ゴルフ直線打法 -22ページ目

スイングの基本型

19番ホールともなれば、すぐさまスコアに結びつく実利的な話から離れ、のんびりあれこれの話が登場するのが本来の姿です。何よりも、スイングの動きを詳しく考えると、木を見て森を見ずで、動きの大局的な特徴が見えなくなります。詳しい動きの話が続きましたから、インパクトの話の前に、まずスイングの動きの構造を気楽に描き出してみます。

スイングには左右と上下の二つの動きがあることは誰でも認めると思います。そこで、このそれぞれの動きを極限まで実行して、腕の振りの動きを作ってみます。

両手を軽く握り合わせてアドレスの構えを作り、ここから手のグリップを右へ右へと限りなく引いて行くと、その限界で自然に脚腰の方向転換の動きが現れます。そこで今度はグリップを左へ左へと限りなく引いていくと、ここでも脚腰に方向転換の動きが現れ、いわゆるフィニッシュの動きに入ります。これがホーガン型の腰の回転で振る動きの典型になります。

次ぎに今度はグリップを体の右側で上へ上へと上げ続けます。この動きの限界で、自然に脚腰が逆方向への動きに入ります。そこで、ここからグリップを下へ下へと引き続けると、その限界で再び脚腰の方向転換の動きが現れ、グリップが左へ引き抜かれます。スイングの動きとしてはここまでで終わりです。これで「核心打法」の基本的な動きが全て現れます。

二つの動きに共通なのは、一定の動きの限界で、脚腰の動きで自動的に方向転換の動きが現れることです。横に振る動きはフラット打法の動き、上下に振る動きはアップライト打法の動き、とも考えられます。こうして、脚腰の動きを自然な動きに保てば、典型的なスイングの動きの特徴が、グリップを横に振るか、縦に振るかの動きの意識で引き出されることが分かります。

これは「尻尾が犬を振る」話です。実際のスイングでは、クラブの荷重が掛かりますから当然脚腰が踏ん張ります。更に、ダウンの動きでは強力な脚の動きが先導します。これらの事実はありますが、腕の横と縦の動きでスイングの動きが引き出されることを確認することは、頭の体操になります。実際に、仕組みのはっきりしない「スイング面」の話より遙かに役に立ちます。

腰を守ろう

腰を回してクラブを振るというイメージには重大な危険があります。背骨は全体として背骨の正面を保つように動くことで安全な動きになります。このためには、腰椎部分が左に引かれて右回りに回る時に、胸椎部分が右に引かれて左回りに回る必要があります。

この仕組みがあるために、重い体の動きを支えて安全に動けるわけです。したがって、クラブを振るの場合にも、この仕組みの動きを保つように脚腰が動く必要があります。

ところが、腰を回してクラブを振ろうと思い込んで脚を使うと、この仕組みの存在を忘れて腰だけを左に回す動きに入る危険があるのです。この動きをすると、たった一回の実験でも、骨盤と背骨の繋がりの部分を痛めます。これは大変危険な動きなのです。

背骨の自然な体勢を壊す動きをすると、腰を痛める危険だけではなく、頭の動きに関わる頸椎にも同様な危険が現れます。これも大変な故障に繋がります。自分自身の経験や知人等の経験から、この危険だけはゴルファーに避けて貰いたいと思います。「核心打法」は、この点では構造的に全く問題がありません。

腰(腰椎)が左に引かれる動きでは、胸(胸椎)は右に引かれながらも腰の引かれる向きに回って、頭を安定に保つように動く必要があります。この点を忘れ、腰のぶん回しで勢いよくクラブを振り続けると、ゴルフを楽しむことができなくなる危険があるのです。腰の動きで上体を動かす意識が大切です。

インパクトでは強力な引き抜きの動きを実行しますから、ここでは背骨を固定する意識で体の動きを作る必要があります。曲打ちの一瞬でも体の正面が保たれていたのはこのためです。「核心打法」のダウンからインパクトの動きでは、この動きの仕組みに関わる話が登場しています。

