ゴルフ直線打法 -30ページ目

「自然落下」や「遠心力」の迷信を突き破る

前回の「上体を右に回す」動きでクラブを振れば、バックのスタートからインパクトまで、この動きがヘッドを加速し続けます。もちろんヘッドが「自然落下」などする暇はありません。肩と腕の動きが「反魔法型」になると、バックからダウンへの切り返しで、腕がヘッドを押す動きから引く動きに切り替わります。

この瞬間に腕によるヘッドの加速が消え、これが「自然落下」のイメージを生むものと思われますが、これでヘッドが強く加速されることはあり得ません。しかも、この場合でも体は動き続けているわけで、体に繋がるクラブが勝手に落下する余地はない筈です。このように見ると、「自然落下」という言葉は無意味に見えます。

同様に「遠心力」もわけの分からない使い方をされています。くるくる回る中心の動きに繋がる物体は、中心方向に引かれます。この中心方向に引く力は「求心力」です。体の回転でクラブを振ると考えても、その時にクラブを引っ張るのはこの「求心力」ということになります。「遠心力」の話は難しいので物理学の教科書にでも譲る方が無難です。

それではスイングの「回転」の動きはどこで使われているのか。体の動きを支える骨格は、様々な骨の繋がりで出来上がっています。これを動かすのは骨と骨を繋ぐ筋群であることは、われわれ素人でも分かります。この繋がりはそれぞれの関節で、隣の骨を回す筋群の働きが生み出します。肩と腕の「魔法の動き」がその典型です。

こうなると、一つ一つの骨の動きが、縦の軸周りの「回転」で生まれることが分かります。スイングの動きがこれらの「回転」の集積で生み出されていることは確かです。このことが分かると、太く大きな腕や脚を持つ人の方がスイングのパワーが出る理由がはっきりします。これで地球を押す脚の動きが背骨の動きを通じて腕の強力な動きを生みだす可能性もはっきり見えて来ます。

しかし問題はこれらの「回転」の動きの総合的な働きです。腕の動きで考えると、一方向の「回転」の動きが集積すると、腕が伸びて手の握りが固まります。この動きを脚で地面を押す動きに繋げると、強烈な「突き」の動きになることが分かります。「回転」の動きの集積が「突き」の動きを生むわけです。これでダウンの腕の動きの構造が見えて来ました。

しかし「突き」だけではボールを打てません。そこで「上体を右に回す」動きで腕を引き止めます。この動作が腕を左に引く広背筋の強力な動きを引き出します。この時グリップの動きはヘッドを押す動きになります。「突き」の動きが「引き」の動きで引き止められ、「押し」の動きに変わると思えば納得しやすくなります。

同じ動きを左腕で試すと、グリップが右前に突き出されてそこから左への「押し」に入ります。この動きは実際に実行して納得する必要があります。同じ「回転」でも、目の付け所が変わると役に立ったり迷信になったりします。これが分かれば「遠心力」の迷信も「突き」で破れます。

「上体を右に回す」動きを確認する

スイングで決定的に重要なのは背骨の動きです。腕だけでクラブを振っても十分なスイングの動きは出来ません。脚の動きで腕を振ろうとしても腕は大して振れません。脚腰の力強い動きを使って腕を振る必要がありますが、これには脚腰の動きを肩の動きに繋ぐ背骨の動きが必要です。

これは分かり切った事のように思われますが、この背骨の動きがどんなものかは、なかなか分かりません。そこで背骨を軸として体を回転させる、などというわけの分からない教えが登場するのです。そうでなくてもクラブを握れば、体と一緒に振り回すことで力強く振れると思い込むのが普通です。こうして腰をくるくる回して振るゴルファーが生まれます。

この考えでは結局腕はクラブを引っ張るものとして使われます。しかし考えて見て下さい。地面の上に重い大きな荷物、例えば冷蔵庫などがあるとします。これを動かす時に手で押せば脚の踏ん張りが使えます。手で引っ張ると大きく体を傾けて引いてみても力が出ません。物を動かす腕の力は、押すと引くではまったく違います。

グリップを押す腕の動きでインパクトを振り抜くのが、「核心打法」の体の動きです。これを支えるのが「上体を右に回す」動きです。しかし「上体を右に回す」と言われても、これがどんな動きかは頭では捉え難いのです。クラブを「マジック・グリップ」で握り、腕を伸ばしてヘッドで机の脚を左に押してみると、確かに上体が右に回ります。この動きを限度一杯利用するのです。

