ゴルフ直線打法 -53ページ目

ダウンの左脚の動きを確認

「核心打法」(クラックス打法)については、「切り返しの動きで深いトップに入ることを確認した所から、体の正面で背骨を固定する意識で、一気にクラブを引き下ろせばよい」と簡単に書いてあります(「核心打法」とその仕組み(07-02-07))。今回は、この動きを妨げる意識について書いてみます。

この動きの実現には、左上腕の外旋(外側回し)が絶対に必要です。立って左腕を「魔法の動き」でトップの切り返しの位置に上げ、そこからこの動きを試して下さい。この左腕の動きを実行しようとすると、左の脚腰が踏ん張り、左足の内側が地面を右に押す体勢に入ります。

これがダウンの初期の重要な動きで、ダウンで腰が左に動くとこの左腕の動きは消えてしまいます。そこで、脚腰の動きを腕の動きの意識で引き出す必要があるのです。左腕が上手く動くように脚腰の動きを作ろうとしても、無限に多くの動きが現れて動きが決まりません。先ず腕の動きを意識し、この意識で脚腰の動きを引き出し、その内容を確認するのがよいのです。

これまで腰を左に動かす体重移動の意識が体に染みついている人の場合は、特にこの左腕の動きの意識で脚腰の動きを作り出す練習が必要になると思います。脚腰を忘れて、とにかくトップの切り返しが終わった位置から、「一気に縦にグリップを引き下ろす」練習をしてみて下さい。これを、「膝を引き込むような左の脚腰の踏ん張り」が現れるまで、素早く実行してみて下さい。

ダウンからインパクトの右脚の動き

前回インパクトの右腕の動きに対する、右手の握り方の影響を検討しましたから、今回はこれに対応する右脚の動きを検討してみます。先ず右の親指を人差し指に押しつけて固め、この指の固まりをヘッドのように意識して振ります。アドレスの構えから右手のグリップを右肩外側辺りまで引き上げ、そこからインパクトを目がけて右腕を振ってみます。

インパクトの位置で右手が止まったら、その時の右脚の体勢、特に右膝の形に注意し、もう一度右肩の高さまでグリップを戻し、今度は右脚の動きに注意しながらインパクトの位置を目指してグリップを振ります。これで右膝を内側に引き込むように右の脚腰が動くことが確認できます。左脚はこの動きに対抗するように踏ん張ります。

次ぎに右手の後ろ三本の指を内側に巻き込んで握り、右手のグリップを固めます。右肩外側辺りまで引き上げ、一気にグリップを引き下ろします。これでグリップはインパクトが終わる位置まで振られます。この時の右脚の体勢を確認して下さい。膝が固まって外側に引かれるように右の脚腰が踏ん張っている筈です。この動きを繰り返しながら、膝がどう動くかを確かめて下さい。

右脚が踏ん張って伸び、右足内側で地面(床)を右に押す動きが現れる筈です。この動きの中で尻から脚に掛けての緊張が感じられます。そこでもう一度右手の親指と人差し指でグリップを固め、右肩外側辺りまで引き上げたグリップをインパクトに向けて振ってみて下さい。右の脚腰の動きが全く違うことが分かります。右足が親指内側の拇指球で地面に繋がりながら踵が浮きます。

スイングの動きは、手、腕、肩、背骨、腰、脚、足の繋がりで生み出されます。地球に繋がる足が動きの原点になり、ここを通して体の動きに対する地球の反作用が入り、グリップに抜けるわけです。したがって、体の動きがしっかり地球に伝わるスイングの動きでなくては、クラブはしっかり振れない筈です。

大切なインパクトの脚腰の動きで見れば、右脚の動きに関する限り、今回の実験で後ろ三本指で握るグリップの方が遙かに強く地球を押すことが確認できました。当然、これに対応する左の脚腰の踏ん張りも、実験の途中で観察すれば同じような違いが確認できます。

このように動きの違いが分かると、他人のスイングを観察する時に、インパクトの右脚の動き、特に足と膝の動きに注意すれば、スイングの型(スタイル)の違いを見分けることができる筈です。これでゴルフの楽しみ方が広がります。

それはともかく、ここまで来たら、とにかく「核心打法」(クラックス打法)のダウンを試してみて下さい。バックから切り返しまでの動きは、これまで繰り返し見て来たように、背骨の動きが主体になります。これは椅子に腰を掛けて動きを作ってみれば分かります。これでスイングの全貌が明らかになったわけで、話も一休みする時期になりました。