次回にはホーガン型の打法の場合も含めた検討を試みます。

腰を回すと腕は振れない

これまで、体の重心を動かすと腕は強く振れないことを強調して来ました。この見方に従うと、地面を押す脚の動きを使って重心の移動を引き止め、腕を振るのが良いことになります。この場合、膝が踏ん張って体の向きが固定され、方向性の良いクラブの振り抜きが実現します。

これは、これまで「核心打法」について、繰り返し説明して来たものですが、実はホーガン型のスイングでも現れます。動きを言葉で説明するのは面倒ですから、目で見て確認できる例を探すことにします。

インターネット上には、トリック・ショット(曲打ち)の画像がいろいろあります。その中の一つとして、Ben's POWER GOLF Learning CenterのホームページにBen Witterの動画があります(http://www.benspowergolf.com/VideoTour.aspx)。この動画を見ると、しっかり腰を回してボールを打つ姿が目に入ります。

ところが、黄色の大きなボールの上に立って長いクラブを振る姿を注意深く観察すると、インパクトの振り抜きの瞬間は腰の回転は全く見られないことが分かります。真っ直ぐ前を見る体勢で振り抜いています。しかし、漠然と眺めると矢張り腰が回っているように見えるのです。

もう一つの場面では、ボールに両膝を着けてクラブを振っています。この画像では確かに膝の上下の動きでクラブを振り抜いているのが見えます。地球を押す脚の動きで腕を振っているのです。当然腰は回らず、この動きに伴う膝の動きが見えるだけです。しかしホーガン流のインパクトでグリップを引き込んで打つ腕の動きは変わりません。

この動画は、Witterのゴルフ教室の宣伝のためのものですが、このように見ると極めて貴重な資料です。彼のスイングの技術の確からしさを示すもので、一見をお勧めします。

この脚腰の動きの仕組みを体感したければ、実際にボールに腰掛けて様々な腕の振り方を試してみればよいのです。思わず膝の動きが現れることが分かります。ボールがなくても、椅子にごく浅く腰を掛けて腕を振ってみれば、腕の振り方と体の動きの関係が体感できます。とにかく、腰を止めなくてはボールを強く打てないことが分かります。

前回の話の、「腹の左側を緊張させてバック、右側の緊張でダウン」の要領で腕を振れば、これに伴う背骨の動きが自然に脚腰の踏ん張りを要求します。「核心打法」の動きがが簡単なのはこのためと思われます。

この腰の動きを止める動きに関連する話題ついて、次回以降に書くことにします。

腹の動きが大切

このブログでは背骨の動きに力点が置かれていますが、「体の動きには裏があれば表もある」(07-05-09)で見たように、背骨の動きには腹筋の働きが大きな役割を果たします。

背骨の動きは分かり難いのですが、腹の動きは分かり易いのです。そこで、これと背骨の動きとの関係に注目すると、分かり難い背骨の動きが捉えやすくなります。

このブログの「核心打法」の話では、「上体を右に回す」という動きが重視されて来ました。この動きが捉え難いのはダウンの場合です。ダウンでは上体を左に回して腕を振る筈だ、という意識があるからです。

この分かり難い動きが、「腹の左側を緊張させてバック、右側の緊張でダウン」と捉えると、ごく簡単に実現できます。腹の正面左側を緊張させることで背骨が左に傾き、右側を緊張させることで背骨が右に傾くからです(註参照)。

脚腰を固めて足を地面に固定し、この左右の腹の緊張を試してみて下さい。左手の親指を右手の平で横から握り、アドレスの体勢を作り、左腹の緊張でバックから「深いトップ」までの動きを作り、そこから右腹の緊張でダウンの動きを作ってみて下さい。背骨の動きが引き出され、「核心打法」の動きが体感できます。この時脚腰は固定したまま、自然な踏ん張りに任せるのです。

同じ様な話のくり返しに見えますが、少しずつ納得しやすくなっているわけです。

註:ここで腹の緊張と言うのは、左右の腹直筋の緊張で、臍の両側を通って鳩尾(みぞおち)の左右の上部の肋骨を骨盤中央下部に引きつけます。この仕組みから、これらの筋の緊張で背骨の動きが骨盤の動きに繋がることが理解できます。

