●怖いお局様 ◇48歳女性 他多数◇

 調理補助パートの求人票を応募したいと持参。気になったのは前職も調理の仕事をしていたが、3か月で退職していた。理由を聞くと・・・

 

 社員食堂の調理現場に就職したが、お局様がいて、同じことを聞くと、「前も言ったでしょ、何度同じことを聞くの!」と言われ、その後も仕事の手順を教えてもらえなかった。それ以外にも、事あるごとに嫌みやいじめをうけ、精神的に疲れたのでやめたとのこと。まさに、パワハラ退職と言える。

 

 

 こういうお局様は日頃のストレスをこうした立場の弱い人間にぶつけることにより、精神的なバランスをとっているのかもしれないが、その対象者になった者にとっては堪ったものではない。

 

●パワハラ辞職

 たまたまその会社の採用担当者に面識があったので、電話で事情を伝えると、「そのことは承知しており、それとなく本人(お局様)に注意はしているが、その人は仕事ができるので辞められると困る。その人とうまく付き合える人に当たるまで辛抱して採用するしかない」とのこと。

 なんともやりきれない回答だが、人手不足で苦労している中小企業にとってはやむをえないのかもしれない。

 

 国も、改正労働施策総合推進法(別称:パワハラ防止法)を施行したが、中小企業やそこに勤める社員に浸透するには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

●退職理由は人間関係が一番多い

 職業紹介の窓口で転職したいという人が頻繁にこられるが、転職理由は、自己都合の場合(結婚・出産・病気を除く)、肌感覚だが7割以上(女性の場合はそれ以上)人間関係が原因である。

 職業適性も仕事に対するモチベーションも、すべて人間関係が円滑であることが土台になる。いくらやる気があっても人間関係が悪ければ、仕事は長続きしない。

 極論すれば、いい仕事に就けるということは、いい上司や同僚がいて、人間関係が円滑な職場で働けるということになる。

 しかし、これは働いてみないとわからないというガチャ的宿命があり、就職は結婚と同じでギャンブルと言われる所以でもある。

 

 とくに女性の職場の場合は、女性は群れる習性があり、お局様に目をつけられたり、派閥問題などで撥ねピンにされると、選択肢は、辞めるか辛抱して働き続けるかしかなくなる。 

 辛抱するか、辞めるかは迷うところであるが、辞めるのであればハローワークなどで次の仕事を探せばいいのだが、すぐ辞めるのはくやしいと思ったら、自ら精神力を高めるか自分の考え方を変えるかしてお局様とうまくつきあうしかない。

 

●心理カウンセラーに相談しよう

 窓口でどうすればいいか相談をうけることがあるが、残念ながらこの対処方法は、専門外なのでよくわからない。ここは臨床心理士等の資格をもつ心理カウンセラーに相談してもらえればいいかと思う。

 YouTubeで心理カウンセラーの講座がいくつかある。私も精神的に落ち込んでいた時、利用していたサイトがあるので、よければ参考にしてもらえればと思う。

 

■心理カウンセラー やさお  https://www.youtube.com/watch?v=C0wB13gzdo0

■心理カウンセラー るろうに https://www.youtube.com/@rurouni15967

 

<補足>

なお、退職する場合、次の応募先で退職理由を聞かれたときの対応方法については

を参考にして欲しい。

●妊婦さんが就活?  

 20歳代後半女性、体に負担のかからないパートの仕事はないかと来窓。理由を聞くと妊娠しているとのこと。

少し驚いたが、さすがに妊婦さんを新規で雇ってくれるところはないと説明し、本人も「まあ、そうでしょうね」とわかっている様子。

 受給資格者証に(第28話参照)日付印と職業相談印を捺印し帰っていった。

 

 本来、妊娠して退職した場合は、出産を終えて求職活動ができる状況になるまで受給期間の延長(最長4年)手続きをするのだが、どうも経済的な理由から基本手当の受給を急ぐ理由があったのか、就職は難しいことは承知でそのまま求職活動をする意思を示したみたいである。

 いろいろ事情はあるかもしれないが、妊婦さんが就職活動しなければならない状況には、やるせない気持ちで一杯になった。

 