右手の握り方の影響

前回右手の握り方によってスイングに影響がでることを書きましたが、今回はその影響をより具体的に見ることにします。初めに右手の親指と人差し指でアプローチ・ウェッヂを握り、ヘッドを軽く右上まで上げたところから、ボールを打つ動きを作ってみます。当然、インパクトでボールが目標方向に飛ぶように動きを作ります。

結局、フェースがインパクトで目標方向を向くように腕を動かす筈です。右腕だけを右から左へ振れば、自然に肘が内側に回ります。このままではボールが左へ飛ぶ動きになりますから、クラブを振ってフェースが目標方向に向いてインパクトするには、前腕を外側に回す動きを加える必要があります。

ボールを実際に打ってみれば、確かにこのような動きでボールが真っ直ぐ打てることが分かります(インパクトで右手の中指にも力を入れると、ヘッド外向きに回ってシャンクが出ます。注意が必要です)。結局、右手の親指と人差し指に力を入れてクラブを握り、この腕とクラブの体勢を保ってスイングを練習すると、自然にインパクトで右前腕を外側に回す動きが身につきます。

この動きはインパクトに入る時点でヘッドを右に回し、したがって打球方向と反対の方向に加速することになります。左への引っかけに苦労して来た人には救いになっても、少しでも飛ばしたい人には無駄な動きが加わることになります。それにヘッドが減速することから、安定なショットを得るにはデリケートな動きの調節が必要になります。

このことを確認するには、右手の後ろ三本の指を内側に回してクラブを握り、これを振ってボールを打ってみればよいのです。この右手のグリップでは、腕とクラブが一体化して、安心して振れます。実際に二通りのグリップの仕方でクラブを振り、ボールを打ってみれば、その違いに驚く筈です。後ろ三本の指で握れば全てが力強く、安定して振れます。

さて、なぜこれだけの違いが生まれるのか。これは腕と体を地球に結びつける脚腰の動きに違いが生まれるからです。「核心打法」(クラックス打法)では、既にこの脚腰の動きを極限まで有効に使っていますが、これも肩と腕の「魔法の動き」が生み出す、後ろ三本指による固いグリップが引き出しているとも考えられるのです。

次回は、この脚腰の動きに現れる、二つの典型的な型について検討してみましょう。

グリップは回転軸受けではない

二重振り子型のモデルの大きな問題点は、グリップを、腕を現す棒の先端にクラブという棒を繋いで回転させる、回転軸受けのように考えることです。実際のグリップの動きでは、ドアを開閉させる軸受け(ヒンジ)のように、手の平を背側に引いたり、内側方向に引いたりする動きが加わります。これは右腕を外側や内側に回してみればすぐ確認できます。

そこで右腕を軽く伸ばして下げ、手の平を開いたまま、腕を限度一杯外側に回したり内側に回したりしてみて下さい。自然に後ろ三本の指(中指、薬指、小指)が内側に引き込まれます。次ぎに親指と人差し指に力を入れて、この二本の指を固めます。そのまま、右腕を外側や内側に回してみて下さい。この時腕の回転の動きは強く制限されます。

さて、スイングの動きで右腕が回転できなかったらどうなるでしょう。バックスイングでも右肘が折れ難くなります。こうなると、右肘が深いトップで体から離れて上がることになります。昔からフライング・エルボウと呼ばれて来た動きです。これではダウンでグリップの加速が難しくなります。

これだけの検討でも分かるように、グリップの動きはスイングに決定的な影響を与えます。ホーガンが「モダン・ゴルフ」の最初に、「良いゴルフは、良いグリップから始まる」と書いていることの意味が、あらためて思い出されます。この重要なグリップを単純に軸受けのように捉え、クラブがこれを軸に自由に回転するなどと考えることの無謀さが分かります。

そこであらためて右手の後ろ三本指の動きに注目してみます。腕の回転的な動きがあれば、これらの指は自然に内側に引き込まれることは初めに確認した通りです。そこで、クラブをアドレスの構えに置いた体勢に右腕を下げ、ここで先ず後ろ三本の指を内側に握ります。この状態でグリップを右に引いてみます。グリップ・エンドが先に引かれる様な形で腕が固まって引かれます。

