Q&A787 ☆早産2回、次回への対策は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 早産2回
①32週で子宮頸管22mmで入院しウテメリンをmax120で37週まで点滴
②20週で32mmとなりウテメリン内服4錠、自宅安静で37週まで過ごしました(12週健診で39mm、16週健診で33mm)。13週頃少しムリして出歩きお腹がかなり張ったのでそれで短縮したのかもしれません。
母もお腹が張る体質で、10週には張りを感じ、横になっていても2回3回とお腹が張っていました。薬がかなり効果があると感じたこともあまりありません。
この場合、3人目は2人目よりも早く切迫早産になる確率が高いのか、3人目こそ初期から完全に気をつけていれば1人目と同じ位の時期まで頑張れるのか。子宮頸管を縛るマクドナルド術はお腹が張る体質の私には効果的処置なのでしょうか。また、安静がなにより大切なのでしょうが、他に切迫早産予防に効果のあるものはあるのでしょうか。黄体ホルモンの注射の効果等も出産希望の病院ではしていないようなのですが気になります。

A 明らかに早産のハイリスクですので、3人目も同様であると考えます。このような場合の早産の予防について「産科ガイドライン2014」に記載してある内容を抜粋し解説致します。

CQ301 頚管無力症の取り扱いは?
予防的頚管縫縮術の治療効果に関しては、妊娠12週以降のなるべく早期に行なうのがよいとされていますが、早産率は低下する一方で感染率が増加するため、慎重な経過観察がよいか予防的頚管縫縮術がよいか明らかにされていません。また、頚管縫縮術には、マクドナルド法とシロッカー法がありますが、どちらが優れていると言うこともありません。安静の治療効果も明らかではありません。

黄体ホルモン療法(筋注、膣座薬)は、慎重な経過観察あるいは予防的頚管縫縮術の補助療法として有効性が期待されていますが、同意書を得てから実施するべき治療とされています。

CQ601 妊娠中の細菌性膣症の取り扱いは?
早産既往のある早産ハイリスク妊婦については、細菌性膣症検出のための検査を行なうことが推奨されます(Nugentスコア)。細菌性膣症は、乳酸桿菌(ラクトバシルス)が減少し、ガルドネラ、バクテロイデス、嫌気性菌、マイコプラズマ、他の桿菌などが増加し、正常細菌叢が崩れた状態ですが、半数は無症状です。炎症が起きていないため、膣炎ではなく膣症と言います。細菌性膣症と診断がついた場合には、早めに抗菌薬を用いた治療を行なうのが望ましいです(20週未満で治療開始で有効)。現在日本で保険適応の薬剤として、メトロニダゾール500mg1日2回7日間内服、メトロニダゾール250mg1日3回7日間内服、メトロニダゾール膣錠250mg1日1回7~10日間がありますが、外国ではクリンダマイシン300mg1日2回7日間内服もあります。

現実的な対応として、Nugentスコアを検査し、慎重な経過観察を行い、必要に応じて黄体ホルモン療法やメトロニダゾールを使用するのが良いと思います。

Nugentスコアについては、下記の記事を参照してください。
2013.7.26「☆膣炎と不妊症の意外な関係」