(「天之御柱」と言われる「上立神岩」)



【古事記神話】本文 (~その13 美斗能麻具波比)



ナギ&ナミ神は「天沼矛」を授かり、それで「許々袁々呂々(コオロコオロ)」とかき混ぜ、遂に「淤能碁呂嶋(オノゴロ島)」が誕生しました!

二神が続いて行ったことは…。


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【読み下し文】
其の嶋に於て天降り坐して 而して天之御柱を見立て 八尋殿を見立て 是れに於て其の妹伊邪那美命に問ひて曰く 汝の身は如何成るやと 答えて曰く吾が身は成り成りて成り合はざる處一處在り 而して伊邪那岐命詔りて 我が身は成り成りて 而れども成り餘る處一處在り 故に此の吾が身の成り餘る處を以て 汝が身の成り合はざる處を刺し塞ぎて 而して國土の生むを以て生む成るを爲すとは奈何にや [生と云ふは宇牟と訓む下此れに效ふ] 伊邪那美命答へて曰く然るに良き爾と


【大意】
淤能碁呂嶋に天降り天之御柱を立て、八尋殿を建て、そして伊邪那美命に問いました。「あなたの体はどうなっているのか」と。すると「私の体はすっかり成長しましたが、足りないところが一ヶ所あります」と答えました。伊邪那岐命は「私の体もすっかり成長したが、余ってしまったところが一ヶ所ある。だから私の余っているモノで、あなたの足りないところに挿し塞ごう。そして国土を造ろうと思うがどうだろう」と。「それが良いでしょう」と伊邪那美命は答えました。


【補足】
◎あまりにも有名な場面、細かな解説等は不要かと思います。
◎「オノゴロ島」「天之御柱」「八尋殿」については、伝承地が淡海国などにあります。日向国などにもあるようですが、普通に考えてやはり淡海国でしょうか。中でも「沼島」が最有力かと。冒頭写真に「天之御柱」の伝承地「上立神岩」を掲げておきました。
◎「古事記」自体を元明天皇に対する私本ではないかとする説があります。実は私自身もその可能性があると考えている一人です。
もし仮にそうであるとするなら、このような明からさまな性描写や、以後いろいろと出てくる神々を面白おかしく滑稽に描写されているのにも納得がいくというもの。こればかりはまったく分かりませんが。


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【読み下し文】
伊邪那岐命詔し 然らば吾と汝是の天之御柱をば行き廻り逢ひて 而して美斗能麻具波比 [此の七字以て音] を爲す此の期の如く乃ち詔し 汝は右より廻りて逢ひ我は左より廻りて逢はむ 約まり竟へ(※)廻りし時 伊邪那美命先ず言ふ阿那邇夜志愛(※) 上(※) 袁登古袁(※) [此の十字以て音下此れに效ふ] 此の後に伊邪那岐命は言ふ阿那邇夜志愛 上 袁登賣袁(※)


【大意】
伊邪那岐命は「然らば私とあなたがこの天之御柱を廻って出逢ったことにし、美斗能麻具波比(みとのまぐはひ※)をしよう」と言いました。続けて「あなたは右から廻って、私は左から廻って逢うことにしよう」と。そのようにして二神は出逢いました。先ず伊邪那美命は言いました「ああ!何といい男だこと!」と。続けて伊邪那岐命は言いました「ああ!何といい女だこと!」と。



【補足】
◎ついに表題の「美斗能麻具波比(みとのまぐはひ)」が。ま…性交ということですね。
◎「約まり竟へ」の読みは「つづまりおえ」ではないかと思います。「詰まり終え」といったところでしょうか。
つまりナギ&ナミ神が天之御柱のぐるりを反対方向へ向かい、廻ってきてぱったりと出くわすということかと。
◎「阿那邇夜志愛」の「あなによし(良し)え」、「上」は何らかの補足したものと思います。「上ずった声で」という意味でしょうか。
「袁登古袁・袁登賣袁」は「をとこを・をとめを」。



翻訳をするまでもなく、おおよそは誰でも知っている内容かと思います。

それでも一字一句突き詰めていくことが重要であるという考えの元に始めた行い。私自身が勉強しながら進めています。したがって頼りない訳になっている部分も多少あると思いますが、ご了承頂けますとさいわいです。

(淡海国の沼島)