次ぎに、初めの構えで親指と人差し指に力を入れて固め、そこから腕を右に引いてみます。親指が先に引かれる形で腕が動きます。フェースが開く形の動きです。後ろ三本指で握った場合には、フェ-スが閉じる形の動きでした。これだけの結果から、右手のグリップのあり方一つで、スイングが全く変わることが簡単に理解できます。

後ろ三本指で握る場合には、トップへの動きで自然に右肘が曲がります。親指と人差し指で握った時の肘が高く上がる動きはありません。このように、要所要所に注目して腕と手の動きを捉えないかぎり、安定して強力なスイングの実現は不可能です。肩と腕の「魔法の動き」は、この難しい腕の動きを固めているのです。

機械的な見方と科学的な見方:続論

ゴルフの動きを科学的に捉えるとこうなる、という話はいろいろな所で見られます。ところがその多くは、スイングの中心とグリップを結ぶ直線の動きで腕の動きを捉えようとするものです。これは実際のスイングのヘッドの軌道が、常に回転的な動きを見せることから着想されるスイングのモデルです。

スイングの高速写真の撮影結果などを見ると、このモデルはごく自然で正しくスイングの特徴を表現するもののように思われます。ところが、一旦このモデルの見方にとらわれると、この一本の腕の先にあるグリップにクラブが繋がって振られるという、二重振り子型のモデルの操り方の解析がゴルフの動きの「科学的解析」であるという思い込みが発生します。

ここから生まれる結果は、スイングの中心の回りに回転する棒状の腕にエネルギーを与え、これを効果的にクラブ・ヘッドの加速に利用するという見方です。加えられるエネルギーの量は一定であることから、腕の回転はインパクトに入る所で終え、そのエネルギーをクラブ・ヘッドに移行するのが効果的であるという見方が生まれます。

これを一歩進めれば、インパクトで腕の長さを短縮させれば、腕に回転のエネルギーを加えなくても、ヘッドが更に加速されるという見方も生まれます。いずれにしても、これらの見方に共通しているのは、一本の腕の中心の回りの回転の動きを生むことが、ダウンスイングの体の動きの主な仕事であるということです。これを尤もだと思う人は多い筈です。

この見方に従う限り、インパクトではグリップが減速することになります。ところが、名手ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」では、インパクトで思い切り打てと書いています。右と左の手だけでは力が不足で、パワーを入れるには手が三つ欲しいと思うと言うのです。これはインパクトでグリップの加速が実際に行われていることを示します。

この違いはどこから生まれるのか。ここで両手をグリップの形に握り合わせ、グリップを右肩の位置まで引き上げ、ここから前回指摘した、「左右の肩甲骨の中間辺りの背中にスイングの中心がある」という意識で、ここを左に引いてみて下さい。これでグリップが右脇前まで引き下ろされたところで、右脚を踏ん張って地面(床)を押してみて下さい。

ここで左脚も踏ん張って地面を押せば、両腕が引き伸ばされて固まり、強く左へ引かれます。これは強力な腕の動きです。実際に、インパクト圏でパワーを手(グリップ)に加えて左へ引き抜く動きが得られるのです。二重振り子型のモデルで議論している人達は、このパワーの発生源の仕組みとその働きを無視しているのです。

「核心打法」は更に一歩を進め、体の反射的な動きを合理的に利用して、これらの複雑な動きをタイミングの問題をも含めて一気に実用化しているのです。

機械的な見方と科学的な見方

ゴルフの動きを「科学的」に捉えようとする試みは古くからあります。古い例では1958年に公表された英国ゴルフ協会の研究(Alastair Cochran & John Stobbs, Serach for the Perfect Swing, Triumph Books, 1999)、最近では物理学者ジョーゲンセンの著書があります(Theodore P. Jorgensen, The Physics of GOLF, 2nd edition, Sprinber, 1999. 生駒俊明監訳/藤井孝蔵・生駒孜子訳 ゴルフを科学する 丸善ブックス1996)。

これらの書物では、体の中心(スイングの中心)から伸びる一本の腕の先端にクラブが繋がって振られる、いわゆる二重振り子型のモデルを利用し、これを実際のスイングのクラブヘッドの軌道に当てはめて議論を展開しています。これは機械的なモデルによる説明ですが、科学的な議論とは言えません。検討結果が実際のスイングに結びついていないのです。