●育児休業制度の格差

 他方、妊娠して退職し、出産を終えて、子供を保育所に預けるまでに働かないといけないので早く仕事を探したいという就職と保育所の確保のタイミングで苦労している若いお母さんもよく来られた。

 いずれも、育児休業制度が利用されて雇用が継続されていれば、こんな苦労はしなくて済んだ話である。

 

 

 大企業の場合は、育児休業制度が整備されており、さらに復職後もフレックスタイム制や短時間勤務制度、子供の看護休業制度など、育児を支援する就業規則が整備されているところが多く、雇用の継続が確保され、安心して出産・育児できる環境がある。

 

 ところが、少なくなっているとはいえ、一部の中小企業では(特に小企業の場合)、もともと育児休業を取得することに理解のない社長や企業風土の会社だったり、児休業が取れたとしても、育児休業終了後には、硬直した勤務体系で、周囲の理解が得られないため、育児との両立ができずあきらめの気持ちで辞めざるを得ないことが多い

 

 妊娠して退職してしまうと、当然、育児休業給付金は受給できなくなるし、さらに、出産・育児が一段落しても、新たに仕事を探さなくてはならない。賃金が伸び悩み、女性も働かなければならない家庭が増えている中、ただでさえで大変な出産後の女性に、さらに育児や託児所の確保を強いられ多大な労力とストレスがかかることになる。

 

 育児休業制度の実績がある会社とない会社、出産後の復職受け入れ体制の整っている会社とそうでない会社、どちらに勤めるかで、大きな格差が生まれているのが現実である。

 

●育児休業制度で雇用の継続を

 育児休業制度がこの4月から随時改正され、男性でも出生時に育児休業がとれるようになったり、分割して柔軟に取得できるようになった。国もこうして、少子化対策のため、育児休業法を適宜改正しており、育児休業の取得率が、令和3年度、女性の場合85%、男性も13%を超えた。喜ばしいことだが、それだけではまだまだ物足りない気がする。それプラス、復職後の柔軟な勤務体系と子の看護休暇や学校行事を上司や周りの社員が容認できる環境の整備をもっと中小企業に奨励すべきである。

 

 育児休業制度の実績のない経営者も、規模が小さいからという言い訳はそろそろ考え直してほしいところだ。例えば、育児休業中の代替要員として期間限定の求人を出すことは法律上可能である。時間を持て余しているシニア世代を、育児休業中の期間限定で採用するのも一案である。

 

「妊娠・出産しても(希望者の)100%の雇用は継続される」そんな社会が来れば、少子化問題も少しは改善されるかもしれない。

 

●就活・転職名言(おもしろ川柳付き)

 今回で記念すべき50話となりました。

 これまで、ハローワークの職業相談窓口で体験した喜怒哀楽を中心にいろいろ掲載させていただきましたが、今回は、私が相談窓口で相談者を元気づけたり、気づきを与えるときによく使っていた歴史上の人物や著名人が発した「就活・転職名言」をご紹介したいと思います。

 既に聞かれたこともあるかもしれませんが、就職活動をされる方以外にもさまざまなビジネスシーンでも使えるものもあります。参考にしてもらえれば幸いです。

 

 

【名言1】

この世には、卑しい人間はたくさんいるが、卑しい仕事はない。

<解説>以前、ネット上で仕事にランク付けをして、バッシングを受けていた記事を読んだが当然である。仕事をランク付けする人が、人として下位にランクされるべき人である。

 

【名言2】

天職と適職は違う。仕事は「やりたいか」で選ぶよりも「できるか、あるいはできそうか」で選べ。

<解説> やりたい仕事は探しても見つかるものではない。たとえ見つかったとしても、やりたい仕事をできる仕事にする(就職する)には、やりたい仕事に就くための「資質・能力」と「運」を必要とする。ところが、できる仕事をやりたい仕事に変えることは、自分の考え方ひとつですぐ実現できる。できる仕事の中で「やりがい」を見つけ出せばやりたい仕事になる。

 

