●有料職業紹介会社の実態

 テレビでは、大手の有料職業紹介会社であるリ○ルート、DOD○、マ○ナビなど名立たる企業が、膨大な広告宣伝費をかけてCMを流している。

 

 これらの有料の職業紹介会社を利用して採用すると、一般的に、採用者の理論年収(1年目の見込年収(見込賞与も含む))の30%~35%の紹介手数料を支払うことになる。

(例えば、紹介者に年収500万円を提示すると約150~175万円を支払うということになる)

 採用にお金をかけられる企業などは利用できるが、一般の中小企業での利用はなかなか難しいところだ。

 また、こうした求人の対象となる職種はある程度限られている上、比較的都市部に集中しており、実質の対象年齢も25歳~40歳代後半くらいまでのことが多い。

 

 

 そこそこの会社が求める職種でそこそこのキャリアのある人でないと、登録してもなかなかマッチングすることが少ないのが実情なので、自分のキャリアに自信のある人が利用すればよい。

 

 ただ、(有料の職業紹介会社の営業妨害をするわけではないが以前、民間企業の人事部でこうした有料の人材紹介会社を通して採用した経験から申し上げると、採用しても、転職癖のある人も多く、2~3割くらいしか定着せず、残りは、他にいい条件の会社が見つかったのか6か月から2年以内で転職する人も多かった。採用する側にも覚悟が必要である。

 

●庶民的求職者は・・・

 一般の多くの庶民的?求職者、特に地方での就労を希望する人たちは、ハローワークへ出向くか、新聞の折込求人広告を見るとか、ネット上でハローワークインターネットサービスや無料の転職サイト(インディー○、タ○ンワーク、イーア○デムなど)を利用することになり、実際にそちらで探す方が間違いなく手っ取り早い。

 

 金持ちだから幸福とは限らない、貧しくても不幸とは限らないのと同じで、大学を出て大企業で働きキャリアを重ねて、有料の職業紹介会社を通して転職しても満足できる仕事に就けるとは限らない。

無料の転職サイトで、地域に根付いた社員思いの社長さんが経営する中小企業を見つけ出し、そこで長く楽しく働けるのもいいかもしれない。

 

●自分らしく働こう

 要は、「自分らしく働ける」ところを探し出し、そこで働くことができれば、充実した職業人生を送れることはまちがいない。

 「自分らしく」の定義が難しければ、過去に働いた経験の中から一番居心地のよかった仕事から思い出していけばよい。

 転職先に迷ったら、自分の価値観に照らして賃金や休日数などにこだわらず「自分らしい働き方」という観点から、具体的な基準や条件で絞りこみ、その中から70点くらいの条件を満たす応募先をさがすことから始めればいいと思う。

●出世がいやなのでやめます  ◇31歳 女性◇

 ある年の12月頃来窓。正職員として公立中学校の教師をしていたが、来年の3月末で退職したいので、今から次の仕事をさがしたいとのこと。

 転職したい理由を聞くと、クラスの担任として勤務していたが、来年度から管理職の仕事(詳細は不明だが、若い教員の管理・指導等も含まれるとのこと)も任せたいと上司から内々の話があったらしく、自分は人を管理するような仕事は向いていない、管理職よりも一教員として働いている方が自分の性にあっている。辞退もできない雰囲気なので、賃金は減ってもいいので、もう少し責任の軽い仕事に転職したいとのこと。

 しかも、学校は「究極のブラック企業」と言われているほどなので、昇格すればおそらく保護者対応や時間外勤務も増えるだろうし、精神的にも肉体的にも、とてもやっていく自信がないのかもしれない。

 

 

 ただ、出世や昇格すれば賃金も当然上がるし、管理職への昇格を打診されるということは、その人を評価しているからであって、評価が低ければ打診などされない。

 私のような昭和世代にとっては、考えられない、

なんとも、もったいない話である。

 今の若い人たちには、給料は安くてもいいので気楽に働きたい、責任のある仕事は避けたい人が多くなっているような気がする。

 この根底には、煩わしい人間関係に巻き込まれなくない、人に嫌われたくないという気持ちが強過ぎるのかもしれない。

 

