Q&A3098 妻36歳、妊娠10週完全流産 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻36歳、PCOS、夫43歳、若干運動率など悪いですが自然妊娠可能なレベル、夫婦染色体異常なし、胚盤胞凍結11個あり


2020年10月 妊娠10週完全流産(顕微授精)

7週当たりで膣部分が熱を持ったようにかゆくなり、感染症などの検査をするもいずれも陰性。出血もありました(7 週目くらいにダクチルや点滴を打ちました)。9週3日で突然お腹が痛くなり出血しました(思い当たる節としては満員電車中、誰からも声をかけてもらえず、無理をしたのかもしれないと今思い出すとすごく辛いです)。完全に子宮内容物が出てしまいました。今でも蕁麻疹と円形脱毛症に悩まされており、皮膚科にも受診しています。

 

日本の不妊治療の限界にもはや到達していると思っています。なぜ子育てと強くいう前に不妊治療にかかるお金を強いるのでしょうか。本当に頑張っている人が報われないなんて絶対におかしいと感じております。諦めてご夫婦で過ごされている方も何人も知り合いにおります。自由診療がある限り、日本の少子化に歯止めはきかないのではないかと感じております。先生のお立場からどんどん発信してくださると大変うれしく思います。命を生み出す大変さは重々承知しています。

 

A 流産は心に極めて大きな負担がかかる出来事です。流産は肉親の死と同じレベルの悲しみであるとされています。流産回避には、まずその原因究明が大切です。本当は、流産胎児絨毛染色体検査が望ましいのですが、今回はできなかったものと推察します。従って、受精卵の要因は着床前診断(PGT-A)で、子宮側の要因は不育症検査で、できるところを全て潰していく以外にありません。ご自身を責めるメリットは何もありません。一方、不育症検査の問題点は、未だ確立したものではないため、様々な病院で様々な検査と治療が行われていることです。少なくとも不育症専門医の元での治療が望まれます。かゆみ、蕁麻疹、円形脱毛症はアレルギー反応のひとつとも考えられます。元のアレルギー反応はひとつのアレルゲンに対するものですが、同時に胎児も拒絶されてしまう可能性は否定できません。かゆみや蕁麻疹がない状態を維持しながら移植から妊娠中を過ごすのが良いでしょう(抗アレルギー薬を使用します)。

 

日本だけでなく海外でも、不妊治療や不育治療が必ずしも満足にできている訳ではありません。現在、日本の合計特殊出生率は1.34であり、189カ国中177位です。この数字は早晩滅びゆく国であることを示しています。本来なら、国として最重要課題として取り組むべき問題だと思いますので、発信していきたいと考えています。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。