【名言3】

悲観は「情念」であり、楽観は「意思」である。

<解説> ちょっと難しい言葉になるが・・・ 物事にとらわれて悲観的にしか考えられなくなっている人が、楽観的に考える人に、よく「お前は楽観的でいいよな~」と妬むようなことを言うことがあるが、こんな情けないことはない。この世の中、成功者の多くは楽観主義者である。この人たちは、ネイティブな性格からではなく、楽観的に考え行動した方がうまくいくことを知っており、意思をもって楽観的に考えるようにしているのである。仕事探しや転職も、とらわれる気持ちを捨てて、「なんとかなるだろう」という気持ちで臨んだ方が結果的にうまくいくことが多い。

 

【名言4】

転職成功者の多くは、単に「仕事ができる」だけでなく、環境順応性も優れている。

<解説> 転職は、仕事ができても成功するわけではなく、成否はその人の環境順応性が大きく影響する。常にバランス感覚をもって、過去の自分の実績にとらわれず、他人の意見に素直に耳を傾けられる人が成功者に多い。

 

【名言5】

人は「幸福」を求めて、もがき苦しむのであるが、「不幸」になるには簡単である。

なぜなら、ただ何もせず、じっとしていればいいだけだから。

<解説> 不要

 

 

ついでに、名作(迷作?)就職川柳を集めました。お楽しみください。 

 

■ハロワにて 突然始まる 同窓会    (実話です) 

■職歴に 「自治会長」と 書くシニア  (実話です)  

■面接の 帰りに並ぶ 宝くじ     

■社長より 仕事よく知る アルバイト

●有料職業紹介会社の実態

 テレビでは、大手の有料職業紹介会社であるリ○ルート、DOD○、マ○ナビなど名立たる企業が、膨大な広告宣伝費をかけてCMを流している。

 

 これらの有料の職業紹介会社を利用して採用すると、一般的に、採用者の理論年収(1年目の見込年収(見込賞与も含む))の30%~35%の紹介手数料を支払うことになる。

(例えば、紹介者に年収500万円を提示すると約150~175万円を支払うということになる)

 採用にお金をかけられる企業などは利用できるが、一般の中小企業での利用はなかなか難しいところだ。

 また、こうした求人の対象となる職種はある程度限られている上、比較的都市部に集中しており、実質の対象年齢も25歳~40歳代後半くらいまでのことが多い。

 

 

 そこそこの会社が求める職種でそこそこのキャリアのある人でないと、登録してもなかなかマッチングすることが少ないのが実情なので、自分のキャリアに自信のある人が利用すればよい。

 

 ただ、(有料の職業紹介会社の営業妨害をするわけではないが以前、民間企業の人事部でこうした有料の人材紹介会社を通して採用した経験から申し上げると、採用しても、転職癖のある人も多く、2~3割くらいしか定着せず、残りは、他にいい条件の会社が見つかったのか6か月から2年以内で転職する人も多かった。採用する側にも覚悟が必要である。

 

●庶民的求職者は・・・

 一般の多くの庶民的?求職者、特に地方での就労を希望する人たちは、ハローワークへ出向くか、新聞の折込求人広告を見るとか、ネット上でハローワークインターネットサービスや無料の転職サイト(インディー○、タ○ンワーク、イーア○デムなど)を利用することになり、実際にそちらで探す方が間違いなく手っ取り早い。

 

 金持ちだから幸福とは限らない、貧しくても不幸とは限らないのと同じで、大学を出て大企業で働きキャリアを重ねて、有料の職業紹介会社を通して転職しても満足できる仕事に就けるとは限らない。

無料の転職サイトで、地域に根付いた社員思いの社長さんが経営する中小企業を見つけ出し、そこで長く楽しく働けるのもいいかもしれない。

 

●自分らしく働こう

 要は、「自分らしく働ける」ところを探し出し、そこで働くことができれば、充実した職業人生を送れることはまちがいない。

 「自分らしく」の定義が難しければ、過去に働いた経験の中から一番居心地のよかった仕事から思い出していけばよい。

 転職先に迷ったら、自分の価値観に照らして賃金や休日数などにこだわらず「自分らしい働き方」という観点から、具体的な基準や条件で絞りこみ、その中から70点くらいの条件を満たす応募先をさがすことから始めればいいと思う。