 また、今の自分の上司を見ていて、(特に優秀な上司についている場合など)理想の上司像を勝手に描いてしまい、自分では無理だと決めつけてしまうことがよくある。

 実は、組織のマネジメント手法は、自分の性格や価値観にあわせて背伸びせず、自分らしくチームを運営・管理すればいいのである。

 

●自分らしいリーダー像をめざせ

 例えば リーダー像にもいろいろタイプがある。

 

●リーダーシップバリバリ型

 「俺についてこい」的に部下に次々指揮命令ができるタイプ。ただ、よほど仕事のできる人で、まずほとんどの人が無理なタイプである。能力もないのに、無理にこのスタイルをとるとパワハラにつながるし、それこそ部下から信頼されない嫌われる上司となる。

 

●調整・相談型  

 リーダーといっても、麻雀でいう席決めの時の仮親みたいな程度と考え、フラットな組織を意識し、リーダーもメンバーの一人という考え方で部下の意見を聞きながら、風通しのいい環境づくりを重視し、部下と相談しながら意思決定をするタイプ。

 

●放任・依頼型

 「たのむよ、がんばってくれよ、君を頼りにしているから」と憎めない上司役に徹して、部下が「あの上司、困っているから助けてやろう」と思ってもらうように仕向けるタイプ。比較的年配の方によくいるのだが、社内の根回しがうまく顧客への謝罪などには率先して対応してくれるタイプ。

 

 ただし、いずれも共通して言えることは、結果責任は自分がとるという覚悟はいるが、この「責任をとる」というのも、サラリーマンの場合は重いようで以外と軽い。謝れば済むことも多く、次の賞与が少し減るかもしれないが、損害を弁償させられたり、いきなりクビになることはまずない。一時的に冷や飯を食うことになるかもしれないが、時間が経てばリカバリーできることも多く、いざとなれば転職すればいいだけである。あまり深く考えない方が得策である。

 

 また、部下がミスをしたり、ルール違反を注意する時も、叱るのが嫌なら、再発防止策を一緒になって考える姿勢で部下と話合うようにし、部下を甥っこか姪っこくらいと考え愛情をもって接していれば、部下も受け入れてくれることが多い。

 

 正解はない、100点をとる必要もない。無理をせず、自分らしい部下の管理方法を模索していけばいい。

はじめは頼りなくて、未熟な管理職でいいのである。そのうち「器が人を造る」ことになる。

せっかくのキャリアを積み、自分が成長できるチャンスである。チャレンジしてほしいものだ。

 

●ハロワには、できれば来たくない

 ここ2,3年、ハローワークに基本手当(第28話参照)を受給しながら仕事さがしに来る人でも、パソコンやスマホの操作に慣れている人は、ハローワークインターネットサービス(HWISだけでなく、民間の無料転職サイトで探して応募するという人が確実に増えてきていた。

 

 HWISでも、紹介状不要の求人も徐々に増えてきており、これからは、応募書類の作成に困らない人や求人票の見方などに慣れている人は、紹介者を介さず直接、求職者・求人者の当事者どうしでやり取りをする応募方法が主流になることはまちがいない。

 

 

 実は、窓口で若い人から「ハローワークには、(基本手当の受給に必要な)認定を受けるためにしかたなく来るけど、本音を言うとあまり来たくない」とよく聞かされた。

 理由を聞くと、単に来所するのが面倒くさいとか、混んで待たされるのが嫌というだけではなく、ハローワークは空気がよどんでいる、雰囲気が悪い、仕事が決まらない人の負のオーラを浴びそう」などと、かなり辛辣なことを言われることがあった。

