ゴルフ直線打法 -33ページ目

インパクトの動きの理解を回る混乱

久しぶりに音楽会に出かけました。スメタナの「モルドウ」、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第一番」、ドボルジャークの「新世界」という絢爛華麗な曲目で、弱っていた体力が幾分か恢復した感じです。この演奏会場で指揮者の動きに目を奪われました。実に見事な動きで、一見して広背筋の躍動を感じさせる肩の動きがありました。

微に入り細を穿つ(うがつ)感じの指揮棒の動きが、体全体の動きに繋がって生み出されます。しこもこれが、大きな背中の動きを通じて生み出されているのです。「核心打法」の完成を目指すゴルファーにとっては、音楽の中身以上のものをここで学んだ感じです。

今回はインパクトの動きを回る理解の混乱について書く予定でした。話の始めは、「完成版「核心打法」」(07-11-18)の、「“叩こう”が致命的となる」というケン・ベンチュリーの言葉でした。これは、「強く叩こうとしたら、例外なく、右手のリリース(アンコック)を早くし、パワーとコントロールをなくしてしまう」と言うものです。

これに続く「スイングを自然な勢いに任せて、インパクトでタイミング良く両手とクラブヘッドをリリースすれば、もっとよいショットになるだろう」いう言葉が、コックを固め続けて振るという「核心打法」の動きと矛盾するのが問題だったのです。

実はこの「リリース」という動きは、「リリースとは?」(07-06-30)や、それ以前の話で見て来たように、「反魔法型」の動きで腰の回転を使ってインパクトに入ると表れる現象です。右腕の外側回し、左腕の内側回しで固めている体とクラブの繋がりに、インパクトで右前腕回内、左前腕回外の動きを加えると、腕と背骨の繋がりが消えてグリップが振り出されます。

この左腕の動きでは、インパクトでヘッドを強く引けないことは、前回(07-11-20)に確認ずみです。ところが更に悪い解釈として、この動作で発生する「遠心力」が、クラブ・ヘッドを素早く振るという説明が所々に見掛けられます。確かにこの動きでアンコックが発生し、グリップ・エンドを引き込みます。しかしこれは半径の短い円周状の弱々しい動きになります。

更に危険な解釈は、ダウンの開始で腰の回転と同時にこの切り離しの動きに入る場合、腕が体から離れてクラブが自然に落下する形になります。腰の左への回転で落下地点を合わせれば、確かにボールは打てます。しかし、当然弱いボールの飛びになる筈です。

この動きではタイミングの問題が生まれ、熟練が要求されます。ベア・グラウンド(裸の地面)に置いたボールを打って、この打法と「核心打法」のインパクトの動きを比較してみて下さい。ごく小さな動きで試しても違いは分かる筈です。

どうも様々な迷信のように見えるものを、「反魔法型」の動きが生み出しているように見えます。それでは“叩く”という動きの問題は何か。これを次回に明らかにします。

直線的なインパクトの要は「マジック・グリップ」

インパクトの動きのイメ-ジを回る様々な議論の検討を進める前に、「核心打法」の決め手となる「マジック・グリップ」の性格を明瞭にして置くことにします。「マジック・グリップ」の捉え方としては、グリップの出す力を最大にする事を考えます。

この考え方からは、拳(こぶし)を握って突く動きを使えばよいことが分かります。これに従えば、クラブを片方の手で握り、ソールを地面に押しつける動きでグリップを固めればよいことが分かります。しかし片方の手だけでは十分な力は出ませんから、両手で同じ動きを確かめます。

この時左手の親指を右手の内側で押さえ、左の人差し指で右手の小指を押さえると、両手の動きが一体化し、これが両腕の動きを一体化させます。これで「マジック・グリップ」が出来上がります。ベースボール・グリップでは、この一体化ができません。