●出世がいやなのでやめます  ◇31歳 女性◇

 ある年の12月頃来窓。正職員として公立中学校の教師をしていたが、来年の3月末で退職したいので、今から次の仕事をさがしたいとのこと。

 転職したい理由を聞くと、クラスの担任として勤務していたが、来年度から管理職の仕事(詳細は不明だが、若い教員の管理・指導等も含まれるとのこと)も任せたいと上司から内々の話があったらしく、自分は人を管理するような仕事は向いていない、管理職よりも一教員として働いている方が自分の性にあっている。辞退もできない雰囲気なので、賃金は減ってもいいので、もう少し責任の軽い仕事に転職したいとのこと。

 しかも、学校は「究極のブラック企業」と言われているほどなので、昇格すればおそらく保護者対応や時間外勤務も増えるだろうし、精神的にも肉体的にも、とてもやっていく自信がないのかもしれない。

 

 

 ただ、出世や昇格すれば賃金も当然上がるし、管理職への昇格を打診されるということは、その人を評価しているからであって、評価が低ければ打診などされない。

 私のような昭和世代にとっては、考えられない、

なんとも、もったいない話である。

 今の若い人たちには、給料は安くてもいいので気楽に働きたい、責任のある仕事は避けたい人が多くなっているような気がする。

 この根底には、煩わしい人間関係に巻き込まれなくない、人に嫌われたくないという気持ちが強過ぎるのかもしれない。

 

 また、今の自分の上司を見ていて、(特に優秀な上司についている場合など)理想の上司像を勝手に描いてしまい、自分では無理だと決めつけてしまうことがよくある。

 実は、組織のマネジメント手法は、自分の性格や価値観にあわせて背伸びせず、自分らしくチームを運営・管理すればいいのである。

 

●自分らしいリーダー像をめざせ

 例えば リーダー像にもいろいろタイプがある。

 

●リーダーシップバリバリ型

 「俺についてこい」的に部下に次々指揮命令ができるタイプ。ただ、よほど仕事のできる人で、まずほとんどの人が無理なタイプである。能力もないのに、無理にこのスタイルをとるとパワハラにつながるし、それこそ部下から信頼されない嫌われる上司となる。

 

●調整・相談型  

 リーダーといっても、麻雀でいう席決めの時の仮親みたいな程度と考え、フラットな組織を意識し、リーダーもメンバーの一人という考え方で部下の意見を聞きながら、風通しのいい環境づくりを重視し、部下と相談しながら意思決定をするタイプ。

 

●放任・依頼型

 「たのむよ、がんばってくれよ、君を頼りにしているから」と憎めない上司役に徹して、部下が「あの上司、困っているから助けてやろう」と思ってもらうように仕向けるタイプ。比較的年配の方によくいるのだが、社内の根回しがうまく顧客への謝罪などには率先して対応してくれるタイプ。

 

 ただし、いずれも共通して言えることは、結果責任は自分がとるという覚悟はいるが、この「責任をとる」というのも、サラリーマンの場合は重いようで以外と軽い。謝れば済むことも多く、次の賞与が少し減るかもしれないが、損害を弁償させられたり、いきなりクビになることはまずない。一時的に冷や飯を食うことになるかもしれないが、時間が経てばリカバリーできることも多く、いざとなれば転職すればいいだけである。あまり深く考えない方が得策である。

 

 また、部下がミスをしたり、ルール違反を注意する時も、叱るのが嫌なら、再発防止策を一緒になって考える姿勢で部下と話合うようにし、部下を甥っこか姪っこくらいと考え愛情をもって接していれば、部下も受け入れてくれることが多い。

 

 正解はない、100点をとる必要もない。無理をせず、自分らしい部下の管理方法を模索していけばいい。

はじめは頼りなくて、未熟な管理職でいいのである。そのうち「器が人を造る」ことになる。

せっかくのキャリアを積み、自分が成長できるチャンスである。チャレンジしてほしいものだ。

 

●ハロワには、できれば来たくない

 ここ2,3年、ハローワークに基本手当(第28話参照)を受給しながら仕事さがしに来る人でも、パソコンやスマホの操作に慣れている人は、ハローワークインターネットサービス(HWISだけでなく、民間の無料転職サイトで探して応募するという人が確実に増えてきていた。

