ゴルフ直線打法 -34ページ目

左脚でバック、右脚でヒット:詳論

肩を上げなくては腕が力強く振れないことと、これと「左脚でバック、右脚でヒット」との関係は既に確認してあります(腹筋は肩を引き下げ背筋は肩を上げる(07-11-08))。しかしそこでの話は動きの構造を説明するだけで、実際のスイングでの時間的な動きを捉えるダイナミックなものではありません。

今回は、脚と肩の繋がりに注目して、実際に動きを作る時の時間的な順序、すなわちタイミングの感覚を含めてより具体的に確認してみます。ここで基本的なことは、肩を上げるのは反対側の脚腰の踏ん張りである、ということです。これはこれまで腕と脚の間の「交叉連結」として捉えて来たものです(腕と脚の交叉連結(「魔法型」)(07-07-13))。

右腕でクラブを引き上げようとすると、左の脚腰が踏ん張ることは既に確認してありますが、これは実際に試してみればすぐ分かります。この動きは右肩を引き上げる動きが生み出すものですが、右脚の踏ん張りでは右肩は僅かしか上がりません。これに対して左脚で踏ん張れば右肩は大きく上がります。

当然、左肩と右脚の間にも同じような関係があることは予想できます。バックの左脚の踏ん張りでは左肩は僅かにしか上がりませんが、右脚の踏ん張りが加わると左肩が上がって左腕がしっかりトップの位置にまで上がります。しかし、この体勢からはダウンに入れません。そこで一段と右脚の踏ん張りを強めると、右肩が僅かに後ろに引かれ左肩が前に引き出されます。

これが「深いトップ」の体勢です。ここからは右脚の踏ん張りで左肩が上がり、同時に左脚も踏ん張って右肩も上がります。これでダウンの体勢に入り両脚の踏ん張りで一気にグリップが右脇前に引き下ろされます。

この動きの限界で更に両肩が引き上げられ両腕が伸びると共にグリップが左に引き抜かれます。このようにダウンでは両脚共に踏ん張って両肩を引き上げ、両腕を振り抜きます。これで、「右脚でヒット」の実態は、両脚の踏ん張りで、「深いトップ」への動きを通じて、両肩の引き上げによる強力なダウンとこれに直結するインパクトを実現する動作であることが分かります。

この意味では、「深いトップ」への動きはまさしくダウンの初期動作であり、これに続くダウンの動きはインパクトの初期動作ということになります。これを駆動する意識が「右脚でヒット」の感覚を生んでいるわけです。これでこれらの動きの時間的な関係、すなわちトップからダウンへのタイミングを生むものが明らかになります。

これまでトップの切り返しの動きについて、さまざまな名手による名言がありますが、「深いトップ」への動きの構造を明確に表現したものは見当たりません。今回の話では、トップの切り返しの動きを生む肩を上げる動きと脚の動きの繋がりが、力の発揮の時間的関係を含めて明瞭になったわけです。

ヘッドを引っ張る腕の肩が上がる

最近の話で、スイングの肩と腕の動きが「魔法型」と「反魔法型」に二分されるのが明瞭になって来ました。この型の違いは、スイングを右腕主導で振るか、左腕主導で振るかによります。右腕主導の場合は「魔法型」、左腕主導の場合は「反魔法型」になります。もともと左が利き腕であったホーガンのスイングが「反魔法型」になったのは、この見方からは自然です。

左手でクラブを握り、ヘッドを右の遠くへ引くと腕が内側に回り肩が上がります。左腕主導のスイングのスタートではこの形になります。右手でクラブを握って肩を引き上げると、右腕が内側に回りヘッドが右に引かれます。「魔法の動き」では右肩が右上方向に引かれて右腕が内側に回り、左肩が前下方に引かれて左腕が外側に回ります。これで右腕主導のスイングに入ります。

スイングは左腕でリードするという教えはかなり支配的です。これは右利きの人が右利き用のクラブを振る場合には不自然な動きの教えです。ただし、腰を回して振れば左腕主導になります。