クラブをこのように一体化したグリップで握り、ヘッドを地面に押し当てて、ヘッドを両腕で左に真っ直ぐ押してみます。「上体を右に回す」動きが現れて、ヘッドが真っ直ぐ左へ押し出されます。グリップを背骨の動きに繋ぐ、肩と腕の「魔法の動き」が現れたのです。この時両手共にコックと背屈が強まる形になります。

「モダン・ゴルフ」が教える伝統的なグリップでは、このヘッドを左に直線的に引く動きを試すと、左手はアンコックと掌屈(手の平側に曲がる)、右手はコックと背屈の動きが強まってグリップを左に引きます。これが典型的なインパクトの左手の動きを示すものと捉えられて来たのです。しかしこれは、机の脚などを押してみればすぐ分かるように、弱い動きです。

しかし、ベア・グラウンド(裸の地面)にボールを置いて打つような場合には、突っ込む感じの「マジック・グリップ」の動きは不安に思われます。これは従来の打法では難しいショットと思われて来たものですが、実際に打ってみると「マジック・グリップ」では簡単にクリーンで確かな手応えのショットが実現することが分かります。

この小さな実験による確認で、ヘッドを押して行く「マジック・グリップ」の両腕の動きに対する信頼感が高まります。左手のコックと背屈の動きを確実にすることが、大きなクラブを振る場合にも直線的なインパクト実現の鍵になることは容易に確認できます。これに注意してスイングを実行してみて下さい。左の肩と腕の「魔法の動き」が、この左腕の動きを実現するのです。

これが確認できると、これまでにインパクトの動きを回って登場した、様々な迷信的誤解の性格が明らかになります。次回はこれを議論します。

100を切るための「単純直線打法」

ゴルフ教師ハーヴェイ・ペニックのLittle Red Bookには、ルールを厳密に適用すれば、アベレージ・ゴルファー(平均的なゴルファー)は100を切るまいと書かれています。彼の所属したクラブのコースを視察に来た日本人の話があり、4人全員が90台前半で回ったが、ルールを厳密に適用すれば誰一人として100を切らなかった、しかも前半で、と言うのです。

こうなると格別上手ではないわれわれ普通のゴルファーは、まずルールを厳密に守って100を切ることを目指せばよい、ということになります。この目標達成の必須条件は、真っ直ぐ打つことです。これに慣れによる距離感が加われば、普通のコースで100を切るのは難しくないことになります。というわけで、今回は「核心打法」を離れて、楽に真っ直ぐ打つ方法を考えます。

ホーガンが圧倒的な成績を上げたのは、腰の横移動を積極的に利用することで、打球の方向性の確保に成功したためであろうと思われます。実際に、特に飛距離が必要ではない人の場合、腰の横移動を利用する簡単なスイングでスコアを確保する方法があります。これが分かると100を切れないのが不思議という感じになります。

通常の伝統的なグリップを使います。この場合、方向性を確保するには、腰の動きから回転の意識を排除して横移動で振ればよいのです。一貫して体の正面を固定し、直線的にヘッドを振ることに意識を集中して振り抜きます。(これは以前にAB型打法として紹介したものです)

この「単純直線打法」は、ホーガンが「モダン・ゴルフ」で言う、腰の回転を意識して利用するスイングとは異なり、腰の直線的な動きの限界で発生する脚の反射的な方向転換の動きを利用して、バックの振り上げとインパクトの振り抜きを実行します。この場合、真っ直ぐ左に進む腰の動きが限界に達した時にインパクトに入ります。これは一種の「左の壁」の実現です。

「単純直線打法」のバックは「反魔法型」の腕の振りに入りますが、インパクトでは左に進む上体の動きを止めるために、反射的に「上体を右に回す」動きが現れて腕を振ります。当然腕の動きは「魔法型」になります。ただ、ダウンがオーバ-ハンド型の動きにならないために、「核心打法」のダウンの振りの強さは現れません。

