2020年10月に南九州の温泉をレンタカーにて一人で巡った旅のお話、4日目。
大好きな鹿児島は湧水町の湯をしばらく巡っていた。
いつも載せてるこれまでの行程リンク集から。
<初日>
<二日目>
<三日目>
<四日目>
一人サイズで何とも落ち着く中原家族温泉にて湧水町の湯はひとまず終了。
湧水町は翌日また目指すのだが
この日の宿がある宮崎県えびの市へ再び向かう。
宿は京町温泉なのだがその前に行ったのが、宮崎県最古の温泉と言われる吉田温泉。
天文23年(1554年)の霧島山の噴火によって地震が起き、昌明寺地区の岩間から湯が湧きだしたらしい。
この湯で鹿が傷を癒しているのを見て「鹿の湯」と名付けられたとのこと。
全国にいくつかある鹿の湯の1つだ。
当時の領主だった島津義弘が鹿の湯の評判を聞いて湯治施設を作らせた。
明治になって西郷どんも訪れており、鹿児島や宮崎の温泉で出てくる島津と西郷の両方の名前が関わる湯である。
以前は大変栄えていたようだが現在の吉田温泉は公衆浴場が1つ、宿が1つと規模は何とも小さい。
そして目指したのはその歴史ある鹿の湯の名前がつく公衆浴場。
この看板↑はすぐ見つかるのだが、肝心の浴場がどこかしばらく分からずにウロウロする。
鹿の湯の前に、平成29年3月に廃業してしまった「亀の湯」の跡からチェック。
バス停に見える↑のはこの後によく見かける温泉施設の看板。
温泉名と泉質が明記されている。
これがまだ残っているのが、間に合わなかった残念感を煽る。
建物の庇部分に亀の湯の名前が大きく掲示されていたのだ。
建物の脇に回るとデロデロのエリアがあった。
どうやら源泉はある程度流しっぱなしになっているようだ。
現在の持ち主が何かしら再利用を検討しているとの話も聞いたことがあり、今後も諦めずに状況を見て行きたい。
さて、亀の湯と道路を挟んでうっそうとしたエリアがあり、古びた建物がいくつか見える
かなり荒れた雰囲気だが(^-^;、そこが鹿の湯であった。
吉田温泉 鹿の湯
到着の半顔写真は撮り忘れ(^-^;
鹿の湯の看板が見えるが、こちらは宿泊棟。
ただし見た通り現役なのか逝ってるのか分からないレベル
表立っては宿泊営業はしてないようであるが。。。
実は最初にこの建物を遠目から見たときは看板に気づかず、廃墟だと思って別を探してしまったぐらい。
この隣に母屋があり(写真なし)、そこにご主人の柴田さんがおられた。
三代目らしい。
名前を知ってるのは後程お互い名乗りあったからなのだが、その話は最後に
人懐っこい感じのご主人に入浴料の300円を支払い、もう一つの湯小屋へ向かう。
これまた、かなりの草臥れ具合
営業時間は要確認。
現在はどうやら午後からの営業のようであるが、グーグルで検索すると臨時休業と出る。
最新情報は気になるところだ。
では男湯へ。
脱衣所も期待を裏切らない鄙び度
先客が1人おられた。
分析表は昭和36年のものしか掲げられてなかった。
もちろん参考にはするが、現在の湯とはかなり違っていると思われる。
というのもこちらの源泉、昭和43年のえびの地震によって以前の主な源泉が枯渇してしまい、当然湧出量も減り、さらに泉温も下がってしまった。
現在の源泉温度は分からないが、加温して使用している。
建物を外から見たときはてっきり平屋で普通の浴場だと思っていたが、なんと浴槽は階下であった。
より源泉を求めて下に掘り下げたのだろうか。
年配の地元の常連さん、しばらくすると上がってこられた。
入れ違いに独り占めができた
では浴場へ下ろう。
壁のささくれ具合もチェック
おっとその前に、上から浴場の全景を。
洗い場スペースはあるがカランもシャワーもないシンプルな浴場。
床は源泉の成分でコーティングされ尽くしている感じ。
2つの浴槽は後で詳しく見ていくが、湯は繋がっていて温度違い、深さ違い。
階段の右側にかけ湯の枡に見えるところがあった。