 確かに、来庁者の怒号や罵声が聞こえたり、窓口の相談員と相談者と言い争う声が聞こえることもあったりするが・・・。

 苦笑いするしかなかったが、こればかりはどうしようもない。雰囲気の明るいハローワークなど見たことも聞いたこともない。

 

●相談員が仲介してくれると安心

 一方、ネットでの応募だと求人者側、求職者側双方から、「ネットから応募したのに応募先の会社からなんの連絡もない」、「応募者が指定した面接時間に現れない」など、お互い無責任な行動があって迷惑を被ったと窓口や電話で聞かされたことも多々あった。

「ハローワークの窓口を通すと相談員が仲介するので安心」という声も多かったことを申し添えておきたいと思う。

 

 あと、数年(?)もすると、AIが普及しビッグデータが蓄積されて、自分の経歴・保有資格や希望条件を入力するだけで、自動的に応募できそうな求人を検索してくれたり、応募書類を自動的に作成してくれるようになり、職業相談員という職業も、(高年齢者・障がい者・生活困窮者などの一部のIT弱者への対応を残して)将来無くなる職業の一つと言われている。 

 職業紹介を生業(なりわい)とする者が失業するという皮肉なことになりそうだ。

●意地悪な面接官はどこにでもいる

 28歳 女性。事務職に応募したのだが、面接でしつこく志望動機を聞かれ、うまく答えられずに不採用になった。今後のためにと対策方法を相談された。

 

 詳細を聞くと・・・ 面接で志望動機を述べると、

「そんなことは、他社でも当てはまるのでは? わが社でないといけないということはないはずだが・・・、どうしてわが社を志望したの?」

 

 

 意地悪な面接官がよく使う圧迫質問である。

こういう質問をされると 頭が真っ白になって、しどろもどろになってしまう応募者も多い。

 しかし、よくよく考えると、例えば、日立の冷蔵庫を買った後に、どうしてシャープの冷蔵庫にしなかったの?と聞かれても、商品仕様を細かく比較したわけでもないし、店員が親切で勧めてくれたからなんとなくという程度のことが多い。

 他社との違いを深堀しても意味がないのだが、敢えてこういう質問をするのである。

 

●圧迫面接をする本当の理由

 実はこの質問する場合、面接官は納得できる回答を求めているわけではないことが多い。

こういう質問をしたら、この応募者はどう反応するのか、その様子を採否の判断材料にしたいのである。

 他の圧迫質問もだいたい同じで、回答の中身よりも、そういう意地悪な質問に対する対応能力やストレス耐性を見たいのである。特にホテル業界などは、理不尽なクレーマーが多く、いやなことがあると、すぐ辞められると困るので、敢えて圧迫面接をして見極めるようなことをやっていると聞く。

 

 こういう場合、志望動機=選社理由と考え、なぜこの会社を選んだのか?と別の見方で考えると話せるようになることがある。

 

●開き直り作戦

 一案として、私の場合、「開き直り作戦」で対応するようアドバイスしていた。

おっしゃるとおり、私の志望動機は他社でも当てはまるかもしれません。ただ、私はこれまで親から何事も『縁』を大切にしろと教えられてきました。ハローワークで探している中で、貴社の求人を知り、直感的に応募したいと感じたのも何かの『縁』だと思いました。志望した理由に貴社に限った明確で合理的なものはありませんが、こうした『縁』を大切にしたいと思っています。(文句あるか!)」と、堂々と悪びれず話すことが大事である。

 

 こう言われると、おそらく面接官は「あ、そうですか」くらいしか言えないはずである。

もちろん、反抗的で悪い印象を持たれてしまうかもしれないが、圧迫面接をしておいて反抗的だと思うような面接官のいる会社はパワハラが内在していることが多い。こっちから願い下げればよい。

 

 もし、腹の座った人物としていい評価をもらえれば、結果は自ずとついてくる。

結果は保証しないが、堂々と悪びれず言い切る自信があれば試してみてはいかがでしょうか?