このことから、右利きの人が左腕に意識を置いて振ると、腰を回して振るスイングになることが分かります。体を回してクラブを振っていたキャディ-・スイング(モダン・ゴルフと言うけれど(07-10-15))の時代は、この形の左腕主導で振っていたわけです。

右腕主導のスイングは、長い間特別視されて来ました。その結果、日本でこれをはじめて導入した戸田藤一郎プロは、伝説の右手使いとして知られるようになりました。右腕主導の動きを採用した結果、ドライバーの飛距離が200ヤードから300ヤードに伸びたという話は前にも書きました(「魔法型」の左サイドの動きを確認(07-07-19))。

練習場で見ると左腕重視の「反魔法型」で振る人の方が圧倒的に多いように見えます。腰を回して「反魔法型」の動きで振るか、右腕主導の「核心打法」で飛ばすかについて、戸田藤一郎プロの実績はその優劣を雄弁に物語っていると思います。右腕をしっかり使う最近のトッププロの現代打法は、ホーガンの近代打法を遙かに超えているわけです。

この場合の問題は、右腕と左腕の両方を効果的に使うスイングの実現です。これには両脚の使い方が決め手になります。既に「左脚でバック、右脚でヒット」(07-11-06)で実用的な脚の使い方は提案してありますが、構造的にはこれらの脚の動きと肩の動きとの関係が問題になります。これがいわゆるタイミングの問題に関わります。これを次回に検討します。

ホーガンのスイングを解読する

腕の動きからスイングの構造を捉えることに慣れると、気になるのは「モダン・ゴルフ」に書かれたベン・ホーガンのスイングです。「モダン・ゴルフ」は、ホーガンの経験に基づいてスイングの構造を詳しく書いたもので、その影響の大きさを考えると、ホーガンのスイングの実態が大いに気になります。

一言で表現すれば、ホーガンのスイングは徹底的な「反魔法型」です。「反魔法の動き」というのは、「魔法の動き」の反対に、右腕を外側、左腕を内側に回す腕の動きです。当然これに伴う肩の動きもあります。

「反魔法型」では、バックのスタートでフェースを開く形の動きになります。脚腰の踏ん張りでグリップを右に引き続けると、いわゆるフラットな動きで低いトップに入ります。そのままの体勢で腰を左に引き戻すダウンの動きに入ると、「反魔法の動き」が継続して両肘が体側に添って引き戻されます。

この型の動きの最大の問題は、ここからのインパクトの動きです。そのまま引き続けると限界で腰が左に回り、この動きでヘッドが外向きに投げ出されてしまいます。これを防ぐためには、腰の回転の動きを足の「回転」の動きで受け、この足の動きで右前腕回内(内側回し)、左前腕回外(外側回し)の動きを引き出します。

この左前腕回外の動きはスピネーション(supination;回外)と呼ばれ、「モダン・ゴルフ」を有名にしたもので、ホーガンはその重要性を力説しています。スイングにおけるスピネーションの議論は関心を呼びましたが、回外、回内などの動きの利用は、1922年出版のセイモア・ダンのGOLF FUNDAMENTALSに、既に詳しく議論されています。

ホーガンはこの動きの重要性を詳しく議論し、回外する(supinate)代わりに回内する(pronate)と様々なエラーを生むと図入りで警告しています。しかし、この前腕の動きは腰の左回転を足の「回転」(07-06-09)の動きで受けることで生まれることを知れば、ごく自然な動きの中で実現することが分かりす。このためインパクトの動きは腰が左に向く過程で生まれます。

これでスイングの動きの構造が確定し、これに適したグリップがどのようなものかが決まります。グリップを先に決めるという「モダン・ゴルフ」の出発点は、足を通じて地球に繋がる脚の動きと、腕の動きの繋がりの関係が先であることを見落としています。これではスイングの議論は難しくなります。

