●多かった苦情
前回(第43話)は、あまり関わりたくないような来所者について、かなり厳しめに書かせてもらったが、逆に、ハローワークの相談員の対応にも、時々、来所者から苦情がよせられた。
来所者は苦情があっても、面談中に相談員に直接言う方は少数で、ほとんどはその時は何も言わずに、後で電話でハローワークに苦情が入ることが多かった。
苦情が入ると、必ず統括責任者に報告され、事実関係を確認し、こちらに問題がある場合は注意をうけることもあったし、所内で注意喚起の通達が回り、苦情情報を共有するようにしていた。
多かった苦情としては、ほとんどが相談員の言い方がきつかったり、対応が冷淡だったり、相談者のプライドを傷つける発言があったということについてである。
具体的には
・「声が小さいですね。もっと大きな声で、はっきり言わないと損をしますよ。」
「その話し方だと、面接で言いたいことが伝わらないわ。」など、日頃から自分でも気にしていることをズバリ言われて傷ついた。
・自分が年下からか、相談員からいきなりタメ口で話しかけられた。
・わからないので相談員に確認すると「そんなこと当然でしょ!」とわかりきったことを聞くなという態度で言われた。
・応募できるところはないかと相談すると、「74歳で仕事なんてあるわけない」冷たくと言われた。
・自選した求人の紹介状の発行を依頼したら、「ここでは採用は難しいので考え直したらどうか」と言われたが、難しいのは承知で応募しようとしている。応募する前から悲観的なことを言わないで欲しい。
・こっちはパワハラやリストラされて落ち込んでいるのに、後方で職員同士が談笑をしていた。
・こっちは仕事が見つからず、切羽詰まっているのに、「そんないい条件の仕事はありません」と、事務的に冷たく言われた。 などなど
●カウンセリングの難しさ
かくいう私も、この仕事を始めたころ、まだ不慣れもあって、離婚問題を抱え大変な時になかなか決断できない女性に対して、「迷ってばかりいないで早く仕事をみつけましょう!」と、きつめの言葉を発して「もういいです!」と言って、椅子を蹴って離窓されたことがあった。
要は、言葉と言い方である。同じ主旨のことを言っても、言葉と言い方によって印象は大きく変わる。人によって受け取り方も千差万別であり、カウンセリングの難しさでもある。
本人のためと思って言ったつもりで、たとえそれが事実であっても、相談者の気持ちに寄添えず、心象を害してしまっては、元も子もない。職業相談員も自戒しなければならない。
もし、「あの相談員は苦手、反りが合わない」と思ったら、担当者制のあるハローワークならそれを利用するものいいし、それができないなら、窓口で苦手な相談員にあたらないよう調整はできるので、総合窓口等で遠慮なく申し入れてほしい。優先すべきは、来所者が気持ちよく仕事を探すことである。