Q&A2885 破水から19週で死産 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 昨年、炎症による前期破水の為、赤ちゃんを19週で亡くしました。体外受精の末に授かった子でした。

母体要因だったこともありまだ後悔と罪悪感でいっぱいですが、なんとか前を向いて不妊治療を再開しようと考えています。アドバイスをいただけると幸いです。

①細菌のバランスが崩れてしまったことが破水の原因かもしれないと思い、1ヶ月程前からビオスリーを飲んでいます。少しお腹がゆるくなった様な気がするのですが、体質に合っていないのでしょうか。
② 次に妊娠できた時、同じことを繰り返さない為に取れる対策はありますか。仕事を続けていて気づかないうちに無理をしてしまったことも影響しているように感じているのですが、仕事は早めに休んだ方が良いのでしょうか。
③現在、凍結胚が2つあります。初期胚8G3と胚盤胞4BBです。通常であれば胚盤胞から移植するのだと思いますが、初期胚の方が生まれてくる子へのリスクが少ないという情報も目にします。どちらの胚から移植するのが良いでしょうか。

 

A 「細菌感染→絨毛膜羊膜炎→破水→陣痛」という流れだったものと推察します。

①ビオスリーは便秘にも下痢にも効果がある不思議な薬剤です。ビオスリーは腸管内の善玉菌を改善する可能性がありますが、膣内の細菌叢の改善になるかどうかはわかりません。現在の症状は、薬剤が合っていないかも知れませんので、ビオスリーは中止して、ラクトフェリン服用やラクトフローラ膣剤使用により膣内の細菌叢改善をお勧めします。

 細菌感染予防策が鍵だと思います。①の対策に加えて、Nugentスコア(産科外来で実施)による膣炎の状態の把握、細菌性膣症の予防的治療(黄体ホルモン療法やメトロニダゾール)が重要です。仕事の有無は細菌感染とは関係ないと思います。

③胚盤胞からをお勧めします。

 

参考までに、細菌性腟症のNugentスコア(J Clin Microbiol 1991; 29: 297)を示します。
スコア   ラクトバシルス   ガルドネラ/バクテロイデス   他の桿菌
0        4+          0           0
1        3+          1+         1~2+
2        2+          2+         3~4+
3        1+          3+
4        0           4+
 

下記の記事を参照してください。

2020.6.26「Q&A2607 23週死産、CAOS

2020.6.4「Q&A2585 妊娠するたびに絨毛膜下血腫が出来ます

2020.4.11「Q&A2531 重度の子宮頸管無力症でしょうか?

2020.2.1「Q&A2461 20週で破水し死産、絨毛膜羊膜炎の予防法は?

2019.6.1「Q&A2214 2回連続してCAOSでした

2018.9.19「Q&A1956 絨毛膜下血腫、前期破水、16週死産

2017.8.15「Q&A1550 慢性早剥羊水過少症候群(CAOS)とは

2017.6.11「Q&A1484 17週と20週で流産

2017.3.5「嬉しい報告:細菌性腟症管理

2016.12.6「Q&A1296 原因不明の切迫早産

2016.8.10「Q&A1178 破水で出産1回、流産2回

2016.6.27「嬉しい報告:ついに我が子を授かりました

2015.9.15「Q&A820 次こそは生きた我が子を産みたいです

2015.8.14「Q&A787 ☆早産2回、次回への対策は?

2013.7.26「☆膣炎と不妊症の意外な関係

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。