腰の意識的な回転を排除し、左右の直線的な動きだけを意識して実行すれば、名前どおりの単純な動きでこの打法は実現します。自分で要領を確認して打ってみて下さい。飛ばすけれどもフェアウェイの外に打つ回数の多い人は、飛ばないけれども真っ直ぐ飛ぶこの単純打法を是非試してみて下さい。飛ばなくてもパーティーの誰よりも先にグリーンに近づくのを経験する筈です。

あとはグリーン回りのアプローチです。これも転がしを多用すれば普通のコースでは問題ない筈です。とにかく真っ直ぐ打つことの実現を心掛ければよい筈です。無欲の勝利で、欲をかかなければよいわけです。コンペが目前で「核心打法」に慣れる暇のない人も、この「単純直線打法」は試してみる価値があるかも知れません。

完成版「核心打法」

両方の脚腰を固めて腰を安定に支えるアドレスの構えを作り、「マジック・グリップ」で両腕を伸ばした腕の構えを作ります。これで両手がアンコック(小指側に引く)と背屈(背側に反る)の動きで固まります。この構えを作ってもグリップと背骨の繋がりは決まりません。バックスイングは、この繋がりを確立する動きで始める必要があります。

このためには、コックの動きでグリップを遠くに押し出すようにして上げます。この動きでクラブが腕を引いていく感じの動きになります。そのまま動きを継続しコックを強めて「深いトップ」に入れ、更にコックを強めてヘッドが先行する形に回し、そのままコックの動きを継続してヘッドを押し出し振り抜きます。一貫してクラブに腕が引かれる感じが保れて振り抜きが行われます。

これで「核心打法」は完成です。

クラブが腕を引いていく感じとは、背中の広背筋(パワー源)が伸びながら腕を引く動きの感覚です。コックを強める動きで腕が伸び、この感覚の動きが現れます。一見頼りのない動きの感覚に見えますが、実際にこれでクラブを振ると、ヘッドが腕を引いて走って行く感覚で大きなスイングが実現します。腕でクラブを引っ張ると、コックが解けて様々な悪い動きが現れます。

実際にクラブを握ってこの動きで振り、「核心打法」の要領でボールを打ってみて下さい。難しい所があっても、体全体の動きで伸び伸びと振ることを意識すれば、改善の方向が明らになります。当てずっぽうにあれこれ試し続ける時の不安はありません。動きの要領が掴めれば、方向性の良い大きな飛びが見られる筈です。

右肘の角度を固める意識で、前腕の外に回る動きを止めてトップに上げ、そこから叩くように下ろす打ち方で成功した話を聞きました。右肘の角度を固める意識はコックを強めます。したがって、叩くという動きをコックを固めて実行すれば、これは「疑似核心打法」になります。最近は練習をしていないにも拘わらず、コースで曲がったのは只一発だったとのことです。

この話を聞くと、「“叩こう”が致命的となる」というケン・ベンチュリーの言葉を思い出します(ケン・ベンチュリー著 金田武明訳 アメリカン・スイングのメカニズム ベースボール・マガジン社1985年 24頁)。「強く叩こうとしたら、例外なく、右手のリリース(アンコック)を早くし、パワーとコントロールをなくしてしまう」と言うのです。

更に「スイングを自然な勢いに任せて、インパクトでタイミング良く両手とクラブヘッドをリリースすれば、もっとよいショットになるだろう」とも言っています。リリースをアンコックと解釈するならば、これはコックを固め続けて振るという今回の話と矛盾するように見えます。この辺りの詳しい議論は後回しにして、次回はコンペにすぐ間に合う「単純直線打法」の話をします。

肩と腕の動きでバックをスタートする危険

今回は「核心打法」決定版の報告の前座として、肩と腕の動きでバックをスタートさせるという話の含む危険性を明らかにします。この危険を完全に回避するものとして「核心打法」が登場するわけです。

驚くことには、スイングを教える書物には、バックの動きの作り方をはっきり書いていないものが多いのです。実際に、バックスイングの動きの作り方の話は千差万別です。比較的多くのものはクラブの動きのイメージでバックスイングの作り方を教えています。しかし、クラブを動かす動きの仕組みを議論している例は比較的少ないのです。