バックのスタートとから一貫してこの動きでヘッドを押し続ければ、ヘッドが十分加速されてインパクトに入れる筈です。これを実現するのが肩と腕の「魔法の動き」です。実際に「マジック・グリップ」で腕を伸ばして固め、この腕を右から上に振ろうとすれば、思わず体を右回りに回す筈です。この時はクラブを押すために脚腰も固めて踏ん張る筈です。

問題はトップの切り返しです。この動きを確かめるには、クラブを握らずに両手を「マジック・グリップ」の形に握り、腕を伸ばして腕を固めます。このグリップを右に小さく引くと、当然体が右に回ります。ここでグリップを右後ろ方向に引くと両肩が引き上げられて更に上体が右に回ります。これが微小な「深いトップ」への動きです。ここからグリップを右前に引き下ろします。

この時膝がしっかり固まっていれば、上体が右に回ります。ここから更にグリップを右前に押し出す動きで上体が更に右に回り、グリップが左に直線的に引かれます。グリップを右前に押し出す時に、左グリップがしっかり体の右前に押し出されることを確認して下さい。この動きでクラブを体の右側で振り切る意識が生まれます。これらの動きが微小な動きで確認できます。

「深いトップ」への動きで肩(肩甲骨)の位置が変わり、同じ「上体を右に回す」動きでも腕の動きが変わります。肩が腕の動きの方向転換のスイッチ動作をするのです。これさえ納得できれば、クラブを握ったフル・スイングでも、同じように「上体を右に回す」動きで振り切れることが確認できます。

ゴルフの理論が役に立たない理由

上手な人はクラブを見事に操って良いスコアを出します。その要領を学ぼうとしても直接教わる機会のないゴルファーは、ゴルフのレッスン書を読みます。特に注意して、評判の良い著者の本を読みます。それでも役に立たないのが普通なのです。何故でしょう。

ご存じのように、人間の体の仕組みは極めて複雑です。これを上手く操れるのは、たまたま良い動きを見つけるという幸運に恵まれた人達だけです。普通の人は金鉱を掘り当てる努力にも似た手探りの試みを繰り返すことになります。これが普通のゴルファーの実態です。そこでどうしても駄目なら有名なレッスン書を読みふけることになります。

ところが、これを書いた人もたまたま上手にボールを打つ技が身に付いただけで、自分の動きが最良のものかどうかは知らないのです。実際、あらゆる打ち方を試していては一生掛かっても試しきれない筈です。そこで自分の動きを最良のものと考えて、カリスマを頼りにこれを教科書として売り出すわけです。これでは不安材料が一杯なのは当然です。

ここで必要になるのは、複雑な動きを部分的動きに分解して捉え、それぞれの部分的な動きの作り方を確認することです。ところが、この部分的な動きでさえ、実際は極めて複雑な動きの集まりで出来上がっています。これに対処するには、一つの動きを作っている基本的な動きと、これの組み合わせの仕方を、それぞれの動きについて確認する必要があります。

一つ一つの基本的な動きは、人体運動学の教科書などを見れば確認できますが、その組み合わせの生み出す働きは実際に動きを試す以外に方法はありません。そこで、思ったような動きが現れるかどうかを、小さな部分的動きで確認します。これで初めて動きが納得できるのです。始めから大きく体を振り回す気のゴルファーには考えられない練習手順です。

これはグリップの固め方の確認から始まります。ヘッドで机の脚を押してみるような、ごく小さな体の動きでグリップの働きを確認してみるのです。この部分的な動きが確認できたら、更に一段上の、肩と腕の「魔法の動き」のような動きの作り方を確認します。これだけで、グリップの動きが体全体の動きに繋がるのが分かります。

これから分かるように、「スイング面」などと言う大局的なイメージは、これを生み出す体の動きの仕組みが分からない限り、スイングを作り上げて行く時には何の役にも立たないのです。実際、両肩の回転面が体の正面向きに保たれることなどは、「核心打法」の最終仕上げで腰の動きとの繋がりの確認を通じて初めて体感できる動きです。

面倒でも、部分部分の動きの仕組みを確認し、その実際の働きを納得し、スイングの動きにこれらを取り込む効果を確認しながら進むというのが、ゴルフのスイングのような複雑な動きを自分のものにする時の王道なのです。