 

 HWISでも、紹介状不要の求人も徐々に増えてきており、これからは、応募書類の作成に困らない人や求人票の見方などに慣れている人は、紹介者を介さず直接、求職者・求人者の当事者どうしでやり取りをする応募方法が主流になることはまちがいない。

 

 

 実は、窓口で若い人から「ハローワークには、(基本手当の受給に必要な)認定を受けるためにしかたなく来るけど、本音を言うとあまり来たくない」とよく聞かされた。

 理由を聞くと、単に来所するのが面倒くさいとか、混んで待たされるのが嫌というだけではなく、ハローワークは空気がよどんでいる、雰囲気が悪い、仕事が決まらない人の負のオーラを浴びそう」などと、かなり辛辣なことを言われることがあった。

 確かに、来庁者の怒号や罵声が聞こえたり、窓口の相談員と相談者と言い争う声が聞こえることもあったりするが・・・。

 苦笑いするしかなかったが、こればかりはどうしようもない。雰囲気の明るいハローワークなど見たことも聞いたこともない。

 

●相談員が仲介してくれると安心

 一方、ネットでの応募だと求人者側、求職者側双方から、「ネットから応募したのに応募先の会社からなんの連絡もない」、「応募者が指定した面接時間に現れない」など、お互い無責任な行動があって迷惑を被ったと窓口や電話で聞かされたことも多々あった。

「ハローワークの窓口を通すと相談員が仲介するので安心」という声も多かったことを申し添えておきたいと思う。

 

 あと、数年(?)もすると、AIが普及しビッグデータが蓄積されて、自分の経歴・保有資格や希望条件を入力するだけで、自動的に応募できそうな求人を検索してくれたり、応募書類を自動的に作成してくれるようになり、職業相談員という職業も、(高年齢者・障がい者・生活困窮者などの一部のIT弱者への対応を残して)将来無くなる職業の一つと言われている。 

 職業紹介を生業(なりわい)とする者が失業するという皮肉なことになりそうだ。

●意地悪な面接官はどこにでもいる

 28歳 女性。事務職に応募したのだが、面接でしつこく志望動機を聞かれ、うまく答えられずに不採用になった。今後のためにと対策方法を相談された。

 

 詳細を聞くと・・・ 面接で志望動機を述べると、

「そんなことは、他社でも当てはまるのでは? わが社でないといけないということはないはずだが・・・、どうしてわが社を志望したの?」

 

 

 意地悪な面接官がよく使う圧迫質問である。

こういう質問をされると 頭が真っ白になって、しどろもどろになってしまう応募者も多い。

 しかし、よくよく考えると、例えば、日立の冷蔵庫を買った後に、どうしてシャープの冷蔵庫にしなかったの?と聞かれても、商品仕様を細かく比較したわけでもないし、店員が親切で勧めてくれたからなんとなくという程度のことが多い。

 他社との違いを深堀しても意味がないのだが、敢えてこういう質問をするのである。

 

●圧迫面接をする本当の理由

 実はこの質問する場合、面接官は納得できる回答を求めているわけではないことが多い。

こういう質問をしたら、この応募者はどう反応するのか、その様子を採否の判断材料にしたいのである。

 他の圧迫質問もだいたい同じで、回答の中身よりも、そういう意地悪な質問に対する対応能力やストレス耐性を見たいのである。特にホテル業界などは、理不尽なクレーマーが多く、いやなことがあると、すぐ辞められると困るので、敢えて圧迫面接をして見極めるようなことをやっていると聞く。

 

 こういう場合、志望動機=選社理由と考え、なぜこの会社を選んだのか?と別の見方で考えると話せるようになることがある。

 

●開き直り作戦

 一案として、私の場合、「開き直り作戦」で対応するようアドバイスしていた。

おっしゃるとおり、私の志望動機は他社でも当てはまるかもしれません。ただ、私はこれまで親から何事も『縁』を大切にしろと教えられてきました。ハローワークで探している中で、貴社の求人を知り、直感的に応募したいと感じたのも何かの『縁』だと思いました。志望した理由に貴社に限った明確で合理的なものはありませんが、こうした『縁』を大切にしたいと思っています。(文句あるか!)」と、堂々と悪びれず話すことが大事である。

 

 こう言われると、おそらく面接官は「あ、そうですか」くらいしか言えないはずである。

もちろん、反抗的で悪い印象を持たれてしまうかもしれないが、圧迫面接をしておいて反抗的だと思うような面接官のいる会社はパワハラが内在していることが多い。こっちから願い下げればよい。

 

 もし、腹の座った人物としていい評価をもらえれば、結果は自ずとついてくる。

結果は保証しないが、堂々と悪びれず言い切る自信があれば試してみてはいかがでしょうか?

