「君のアイディアのおかげで最高のデザインが決まったね!終電間に合わなくなるから、あとは片づけとくからはよ帰り」
社長から初めて仕事でほめられた。
ウルッときそうになったあたしにダメ押しのひと言。
「いつも根性あるなと思ってる、だから期待しすぎてしまう。活かしきれんかってごめんな。マルキューに入れる話し、覚えてるで、ここからはボクがんばるから」
その商品は、あたしがこの会社に入ってはじめて飛ばしたヒットとなった。そしてそれは過去のヒットアイテムの記録を塗り替えたのだった。
あたしは初めて、この会社の一員になれた気がした。
あたしには夢があるんだもの。
その言葉を久しぶりに口に出していってみた。
ほんの1mmかもしれないけど、あたしはそこに近付けた気がした。
あの夜、運命は変わった。
あたしのデザインした商品が、マルキューのなかにあるセレクトショップに置かれたのだ。
一気にショップを持つのは難しいけど、とにもかくにもマルキューに自分の商品が置かれるという夢を、あたしはかなえた。
お客さんのふりをしてそのショップにいった。
「ねえねえ知ってる?あなたが手に取ったその服ね、あたしがデザインしたんだよ」
もしも今そう言ったらどうなるだろうか。
残念ながらレジに出されるところは目撃出来なかったけど、自分のデザインした服がそこにある、そして手に取られる、それだけでしあわせだった。
社長の営業のたまものだった。
「おめでとう!」
「社長のおかげです、それにこれはみんなで決めたデザインです、あたしだけのチカラじゃ・・・」
「いやいや・・・君の熱意がみんなに伝わったんだよ。君じゃなかったらボクもここまでやれなかった」
社長は改めて打ち上げを開いてくれた。
その帰り道、あたしはパターンナー君に呼びとめられる。
「ちょっと時間ある?」
(つづく)
あゆみです
「夢をかなえる」
明日は22時にお届けしたいと思います。
最初から読みたい人はこちらを見てね。
夢をかなえる『プロローグ』
夢をかなえる『失業』
夢をかなえる『全滅』
夢をかなえる『希望』
夢をかなえる『満開』
夢をかなえる『決意』
夢をかなえる『暴力』
夢をかなえる『終電』
夢をかなえる『復興』
夢をかなえる『過去』
夢をかなえる『動揺』
夢をかなえる『沈黙』
夢をかなえる『変化』
読んでくれてありがとう、またね