ホーガンのスイングが「反魔法型」であることを始めに理解することで、「モダン・ゴルフ」の議論は解読できるのです。

腹筋は肩を引き下げ背筋は肩を上げる

椅子に座って膝に手を置き、腹に力を入れると、背骨が前に曲がって肩が下がるのが分かります。これに対して、背骨が反るように背筋に力を入れると、肩が上がります。

腰を回すと、これに引かれて腹が緊張し、肩を腰に引きつけるように背骨が動きます。これに対し、足腰の踏ん張りが生み出す、「上体を右に回す」動きでは、肩が引き上げられます。腹の緊張で肩を動かすか、背中の緊張で肩を動かすかで、肩が腰に近づいたり、遠ざかったりします。

日本にはいわゆる「腹の文化」があり、動きの中で腹の働きに重きが置かれています。これに対して、西欧の文化では脚の動きに重点があるように見えます。様々なスポーツの動きやダンスの動きでも、脚の動きが主役になります。日本の踊りでは、脚を静かに使って手先を振る動きが主役に見えます。当然腰や腹を捻る動きが現れます。

このように見ると、足腰の動きで背中の緊張を引き出し、肩を引き上げて広背筋をを引き伸ばし、この動きで腕を強く振るというゴルフの動きは、日本人には馴染みの少ない動きなのかも知れません。しかし一旦この仕組みの利用法が理解できれば、これを有効に使う方が有利です。

そこで、右腕に重くて短いクラブを握り、この背筋の使い方を体感的に捉えて試みます。右肩を引き上げてクラブを右に振ろうとしても、右腕に力が入りません。そこで左脚を踏ん張って、左肩を引き上げながら前内側に引き込む動きを作ってみます。これを受けて右脚が踏ん張り、これで右肩が後ろ上方に引かれ、右腕が固まって力強くクラブを右に引きます。肩と腕の「魔法の動き」が現れたのです。

ここで、クラブなしに両手をグリップの形に握り、この動きを実行してグリップが右肩外側に上がるまで左脚の踏ん張りを続けます。ここで右脚の踏ん張りを加えると、グリップが「深いトップ」に引き込まれて両肩が上がります。ここで更に右脚の踏ん張りを強めると左脚がこれを受けて踏ん張り、両肩が更に引き上げられてグリップが右脇前に引き下ろされます。、

その限界でグリップが左脇前まで直線的に引かれる動きが現れます。結局この左右の脚の動きが両肩を押し上げ、これが肩と腕の「魔法の動き」を通じてクラブを強力に振るわけです。

ここで注意すべき点は、この間に背骨の動きは意識されないことです。背骨はもともと神経系を含む体の安定保持の仕組みを支えているもので、その動きで力を出すわけではありません。背骨の動きでクラブを振ろうとするのは極めて危険です。簡単に障害を引き起こします。長続きのするゴルフのためには十分な注意が必要です。「背骨打法」は厳禁です。

このように見ると、「左脚でバック、右脚でヒット」(07-11-06)で実現する「核心打法」がパワフルなショットを生む理由が納得できます。

腕を振ってもクラブは振れない

「核心打法」の話は、これまでの議論でほぼ実用化が完成しましたから、これからはのんびり進みたいと思います。

かなり一般的なゴルファーの誤解は、腕を大きく振ればクラブが良く振れるという考え方だと思います。とくに若くて体の柔らかいゴルファーは、体が自由に動くこのでこの考えに引き込まれると思います。その結果腰を回して振ることになります。

両手の平を合わせて、これを限度一杯に大きく振ろうとしてみて下さい。柔軟体操をするように腰と上体を振り回して手を振る動きになります。この動きで手の平を一杯に右上方に振ると、左肩が前上方に引き上げられます。この形の動きは、日本で活躍する女子プロのスイングではかなり一般的のように見えます。これは右肩が上、左肩が下に引かれる「魔法の動き」の反対です。