告白と弁明

さて「核心打法」がほぼ纏まり、自分以外の人にも著しい効果を現すのを見ると、この辺りで懐古と展望を試みる必要を感じます。どうやら展望はまだまだ開けて来ませんので、懐古に伴う告白と弁明に終わりそうです。

実は60歳に近づく頃、それまで違和感を持っていたゴルフというものを身近に見ることになりました。実際にクラブを振る羽目になった時には、昔剣道の練習を長い間続けていたことから、同じように腕を伸ばして振る気になりましたから、これでボールを横から打つことに慣れるには時間が掛かりました。それでも何とか打てるようになった時に災難が降りかかったのです。

仲間が持っていたゴルフの聖典と言われるベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」が目に入ったのです。「良いゴルフは良いグリップから始まる」という巻頭の第一声に恐れ入り、克明にグリップを固めることを試みました。剣道で防具を着けて竹刀を握る手は、今思えば「マジック・グリップ」だったのですが、これをクラブが左手の平を斜めに横切る握り方に修正したのです。

続く災難は、原著まで手に入れて学んだ、インパクトの「左前腕のスピネーション(回外)」という玄妙な響きの示す動きです。前にもちょっと触れたように、これでそれまで安定していたドライバーが、ソールでボールを蹴飛ばすようになったのです。今にして思えば、いわば極限のシャンクだったのです。ここからの恢復には時間が掛かりました。

結局、剣道流の縦の振りの動作を封印し、ひたすら右に直線的に振り、そこから左へ直線的に振るというスイングを「開発」したのです。これでボールは真っ直ぐ飛びます。その上例の左前腕スピネーションのお陰で、フェ-スは被せ気味になり、ボールは低く飛びます。特にフェアウェイ・ウッドは絵に描いたような低く真っ直ぐな弾道で飛びランが出ます。

こういう次第で、仲間の誰よりも飛びませんが、グリーンに近づく時はしばしば一番乗りになります。そこから腕を伸ばしてアイアンで転がせば、楽にピンに近づきます。こうしていつの間にか90切りを目前にする所まで来ました。実際にある日まだ打数を十分残して最終ホールのグリーン手前の斜面に辿り着いたのです。

ここで悲劇が発生しました、ピンまで近いことから、ウェッヂで寄せる気になったのです。この一発が見事なシャンク、始めの位置よりピンから遠い斜面にボールは止まりました。ここで寄せればまだ見込みがあります。ところがこれがまた見事なシャンク、ますますピンが遠くなるばかりです。あとは御想像通り、パットも思うようにならず90切りは夢と消えました。

ここからスイングの全面的見直しに入ります。間もなく緊急入院。一命を取り止めたが体力は完全消失。翌年にはヘルペスに右胸を痛めつけられ、ベッドに転がりながら腕を振り、「革命的イメージ」に到達。続いて捉えた「上体を右に回す」動きでドライバーとウッドの高く真っ直ぐな真っ当な飛びをはじめて経験、達人の理論は非力な凡人の役には立たなかったと悟るのです。

単純化の極限で「核心打法」が固まる

これまでの長い間の議論で「核心打法」の形とその動きが固まりましたが、それでもまだその動きが納得できない人がいるかも知れません。そこで今回は、極めつけの単純化で動きを体感的に確認する方法を書きます。

スイングは体のいろいろな動きを寄せ集めて、望ましい動きを作る一つのモデルに仕上げることで固まります。モデルとしては、曖昧な部分を出来る限り排除して単純化することが望ましいわけです。単純化には動きの理解のしやすさと、実際の動きの作り方が簡単になることの両方の利点があるからです。

そこで、ベッドの上に天井を向いて横になり、頭を大きな枕に乗せます。これで僅かに肩の動きの空間が確保されますが、体全体の動きは限度一杯に制限されます。この状態で左手の親指を右手の平で握り、両肘を伸ばして「マジック・グリップ」を固め、このグリップを外向きに押し続けながら、右から上げてトップ、更に右後ろに引き上げて「深いトップ」に入れます。

これまでの動きで、これに伴う腰や肩の動きの様子が確認できます。特に「深いトップ」への動きで、腰がダウンの方向への動きに入って肩が右上に引き上げられる様子が分かります。この動きが現れると、そこからグリップを右脇前に引き下ろすと、腰が回ることなく僅かな直進的な動きの中で「上体を右に回す」動きが現れることが分かります。