腕の動きでバックをスタートさせる話は、ホーガンの「モダン・ゴルフ」にもあります。腕の形を固定して体の動きでバックをスタートさせるという話もあります。この場合は、腕の動きを見て体の動きを作ることになります。

ところが、腕の形を固めてもこれと体の動きの繋がりが固まらなくては、クラブを振る動きは決まりません。これは分かり切った話ですが、この辺りの事を書いたものを読んだ記憶がありません。肩と腕の「魔法の動き」は、まさしくこの腕を固めて体の動きに繋ぐ動きです。スイングを作り上げる出発点としてこの動きを採用したことが「核心打法」に導いたのです。

自由に動く腕の仕組みを使ってスイングの形を教えても、その実行は各人の考えに依存することになり、運の良い人だけが成功することになります。一方、グリップをしっかり体に結びつける体勢に入れば、体の動きでクラブを振る以外に方法がなくなります。結局安定なバックの動きを作るには、グリップを体に結びつけるように体を動かしてスタートする外に方法はないのです。

左手の親指を右手の指で握ると、伝統的な形のグリップが出来上がります。このグリップでは、腕を固めてもリストは固まりません。試しにこのグリップで腕をしっかり伸ばして固め、体を軽く右に動かすと、簡単にグリップが右に回ります。このグリップでのバックスイングは、必然的にフェースが開く「反魔法型」の動きに入るのです。

ここで「マジック・グリップ」の登場です。左手の親指を右手の平で握ると「マジック・グリップ」が出来上がります。此のグリップで両腕を伸ばすと、腕もグリップも固まります。これが「マジック・グリップ」でのアドレスの構えになります。この構えで軽く体を右に回すと、リストが固まったまま左回りに回ります。これが肩と腕の「魔法の動き」によるスタートです。

このスタートではフェースは閉じる方向に動きます。とにかくこれで体の動きでスイングをスタートさせる方法が得られるわけですが、実際に重いクラブを握ってこの動きで振ると、安定に大きな動きを確保するには、腕を体に巻き付けるような動きが必要なことが分かります。この腕の動きを実現する体の動きの確定が、「核心打法」完成の第一歩になります。

決定的な押しと引きの動きの違い

このブログを読み返してみると、殆ど最初の頃から「核心打法」の動きの要点は的確に捉えていたように見えます。しかし、詳しく見直すと、そこには従来の打法のイメージに基づく基本的な誤解が影を潜めていたことが分かります。これはグリップが伝統的な握り方に止まっていたために起きたことです。

前々回の「肩と腕の「魔法の動き」でグリップを押し出し続ける」(07-11-14)に見られるように、「マジック・グリップ」は、これを肩と腕の「魔法の動き」で引くと、グリップを押し出し続ける形の動きになります。この動きは、左手の親指を右手の平で握ってグリップを固め、これを軽く右に引き、そこからリストを左回り回して引き戻してみれば分かります。

この引き戻しの動きでは、リストの回転に伴い左手の背中が外側に反る形で緊張し、グリップを左に押し返す筈です。この時右手も同じように緊張してグリップを押します。ここで両腕をしっかり伸ばすように緊張させると、左グリップの背中でボールを押す形の動きが現れます。これが、肩と腕の「魔法の動き」が生む、インパクトの動きです。

これに対して、左手の親指を右手の平の代わりに指で握ると、伝統的なグリップの形になります。このグリップで同じように右に引き、リストを左回りに回して引き戻すと、左グリップが手の平側に巻き込まれ、左手の背中でグリップを引く形になります。この時は、左腕がグリップを引く体勢に入ります。これが従来強調されてきたインパクトの動きです。

この伝統型の動きでは、左腕が引きの動きに入るために、腕が縮んでヘッドを引き上げ、インパクトが不安定になります。極端な場合はボールの上をヘッドが走り、空振りになります。ところが、初期のブログには「ヘッドを水平に引く腕の動きでは、必然的にグリップがヘッドより前(左)にある状態でインパクトする筈です」(脇は締めない(06-03-20))と書いてあります。