●目標をもってがんばる人はかっこいい 

 31歳 女性。司法書士事務所の求人を持参し、応募したいと来窓。

 聞くと、穏やかな表情で、司法書士の試験に8年かかったが、ようやく合格して、これから実務経験を重ねてキャリアアップをしていきたいとのこと。

 職歴をみると、この期間「コンビニの店員」とだけ書いてあった。

 

 人生で一番遊びたい・恋愛をしたい娘盛り(古い言い方でお許しください)の20歳代を司法書士の資格試験の勉強に費やし、コンビニのアルバイトで生活費をかせぎながら8年間がんばってきたのである。

 

「よく耐えましたね、がんばりましたね」とねぎらいの言葉をかけていた私も、うるっときてしまった。

 

 ハローワークの窓口には、このように将来開業したい・起業したいという志をもって、資格試験に新たに挑戦する人や、30歳を過ぎてからも、若いころ一旦あきらめた保育士や看護師の夢を忘れられずに、資格取得にむけて新たに学校に入学しようとする人も来た。

 その中には、正社員だったのに退職して、志を実現するため自ら退路を断ってくる人もいた。 

 

 応募しようとする仕事は、勉強時間の確保を優先させるため、パートも含め、資格とは全く関係のない職種もあったが、目標に向かって仕事を探す人は、清々しさを感じて、心から応援したい気持ちになった。

 

・資格の勉強は、途中で挫折したら最初から何もしなかったことと同じになる。

・ものごとを始める時期に、「遅すぎる」ということはない。

・努力すれば合格するのではなく、合格するまで努力するのである。

 

 かくいう私も、50歳代から社労士に挑戦をしはじめ、ン年間不合格が続き、何度も挫折しそうになったのだが、この言葉に励まされて、衰えていく記憶力と集中力・体力と戦いながら、なんとか合格した経験がある。

 

 こういう人が相談にくると相通じることがあったので、つい肩入れしてしまい、普段より時間をかけて、より丁寧に求人情報を提供したり、採用になるための相談に応じていた。

 

 目標をもってがんばっている人たちは、本当にかっこいいとつくづく思う。 

●多かった苦情

 前回(第43話)は、あまり関わりたくないような来所者について、かなり厳しめに書かせてもらったが、逆に、ハローワークの相談員の対応にも、時々、来所者から苦情がよせられた。

 

 来所者は苦情があっても、面談中に相談員に直接言う方は少数で、ほとんどはその時は何も言わずに、後で電話でハローワークに苦情が入ることが多かった。

 苦情が入ると、必ず統括責任者に報告され、事実関係を確認し、こちらに問題がある場合は注意をうけることもあったし、所内で注意喚起の通達が回り、苦情情報を共有するようにしていた。

 

 

 多かった苦情としては、ほとんどが相談員の言い方がきつかったり、対応が冷淡だったり、相談者のプライドを傷つける発言があったということについてである。

 

具体的には

・「声が小さいですね。もっと大きな声で、はっきり言わないと損をしますよ。」

「その話し方だと、面接で言いたいことが伝わらないわ。」など、日頃から自分でも気にしていることをズバリ言われて傷ついた。

・自分が年下からか、相談員からいきなりタメ口で話しかけられた。

・わからないので相談員に確認すると「そんなこと当然でしょ!」とわかりきったことを聞くなという態度で言われた。

・応募できるところはないかと相談すると、「74歳で仕事なんてあるわけない」冷たくと言われた。 

・自選した求人の紹介状の発行を依頼したら、「ここでは採用は難しいので考え直したらどうか」と言われたが、難しいのは承知で応募しようとしている。応募する前から悲観的なことを言わないで欲しい。

・こっちはパワハラやリストラされて落ち込んでいるのに、後方で職員同士が談笑をしていた。

・こっちは仕事が見つからず、切羽詰まっているのに、「そんないい条件の仕事はありません」と、事務的に冷たく言われた。  などなど

 