例えばジョーゲンセンの場合、深いトップの位置からインパクト時点までのヘッドの動きの写真記録にモデルを当てはめ、スイングの中心(両肩の中央付近)が、ほぼ一定速度で左に動くという結果を見出しています。実はこれではインパクト付近のヘッドの平坦な動きは再現できず、これはこの辺りでスイングの中心が上昇するためであろうと説明しています。

スイングの中心の左移動が、インパクト近辺での動き以外ではヘッドの実測データと良く合う結果を生んでいることから、スイングの中心の左への移動を重視しています。写真撮影のために実際にクラブを振った飛ばし屋プロが、この左移動でダウンの高いヘッド・スピードを生んでいることは疑いの余地はないと、ジョーゲンセンは言っています。

これらの説明を頭で理解するのは難しいけれども、スイング中心の左移動の効果を自分の体で確かめるのは簡単です。深いトップの位置に構えた所で、スイングの中心(両肩の中央付近)を左へ引くと言われれば、胸の上部の中心を左へ水平に引く気になります。この動きではヘッドが右に振り出され、これまで「二重振り子打法」(06-12-27)と呼んで来たまずい動きに入ります。

ところがここで、左右の肩甲骨の中間辺りの背中にスイングの中心があると考え、これを左へ引けば、グリップを引き下ろす動きが現れます。これは納得できるよい動きです。これで分かるように、「スイングの中心」が明確に定義されない限り、これを左へ引くと言われても実際の動きの作り方は決まらないのです。

その上、深いトップの位置からのダウンの動きの追跡からは、バックスイングの動きの議論は生まれません。実際のスイングではバックスイングが重要な動きで、これがダウンの動きの前提条件になるわけです。ジョーゲンセンの議論が実用から程遠いのは確かです。ゴルフの議論に単純な機械のイメージを当てはめるのは、危険が一杯なのです。

腕を伸ばすことの意味:再論

前回の「核心打法」で「直線打法」の動きはほぼ完全に固まりましたから、これからはあれこれの話題についてのんびり話を続けたいと思います。

インパクトの腕の使い方には大きく分けて二通りあり、ダウンで一旦腕を引き締めてクラブを体に引きつけ、そこから伸ばしてボールを打つ方法と、腕を引き伸ばし続けて最後にボールを打つ動きが現れるという打ち方の二通りがあることを以前に書きました(「腕を伸ばすことの意味」(07-01-29))。

この話では庭の楓の幹を竹刀で突いた少年時代の経験に触れました。一旦適当な構えを取り、そこから突きに入ると、届く筈の竹刀の先端が幹の手前1、2センチ程の所で止まるのに対して、準備の構えを取って突く意識を捨て、その場からスパッと突きに入ると簡単に幹に届いたという話です。

この話では、二通りの突きの動きで違いが生まれる原因は明らかではありませんでした。ところが、前回のダウンの脚腰の動きの話から、この違いを生む動きの構造の差が明確になったように見えます。

一旦構えて突きの動きに入る場合には腕の動きが主導的で、これに対して体のバランスを取る仕組みが体を後ろに引いいていたと思われます。一方その場からすっと突きに入る場合は、背骨を前に倒すようにして突き、このため体の動きが前回のダウンの引き下ろしの動きと同じ形になり、この動きを引き止める尻の動きが現れて両腕が伸びていたと考えられるのです。

この剣道の話には更に続きがあります。連日の練習を何年も重ねながら、形は良くてもすっきり勝てない状態が永く続いたのです。この頃は相手の隙を見つけて打ち込む、特に小手(前腕先端部)を狙って打つ状況が続いていました。ある日練習中に、優れた技を持つ上級生から、一打で止めずに続けて打てと言われたのです。

これを試すことで状況が一変しました。一気に打ち込めば相手の構えに隙が生まれ、真っ直ぐ面を打つことができるようになります。この場合の動作も突きの場合と同じで、一気に腕を伸ばして打ちます。これで相手の面の後ろに近い所を打つようになりました。この突っ込んでいく形の動きでは、矢張り上体が前に傾きます。

一つの動きと見えるものが、実は様々な時間関係で行ったり来たりする動きの合成で出来上がっているわけです。ある時スイングの動きに開眼するのは、このような動きの仕組みを経験する瞬間の現象のように見えます。ただし、簡単な思い付きの開眼は、翌日には「閉眼」します。体の動きは複雑で、単純な機械のように考えるのは無理なのです。