活躍する女子プロの多くがこの「反魔法型」の動きで振るということは、「魔法の動き」に疑問を投げかけます。これは問題です。しかし、この大きく腕を振る動きではクラブは速く振れないのです。その理由はいろいろ説明できますが、まず反対の実例から見てみましょう。

最近のアメリカの女子プロで勝ちまくっているのは、今期7勝(07-10-14現在)を上げているオチョア(Lorena Ochoa)選手です。彼女のスイングの動画を見ると、バックの終期にしっかり右肩が上がります。ここから一気に急速なダウン、腰の正面が前向きに踏ん張る形でインパクトです。高い位置の右肩で腕を振り、体の右側で振り切ってインパクトという形になります。

欲目もあるかも知れませんが、脚の使い方にも「左脚でバック、右脚でヒット」(07-11-06)の雰囲気がよく現れています。今期7勝という統計的な証拠もあります。腰を回して振る動きを唯一の本物と考える必要はないのです。

ここで腰の回転で腕を大きく振り上げると、クラブを速く振る力が期待するほどは出ないという、大まかな理由を考えてみます。腕を大きく振り上げると、肩から腰の間の距離が大きくなります。この腕を引き下ろすと肩と腰の間隔が縮まります。これに対して、肩をバックの方向に押し上げる「上体を右に回す」背骨の動きでは、この間隔が伸びます。

腰の辺りから上腕前上部に繋がる広背筋は腕を振る主な筋ですが、これが伸びながら出す力の方が縮みながら出す力より大きいのです。「右脚でヒット」(07-11-06)は、これを効果的に利用する動きです。もちろん対応する左脚の動きもありますが、とにかく右脚で踏ん張り、肩を押し上げる動きでダウンすれば、一気にヒットで強力なインパクトの腕の引きが現れます。

直感と反対の動きが求める効果を生むわけですが、こうしてその理由(らしきもの)が分かれば、その正否を実験的に確かめることで、次第に合理的な動きに体が馴染みます。

左脚でバック、右脚でヒット

「魔法の動き」で上げ「魔法の動き」で振る(07-11-05)と言っても、体力のある人には簡単に振れても、体力のない人には重いクラブは思うようには振れません。地球の上に立って腕でクラブを動かすには、必ずこれを支える脚の動きが必要です。

ところが、脚の使い方については、これまでこのブログであれこれ書いて来ていますが、バックとダウンでどうするかはどうもはっきりしていません。今回は、「「魔法の動き」で上げ「魔法の動き」で振る」動きを実行する際の、脚の使い方をはっきりさせたいと思います。

これまでの脚の使い方の話が混乱気味なのは、脚で具体的に何をするのかが明確でなかったためです。今回は「体の右側で振り切ってインパクト」(07-11-04)という具体的な内容に対応する、肩と腕の「魔法の動き」と脚の動きとの関係に絞って、実用的な結果を狙います。

バックでは、肩と腕の「魔法の動き」で支えられるクラブを、右上方向に引き上げます。この動きを体の重心を安定に保って実行するには、左脚で荷重を受ける必要があります。右脚で受けるとバックのスタートが安定に実行できません。これについては「左の脚腰の踏ん張り再検討」(07-08-20)でも議論してあります。

これで安心してバックが実行でき、しっかり「深いトップ」に入れることができます。ここからのダウンが次の問題です。「深いトップ」までの動きで当然荷重が右脚に掛かっています。この状態から、一気に体の右側でクラブを振り切るには、荷重の掛かっている右脚の踏ん張りを使うしかありません。

この要領で、「魔法の動き」で上げられたクラブを、体の右側で振り切る動作が簡単に実行できるのです。しかしその動きの速さから、ダウンに続いてインパクトなどと考えている暇はありません。そこで一気にヒット(打つ)というわけです。

これはティモシー・ガルウエイが「インナーゴルフ」で提唱する、バック・ヒットという掛け声で打つという心理的な話とは違い、動きの作り方そのものです。これで「体の右側で振り切ってインパクト」というかなり高度の動きが、一挙に具体化します。「魔法の動き」の感覚を確かめてから、この「左脚でバック、右脚でヒット」を試してみて下さい。