●目標をもってがんばる人はかっこいい 

 31歳 女性。司法書士事務所の求人を持参し、応募したいと来窓。

 聞くと、穏やかな表情で、司法書士の試験に8年かかったが、ようやく合格して、これから実務経験を重ねてキャリアアップをしていきたいとのこと。

 職歴をみると、この期間「コンビニの店員」とだけ書いてあった。

 

 人生で一番遊びたい・恋愛をしたい娘盛り(古い言い方でお許しください)の20歳代を司法書士の資格試験の勉強に費やし、コンビニのアルバイトで生活費をかせぎながら8年間がんばってきたのである。

 

「よく耐えましたね、がんばりましたね」とねぎらいの言葉をかけていた私も、うるっときてしまった。

 

 ハローワークの窓口には、このように将来開業したい・起業したいという志をもって、資格試験に新たに挑戦する人や、30歳を過ぎてからも、若いころ一旦あきらめた保育士や看護師の夢を忘れられずに、資格取得にむけて新たに学校に入学しようとする人も来た。

 その中には、正社員だったのに退職して、志を実現するため自ら退路を断ってくる人もいた。 

 

 応募しようとする仕事は、勉強時間の確保を優先させるため、パートも含め、資格とは全く関係のない職種もあったが、目標に向かって仕事を探す人は、清々しさを感じて、心から応援したい気持ちになった。

 

・資格の勉強は、途中で挫折したら最初から何もしなかったことと同じになる。

・ものごとを始める時期に、「遅すぎる」ということはない。

・努力すれば合格するのではなく、合格するまで努力するのである。

 

 かくいう私も、50歳代から社労士に挑戦をしはじめ、ン年間不合格が続き、何度も挫折しそうになったのだが、この言葉に励まされて、衰えていく記憶力と集中力・体力と戦いながら、なんとか合格した経験がある。

 

 こういう人が相談にくると相通じることがあったので、つい肩入れしてしまい、普段より時間をかけて、より丁寧に求人情報を提供したり、採用になるための相談に応じていた。

 

 目標をもってがんばっている人たちは、本当にかっこいいとつくづく思う。 

●多かった苦情

 前回(第43話)は、あまり関わりたくないような来所者について、かなり厳しめに書かせてもらったが、逆に、ハローワークの相談員の対応にも、時々、来所者から苦情がよせられた。

 

 来所者は苦情があっても、面談中に相談員に直接言う方は少数で、ほとんどはその時は何も言わずに、後で電話でハローワークに苦情が入ることが多かった。

 苦情が入ると、必ず統括責任者に報告され、事実関係を確認し、こちらに問題がある場合は注意をうけることもあったし、所内で注意喚起の通達が回り、苦情情報を共有するようにしていた。

 

 

 多かった苦情としては、ほとんどが相談員の言い方がきつかったり、対応が冷淡だったり、相談者のプライドを傷つける発言があったということについてである。

 

具体的には

・「声が小さいですね。もっと大きな声で、はっきり言わないと損をしますよ。」

「その話し方だと、面接で言いたいことが伝わらないわ。」など、日頃から自分でも気にしていることをズバリ言われて傷ついた。

・自分が年下からか、相談員からいきなりタメ口で話しかけられた。

・わからないので相談員に確認すると「そんなこと当然でしょ!」とわかりきったことを聞くなという態度で言われた。

・応募できるところはないかと相談すると、「74歳で仕事なんてあるわけない」冷たくと言われた。 

・自選した求人の紹介状の発行を依頼したら、「ここでは採用は難しいので考え直したらどうか」と言われたが、難しいのは承知で応募しようとしている。応募する前から悲観的なことを言わないで欲しい。