腕と体の動きのタイミング

「ゴルフは押しのゲーム、引きのゲームではない」というジョニー・ミラーの言葉を紹介しました。(「腕がヘッドを後ろから押す」(08-02-19))。強くボールを打つには、腕を伸ばして固める必要があります。ゴルフの話に引きの動きと押しの動きの議論がくり返し登場するのは、この動きに二種類あるのが原因です。

タイミングで見ると、ホーガン型の左腕重視は「体で引いて腕を伸ばす」、核心打法は「腕を伸ばして体で引く」となります。ホーガン型ではダウンで体が先行し、腕が引かれる体勢に入ります。この時クラブが遅れるために、右上腕外旋、左上腕内旋の動きに入ります。遅れた腕を引いてボールに向かい、右前腕回内、左前腕回外の動きを加わえてインパクトに入ります。

「核心打法」では、ダウンで一気に腕を右脇前に引き下ろし、両腕を伸ばして体の動きで振り、インパクトに入ります。一貫して右上腕内旋、右前腕回内、左上腕外旋、左前腕回外の、肩と腕の「魔法の動き」で振ります。

ボールを打つには手の握り(グリップ)と腕を固める必要があります。腕を固める動きには上腕と前腕が関係します。両方の動きの組み合わせで、ホーガン型ではヘッドを引く動きでボールを打ち、「核心打法」ではヘッドを押す動きでボールを打つことになります。

上腕と前腕を同じように回すと肘が曲がり、腕がぶらぶら動きます。そこで、肘を固める意識で振れば、上腕の動きと前腕のが対抗(拮抗)して腕が固まります。

ホーガン型のインパクトでは、内旋している左上腕に対して左前腕を外側に回し、これで腕と手が固まります。この前腕の動きが、ホーガンの重視したインパクトのスピネーション(回外)です。「核心打法」では、ダウンで肘を伸ばすと、腕が固まってグリップを押し出すように動きます。この腕を体の大きな筋(広背筋)が引いてインパクトに入ります。

どちらの動きでも腕とグリップは固まり、安定なインパクトの動きが可能になりますが、腕と体の動きの時間関係から、方向性の確保に違いが生まれ、腕を引く筋群の力にも差が生まれます。この様子は、机の脚をボールの代わりに使い、ヘッドに力を加えてみることでも確認できます。

ホーガン流の打法では、腕は一貫してヘッドを引き、「核心打法」では一貫してヘッドを押します。バックとダウンで動きを切り換えれば、更に別の二通りの打法が生まれます。実際の打法では脚腰の動きが関わりますが、ホーガン型では両足の「回転」、「核心打法」では両足の「螺旋」の動きになることに注意すれば、適当な動きが確保できます。

スクエア・トゥー・スクエアの動きの話

伝統的な左手のグリップでは、左手の平でクラブのハンドル(柄)を上から押さえるように握ります。この握り方では、左手の平が背側に反る形になります。ホーガンが「モダン・ゴルフ」で重視した、インパクト圏での左前腕のスピネーション(回外)の動きでは、逆に左手の平は内側に巻き込まれます。

このスピネーションの動きで、インパクトのフェースの向きが目標方向に向けて保たれるというわけです。ホーガンはスピネーションの動きの利点をあれこれ詳しく説明していますが、ここで一つごく素朴な疑問が浮かびます。左手の平が内側に巻き込まれる動きでは、ヘッドは右方向に引かれ、「遅らされる」ことになる筈です。

インパクトで、少しでも余計にヘッドを加速してボールを打ちたい普通のゴルファーにとっては、これは見逃せない事実です。この動きでフェースが閉じる形になり、ロフトの少ないクラブを振っているのと同じ効果が生まれます。しかし腕の振りの弱い普通のゴルファーには、低い弾道になることは必ずしも望ましいことではありません。

インパクトでヘッドを減速させるこの動きを排除したいと考えると、スタートで左手の平を内側に巻き込み、それ以後一貫してこの形を保って振ればよい筈です。実際にこの考え方を具体化した人がいます。スクエア・トゥー・スクエア打法を提唱したディック・オールトマンです(The Square-to-Square Golf Swing: Modern Method for the Modern Player, Golf Digest, 1970)。