「核心打法」とその仕組み

前回は、ダウンの脚腰の動きの仕組みに気を取られ、細部の記述に入ってしまいました。しかし、前々回にも指摘したように、動きの細かな話はスイングの実行には直接役に立ちません。これまでにも触れているスイングの大局観(06-06-06)が大切で、その実用化として「背骨で上げ、脚でこらえて尻で振る」動きを確実にする仕組みだけを考えればよいのです。

前回、背骨の動きを脚を通じて地球に伝える腰腸筋の話が出ましたが、これには膝を曲げ外側に引く働きがあり、これらが働けば背骨が前に傾くように引かれます。前回重視したグリップの引き下ろしの動きには、この動きが利用できる筈です。

一方この動きに対して、尻(骨盤後背下部)を脚に繋ぐ筋群があり、背骨の前傾に対して逆らうように踏ん張ります。両腕を伸ばしてインパクトに入る動きを駆動するには、この筋群が踏ん張ればよさそうです。

これら二つの動きをダウンとインパクトのパワー源と考えれば、バックスイングの動きでこれらの筋群を引き伸ばし、ダウンで一気に引き締めるだけで、パワフルなスイングが実現できる筈です。これで「隠されたパワー源:腰から上でバック、尻でダウン」(06-06-05)の動きが実現します。

ダウンからインパクトの動きの作り方をこのように捉えると、肩と腕の「魔法の動き」を実現するような背骨の動きでバックスイングを実行し、脚腰がこの動きに逆らうことでエネルギーを蓄え、これを利用してダウンで一気に背骨を前に傾けるように引けば、これに逆らう尻の筋群の踏ん張りで両腕の引き伸ばしとこれに続く左への引き抜きが実現する筈です。

この仕組みの働き方が納得できれば、ダウンスイングの実行は極めて簡単になります。切り返しの動きで深いトップに入ることを確認したところから、体の正面で背骨を固定する意識で、一気にクラブを引き下ろせばよいのです。これで胸の上部の腕の振りの動きの中心(スイング・センター)が正面向きに固定され、方向性が確保されます。

このようにスイングで一番大切なダウンからインパクトの動きのイメージが単純になると、後はバックスイングの実行だけになります。これには脚腰の踏ん張りを保ち、肩と腕の「魔法の動き」を実現する背骨の動きでバックを実行し、切り返しの深いトップを確認すればよいわけです。「魔法の動き」のお陰で、動きは緩みなく実行できます。これにはこれまでの話も役に立つでしょう。

この打法を、簡単に「核心打法」と呼ぶことにします。核心は物事の中心で、英語ではcrux(クラックス)、その元の意味は十字架、固有名詞のCruxは南十字星で、縦の芯と横の芯が組み合わさった形になっています。今回の打法の中心は背骨の縦の芯の確立で、これで「直線打法」の横の芯が実現するわけで、イメージ的には「クラックス打法」でよいのではないでしょうか。

ダウンのグリップの引き下ろし

スイングのパワーの発生源は、地球を蹴飛ばす両脚の動きです。「ゴルファーは宇宙空間に漂う地球を蹴飛ばすことでクラブを振り、ボールを打っている」と考えれば、これは明らかです(参照:「体を動かさない方が飛ぶ?」07-01-27))。ホーガンの「モダン・ゴルフ」のダウンスイングの説明には、この点の指摘がありません。

「モダン・ゴルフ」以外の普通のゴルフのレッスン書にも、この点の記述は殆ど見かけません。これでは脚の動きの使い方が正しく捉えられる筈がありません。

ところで、「左腕は左右、右腕は前後」という「革命的イメージ」から、スイングが左右の動きと上下の動きで出来ていることが分かります。スイングのパワーの発揮には、これらの二方向の動きが必要で、腰の左右の動きを重視すると上下方向の動きの大切さが見えなくなります。

上下の動きについては、地球の上に立って生活する人間の場合、背骨を立てて支える脚腰の動きの仕組みは強力かつ完全で、これは日常の歩行動作でも活躍している筈です。こう考えると、この体の仕組みについて調べる気になります。