湯はぬるいとういうより冷たく、また動きがなく新鮮さを感じなかったため使用せず。
浴槽の方を。
手前↑の湯口がある方が温かく通常の深さの浴槽。
奥がぬるくて浅く、半身浴ぐらいの深さだった。
カランやシャワーは無いが、浴場内を探すと石鹸やシャンプーは見つけることができるかもしれない
温度違いと言ったが、ぼくが入った状況ではメインが40度ぐらい、奥が不感温度ぐらいのぬるさだった。
湯は褐色に見えるが、これは積年の源泉による色素の沈着による部分が大きく、実際はほぼ無色透明~微黄色といったところ。
古い分析表だと含食塩芒硝重曹泉。
そのまま現在の表記に直すと、ナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉となるか。
ただし分析表の数値を見ると硫酸イオンよりもヒドロ炭酸イオンの方がかなり多いので、硫酸塩より炭酸水素塩の方が先に来る気もするが、いずれも現在の源泉と合致するか分からない。
この源泉を基本的に加温してかけ流しにて使用している。
浴槽の奥に見える竹筒みたいなものは、湯口からの湯を直接ぬるくて浅い浴槽へ渡すときに使用するようだ。
ぼくは使わなかったが。
その他、浴槽何には穴も開いていて湯の行き来はあった。
温度計を脱衣所に忘れたので取りに戻ろうとしたら、薪か何かを燃やす匂いがした。
後で確認したら、こちらはおが屑を燃やして加温している。
この写真↑はもちろん浴後に撮影。
それによって、湯口からの源泉の温度がグッと上がった。
その状況でメイン浴槽の温度を測ってみると。。。
42.6度とよい感じ。
そのまま湯口の温度を測ると。。。
55.3度としっかり加温。
非加熱源泉は不感温度ぐらいなのだろうか…ご主人に確認しておけばよかった。
さて、その湯口で源泉の風味を確認。
僅かに金気臭がする。
マイルドな口当たりで淡い甘味を感じた。
湯口の上には飲泉ができるコップ、そして石鹸を発見
しっかりとしたスベスベ感があった。
鄙びてしまった吉田温泉、貴重な鹿の湯の源泉をぬるかったり適温だったりでしっかり味わった。
全体的な雰囲気を含め、普通の人にはなかなか勧めにくいが、この手の浴場が好きな人にはぜひ入っておいてもらいたい。
さて、浴後に母屋へ挨拶をしにいくと、まあ珈琲でも飲んでいきなよとご主人。
傍らにはおそらくいつもそこに座ってるのだろう、お仲間の男性が一人。
一応ロビーになるのかもしれないが、まあ足の踏み場もないというかかなりカオスな状況(写真は無し!)だが、ぼくは気にしない方。
ただしずっと飛びまくる複数のハエには少々気を捕らわれたが(^-^;
ご主人から自己紹介があり柴田さんと知り、ぼくも名乗る。
どこから来たかという普通の話から始まったが、ぼくの居住地にかつて半年ぐらいだが住んでいたことがあったとのこと。
それからさらに胸襟を開くような話具合となり、ローカルな話題の合間にこれも食べろあれも食べろと色々出そうとしてくれ、金平糖だけいただいた。
そしてあの宿舎にまつわる話も色々。
家出少女が住み着いた話や外国人バックパッカーがよく来る話など。
今晩はどうするつもりかと聞かれ、京町温泉に宿をとってると言ったら、なんだ泊まって行けばいいのに、タダでいいよ~なんて
全国からここを目指すマニアや、縁があって流れ着いた人とみんなこんな会話をしているんだろうな。
とても楽しい人だった。
いつまで続けるか分からないとおっしゃってたけど、またお会いしに行きたいものだ。
吉田温泉 鹿の湯
宮崎県えびの市大字昌明寺689
0984-37-1531
入浴料 300円
営業時間は要確認
含食塩芒硝重曹泉(ナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉)
ほぼ無色透明~微黄色透明
微金気臭あり
淡甘味あり
しっかりとしたスベスベ感あり
加温かけ流し
2020年10月入湯
※泉質名はS36の分析書より