●カウンセリングの難しさ

 かくいう私も、この仕事を始めたころ、まだ不慣れもあって、離婚問題を抱え大変な時になかなか決断できない女性に対して、「迷ってばかりいないで早く仕事をみつけましょう!」と、きつめの言葉を発して「もういいです!」と言って、椅子を蹴って離窓されたことがあった。

 

 要は、言葉と言い方である。同じ主旨のことを言っても、言葉と言い方によって印象は大きく変わる。人によって受け取り方も千差万別であり、カウンセリングの難しさでもある。

 

 本人のためと思って言ったつもりで、たとえそれが事実であっても、相談者の気持ちに寄添えず、心象を害してしまっては、元も子もない。職業相談員も自戒しなければならない。

 

 もし、「あの相談員は苦手、反りが合わない」と思ったら、担当者制のあるハローワークならそれを利用するものいいし、それができないなら、窓口で苦手な相談員にあたらないよう調整はできるので、総合窓口等で遠慮なく申し入れてほしい。優先すべきは、来所者が気持ちよく仕事を探すことである。

●かかわりたくない人たち   ◇ごく少数◇

 ハローワークの職業相談窓口に来る多くの相談者は、礼節や常識をわきまえており、お互い丁寧な口調で面談するのだが、まれに、あまり関わりたくないような人が来窓する。

 

例えば・・・

・はじめから、相談員を下に見て、タメ口で威張り散らす。すぐマウントをとりたがる。

・相談員が、自分の働いた業界の事を知らないと、そんなことも知らんのかと馬鹿にする。

・応募の際に、就労環境や労働条件以外に、仕事の内容について専門的で細かいことを聞いてくれと言ってくる。面接時に直接当人どうしで聞いてほしいとお願いしても頑なに拒否する(第24話参照)。

・スマホを持って操作も慣れているのに、「場所はどこだ?」「地図を出せ!」と言って全く就業場所や交通手段を自分で調べようとしない。

・求人票を10枚くらい持ってきて、すべて応募するので紹介状を発行してくれと言ってくる。実際は半分も応募書類を送らないし、辞退したことを連絡もしない。

・俺は、政治家や局長と知り合いだとか、気に入らない対応をすると、厚生労働省や県の労働局に電話するぞと脅かす。(「どうぞご自由に」と言い返してはいるが・・・)

などなど

 

 相談員も人間である。あまり関わりたくない相談者の場合は、早く終わらないかなと事務的な対応になり、有益な情報やアドバイスを提供してもらえず、結局、本人が損をすることに気づいていない。

 

●許せないカスハラ相談者 

 さらに、ひどくなるとカスタマーハラスメントに発展することもあった。相談員の人格を否定するような暴言を浴びせるのである。

「お前、アホか! 高校出てるんか!」 

「お前みたいなアホと話はできへんわ! 上(の者)と替われ!」

 公務員なら何を言っても許されると勘違いしているのである。公務員は奉仕者ではあるが、下僕や奴隷ではない。強く抗議したいが、実際は耐えるだけである。

 販売店や飲食店で接客業をされている方なら、同じような経験をされた方も多いのではないか?

 

 1980~90年代ころ、顧客満足度(CSの向上が経営戦略としてクローズアップされたころの名残で、お客様第一主義という考え方が、過剰に誤って拡まってしまって、こうしたカスハラやクレーマーをのさばらす一因になったような気がする。

 経営者側も、穏便に処理したいという思いが強く、従業員に謝罪させて収めようとする傾向が強いが、そうではなくて、カスハラやクレーマーから従業員を守るという発想をもって対策を講じてほしい。