これは伝統的なグリップの生んだ誤解で、「左脚でバック、右脚でヒット:詳論(07-11-11)」の動きでは、このインパクトの腕の動きにはなりません。このブログでは長々と同じような議論を繰り返して来ましたが、これは、伝統的なグリップが生む、動きのイメージの固定観念から脱却するための闘いであったと見ることもできます。

実際にクラブを振るには、体の動きで肩と腕の「魔法の動き」を引き出し、これを通じてグリップを振る必要があります。これで始めて、望ましいインパクトの動きが実現します。この場合の要点は、左グリップがダウンをリードする方向に入る、「深いトップ」の動きです。これで「左脚でバック、右脚でヒット」が実現します。

「深いトップ」への動きでのリストの方向転換が確実でないと、打球の方向が決まりません。これが、急激なダウンを通じて直線的なインパクトを実現する、「大転換:体の右側で振り切ってインパクト」(07-11-04)の鍵になっているのです。次回は「核心打法」完成版を報告します。

グリップを固める

「核心打法」の基本は、肩と腕の「魔法の動き」の確実な実行でスイングの動きを作ることで、これに適したグリップが必要になります。

グリップの形の確認のためには、まず左手でクラブを握り、ヘッドを体の前の机の脚に当て、力一杯左に引いてみます。これでシャフトが撓む程の力が出せるようにグリップを調整します。次ぎに右手でクラブを握り、ヘッドで机の脚を押して左手の場合と同様にグリップを調整します。

この結果から、クラブを手の平の指の根元部分で握る形が、一番力が出せることが分かります。これはゲンコツを握る形になり、手の平を斜めに横切る形で握る伝統的なグリップの形とは異なり、シャフトを垂直に立てても耐えられる強いグリップになります。この左手の握りに右手の握りを加え、逆オーバーラップ風に固めると、「マジック・グリップ」(07-09-20)になります。

これは伝統的な握り方とは異なるために、気になって資料を確認してみると、著名な飛ばし屋として知られるマイク・ダナウェイが、グリップは左手の根元で握り、インターロッキングで右手を握るとしていました(Mike Dunaway DRIVE FOR DOUGH Golf Magzine 8/85 p.33)。これから見ると、パワーの観点からはこの握り方のグリップが良いことが分かります。

「マジック・グリップ」を固め、前回(07-11-14)に議論した、肩と腕の「魔法の動き」を確実に実行し、「深いトップ」から一気にヒットの意識でダウンを実行すれば、右脇前にグリップが引き下ろされ、肩と腕の「魔法の動き」が左右の腕が伸び切るようにグリップを押して、インパクトの直線的なヘッドの引き抜きが実現します。

この「マジック・グリップ」に比べ、伝統的な左手の平を斜めに横切るように握るグリップでは、肩の動きで腕を動かすとヘッドが下がってしまいます。これを支えるために右手で横から握り、右肘を引き込んで固めています。

ホーガンはこの事情を、アイアンを左肘の後ろと右肘の前を通るように支えた図で説明しています(BEN HOGAN'S POWER GOLF, POCKET BOOKS, 1953)。この右肘が引き込まれた体勢では、インパクトで右腕が固まって肘が伸びると、ヘッドが前に押し出されてしまいます。そこで、インパクトでは前腕だけを左に回す動きが要求されます。

この場合のグリップの動きは、腕全体の長さに比べると短い半径の円周を描きます。当然腕全体を固く伸ばして左に引く場合に比べ、方向性確保の能力が下がる筈です。この前腕の動きが強すぎれば、ボールは左に飛びます。ホーガンにはフックに悩まされたという話もあります。(註:ホーガンの場合、全体的な動きは「反魔法型」です)

「マジック・グリップ」の着想は、足の「螺旋」の動きと共に、「核心打法」のパワーの確保にとって画期的であったのですが、その理解はまだ不十分だったのです。これを次回に論じます。

