● 声優になりたい! ◇23歳男性◇
(今回の話は、ハローワークの相談窓口での話ではなく、これ以前にIT企業の人事部で勤務していた頃の話です。ちょうど、キャリアコンサルタント技能士の資格取得にむけ学校に通っていました。)
当時の職業柄、人材派遣会社の営業からよくセールスの訪問をうけた。
そんな中、20歳代前半の若い営業マンが売り込みにきた。一通りの人材サービスのセールストークを聞き、商談は終わったのだが、ちょうどキャリアコンサルタント技能士の資格を目指していたので、本人には申し訳ないが、キャリアコンサルティングの練習台になってもらおうと、いろいろ話かけてみた。
どうしてこの仕事を選んだのか? 今の仕事に満足しているか? これからのキャリアアップや目標はなにかあるのか?など、いろいろ聞いていくうちに「実は・・・」と話し始めてくれたのである。
本当は声優になりたかったのだが、親に猛反対され、大学を卒業して今の仕事に就いた。自分自身も、声優で食べていけるのはごくひと握りで、ほとんどの人が「夢」破れてほかの道に転職していることもよく知っているので、親の言うことも もっともだと思いあきらめたとのこと。
そこで、私から
「なるほど、今の仕事にやりがいを感じてきたのならこのまま続けてもいいし・・・。でも、よく言うじゃない、なにもやらないまま後悔するよりも、やって失敗して後悔するほうがいいって。若いからやり直しはきくし、自分の選んだ道なので、後悔のないようにだけはしておいた方がいいよ。
ただ、どこかの社長が言っていたけど、『夢にも期限を設ける』ことも大切だけれどね。」 というようなことを話してその場は別れた。
その後2週間くらいして、同じ会社の別の担当者から連絡があり、担当替えのあいさつに来たいとのこと。
私 「前任の○○さんはどうされたんですか?」
後任担当者「実は、先日退職しました。」
私 「えっ、なにかあったんですか?」
後任担当者「それがよくわからないです。いきなり辞めたいと言い出しまして・・・。理由も言わないものですから。まだ入社して3ケ月しか経っていなかったので、こちらも戸惑っているんです。」
私 「あっ・・・ そうですか・・・」 そ知らぬ顔で 「どうしたんでしょうね・・・」
もちろん本当の理由はわからないのだが、本人とそんな話があったということは口が裂けても言えない。ただ、別れ際の本人のスッキリした顔を思い出すと、かなり影響を与えたような気がする。
キャリコンの練習台にして余計な事を言ってしまい、本当にこれでよかったのかなと半分申し訳ない気持ちになってしまった。(その後、おかげさまで資格は無事取得できました。)
今となっては なつかしい思い出である。彼は今頃どうしているのだろうか・・・・