 国も、こういう輩(やから)には警察に連絡したら現行犯で逮捕できるようなカスハラ防止法(仮称)などの法整備をして、法律で厳しく取り締まってほしいところだ。

●転職回数は減らせない ◇25歳 男性

 製造業の正社員希望。模擬面接をお願いしたいというので対応した。

 持参した履歴書や職務経歴書には、志望動機・自己PR等はそれなりに書いてあった。

気になったのは、大学を卒業して2年で2回転職、現在離職中で今回が3回目の就職となる。

 本当の転職理由は不明だが、やや「コミュ障」ぎみで、少なくとも上司や同僚との人間関係がうまくいかなかったのではないかとの印象はぬぐい切れなかった。

 模擬面接で志望動機や転職理由などを聞くと、それには触れず、それなりに話せるように練習をしており、まあまあ無難に答えていた。

 

 ただ、「大学卒業後、2年間で2回も辞めたことに対して、自分自身はどう思っているの?」

という質問をすると、想定外の質問だったのか、なにも話せなくなってしまった。

 

 昨今、転職に関しての考え方が変わってきたとはいえ、正社員雇用の場合、外資系やベンチャー系を除き、長く働いてほしいと考える企業はまだまだ多くあり、そういった企業の面接官は、転職回数を気にすることが多いことを説明し、こうした質問にも回答を用意しておくようアドバイスしておいた。

 

 

 自己都合退職での転職回数が多い場合、理由を聞かれたとき、よく使われる表現として

 「なに事もやってみたいという欲求が強く、幅広い視野を持ってキャリアアップを図り、成長したかったから」みたいなこと言っても(そう言わざるを得ないのだが)100%面接官は信用しない。例えそれが事実であっても、どうせ人間関係がうまくいかないか、成果を出せず評価されなかったので辞めざるを得なかったんだろうな・・・ くらいの想像はする。

(なお、退職理由が会社都合(倒産や業績不振、店舗閉鎖、契約期間満了など)の場合は、必ずその理由を履歴書に記し、面接官に理解してもらわないと損である。この場合は転職回数から間引いてみてもらえる。会社都合で退職したら、面倒くさがらず、退職理由はひとつひとつ丁寧に履歴書に表記することが必要である。)

 

 正社員の就活において、「一身上の都合」という退職理由が繰り返されていると面接官に疑惑と不安感を与えることになる。

 転職回数の多さは、取り消すことはできないので、最後は熱意で乗り切るしかない。

 

 一案として、面接の最後になにか質問はないか? と聞かれた時に、質問ではなく、決意表明をさせてもらいたいと言って、

転職はこれを最後にしたい、この会社で私の職業人生を全うしたい」とこれからの自分の意志明確に熱意をもって話すことが重要で、内容よりも話し方が大切になってくる。まさに「演じる」のである。

 こういうことはキツネとタヌキのお約束事なので、結果的に嘘になるかもしれないが、必ず言うべきである。

 結局、面接官に自分の本気度を少しでも感じとってもらえるかがカギとなる。

 

 転職回数の多い場合は、採否の評価は0からではなくマイナスからのスタートになっていることをしっかり自覚して面接に臨むことが重要である。

●転職・再就職に自信がない? ◇多数◇

 はじめて転職する人や久々に就職活動をする人の中には、謙虚すぎる人や自分に自信をもてない人など、応募に対して非常に慎重な方がおられる。

 自分の職務経験、能力・資質、さらに年齢がその仕事に通じるのか不安なのである。

 ただ、こういうことは結局、応募してみないとわからない、働いてみないとわからないのだが、その前に、不安ばかりが先に頭によぎり応募を逡巡する人たちである。

 「石橋を叩いて渡る」前に、その石橋を自分で叩き割って渡られなくなる人とも言える。

 

 

 その根底には、不採用になると自分を否定された気持ちになったり、社会から必要とされていないのではと落ち込んでしまい、喪失感を味わうのがつらいという思いが強すぎるのかもしれない。

 

●不採用を恐れるな!

