●スタンプラリー状態

 ハローワークの職業相談窓口には、生活保護受給者が頻繁に来られる。生活保護費を受給する際、就労可能と判断された場合(概ね健康で70歳未満)は、求職活動をして就労意欲があることを示さないといけないという条件がある。

 通常は自己検索機(パソコンコーナー)で求人を検索し、応募したい求人があればそのまま応募し、なければ窓口で就職活動をした証として、職業相談票に「日付印」と「職業相談印」と、応募した場合は応募先の企業名、応募しない場合は「希望求人なし」印を押してもらうのである。(一種のスタンプラリー状態となる)

 

●就労意欲はあります?

 ただ正直なところ、就労意欲の高い人はごく少数であり、ほとんどの人は求職活動のしたふり」をして「希望求人なし」の捺印をもらって帰るのが現実である。

 

 

 そんな中、私は就労意欲がありますとアピールしてくるおじさんがいる。毎回自分で検索した求人票を数枚持参し、「この求人は・・・という理由で応募できません」と一つ一つ応募しない理由、あるいは、応募できない理由を丁寧に説明してくれるのである。

 

 ただ、確認すると、この数年間一度も応募をしたことがない。初めから応募する意思はないと推察されるが、一応、話は黙って聞くようにしていた。そして最後に「捺印をお願いします」と言って帰っていくのである。ほかの受給者に比べたら丁寧に活動するのだが、やはり、働けるのなら積極的に応募をしてほしいところである。

 

●染みつくともう手遅れ

 こうした経験から、職業相談員をやってきて、身に染みついた言葉がある。(生活保護受給者を「馬」に例えるのは失礼だが)

「人は、馬を水飲み場に連れていくことはできても、馬に水を飲ませることはできない。」

 

 生活保護の生活は、染みつく前に支援の手を差し伸べなければならない。地元の地方自治体の生活支援窓口とハローワークなどが連携して支援しており、それで脱却した人もおられるが、既に生活保護の生活が染みついてしまった場合、就労可能であっても、このまま社会との関係を避け、倹約生活で人生を終えたい人がほとんどとなる。そうなると、いくら仕事を紹介しても本人に働く気がないのでどうしようもない。

 

 120兆円を超えた社会保障費や200万人を超えた生活保護受給者が、これからの高齢化社会を迎え、どう推移するのか不安になってくる。