・こっちはパワハラやリストラされて落ち込んでいるのに、後方で職員同士が談笑をしていた。

・こっちは仕事が見つからず、切羽詰まっているのに、「そんないい条件の仕事はありません」と、事務的に冷たく言われた。  などなど

 

●カウンセリングの難しさ

 かくいう私も、この仕事を始めたころ、まだ不慣れもあって、離婚問題を抱え大変な時になかなか決断できない女性に対して、「迷ってばかりいないで早く仕事をみつけましょう!」と、きつめの言葉を発して「もういいです!」と言って、椅子を蹴って離窓されたことがあった。

 

 要は、言葉と言い方である。同じ主旨のことを言っても、言葉と言い方によって印象は大きく変わる。人によって受け取り方も千差万別であり、カウンセリングの難しさでもある。

 

 本人のためと思って言ったつもりで、たとえそれが事実であっても、相談者の気持ちに寄添えず、心象を害してしまっては、元も子もない。職業相談員も自戒しなければならない。

 

 もし、「あの相談員は苦手、反りが合わない」と思ったら、担当者制のあるハローワークならそれを利用するものいいし、それができないなら、窓口で苦手な相談員にあたらないよう調整はできるので、総合窓口等で遠慮なく申し入れてほしい。優先すべきは、来所者が気持ちよく仕事を探すことである。

●かかわりたくない人たち   ◇ごく少数◇

 ハローワークの職業相談窓口に来る多くの相談者は、礼節や常識をわきまえており、お互い丁寧な口調で面談するのだが、まれに、あまり関わりたくないような人が来窓する。

 

例えば・・・

・はじめから、相談員を下に見て、タメ口で威張り散らす。すぐマウントをとりたがる。

・相談員が、自分の働いた業界の事を知らないと、そんなことも知らんのかと馬鹿にする。

・応募の際に、就労環境や労働条件以外に、仕事の内容について専門的で細かいことを聞いてくれと言ってくる。面接時に直接当人どうしで聞いてほしいとお願いしても頑なに拒否する(第24話参照)。

・スマホを持って操作も慣れているのに、「場所はどこだ?」「地図を出せ!」と言って全く就業場所や交通手段を自分で調べようとしない。

・求人票を10枚くらい持ってきて、すべて応募するので紹介状を発行してくれと言ってくる。実際は半分も応募書類を送らないし、辞退したことを連絡もしない。

・俺は、政治家や局長と知り合いだとか、気に入らない対応をすると、厚生労働省や県の労働局に電話するぞと脅かす。(「どうぞご自由に」と言い返してはいるが・・・)

などなど

 

 相談員も人間である。あまり関わりたくない相談者の場合は、早く終わらないかなと事務的な対応になり、有益な情報やアドバイスを提供してもらえず、結局、本人が損をすることに気づいていない。

 

●許せないカスハラ相談者 

 さらに、ひどくなるとカスタマーハラスメントに発展することもあった。相談員の人格を否定するような暴言を浴びせるのである。

「お前、アホか! 高校出てるんか!」 

「お前みたいなアホと話はできへんわ! 上(の者)と替われ!」

 公務員なら何を言っても許されると勘違いしているのである。公務員は奉仕者ではあるが、下僕や奴隷ではない。強く抗議したいが、実際は耐えるだけである。

 販売店や飲食店で接客業をされている方なら、同じような経験をされた方も多いのではないか?

 

 1980~90年代ころ、顧客満足度(CSの向上が経営戦略としてクローズアップされたころの名残で、お客様第一主義という考え方が、過剰に誤って拡まってしまって、こうしたカスハラやクレーマーをのさばらす一因になったような気がする。

 経営者側も、穏便に処理したいという思いが強く、従業員に謝罪させて収めようとする傾向が強いが、そうではなくて、カスハラやクレーマーから従業員を守るという発想をもって対策を講じてほしい。

 国も、こういう輩(やから)には警察に連絡したら現行犯で逮捕できるようなカスハラ防止法(仮称)などの法整備をして、法律で厳しく取り締まってほしいところだ。