大和国葛上郡 葛木御歳神社のご本殿



■表記
御歳神、御年神、歳神、年神


■概要
◎父神である大歳神とともに穀物神。いわゆる「歳神(年神)」とは、両神に当てはまるとされます。

◎祀られる総本社は大和国葛上郡の葛木御歳神社。また飛騨国一宮である水無神社のご祭神であることも知られます。

◎朝廷の「祈年祭」では、祝詞で最初に読み上げられるのが御歳神。また「延喜式」の「祈年祭 祝詞」では「御歳皇神等(みとしのすめがみら)の前に曰さく」として、本題が奏上されます。
また「祈念祭」は年の始めに五穀豊穣を祈るものとして、「年神」を祀ることが正月の中心行事ともなっています。本居宣長は「登志(年、歳)とは穀のことなり」としています。これは稲作の周期が一年であることが、「年」の意味を生じるようになったものと考えられます。

◎この「歳神」は、稲作を始めようかという時期になると遠くからやって来て、稲作の守護神となってくれる。そして収穫が終わると遠くに帰るといういわゆる「来訪神」。この遠くというのが大抵は、その村の「神奈備山」であると考えられます。大抵は「神奈備山」を中心として村が形成されたと捉えることもできるかと思います。
「歳神」を迎える正月行事として残っているのは、稲作を中心に村が形成されており、自家の田こそ「歳神」に守られたいと願うことから起こったものと考えています。これが祖霊信仰と結び付いたのではないでしょうか。
なお「お年だま」の語源は「御歳魂(おとしだま)」であり、御歳神に由来しています。

◎御歳神は大歳神の御子神。記では香用比売(カグヨヒメ)との間に生まれたとあります。大歳神、御歳神はともに穀物神であり大差は無いと思われます。ところが上記の「御歳皇神等」と複数であるかの如くに表されており、「御歳神」という複数の神が存在したともとれます。そこから大歳神は「実り」全体のことを、御歳神は五穀のうちの特定の穀の収穫物を司る神だったとする説も。

◎「古語拾遺」には御歳神についての説話が大きく語られています。これは「遣りたる所」として、忌部氏(斎部氏)を陥れたという中臣氏(藤原氏)に対する批判を十二例挙げた後に、突如として神代を振り返り掲載されるもの。
━━神代に大地主神が田の作業をしていた耕作人に牛の肉を食べさせた。その時、御歳神の子がやって来て饗(牛の肉)に唾を吐き還った。そしてそれを父に報告した。御歳神は怒り、その田に蝗(オオネムシ、=害虫)を放ち、田を枯れさせた。大地主神は「片巫(しととどり)」と「肱巫(ひぢかむなぎ)」 (今俗に言う「竈輪」及び「米占」)をして占うと、御歳神が祟りを為しているので、白猪・白馬・白鶏を宜しく献上するようにと。すると怒りは解け、教えにより奉り謝った。御歳神は「吾の意の通りである。麻柄を以て桛(かせひ)を作り、巻き付けて葉で蝗を払い、天押草で蝗を押し、烏扇で蝗を扇ぐように。若しこれでも去らない蝗がいれば、牛の肉を田の溝の口に置き、男茎の形をしたものを加え置き(これは厭わしく思わせる心なり)、薏子(=ハトムギ)・蜀椒(=山椒)・呉桃(=クルミ)の葉と塩を畔に置くように」と託宣した。教えに従うとまた苗葉が茂り年穀豊穣となった。今、神祇官が白猪・白馬・白鶏を祭るのはこの御歳神の縁である━━


■祀られる神社(参拝済み社のみ)
[山城国乙訓郡] 向日神社

[大和国山邊郡] 大和神社
[大和国高市郡] 稲代坐神社
[大和国高市郡] 馬立伊勢部田中神社(御歳神説有り)

[大和国忍海郡] 三神社(葛城市山田)(大歳神と御歳神を祀る説有り)
[大和国葛上郡] 葛木御歳神社 … 御歳神総本社

*主要な相殿・合祀、摂末社など
[信濃国] 諏訪大社 上社 萩宮(下十三の一)(記事未作成)
[伊勢国壱志郡] 香良州神社(配祀)
[伊勢国多気郡] 相生神社(多気郡多気町)

[山城国愛宕郡] 賀茂別雷神社 境内摂社 賀茂山口神社(記事未作成)
[山城国愛宕郡] 沢田社(賀茂御祖神社境内末社)
[大和国山邊郡] 御年神社(夜支布山口神社境内社)

[出雲国] 出雲大社 境内社 神大穴持御子神社(記事未作成)


飛騨国 水無神社


山城国葛野郡 向日神社

大和国山邊郡 大和神社