この「右脚でヒット」の動きの更に深い構造的な説明は、次回に試みます。

目的意識:「魔法の動き」で上げ「魔法の動き」で振る

前回の話では(大転換:体の右側で振り切ってインパクト(07-11-04))、背骨の動きの仕組みと腕の振りの繋がりから、背骨を右に回し続けて振るスイングの合理性を示しました。しかし、この話を読んだ仲間からきつい反論が来ました。動きの作り方が納得し切れないというのです。

これは当然の反論です。腕を振るという意識で振らない限り、腕は思い切り振れません。そこで体の右側で振り切る動きの要点に注目すると、右腕を内側、左腕を外側に回す、肩と腕の「魔法の動き」を一貫して実現することに集約できることが分かります。

バックをこの魔法の動きで振り、継続する「魔法の動き」でダウンを振ると、体がこれに反応して「上体を右に回す」形に踏ん張って、腕が振り切られます。脚腰で体を左に向けて腕を振ろうとすると、肩と腕が「反魔法の動き」に入ってしまいます。これで肩と腕の緊張が消えてしまいます。

練習場で見ても、ダウンで「反魔法の動き」に入り、インパクトで左腕が曲がって腕を縮める動きで振る人がいます。体の左への回転を意識して振ると、この形になります。この形の体の動きでクラブを引っ張ろうという意識は、殆ど本能的に働きます。「魔法の動き」でダウンを振り抜くという意識を持てば、この本能的な動きを防ぐことができます。

こうなると、このブログの全ての話の出発点になった、肩と腕の「魔法の動き」がどのようなものであるかを、しっかり確認し直す必要があります。この動きは、右腕を内側に回す右肩の動きと、左腕を外側に回す左肩の動きが生み出します。

アドレスの構えで左の親指を右手の平で握り、両手をグリップの形に握り合わせてこの動きを実行すると、右肩が後ろに引き上げられ、左肩が前に引き下ろされてグリップが右に引かれます。この時腰骨(腰椎)が左に引かれて背骨が右に回ります。これ以降は前回に書いた「上体を右に回す」背骨の動きを加えない限りグリップは上がりません。この間「魔法の動き」が続きます。

背骨の動きでグリップが上がった所(トップ)からダウンに入るには、右肩を引き上げ、左肩を引き下ろす肩と腕の「魔法の動き」の実行でクラブを振ります。この時、足腰の動き(特に両足の「螺旋」の動き)の踏ん張りで「上体を右に回す」背骨の動きが現れて、腕を振り抜きます。

このスイングの動きの特徴は、足腰の動きが全て直接肩と腕の動きのために使われ、途中の準備動作のような無駄な動きがないことです。これで緩みのないスイングの動きが実現し、パワーの無駄な消費も発生しません。簡単な動きですから、肩と腕の「魔法の動き」を確実に実行し続けて腕を振り切る練習をしてみて下さい。

これでようやく実用的な「核心打法」の完成です。

大転換:体の右側で振り切ってインパクト

飛距離の出る「核心打法」で振ろうとすると、肩と腕の「魔法の動き」で腕を振る必要があります。この場合、肩からグリップまで固めた腕を振るには、「上体を右に回す」背骨の動きで振る以外に方法はありません。アドレスの構えから背骨を右に回す動きでグリップを右に引き、続いて背骨を右に引くとグリップが上がります。これで「トップ」に上がります。

ここから更に肩を右に引いて「深いトップ」に入れると、背骨が更に右に回ります。これが「上体を右に回す」動きです。この「深いトップ」への動きで腰骨(腰椎)左に引かれます。同じ腰骨の動きはバックのスタートにもありますが、脚腰はこれらの動きに踏ん張って堪えます。

