●64歳11か月で退職すると得?

 高年齢者雇用安定法が改正されてから、再雇用も含めて、実質の定年が65歳まで延長された。

 年金の受給年齢に合わせて、企業の規模に関わらず定着してきたといえる。(余談だが、さらに国は、努力義務だが、70歳までの就労機会の確保を推奨している。)

 

 そんな中、64歳と11か月(厳密いうと65歳の誕生日の前々日まで(前日ではないことに注意))で定年退職した高齢者を散見してきた。

 雇用保険法に詳しい人ならすぐ理解できるが、一般の人にはわかりにくいところだ。本人たちも、単に基本手当第28話参照)が多くもらえると会社から勧められたので、それに応じたと淡々と話していた。

 

 

(少しややこしいが)簡単に説明すると・・・

退職したときに受給できる基本手当は 例えば、20年以上勤務した場合

・65歳の誕生日の前々日までに退職した場合:150日分

(ただし、その後受給期間中は、4週間に2回求職活動しなければならない

・65歳の誕生日の前日以降に退職した場合 : 50日分

(ただし、高年齢求職者給付金として一時金で支給される。求職活動は不要

 

100日分の差が出る。例えば、基本手当の日額が6000円だと仮定すると、たった1日の退職日の違いで、もらえる金額が60万円くらい変わってくる計算になる。

 しかも、もともと雇用保険に関わる給付金は非課税の上、年金との調整も、受給する時には65歳を過ぎているので調整対象外となり両方、満額もらえるのである。(65歳未満の場合、基本手当と年金は併給されず、どちらかが停止される)

 

ちょっとした裏技である

 

 ただし、こうした対応が取れるのは、ほとんどが中小企業で、大企業は就業規則等で厳密に決められており、こうした法の隙間をねらうようなことは認めないことが多いので、65歳になってからでないと定年退職扱いをしてもらえない場合がある。もし、無理して64歳11か月で退職しても、退職金に影響したり、自己都合退職の扱いとなり給付制限期間が設定される可能性がある。

 また、65歳以降働く気のない人には問題はないが、65歳以降も働きたい人にとっては、就職してしまうと基本手当が満額もらえない可能性があるなど、注意する点も多い。

 

 お勧めはしないが、知っておいて損はない知識である。

 見方を変えると、こうした対応をしてくれる中小企業の社長さんは、退職金の上積み分の代わりとして配慮してくれているのではないかと考えると、別の意味で社員思いかもしれない。