体の仕組みを知っている人は、ここで大腰筋を思い浮かべる筈です。これは、一頃テレビの高齢者の歩行訓練の話などでしばしば取り上げられた筋で、背骨の下部を大腿骨上部内側に繋ぐものです。骨盤上部の前側を大腿骨上部内側に繋ぐ腸骨筋と合わせて腸腰筋と呼ばれ、膝を引き上げたり(屈曲)、外側に引き出したり(外旋)の動きをします。

この構造から、腸腰筋が脚を通して背骨の動きを地球に繋ぐことが想像できます。両手でグリップの形を作り、深いトップの体勢からグリップを引き下ろすと、確かに両膝を引き上げる動きと外側に開く動きが現れます。この動きでグリップが右肘の高さまで下がった所で、更に両膝を外側に開くように両脚を踏ん張る動きを加えると、両腕が引き伸ばされて左へ引き抜かれます。

両膝の引き上げと外への踏ん張りでグリップの引き下ろしが終わる段階で両足を地面に固定し、そこから、これまで繰り返し登場して来た、尻の先端を右に引き戻す動きで両脚を踏ん張れば、両腕が伸びて左へ引き抜かれます。この動きでは胸の上部前面の両腕の振りの動きの中心(スイング・センター)が固定される形で腕の振りが実現し、これでスイングの方向性が確保されます。

このように理解すると、グリップの引き下ろしの動きが、安定なスイングを生み出す鍵になることが分かります。ダウンでヘッドを右に振り出すようにグリップが動く打法では、縦の引き下ろしの動きは現れず、体が左に回って地球との結びつきが弱まり、スイングの安定確保が難しくなります。これも「自己責任」で確認してみて下さい。

「尻を右に引き戻す」インパクトの動き

肩と腕の「魔法の動き」で固めたグリップを体の動きで引いてみると、スイングの主要な動きが、1)右へのテークバック、2)トップへの引き上げ、3)切り返しの方向転換、4)グリップの引き下ろし、5)インパクトの左への引き抜き、に大別されることが分かります。この動きでは、トップからの切り返しで左足に体重が掛かります。

ここからは、グリップの引き下ろしで腰が元の位置に戻ります。したがって、体重移動のために大きく腰を左へ進める必要はないのです。ただし、このグリップの引き下ろしの動作は意識して実行するもので、これなしに腰を左に動かすと、グリップが下りる間に腰が左に回ってしまいます。

ダウンをグリップの引き下ろしの動作で実行すれば、残る問題はインパクトの動きの実現法です。これは両腕を引き伸ばして左へ引き抜く動きで、この動きを実現する腰の動きを一言で表現すれば、固まった両膝を軸にして「尻を右に引き戻す」動きになります。これで両腕両脚が伸びて固まり、両腕が左へ引き抜かれます。試してみれば納得できます。

「尻を右に引き戻す」動きでは、ダウンで一旦左の脚腰の体勢を固定し、その体勢から尻を右方向に回す形の動きで両腕を引き伸ばし、左へ引き抜く動きを実行します。このようにダウンとインパクトの腰の動きを捉えると、グリップの引き下ろしの動きとこれに続く両腕の引き伸ばしという形でインパクトの動きが明確に捉えられます。

このダウンからインパクトの動きについては以前に詳しく書いてあります(「尻の先端を右に引く」動きを捉える(07-01-03))。そこでは、ダウンに入る時から「尻を右に引き戻す」動きに入るとしていますが、これよりはダウンで腰を元の位置に引き戻して固定し、インパクトの引き抜きを「尻を右に引き戻す」動きで実行するとした方が、動きの内容が明瞭になります。

これでホーガンが重視したダウンの動きの構造を、自分の体の動きで確認することができます。各部の動きをこのように詳しく捉えると、スイングの動きが納得できて気分が明るくなりますが、ここで注意が必要です。細部の動きの寄せ集めに気を取られ、脚腰背骨の動きを通じて地球に体を結びつける、腕と体の動きの仕組みが見えなく危険があるのです。

これでは「木を見て山を見ず」の誤りに陥ってしまいます。問題なのは、面倒な体の仕組みの話を避けて動きの体感的理解に頼る中に、パワーの発生源の働きが見えなくなることです。これまでの話で固めて来た、肩と腕の「魔法の動き」で動きの曖昧さを消し、この肩と腕の仕組みを脚腰背骨の動きに繋げてスイングの動きを作るという「王道」に立ち返る必要があるのです。