当(第28話参照)を受給する場合、ハローワークに求職の申込をしてから1週間の待期期間を経て、会社都合退職の場合は翌日から受給できるが、自己都合退職の場合は通常2か月(状況によっては3か月)の給付制限期間が設定される。

(令和7年4月より1か月に短縮されています)

 少しでも早くもらいたい場合は、退職理由が会社都合か自己都合かは大きな問題である。

 

 

●自己都合にこだわる理由

 販売員をしていたが、業績不振で店舗を閉鎖することになり、別の店舗に移るか、辞めるかどっちか決めてくれと言われた。

 別の店といっても、通勤が2時間かかる距離で負担が大きいので辞めますというと、「じゃ、辞表を書いてくれ」と言われたので、言われるままに『一身上の都合で退職します』という定型文の辞表を渡され、そのまま転記して日付と名前を記入して渡してしまった。

あとで離職票を確認すると、自己都合退職になっていた。

 

 納得がいかなかったので、受給手続きの窓口に相談にいったら、一身上の都合で退職と辞表を書いてしまうと覆すのは難しいといわれたとのこと。

 

 会社がなぜ自己都合退職にこだわるのかというと、簡単にいうと国からの助成金が受給できなくなる可能性があるからである。

 あまり知られていないが、コロナ禍で有名になった雇用調整助成金以外にも、特定求職者雇用開発助成金(シングルマザー・生活困窮者・60歳以上の高年齢者等を雇用すればもらえる)、キャリアアップ助成金など、雇用や人材育成に向けて努力した会社は、申請すれば国からいろいろな助成金がおりるのだが、その条件の一つに「3年以内に事業主の都合で離職者を出していないこと」というのがある。それに抵触する危険性があるので、できるだけ会社都合による離職者は出したくないのである。

 

 一般に退職した場合は、理由に応じて、一般の受給資格者(自己都合)、特定受給資格者(会社都合)、特定理由離職者(会社都合と自己都合の中間)に分かれる。給付制限期間が設定されるのは一般の受給資格者のみである。 

 具体的な違いは別途ネットで確認してほしいが、今回の場合は、特定受給資格者になる可能性が高く、本来は給付制限期間は設定されないはずである。

 

●辞表は書くな!

 今回の場合、辞表を書くときは「店舗閉鎖に伴い他店舗の異動を命じられましたが、通勤不能のため退職します」と退職理由を具体的に書いて提出し、コピーをとってハロワの給付窓口に提示すれば、もめることはなかったと思われる。

 

 退職の際、本当に自己都合の場合を除き、やむをえない理由の場合は、会社とよく話し合い、安易に「一身上の都合で退職します」という辞表は書かないことだけは会社側に伝えることが大事である。

 

  例えば、「家族の介護のため」「体力が衰えたため」「うつ病になったため」「時間外勤務が3か月続けて45時間を超えたため」「パワハラを受けたため」とか具体的に退職理由を辞表に書いてコピーをとっておくことをお勧めする。

 もちろん、時間外の場合は勤務票(勤怠記録)のコピー、パワハラなどを理由にするときは、必ずそのエビデンス(録音やパワハラ受けた日付や状況のメモ等)を確保しておく必要があるが・・・。

 

 会社がどういう対応をするか不透明だが、会社が退職理由を認めない場合は、辞表を書かないことが一番いいのだが、どうしても辞表を書かないと退職を認めてもらえそうにないと思ったら、遠慮せずハローワークに相談すればよい。

 もし、どうしても離職票を発行してくれなかったら、ハローワークから会社に電話してもらえれば、法律で決まっていることなので、さすがに会社も拒否できないはずである。

 ただ、いろいろ会社やハローワークと交渉しなければならず、粘り強く交渉する覚悟はしておく必要がある。

 第22話、第26話で 法律を知らない・守らない経営者たち をテーマに事業所側の問題点をとりあげたが、求職する側にも、マナーを守らない応募者がいる。

 

●甘受してほしい採用リスク

 紹介状を発行した手前、事業所から「何という人を紹介してくれるの!」と厳しい口調でクレームを受けることがあった。

 ハローワークとしては、応募希望者には、事業所の了解が得られれば紹介状を発行しなければならない。応募する人物を保証するものではないのでどうしようもないのだが、事業所の気持ちはよく理解できる。事業所もハローワークに言っても無駄だとはわかっているのだが、一言、言いたいのだと思う。そういう場合には、採用活動における「許容リスク」として甘受してほしいと丁重にお願いしていた。

 多い苦情としては・・・

・指定した時刻に面接にこない。電話しても通じない。時間を空けて待っていたのに無駄になった。

・13:00の面接に、12:15に来た。(相手の都合考えない)

・正社員の面接に、ジーパンとTシャツで来た。(自分の会社を軽く見られている)

・履歴書の写真がどうみても5年以上前の写真にしか見えなかった。(すぐ手抜きしそう)

・内定を出し、明日から勤務というときに辞退するとの連絡がはいった。

・採用して3日で突然出社しなくなった。理由不明、本人に電話をしても通じない。

・採用する際に、現場も見せ、体力的にきついけど本当に大丈夫かと何度も確認して「大丈夫、できる」といったのに、1日で根をあげて辞めた。(特に高年齢者が多い)

                          などなど

●いい迷惑

 採用前にわかればまだましだが、一旦内定を出し、受け入れ準備を整えて、制服等も用意したのに突然辞退されたり、社会保険の加入手続きもしたのに、入社してすぐに無断欠勤し、そのまま短期間で辞められたらいい迷惑である。

 採用する側の「人をみる目」がなかったと言ってしまえばそれまでであるが・・・。

 

 事業所からの連絡があれば記録に残し、その後、もし本人がハローワークに来所したときに、理由を聞いたり、それとなく注意したりはしているが、ほとんどの人はそのままスルーするか、言い訳がましい理由を言って、あまり罪悪感を感じる風の人は少ない。

 

 こういうビジネスマナーやルール守れない人はごく少数だが一定の割合で存在する。社会活動に対する適応能力が著しく低い人か、かくれ精神障がい者の可能性がある。おそらくこのままでは就職は難しい人たちということになるのだろうが、どうしようもないのが実情である。

 求職者にも 良識ある行動が求められている。