肩と腕の「魔法の動き」でグリップを押し出し続ける

前回の「スイングの基本構造:腕は押し体が引く」(07-11-13)では、「右腕の動きのイメージで言えば、グリップが右外側から回って上に上がり、そこから前に押し出され、インパクト圏で左に引かれます」と書きました。しかし、この表現には危険な部分があります。「グリップが右外側から回って上に上がり」というのがそれです。

「肩と腕の「魔法の動き」では、常に両腕が固まり、グリップを押しているのです。これを実現するのが右腕を内側に回し、左腕を外側に回す、肩と腕の動きです」という、「魔法の動き」の説明にも拘わらず、「グリップが外側から回って上に上がり」と言われると、無意識の中に「グリップを外側から回して上に上げる」と受け取ってしまうのです。これでスイングが崩れます。

この危険を避けるには「グリップを右外側に押し出して上げ、そこから前に押し出して、インパクト・・・」と表現すべきでした。これで始めて肩と腕の「魔法の動き」でバックを実行し、更に動きを続けてダウンを実行することができます。

あらためて肩と腕の「魔法の動き」の構造を確認すると、右肩(肩甲骨)を右後ろ上方に引き右上腕を内旋(内側回し)する右肩の「魔法の動き」と、左肩を右前下方に引き左上腕を外旋(外側回し)する左肩の「魔法の動き」と、肘を伸ばして右前腕回内(内側回し)、左前腕回外(外側回し)をする、腕の「魔法の動き」で出来上がっています。

この動きで、グリップを外側に押す動きが現れます。漠然とグリップを右外側から回すと理解すると、腕が「反魔法の動き」に入ってしまいます。これでは正しいバックの動きは実現しません。正しいバックでは、グリップを外側に押しながら上げ、クラブのヘッドも外側に押し出される形の軌道で上がります。ヘッドを内側に引き込む意識があると、正しいバックの動きはできません。

「深いトップ」を経てダウンにはいる動きも、当然このグリップを外側に押す動きを続けて実行します。この意識でダウンを実行すると、「上体を右に回す」体勢に入って右肩が上がり、ダウンに入ります。このダウンで大切なことは、左の肩と腕の「魔法の動き」の完全実行です。これで、「大転換:体の右側で振り切ってインパクト」(07-11-04)の動きが実現します。

この左腕の押しの動きが不十分になると、左腕が引きの動きに入ってしまいます。とにかく、右外側からグリップを押して上げ、体の右外側に左グリップを押し切るように振ってみて下さい。これで肩と腕の「魔法の動き」が生み出す「核心打法」が実現します。

この打法では、肩と腕の「魔法の動き」で確実にクラブを支えられる左右のグリップが必要です。これについて次回に検討することにします。

スイングの基本構造:腕は押し体が引く

良いスイングの動きとは、楽な動きでパワーが発揮できるものです。これを実現するのは、腕でクラブを押しながら体の動きでこれを引く、という動作です。これが分かると動きの見方が自然になります。

ところが著名なゴルフ教師でも、右腕の押しを排除し、左腕の引きで打つ、と教える例が見られます(ジム・フリック ディック・オールトマン 普及版 アメリカ打法 金田武明訳・解説 実業之日本社 1979年)。この本では「ダウン・スウィングを、両脚、左腕、左手で引くことは、インパクトエリアでヘッドを飛球線により長く保つ助けになる」と書いています。

本人の実際の動きが良くても、この説明は危険です。クラブを握ってこの動きをすると、必ず左肘が内側に曲がります。試しに左手をグリップの形に固め、これを左に引いてみれば分かります。この体勢では、右の指先で軽く振れるだけで楽にグリップが引き上げられます。これではインパクトでヘッドの高さを保持できません。左腕を外側に回す動きが必要なのです。