さらにグリップを押して腕を伸ばすと、その限界で、「上体を右に回す」動きが継続する中でグリップを左に引く体の動きが現れます。こうしてこれまでに検討してきた肩と腕とグリップの動きを支える体の動きが、腰の回転の動きなしに現れることが分かります。

これらの動きを注意深く観察すると、それぞれの動きの場面で、肩の回転面が正面向きに保たれるように腰が動くことが分かります。これが「体の正面」を保って振る動きを支えているのです。当然インパクトでも「体の正面」が保たれる状態で、クラブを左に直線的に引く動きが現れます。
これが打球の方向性を確保するわけです。

ベッドの上での実験から、腕の左右上下の動きが極めて限られた平面的なものであることが分かります。この動きを確実に支える脚腰の構えを固めてスイングの動きを実行すれば、上下の動きで足が地球を押し、腕が振られることが分かります。この場合腰の回転的な動きは極度に制約されたものに止まり、足の腰の生み出すパワーが無駄なくクラブに伝えられることになります。

このようにして「核心打法」は実に合理的に脚腰の生み出すパワーをクラブの動きに変換し、強力な直線的なインパクトの動きを生むことになります。ここまで様子が分かれば、あとは実際にボールを打ってその効率の良さを確認、再確認するだけとなります。「核心打法」はこれで文字通りの完成です。

フィニッシュでスイングの型が分かる

スイングはインパクトで終わりですから、フィニッシュの形を気にして振るのは無意味です。先輩が後輩を捕まえ、フィニッシュではグリップをここに入れろ、などと教えているのを見たことがありますが、これは役に立ちません。フィニッシュはスイングの動きが生み出すものです。

腰を回して左に引く動きでダウンに入ると、クラブがこの動きに遅れて右に引かれます。クラブを握ってこの動きに引かれる腕には「反魔法の動き」が現れます。そこで前腕を左に回してインパクトを実行します。これがホーガンの重視したインパクト圏の前腕の動きです。この動きでインパクトを直線的に引き抜くのが難しい事は前(07-12-14)に見た通りです。

このインパクトの動きが終わると、体の回転に引かれて前腕が右回りに回り、腕は「反魔法型」の動きに入ります。この前腕が右回りに回る動きで肩と腕の「反魔法型」の動きに戻り、フィニッシュでは一気にクラブが首の後ろに水平に近い形に入ります。

腰の左への回転を止める動きでインパクトを実行する場合には、腕は「魔法型」の動きになり、前腕が左回りの動きでフィニッシュに入ります。この動きが止まるとグリップが上腕の動きで縦に押し上げられ、クラブが左肩の上を通して後ろ斜めに入ります。ここで腕が脱力するとクラブが水平に近い形まで下がります。

結局腕の動きが「魔法型」か「反魔法型」かでフィニッシュが分かれます。他人のスイングを見る時にここに注目すると、これまで確認できなかったスイングの特徴がはっきり見分けられ、テレビのゴルフの放映を見る楽しみも増えます。ネット上の動画で内外のプロの動きを比較して見るのも参考になります。自分のスイングのインパクトの動きを確認する手掛かりにもなります。

ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」の例からも分かるように、ゴルフのレッスン書は通常教師自身のスイングの型を規準にして書かれています。内容が理解し難い時には自分のイメージとの違いに注意を払う必要があります。この場合写真あるいは動画で教師のフィニッシュを見るのが参考になります。

自分自身、ホーガンの言うインパクト圏での左前腕回外を試したばかりに、それまで安定していたスイングが壊滅的な影響を受けたことがあります。教師の動きの特徴を理解した上でレッスン書の内容を試す必要があります。ゴルフを始めたばかりの人にはこれは大切な注意点です。

しかしこのアドバイスも、スイングのあれこれのスタイルの得失が理解できて始めて役に立つわけです。これはグリップの善し悪しが、スイングの動きを知らなくては分からないのと同じです。ゴルフというものはすべての動きが繋がっている面倒なもので、知的な興味は尽きませんが、考え始めるとなかなか疲れるものです。

ビデオで自分の腰の動きを確認する

いろいろスイングの動きを試す前に、自分の現在の動きの癖を確認しておく必要があります。インターネット上でスイングの動画を見ると、バックで右に大きく動いて腰が回り、ダウンで左に大きく動いて回る人が極めて多いことが分かります。腰の左右の動きの巾が少ない人の数は極く少ないのです。

