Q&A2607 23週死産、CAOS | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妊娠治療歴3年以上


人工授精10回→1度も妊娠せず
採卵1回目→15個体外受精→胚盤胞0個
採卵2回目→12個顕微授精→胚盤胞4個→1回目の凍結胚盤胞移植で妊娠判定→移植2週間後〜ピンクや茶色のおりもの続く→心拍確認できず掻爬手術(2018年11月 35歳)
採卵3回目→12個顕微授精→胚盤胞2個→6回目の凍結胚移植で妊娠判定→23週3日で死産(2020年3月 37歳)

〈今回の妊娠経過〉
移植1週間後〜 ピンクおりものや、座薬(ルティナス)挿入時アプリケータに鮮血が付着
妊娠10w〜 出血量増 時々血のゼリーの塊のようなもの、強い下腹部痛
11w〜10日間 妊娠治療をした個人病院に管理入院
13w〜17w 生理中以上の出血と膜の塊が出て、再入院(入院中2回の大量出血、4-5cm俵型の血の塊、白い膜、頻繁に強い下腹部痛 エコー状は常に異常なし)
14w 辺縁前置胎盤の診断
16w 子宮口近くに2.5cm程の血腫(血腫確認はこの時のみ)→翌週目立たなくなったと言われる
〜19w 継続的に出血、時折血の塊
出血が治まるのと同時に破水始まる
19w6d〜ほぼ毎日 水のようなシャバシャバの液体が出るようになる(医師からは気にしなくてよいとのこと)
22w 破水検査陽性
   周産期医療の病院に入院 完全破水の診断
23w3d 分娩(癒着胎盤で1250ml出血、胎盤遺残)
現在経過観察中(遺残胎盤サイズ約2.5cm 血流低 1回の生理を見送って自然に出て来なければ、手術予定)

診断は、切迫流産、辺縁前置胎盤(23wで子宮口まで2〜3cm)、絨毛膜化血腫、絨毛膜羊膜炎、前期破水、慢性早剥羊水過少症候群(CAOS)、癒着胎盤、胎盤遺残
分娩時逆子で、首にへその緒が2重に巻き付いていたとのことでした。

これまでは妊娠がゴールで、妊娠判定後にこのような事が自分の身に起こるとは思ってもいませんでした。胎盤が低く、剥離傾向なのに一部は癒着していたなんて、妊娠以上に妊娠継続が課題や不安となりました。

①ひとつひとつが稀な症状のようですが、関連はあるのでしょうか。それともたまたま重なったのでしょうか
②これらの症状は、次の妊娠でも反復するリスクが高いでしょうか。対策できることはあるでしょうか
③妊娠中に感染症の検査、消毒などはできるのでしょうか
④癒着胎盤は分娩時まで診断がつかないのでしょうか
⑤CAOSになった場合、常位胎盤早期剥離にもなりやすいと思われますか
⑥胎児の首にへその緒が巻き付いていることは珍しくなく問題ないのでしょうか。エコーでは見えないでしょうか
⑦次回妊娠時も初期からピンクや茶色のおりものが続いたり、1度でも出血した場合、その時点で管理入院が望ましいでしょうか。
 

A CAOSであったものと考えられます。

①CAOSの一連の症状として納得できます。
②CAOSが反復することはあまりないと思います。
③妊娠中の感染は膣炎のNUGENTスコアで評価します。消毒は膣内のみが可能です。
④通常、癒着胎盤は分娩時まで診断がつきません。
⑤CAOSと常位胎盤早期剥離は全く異なる疾患と考えられていますが、CAOSでは胎盤が剥離します。
⑥胎児の首にへその緒が巻き付いていることは珍しくありません(胎児が回転すれば巻き付きます)。エコーでは見えることもありますが、胎児が逆回転すれば解消されますので、それを見つけることにあまり意味がありません。
⑦管理入院すれば全て予防できるわけではありませんんので、何が良いとは一概には言えません。

 

下記の記事を参照してください。

2019.6.1「Q&A2214 2回連続してCAOSでした

2018.9.19「Q&A1956 絨毛膜下血腫、前期破水、16週死産

2017.8.15「Q&A1550 慢性早剥羊水過少症候群(CAOS)とは

2017.6.11「Q&A1484 17週と20週で流産

2017.3.5「嬉しい報告:細菌性腟症管理

2016.12.6「Q&A1296 原因不明の切迫早産

2016.8.10「Q&A1178 破水で出産1回、流産2回

2016.6.27「嬉しい報告:ついに我が子を授かりました

2015.9.15「Q&A820 次こそは生きた我が子を産みたいです

2015.8.14「Q&A787 ☆早産2回、次回への対策は?

2013.7.26「☆膣炎と不妊症の意外な関係

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。