この「深いトップ」に入れる動きをそのまま継続すると、右肩が後ろの上、左肩が右下に引かれる肩と腕の「魔法の動き」が現れます。この動きで右グリップが上側、左グリップが下側に回るオーバーハンド型の動きに入り、そのまま足腰背骨の踏ん張りで「上体を右に回す」動きを続けると、グリップが一気に引き下ろされて強力なインパクトの直線的な動きに入ります。

これでこれまで納得し難かった、背骨がバックの動きの方向に動きながらクラブを左に振るという、「核心打法」実用化の「躓き(つまずき)の石」が消えてなくなります。「核心打法」の実現には、「深いトップ」から左方向に向けて振るという意識を捨てて、「上体を右に回す」動きを継続して体の右側で腕を振り切ってしまえばよいのです。

この動きの感覚は、体の右側にある「スイング面」内でグリップを振り切る、というイメージを生みます。よく考えてみれば、スイングの動きは体の右側で終わり、残りはインパクト圏の直線的振り抜きだけです。体の左側では、もはや「スイング面」のイメージは不要です。このことからも体の右側の「スイング面」に添ってバックからダウンまでを振り切るイメージは自然です。

これは前にも触れたボビー・ジョーンズの名言「ゴルフにはボールを打ち上げる動作は一つもない」(決定打2:「螺旋」の動きでクラブを押し上げる!(07-10-08))によく対応します。実際にジョーンズのスイングの動画でも、体の右側で振り切っている様子が明瞭に感じられます。

この一方向の動きで腕を振る背骨の「上体を右に回す」動きは、脚腰の踏ん張りで腰骨(腰椎)を左に引き、背中(胸椎)を右に引いて胸椎を左回りに回し、首(頸椎)を左に引いて右に回します。ダウンで頭が左に回るとアンダーハンド型の「反魔法の動き」に入ります。「核心打法」の実現には、これは絶対に禁物です。頭が右向きに保たれてのダウンが必須です。

朝日新聞の記事(07-11-03)によれば、最近不調な宮里藍プロは「ドライバーは、トップの切り返しからインパクトまでのタイミングがつかめない」と悩みが深いとのことですが、上体を右に回す」背骨の動きで振れば、バックからインパクトまで背骨の動きの方向転換なしの連続的な動きになり、体の右側で振り切る事になります。これは快適なスイングです。

肩と腕の「魔法の動き」の徹底検証

腕のスイング面としての、「前面」と「後面」のイメージは、これまで明瞭でなかったクラブの動きと体の動きの繋がりを具体的な形で描き出しました。これらの動きを決定する肩と腕の動きの実態を眺めてみましょう。

体の前で左手の親指を右手の平でしっかり握り、アドレスの構えで両肘が張るように前に押し出して伸ばすと、両腕とグリップ(マジック・グリップ)が固まり「前面」型の体勢ができます。正面を向いたまま、このグリップを右に引くと、右肩が後ろ上方、左肩が前下方に動いて肩と腕が固まります。これが肩と腕の「魔法の動き」で、この動きを一貫して維持することで「核心打法」が出来上がります。

問題はこの動きの作り方です。これには右の脚腰の踏ん張りで右肩を引き上げ、左の脚腰の踏ん張りで左肩を右前に押し込む動きを使います。これで、右足と左足の「螺旋」の動きが「上体を右に回す」背骨の動きが生まれます。「前面」型の腕の振りは、この「上体を右に回す」動きを一貫して実行することで実現します。

これで分かるように、スイング中の肩と腕の「魔法の動き」は、アドレスで固めた肩と腕とグリップの構えと「上体を右に回す」背骨の動きが自然に生むもので、スイング中一貫して右グリップが上、左グリップが下の動きを保ちます。これがオーバーハンド型の右腕の動きとこれに対応する左腕の動きを生むわけです。

それでは「後面」型の動きはどうでしょうか。「前面」型の場合と同じように両手を握り合わせ、アドレスで両肘の間を狭めるように腕を伸ばすと、手の平の握りは伝統的なグリップの形になります(ただし、逆オーバーラップ型)。これで固めたグリップを両脚腰の踏ん張りで右に押すと、クラブのフェースが開く肩と腕の「反魔法型」の動きが現れます。