バックで腰の回転が入ると、肩と腕が「反魔法型」の動きになり、その結果バックの腕とクラブの動きを一旦止めてからダウン方向の加速に入ることになります。これでは一貫して一方向に加速し続ける「核心打法」より不利になる筈です。

腰の回転でインパクトを実行する人は、思い切り腰を回してクラブを振っています。脚腰が弱ると維持しきれない感じの激しさです。

自分のスイングをビデオに撮り、腰の動きに注目してみて下さい。腰の動きを見れば基本的な特徴が一気に明らかになります。バックで右に回っていても、インパクトの一瞬左への回転が止まれば、方向性は楽に確保できます。

体を回してボールを打つ人は、ヘッドを引き込んでボールに当てます。体を止めてボールを打つ人は、ヘッドを押してボールを打ちます。この二通りの打ち方があるのです。押す動きの方が力を出せることはこれまでに見て来た通りです。

これらの点に注意して見ると、僅かに見える動きの違いも明瞭になり、自分が日頃問題と感じている動きの原因を見つけ出す手掛かりが得られます。

能率は良さそうでも「核心打法」の動きには馴染めないと思う人は、「マジック・グリップ」を固め、脚腰を踏ん張って体の右側でグリップを引き上げ、脚腰の踏ん張りで体の右側にグリップを引き下ろす」(07-12-02)という要領で振ってみて下さい。直線的なインパクトのヘッドの振り抜きが体感出来る筈です。

「マジック・グリップ」再確認

「マジック・グリップ」については、「ザ・マジック・グリップ:「魔法のグリップ」」(07-09-20)、「「魔法のグリップ」でドライバーを振る」(07-09-21)などで説明してありますが、これは「核心打法」の実行に欠かせないものです。以前の説明は面倒で分かり難いと思う人のために、ごく簡単にその特性を捉えることを試みます。

グリップの最大の働きは、インパクト圏での直線的なヘッドの動きを導き出すことです。この動きを確認するのは簡単で、まず大切な左腕の動きを試します。このために、左手でクラブを握り、体の前で右から左へヘッドを引いてみます。この実験では、腕を引く体の動きも関係しますが、とにかく真っ直ぐヘッドを左に引く動きを作ってみます。

しっかりヘッドがスクエアに(動きの方向に直角に)保たれて引ければ合格です。引く力の強さも問題になりますが、とにかく真っ直ぐ右から左へスクエアにひく動きを作ろうと努力して見て下さい。クラブを上から押さえるようにして握るこれまでのクラブの握り方では、これは難しい動きです。

この場合、フェースが開く(上を向く)方向に動くか、閉じる(伏せる)方向に動くかします。左前腕を外側に回す動きで引くと、フェースが閉じ気味になって引かれます。前腕が反対に回ればフェースは開き気味になります。これらの動きと共にヘッドを直線的に引くことは難しく、真っ直ぐ引こうとすると、グリップにはクラブを手前に引き込む動きが現れます。

そこで左手でクラブを横から握り、体の前でヘッドを前に押し出してみます。これでグリップが固まります。この体勢が「マジック・グリップ」でクラブを右から左へ引くとこの体勢になります。この時腕がしっかり伸びていれば、手の握りが固く締まり、左手の背中側でヘッドを押すような感じでグリップが引かれます。

注意して見ると、上体が右に回るように脚腰が踏ん張ってクラブを引きます。この動きがしっかり出来ればグリップと腕が固まったまま、ヘッドを左方向に直線的に押します。体は腕を引きますが、グリップはヘッドを押すように動きます。この動きではヘッドはスクエアに保たれたまま、腕がヘッドを真っ直ぐ左に押します。

体が右を向くような動きで腕を引くために、グリップがヘッドを遠くに押す感じの動きになります。右腕でクラブを握って同じように実験すれば、この場合も腕が伸びた体勢で、グリップがヘッドを直線的に左に押します。クラブを手前に引き込む動きはありません。

両手の「マジック・グリップ」で同じようにクラブを右から左に引いてみると、しっかりヘッドを前に押しながら左に直線的にスクエアに押す動きが現れます。他のグリップより遙かに安定で力強い動きになります。体の右側で振り切る動きの秘訣は、この左腕の動きに慣れることです。