この打法の話は前にも引用したGeorge PepperのThe SECRET of GOLFに紹介されています。更に前に触れた「アメリカ打法」にも「スクエア・システム」として登場しています。ところが、左グリップを内側に引いて固める動きは「マジック・グリップ」のバックの左腕の体勢を生みます。このグリップを一貫して保持して振るとなれば、これは「核心打法」になりそうです。

ところが、「アメリカ打法」では、このグリップで左腕を強く使い「引き」の動きでボールを打つことが重視されているのです。左腕重視の打法です。これに対し、「マジック・グリップ」を使う「核心打法」では、強い左腕がヘッドを「押して」ボールを打つのです。

「アメリカ打法」には、「スクエア・システム」実現のための、様々な体の動きの作り方が写真入りで説明されています。動きの作り方が難しいことが窺われます。これに対し、「核心打法」の実験では、初めて試す人が驚くほど良いショットを経験しました。体の動きと切り離した腕や手の動きの議論では、スイングは決まらないことが分かります。

上手な人は個性的な動きでも良い成績を上げますが、普通のゴルファーは普通の努力で良い成績が得られるスイングを求めます。実は、グリップだけではなく、前腕と上腕の動きの組み合わせで腕の動きは決まるのです。これを次回に検討しましょう。

フラット打法とアップライト打法

腰の回転も肩の回転も、腕を振るには問題があるとなれば、バックで右に体重移動し、これで巻き上げた腕を腰の左への移動で振ればよいという考えが浮かびます。インパクトの付近でヘッドが水平に近く振られる区間が伸びて、マクリーンの言うフラット・スポットが確保できる筈です。

このような動きを実際に実行したのがベン・ホーガンです。この動きではバックで左腕が低く上がり、フラットなスイング面になるために、フラット打法と呼ばれる動きになります。「モダン・ゴルフ」はこのフラット打法のスイング論ということになります。

これに対して、アメリカのツアーで最多優勝の記録を持つサム・スニードのスイング面は、縦に上がるアップライト打法です。この動きではバックで左腕の動きより急激にクラブが上がります。急な角度で上がったクラブを急な角度で引き下ろせば、「核心打法」風の動きになります。

ジャック・ニクラウスの、右腕がフライング・エルボー風に上がる打法は、当然アップライト打法と言えます。一頃はフラット打法とアップライト打法の優劣がさかんに議論されたものですが、結局各人に合った打法を取ればよい、というところに落ち着いたようです。しかし、ホーガンの目覚ましい実績にもかかわらず、どうもフラット打法には腑に落ちないところがあるのです。

「モダン・ゴルフ」では、ダウンを腰の左移動で始めることの重要性が詳しく説明されています。体重を左足に移すために十分な横移動をしなくてはならないとしています。ところが、ダウンの初期に腰が左に移動すれば、重心を安定に保つために腕とクラブは右方向に引かれる筈です。左に向けてボールを打とうとしている時に、ヘッドを反対方向に引くことになります。

これは不利な動きではないでしょうか。しかし、この横移動得の動きの結果、その限界で腰が左に回ります。これで腕が体に引きつけられてボールを打ちます。ダウンの初期の腕とクラブを右に振る動きを、このインパクトの引きつけ動作の準備動作と考えれば合理的に見えます。ところが更に問題があるのです。

インパクトの引きつけ動作とは、腕を振る大きな筋(広背筋)を縮めてクラブを加速する動作です。ところが、逆にこの筋を引き伸ばす動きでボールを打つ動作を実現できれば、その方が遙かに強力な動きになるのです。このためにはインパクトに向け、右腰を引き止めて体より腕を先行させればよいのです。一般的に、腕で引くよりも押す方が力を出せることは、試してみれば納得できます。

さて、「腕を振ってもクラブは振れない」(07-11-07)で取り上げた、アメリカで活躍する女子プロ、ローレナ・オチョアは、今年(2008年)の第一戦で2位に11打差をつけて優勝しました。彼女のスイングはアップライトに上げ、体の右側で一気にダウンする打法です。勝ち続ける構造的な理由はここにあると考えると納得できる気がします。

腕を振るのは肩の回転ではない

バックで腰の動きに対して肩をより大きく回転させれば、ダウンで腕が強く振れると考える人は多いと思います。有名なマクリーンのX-Factor(腰と肩の回転角度の差)は、トップでこれを測るものです。ところが、ダウンで更にこの角度を増すことの重要性が、何人かのゴルファーの計測結果に基づいて指摘されています。
(http://cgi.cnnsi.com/golfonline/instruction/science/secondprize.html)。