この動きでは左肩が前上方、右肩が後ろ下方に引かれます。これで、グリップを右一杯に押し切ってバック、左一杯に引き切ってインパクトからフィニッシュという、単純なイメージでスイングが実現します。腰の横方向の動きに伴う回転の動きが現れてクラブが振られます。

この腰の動きは骨盤の縦回転の動きで、以前にこれを利用するスイングをAB型スイングと呼んで、その実行法を検討したことがあります。グリップと腕を固めるアドレスの構えが決まれば、後は真っ直ぐバック、真っ直ぐダウン、という単純なイメージでスイングが実行でき、方向性も確保されます。しかし、飛距離の欲しい人は、「前面」型の「核心打法」を追求して下さい。

腕とグリップを固め、これに伴う肩の体勢を確定するのがこれらのスイングの要で、脚、腕、肩、グリップなどに緩みがあると絶望的です。これらのスイングでは腰を回して腕を振る意識は不要です。回転的な動きは直線的なヘッドの走りを作る過程で自然に発生するもので、腰を回して腕を振ると方向性の確保が難しくなります。

「スイング面」論争の終結?

これまで「スイング面」は、クラブの動きを示す平面という漠然としたイメージで捉えられて来ました。例外的なのはホーガンの肩に掛かる平面のイメージですが、これも体の動きとの繋がりは明瞭ではありません。

前々回(07-10-31)の話に登場した、腕の動きが描き出す面のイメージの場合は、イメージと実際の腕の動きとの対応がはっきりしています。そこで、これを腕の「スイング面」と呼ぶことにします。ホーガン型の動きの場合、腕の「スイング面」は腕の背面が描く面にになり、「核心打法」の場合は腕の前面が描く面になります。

これらの腕の「スイング面」を、簡単に「後面」、「前面」と呼ぶことにします(英語で言えばrear plane, frontal planeとでもなるでしょうか)。両手を伝統的なグリップの形に握り合わせ、前々回の要領で、腕の背面の緊張を保ちながら腕を軽く左右に振ってみます。すると、腕の背面が描く面として「後面」のイメージが生まれます。

次ぎに、クラブを下から支える形になる「マジック・グリップ」の形に両手を握り合わせ、両腕の前面が一つの面を描くように、体の動きで左右に振ってみます。この場合は、両腕の上腕と前腕の前面が一体化して、グリップが一つの面上を動く形の動きになります。

そこで、二つのイメージのそれぞれで、限度一杯に大きなスイングの動きを作ってみます。これで二つのスイングの特性の違いが明瞭になります。「後面」の意識で振る場合には、腕がバックで右に回り、ダウンでは左に回りながら、肘の部分が体の前で窪みのある面を描く(あるいは溝の中を滑る)感覚で腕が振られます。

これに対して、「前面」のイメージで振る場合は動きの構造が簡単で、両腕の前面が同じ方向に向いたまま、左腕の前面が一つの平面を描くように動きます。この場合は、バックからダウンへの方向転換の過程をも含めて、フィニッシュに至るまで腕の前面が一つの平面に対面して走り続ける感覚の動きになります。構造的には極めて単純な動きです。確認してみて下さい。

ホーガン型の「後面」で振るスイングでは、肩が引き下げられてインパクト時点で前腕の裏返しが発生します。この動きでパワーと直線性を確保してインパクトを実行するには、腕を体の前で振るために腰の回転的な動きが必要になります。多くの人がこの型の動きで振っています。

この「後面」と「前面」のイメージは、具体的な体の動きでクラブの動きの面を生み出しますから、これで「モダン・ゴルフ」以来の「スイング面」を回る混乱が解消する筈です。これらの二つの「面」の実用化のために必要な、基本的な体の動きの構造を次回に議論します。