政木博士の300ヤード打法

一渡り「核心打法」の動きの固めが終わりましたので。これからはあれやこれやの話を取り混ぜて書くことにします。

手許に政木和三博士の「ゴルフ300ヤ-ド打法」(パーゴルフライブラリー 学習研究社1985年 7刷)があります。この打法は、親指進行型グリップ、ノンロール打法、自然落下打法、で構成されるもので、練習量が少なくても、安定の良い、良く飛ぶショットが得られるとしています。「核心打法」と対比しながら、この打法の特性を簡単に眺めてみます。

この打法では、左親指をクラブの進行方向に向けてクラブを握り、左手首のコック、アンコックの動作と、右手を背側に反らせたり内側に巻き込んだりする動作(ヒンジ)との組み合わせでクラブを振る、親指進行型グリップが特徴的です。このグリップでフェースを回さない動きで振るのがノンロール打法です。

このグリップでは左手が左右、右手が上下という、「革命的イメージ」風の動きになりますが、リストの動きを許すグリップのために、腕の動きは「反魔法型」になります。このため、行ったり来たりの形のバックとダウンの動きになり、ます。バックの押しからダウンの引き下ろしへの切り返しで自然落下打法の動きが現れます。

しかし、この動きは右腕の上下の動きが生むもので、実は自然落下ではなく、脚腰の地球を押す動きによるのです。写真で見ると、バックで尻が左に動き、ダウンからインパクトで尻が右に動く、カウンターバランス型の動きを示しています。腰の不要な動きを使わない動きで、これがスイングのパワーを確保しているものと思われます。

この場合の「反魔法型」の肩と腕の動きは、腕を伸ばしてインパクトに入る「核心打法」と異なり、ダウンの引き下ろしで腕を体側に引き付ける形になり、インパクトでグリップを引き込む、いわゆる「遠心力」で振る動きになります、パワーの点では「核心打法」には及びませんが、それでも腰の左右の動きで振るよりもかなり強力な動きになる筈です。

現在もインターネットで見ると、多くのゴルファーが「自然落下」を議論していますが、これは政木博士の打法とは直接関係は無さそうです。「反魔法型」の動きでスタートすると、腕の動きが固まらず、続く体の動きの作り方によって様々なスイングの形が現れます。練習場で多くの人が極めて個性的なスイングの動きを見せるのは、ここに原因がありそうです。

子供の頃からの練習で動きが固まっている人の場合を除き、普通のゴルファーは無限の多様性を含むスイングで動きの完成を追求するより、動きの原型が決まる「核心打法」の利用が得策だと思われます。

肩と腕の「魔法の動き」再検討

前回(07-12-11)に肩の上がる動きでバックからダウンの切り返しが実現すると書きましたが、これが肩の「魔法の動き」です。肩と腕の「魔法の動き」は、右腕の場合には一貫して腕を内側に回す動き、左腕の場合は一貫して腕を外側に回し続ける動きで、バックからダウンの振り抜きまでの動きを作ってみると、この動きが確認できます。

この動きはオーバーハンド型の投球動作でも現れるものです。この動きでバックからダウンの切り返しを実現するには、両膝の緊張を保って右足の「螺旋」の動きを強めれば、胸椎が右に引かれて「上体を右に回す」動きが生まれ、これで切り返しができます。これが前回の「バックの終期に右脚の踏ん張りで肩が上がる」という動きの内容です。

これらの動きでは一貫して両膝を固める動きが必要で、これが緩むと全体の動きが崩れます。この点に注意して両脚を固め、脚腰背骨の踏ん張りで両下腿(脛)の左回りの動きを続ければ、「上体を右に回す」動きが継続する中で、バックからダウンの振り抜きまでの動きが実現するわけです。

この要領でスイングを実行するには、バックのスタートで腰椎を左に引いて背骨を右回り回す動きに入る必要があります。これが「バックを左脚で振る」という動きの内容です。こうしてみると前回の「左脚でバック、右脚でダウン:左腕の振りに集中」(07-12-11)というスイングの実行イメージが、「核心打法」の実現にとって極めて合理的なことが分かります。

これでこのイメージが、実際にこれでクラブを振って有効性が確認できるだけでなく、これまでのあれこれの動きの仕組みの検討結果をも上手く統合するものであることが分かります。大いに納得できる内容のものと言えます。

自分でこのイメージの動きを作ってみて、肩の「魔法の動き」と「上体を右に回す」動きと、これら動きの繋がりを体感的に確認してみて下さい。「核心打法」の動きが如何に合理的な仕組みで支えられているのかが分かります。