意図する動きを確実に実現するには、腕を固めてこれを体(実は広背筋)で引く動きが必要なのです。腕を固めれば上腕が外側に回り、肘が伸びてグリップを押し出します。その意味では、インパクトでは腕の動きはクラブを押し、この腕を背中の広背筋で左に引いているのです。このような基本的な動きの理解がないとスイングが難しくなります。

肩と腕の「魔法の動き」では、常に両腕が固まり、グリップを押しているのです。これを実現するのが右腕を内側に回し、左腕を外側に回す、肩と腕の動きです。この時の肩の動きは肩と背骨の繋がりを固めます。こうしてグリップの動きが緩みなく背骨の動きに繋がるわけです。

このことを確認すると、スイングのイメージも変わって来ます。右腕の動きのイメージで言えば、グリップが右外側から回って上に上がり、そこから前に押し出され、インパクト圏で左に引かれます。これは腕が広背筋に引かれて現れる動きです。その限界からは更にグリップが押し出されて上がります。車のギア・チェインジのレバーを押す動きに似た形の動きになります。

この腕の動きによるダウンの動きは、見かけ上グリップを引き下ろす動きになりますが、腕はグリップを押し続けているわけです。ダウンで腕を固めて押せば、右肩が後ろに押し戻される動き、すなわち「上体を右に回す」動きが現れます。これでこの動きの違和感は消えます。

対応する左腕の動きも試してみて下さい。グリップを押し続ける体の動きが分かります。この動きを誤ると左腕が曲がります。フリックとオールトマンが注目したインパクトの左腕の動きは、グリップをしっかり押し続ける左腕の動きが確保するもので、引く動きに入ると背骨との繋がりが消えてしまうのです。ゴルフの動きを言葉で表現するのは難しい仕事です。

「上体を右に回す」動きの実態:最終確認

このブログではこれ迄に繰り返し繰り返し「上体を右に回す」動きの構造と感覚について書いてきました。これはこの動きが強力なスイングの実現に不可欠なもであることと、同時にその動きが直感的ではないことのためです。

バックで上体が右に回るというのは、その動きの作り方は別として、直感的には納得しやすいものです。ところがクラブを左に振るダウンを、「上体を右に回す」動きで実行するというと、心理的な混乱が生まれます。これを避けるには、動きの作り方を理解して納得する以外に方法はありません。

しかし、これでは漱石の「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ」の言葉の通りに、動きが窮屈になってしまいます。そこで前回の「左脚でバック、右脚でヒット:詳論」(07-11-11)の結果を利用して、実用的で自然な形にこの動きを捉えることを試みます。

バックの動きについては、前回の説明で終わりとして、ここではダウンの動きとの関連を明確にして、納得しやすい形で捉えることにします。ダウンの動きは「深いトップ」への動きで始まります。この動きはバックの動きの継続として自然に「上体を右に回す」動きと捉えることができます。ここからのダウンの動きが問題です。

これも実は簡単です。肩と腰の間の間隔を引き伸ばすことで腕を引く動きを作ると考えれば、「深いトップ」への動きで後ろに引かれている右肩(肩甲骨)を更に後ろの左に引き、前に引き出されている左肩を更に右に引く動きを作れば、上がっている腕が強力に引き下ろされることが明らかになります。当然これは「上体を右に回す」動きになります。

この説明だけでは実用性の確信は生まれませんが、前回の説明で、この動きとこれを生む脚腰の動きとの繋がりが、時間的な経過を含めて実用上十分な形で捉えられています。そこで、この「左脚でバック、右脚でヒット」の脚腰の動きの実行に慣れれば、「上体を右に回す動き」の意識がなくても強力で効果的なダウンが実現することになります。

上手い動きに慣れれば、次第に違和感は消えます。これで「上体を右に回す」動きの意識も消えます。ボールを打つという目的意識以外に何も考えないで実現する動きが最上の動きです。

実は、スイングの腕の動きと体の動きとの繋がりについてかなり一般的な誤解があり、これが「核心打法」の動きの構造を見難くしているのです。これにつては次回に書きます。