☆タバコ、アルコール、カフェインと流産の関係:MR解析 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、タバコ、アルコール、カフェインと流産の関係に関するメンデルランダム化解析(MR)です。

 

Fertil Steril 2021; 116: 1061(スエーデン)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.05.103

要約:UK BiobankFinnGen consortiumのデータベースを用いて、メンデルランダム化解析(MR)を行いました。流産群と非流産群は、それぞれ、前者で60,565名と130,687名、後者で3,312名と64,578名でした。MR-EggerモデルとMR-PRESSOモデルを用いて検討しました。流産とタバコに有意な関連(オッズ比1.31、CI 1.25〜1.37)を認めましたが、アルコール、カフェインとの関連は認めませんでした。

 

解説:タバコ、アルコール、カフェインと流産の関係については、賛否両論あり結論が得られていませんでした。本論文は、タバコ、アルコール、カフェインと流産の関係に関するメンデルランダム化解析(MR)を実施したものであり、タバコとの因果関係を認めますが、アルコール、カフェインとの関連は認めなかったことを示しています。

 

メンデルランダム化解析(MR):遺伝子多型は環境要因の影響を受けずに、無作為に子孫に配分される「メンデルの独立の法則」に従っているため、遺伝子多型を用いてランダム化しようというものです。形質との関連に交絡要因を含まないことや逆の因果関係を持たないことから、遺伝子多型を操作変数として形質に影響を及ぼす因子との関連を推定できると考えられます。観察研究は、交絡因子やセレクションバイアス、報告バイアスなどの目的とする関連に影響を及ぼす要因が含まれる場合があるのに加え、因果関係についても推論するには十分なものではないことから、これに変わる手法として近年MR解析が注目されています。

 

タバコ(喫煙)については、下記の記事を参照してください。

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2013.8.5「禁煙セラピー」
2013.7.17「☆タバコは胚の分割速度を遅くする」

2013.6.10「☆PM2.5で卵子が少なくなる?

2013.3.20「タバコで子宮外妊娠の確率が増加」
2013.3.4「タバコの影響:疾病死亡率」
2013.1.11「タバコの影響:女の子が生まれると…」

2013.1.5「☆タバコの影響:学会のオフィシャルコメント

2012.9.26「☆タバコの影響:卵子

2012.9.25「☆タバコの影響:精子

 

アルコール、カフェインについては、下記の記事を参照してください。

2020.6.21「☆男性のアルコール摂取は妊孕性とは無関係?

2019.10.21「☆EARTHスタディーのまとめ

2019.8.7「☆アルコール摂取と妊娠の関係

2019.8.4「☆コーヒー摂取と妊娠の関係

2018.10.5「カフェイン、アルコール、タバコが体外受精の妊娠成績に与える影響

2017.9.5「アルコールとカフェイン摂取について

2013.10.29「☆自然妊娠を目指す場合のポイント:米国生殖医学会公式見解

2013.7.16「☆☆☆ライフスタイルと妊娠 改訂版

2013.3.2「☆妊娠を目指している方のカフェインは?

2013.2.25「☆妊娠を目指している方のアルコールは?

2012.11.14「☆☆☆ライフスタイルと妊娠