そこではこの動きをthe X-Factor Stretch(X-Factorの引き伸ばし)と呼んでいますが、この動きを生み出す体の動きの構造は明確にはされていません。実は、これは「核心打法」のダウンで「上体を右に回す」時の動きなのです。このことについてもう一度説明を加えてみます。

腕を振る動きには確かに肩の動きが関係します。しかしそれは肩を首の回りに回す動きではないのです。ダウンで肩を回して腕を振るには腰を回さなくてはなりません。これは実際に肩を回す実験をしてみればすぐ確認できます。この動きでは、体の動きに引かれて腕が振られるだけで、力強くクラブを振る腕の動きは現れません。

クラブを振る腕の動きを生み出すのは、上腕を回転させる肩周りの筋群の動きなのです。これは螺旋を回すようにしてワインのコルク栓を抜く時の右腕の動きを考えれば分かります。同時に、この動きに対してワインの瓶を逆回しして対抗する左腕の動きを考えれば、左腕の動きも分かります。

右上腕は内旋、左上腕は外旋で力を出すことが分かります。更に、この動きに対して踏ん張る両脚の動きが、両足の「螺旋」の動きを生むことも分かります。この両上腕の動きは、バックのスタートとから、「深いトップ」を経てダウンの振り抜きに至るまで、一貫して続きます。これでグリップが強く固められたまま、緩みのないスイングができるのです。

ダウンでこの両足の「螺旋」の動きが適切に働けば、「上体を右に回す」動きが現れます。この動きで、腕を振る最大の筋である広背筋が引き伸ばされ続け、インパクトの強力な振り抜きを実現します。ダウンのX-Factorの引き伸ばしを単にX-Factorの拡大と考えると、引き伸ばされた筋を縮める動きでインパクトの腕を振ることになります。これでは大きな力は出せません。

腕の振りの動きには、ローテーター・カフ(肩回旋筋腱板)が働きます。この肩周りの筋群がスイングで活発に働くことは、フランク・ジョーブ博士らの研究が指摘しています(「オーバーハンド型の腕の動きの実態と効用」(07-11-01))。更に肩甲帯の動きを見れば、腕の動きと肩甲骨の動きの関係も分かります(身体運動の機能解剖学 栗山節郎監修 中村千秋 土屋真希訳 医道の日本社2001年17頁)。

腕の動きの仕組みが分からないままに、漠然と「肩を回す」と言われても、動きの実態は理解できません。これに対処するには、「核心打法」のように、余計な動きを排除して望ましい腕の動きを作ってみる必要があります。曖昧な動きが含まれていると、憶測を重ねて苦労することになります。

スイング面を考える危険再論

日本でプロ・ゴルファーに自身のスイング面について尋ねた雑誌の記事があります(Golf Today, 1994.11.1)。かなり多くの人に尋ねているのですが、スイング面とは何かについて、明確な共通の理解のようなものはなく、各人がクラブの動きの意識で捉えているように見えます。

このような実情でありながら、ゴルフの指導書にはしばしばスイング面による動きのチェックの話が現れます。これは危険です。クラブの動きに気を取られ、ハーディーのスイング面の議論にも見られたように、体の動きと切り離して腕の動きを考える可能性があるからです。

体の動きと無関係な腕の動きを考えると、微細な腕の動きの調整が必要になります。その典型がバックスイングに入る時のグリップの動きです。これが事実であることは、ベン・ホーガンが「モダン・ゴルフ」の多くのペ-ジを、バックのスタートのグリップの動きを確認するワグルの話に割いていることからも明らかです(原著65-69頁)。

ここでの最大の危険は、無意識の中にクラブのシャフトの描く平面的な動きと、左腕の動きとを一致させる意識です。これで腕とクラブが一つの平面を描くように振られことになります。この「面」がスイング面の意識を生み出すと考えるのが自然な見方です。

