陽成院は清和天皇と藤原高子の

第一皇子にして誕生し、第57代

天皇。

 

陽成天皇と藤原高子

陽成院の母・藤原高子は在原業平

(百人一首第17番)と若き頃駆け

落ちすたことで有名。

陽成天皇(869-949)は、9歳の

ときに即位するが気性荒々しく、

奇行も多かったと伝えられている。

 

陽成天皇と藤原基経

小動物を殺すなど好き勝手なこと

をする陽成天皇。これにときの関

白、藤原高子の兄の藤原基経は、

陽成天皇や妹の高子と対立し、政

務を執りおこなわなくなる。

こうしたなか、前代未聞の事件が

起こる。

陽成天皇が乳母子の源益(みなも

とのまさる)を撲殺するという事

件が起こった。

関白・藤原基経は、これに怒り、

17歳の陽成天皇を譲位させ、自

ら推す55歳の光孝天皇を即位さ

せた。

 

藤原基経

陽成天皇の譲位は、表向きには病

によるものとされたが、実際は藤

原基経によって退位させられる。

藤原基経は、光孝天皇(百人一首

15番)を立て、政務を任せられ、

光孝天皇・宇多天皇ときの執政は

日本史上初の関白であった。

 

藤原基経と藤原公任

藤原基経の父は藤原長良で、長良

・基経は、のちの歌人で「源氏物

語」のモデルの藤原公任の祖先に

なり、公任は長良から遡ると、

①長良、②基経、③時平、④保忠、

⑤頼忠そして➅公任。藤原公任は、

6代目になる。

 

陽成上皇と藤原基経

ところで譲位させられた陽成天皇

は、譲位後は上皇となり、82歳ま

での間蛇に蛙を飲み込ませたり、

猿と犬を殺し合せ、尋常でない行

動をし、暴君と呼ばれた。

これらは、藤原基経が光孝天皇を

立てたことを正当化するために、

でっち上げた説もあり、真相は定

かでない。ちなみに上皇暦45年は

史上最長である。

 

陽成院の百人一首の歌(第13番)

筑波嶺の峯より落つる

みなの川恋ぞつもりて

淵となりぬる

 

 

陽成院の百人一首の歌(第13番)

 

筑波山の峰から流れ落ちる男女

川(みなのがわ)は、はじめは

少ないがやがて深い淵になるよ

うに、恋心が積もり積もって、

深い想いになってしまった。

という意味になる。

 

筑波嶺「歌垣」

筑波嶺(つくばね)は常陸(現

茨城県)にある筑波山のことで、

山頂は西の男体、東の女体にわ

かれている。

ここは、古代の行事で、男女が

求愛の歌を詠み交わして、酔っ

て、踊って情を交わし、愉しん

だ「歌垣(うたがき)」の地と

して知られ、歌枕になっている。

歌垣での求愛の歌謡は「万葉集」

にも記される。

「鷲の筑波の山の…昔より禁(い

さ)めぬ行事ぞ今日のみはめぐし

もな見そ言もとがむな」

反歌

「男の神に雲たちのぼりしぐれ降

り濡れとほるとも吾帰らめや」

 

陽成院「歌垣」百人一首

陽成院の百人一首の歌(第13番)

作者は清和天皇の第一皇子として

生まれ、82歳の長寿をたもちなが

ら、皇位にあったのはその間8年、

17歳で位を光孝天皇に譲る。

脳を病み行い凶暴であったと伝え

られるが、藤原基経の陰謀・政略

の具とされるというのが事実に近

いだろう。

男に歌いかけられて、それにこた

えることができなかった女は、そ

の男の一夜妻になれ、という歌垣

信仰。

 

陽成院の百人一首の歌

 

 

筑波嶺の峯より落つる

みなの川恋ぞつもりて

淵となりぬる

 

「筑波嶺の峯」、「みな(男女)」

から「恋」が縁語。川の縁語で「

淵」。淵は、水の流れが溜まって

深くなるところ。

恋する気持ちと川の流れを重ね合

わせて詠まれている。

 

贈った相手の女性。

後撰集恋の部に「つりどののみこに

つかはしける、陽成院御製」として

見える。釣殿のみことは、光孝天皇

の女綏子(すいし)で、贈った相手

の女性は、政敵関係にあった光孝天

皇の皇女・綏子内親王(すいしない

しんのう)で、のちに陽成院の后と

る女性である。

 

 

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