 そういう相談者には、

・勤めていたハローワークの紹介成功率は約20%であること(全国のハローワークも地域によって多少の誤差はあるが、だいたいこの前後の紹介成功率である)、つまり、平均だが5社応募しないと採用にならない。1,2社不採用になったくらいで落ち込むことはない。

・不採用は、結婚相談所のお見合いパーティと一緒で、単なるミスマッチであって気にしなくてよい。

 などと励まし、弱気で消極的な人には、ダメもとで「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」作戦で積極的にどんどん応募するよう励ましていた。

 

 紹介成功率が約20%という数字を聞くと少し安心するみたいで、前向きな気持ちになって応募してくれる相談者も多かった。

 

●とはいえ・・・

 ただし、ずーーーーーと不採用が続いている人たちには、この数字は死んでも言えなかった。

こういう人たちには(虚しさを感じながらも)

「朝が来ない夜はない、春が来ない冬はない、粘り強く応募していきましょう」と、別の言い方で励ましていた。

 

 何社応募しても不採用が続く人はそれなりに理由があるのだが、それをダイレクトに伝えると、本人のプライドを傷つけたり、感情的になって怒り出したりする人もいるので、オブラートに包んだ言い方をするようにしていたが、真意は伝わらないことが多かった。

 本当は、何を言っても絶対怒らないと約束してもらえれば、忌憚なく不採用の理由や本人の問題点を指摘できるのだが・・・。

 

「あなたの能力と年齢では、持参した求人に応募しても採用はされません! もっと、あなたの能力と年齢にあった分相応の求人を選びなさい!」

 一度でもいいから、言ってみたかったセリフである。

●64歳11か月で退職すると得?

 高年齢者雇用安定法が改正されてから、再雇用も含めて、実質の定年が65歳まで延長された。

 年金の受給年齢に合わせて、企業の規模に関わらず定着してきたといえる。(余談だが、さらに国は、努力義務だが、70歳までの就労機会の確保を推奨している。)

 

 そんな中、64歳と11か月(厳密いうと65歳の誕生日の前々日まで(前日ではないことに注意))で定年退職した高齢者を散見してきた。

 雇用保険法に詳しい人ならすぐ理解できるが、一般の人にはわかりにくいところだ。本人たちも、単に基本手当第28話参照)が多くもらえると会社から勧められたので、それに応じたと淡々と話していた。

 

 

(少しややこしいが)簡単に説明すると・・・

退職したときに受給できる基本手当は 例えば、20年以上勤務した場合

・65歳の誕生日の前々日までに退職した場合:150日分

(ただし、その後受給期間中は、4週間に2回求職活動しなければならない

・65歳の誕生日の前日以降に退職した場合 : 50日分

(ただし、高年齢求職者給付金として一時金で支給される。求職活動は不要

 

100日分の差が出る。例えば、基本手当の日額が6000円だと仮定すると、たった1日の退職日の違いで、もらえる金額が60万円くらい変わってくる計算になる。

 しかも、もともと雇用保険に関わる給付金は非課税の上、年金との調整も、受給する時には65歳を過ぎているので調整対象外となり両方、満額もらえるのである。(65歳未満の場合、基本手当と年金は併給されず、どちらかが停止される)

 

ちょっとした裏技である

 

 ただし、こうした対応が取れるのは、ほとんどが中小企業で、大企業は就業規則等で厳密に決められており、こうした法の隙間をねらうようなことは認めないことが多いので、65歳になってからでないと定年退職扱いをしてもらえない場合がある。もし、無理して64歳11か月で退職しても、退職金に影響したり、自己都合退職の扱いとなり給付制限期間が設定される可能性がある。

 また、65歳以降働く気のない人には問題はないが、65歳以降も働きたい人にとっては、就職してしまうと基本手当が満額もらえない可能性があるなど、注意する点も多い。

 

 お勧めはしないが、知っておいて損はない知識である。

 見方を変えると、こうした対応をしてくれる中小企業の社長さんは、退職金の上積み分の代わりとして配慮してくれているのではないかと考えると、別の意味で社員思いかもしれない。