このスイング面を体の動きに繋ぐには、クラブを左手で握り肩を右回りに回せばよいのです。ところが、この動きではごく自然に左の前腕が内側に回ります。これでグリップがスイング面に乗ることになります。クラブの代わりに団扇を握って同じように振ってみれば、これが腰の回転で振る時の左腕の動きになることが分かります(「団扇(うちわ)一本で動きを見る」(08-02-29))。

こうして、バックのスタートの左前腕の動き、すなわち左グリップの動きが、一定のスイングの動きを引き出すことが分かります。一見ごく自然な動きに思われますが、団扇の実験で見た通り、これがボールを打つ上で良い動作に導くという保証はないのです。

これに対して、左手に団扇を握り、アドレスの構えで左手の親指を右手の平で横から握り、両肘を伸ばして「マジック・グリップ」を固め、これを「上体を右に回す」脚腰背骨の動きで引くと、団扇が立って左腕の描く平面的な動きの内側に上がります。これが「核心打法」のバックで、もとのスイング面のイメージは無くなることが分かります。

漠然とスイング面のイメージにとらわれると、「核心打法」の動きは理解できなくなるわけです。

スイング面は他人の動きの特性を観察するには役に立つかも知れませんが、自分の動きの監視には役に立たないばかりでなく、自然なスイングの動きを妨げる危険もあるわけです。自分でスイングを考える時には、外から見るのではなく、体の動きを内側から見る必要があるのです。スイング面の話には警戒が必要だと思います。

背骨の動きでスイングを捉える

ゴム紐の先端につけた錘を引っ張って放せば勢いよく飛び出します。「ぱちんこ」の動きです。スイングの動きもこのようなものだと考え、右手を握って上体の捻りで肩の上に振り上げ、脇の下を通して左に振ると、膝の左移動で体の緊張が消え、腕がぶらんと振り子のように振られます。この動きでインパクトを強く振るには、脚腰の踏ん張りで腕を振り抜く動きを作る必要があります。

これに対し、右手の握りを肩の上から前に向けて押し出すように振ると、脚腰が踏ん張って右手のグリップを押し、最後に上体が左に回って肘を伸ばす動きに入ります。この動きを勢いよく実行すると、その限界で尻の緊張と共に両脚が踏ん張り、上体の動きを引き止めてグリップを強く左に押す動きが現れます。これが「核心打法」の右腕の動きです。

最後の上体の動きを引き止めるのが「火事場の馬鹿力」風の動きで、これがグリップを強く左に押す動きを生み出します。「核心打法」ではこの要領で、ダウンからインパクトの間一貫して腕がヘッドに力を加え続けるのです。前の振り方に比べて、当然ヘッドの加速が有効に行われます。

背骨の動きで考えると、体の右側でクラブを上げ下げしてバックとダウンを実行し、この動きで変形する背骨を引き戻す動きでグリップを前に押し出し、その限界でボールを打つ動きに入ることになります。両足の「螺旋」の踏ん張りで両腕を伸ばし切ると、再び上体を右に回す動きが現れ、インパクトの間も体が力を出し続けてボールを打つわけです。

こんな面倒な背骨の動きは、頭で考えても確認は困難です。そこで、「マジック・グリップ」で握ったクラブのヘッドを右脇前の机の脚の右側に当て、左に押してみます。この動きでは上体が右に回ります。そこで両腕を伸ばすように両脚を踏ん張ると、背骨が真っ直ぐ伸びる体勢に入り、その限界で背骨が固定されて再び上体が右に回りヘッドが机を強く押す動きに入ることが分かります。

ここで「上体が右、あるいは左、に回る」と言うのは、背骨の腰椎部分の動きの感覚の表現です。胸椎部分は逆回りに回り、これで背骨の正面の向きが保たれます。

「マジック・グリップ」でグリップを右脇前に押し出すように両肘を伸ばせば、右手が引き左手が押す形の手首の動きと共に、ハンドル(クラブの柄)を左に押す固い腕と手の動きが現れてヘッドを急激に左へ押します。この動きの細部は既に検討してある通りです(「秘伝:右手は引き左手は押す」(08-02-23))。

「核心打法」では「深いトップ」から体の右側で振り切るという簡単なイメージで一気に振ります。反射的な動きの実態は、清水の舞台から飛ぶ気分でクラブを振り、体感して会得する必要があります。